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日ノ本元号男子  作者: 安達夷三郎
第二章、古代国家
8/22

8話

私が悠久邸に足を運ぶようになってから、はや二週間。

ここ二週間、ベッドに倒れて気づいたら朝っていう生活だった。

ずっと一人だったのに、イケメン男子達と不思議な体験をして歴史を学んで、神経が疲れ切っていたのかもしれない。

今日は珍しく平和だなと思っていたその時、談話室の方から奈良さんの悲鳴が上がった。

「飛鳥が家出した!?」

テーブルの上に置かれたのは一枚のメモ。そこには『しばらく旅をしてきます。僕には外国の技術を日ノ本に持ち帰る義務があるのですよー!飛鳥』

「遣隋使しなくて良いから!」

「廃止にしたんですけどねぇ」

平安さんがお茶を飲みながら呟く。

「で、どこに行ったの?(ずい)ってことは……今の中国?」

江戸くんが半ば呆れながら呟く。現実的には有り得ない。しかし、彼らは各々、自分の時代にワープできる。……飛鳥くんなら、有り得る。

メモの裏には『初めての海外レポート。隋で見た百のこと』

「本当に行っているでありますね……」


一方その頃、謎の海外(悠久邸のエントランスを隋っぽくアレンジしただけ)では―――

「これが石臼(いしうす)、こっちは水車なのですよー!」

石臼やら水車の模型やらを勝手に並べていた。

「おーい!飛鳥くーん!」

竹ひごで水車の骨組みを補強しようとしている飛鳥くんに声をかけると、やっと気づいたのかこっちを振り向く。

「美空ちゃん、見て欲しいのですよ。これが隋なのですよー!」

飛鳥くんは大きく手を広げ、嬉しそうに使い道を解説し始めた。

「これは行政と法律を整える画期的なアイテム『律令制マニュアル』ですよー!」

役職がひと目で分かる『冠位十二階のぼりセット』紫が最上位で黒が新人。

暇だったので作った『粘土の大仏』

ただいま調整中。夜になると水漏れのする『水時計』

おまけ。ご利益がありそうな『ただの石』

「あと、美空ちゃんにはこれをあげるのですよ」

手渡されたのは手のひらに収まる木箱。

恐る恐る中を確認すると、入っていたのは数体の人形だった。

「これは『ミニ遣隋使セット』です!美空ちゃんも今日から国司気分なのです」

ミニ遣隋使セットの中身達。

・ミニ遣隋使船(紙製)

・外交文書(ひらがなと漢字が一枚ずつ)

・謎の"お友達人形"が三体

「凄い……遣隋使グッズとか作ってるんだ……」

「楽しく体験できるので子供達には人気なのですよー!お値段はタダですよー」

「なーんだ、甘味は持って帰ってないんだ」

団子を頬張りながら室町くんが飛鳥くん自慢のお土産達を見て呟く。

「甘味は現地調達を試みたのですが、失敗したのですよ。いくら探しても白玉粉が見つからなくて……」

「そりゃな!ここ、エントランスだから」

ようやく飛鳥くんを見つけた奈良さんがツッコむが、当の本人はまるで気にしない。

「ところで、このお友達人形って誰をモデルにしてるの?」

私が尋ねると、飛鳥くんは自信満々に答えた。

「これはですねー、左がずいぶん親切な隋の役人さん、真ん中が突然歌い出す使者の人、右がずっと黙っている護衛さんです!」

「ちゃんとしたキャラ設定があった!」

私がツッコむと、飛鳥くんはダンボール箱の上に人形を並べて、劇を始めてしまった。

「こんにちは、わたくしは隋の役人です。()の国からのお客様を大歓迎しますよー!」

役人人形と使者人形がペコリとお辞儀をする。

日出処(ひいずる)国から日没する国へ。突然歌い出す使者でーす!倭の国の国使をしているですよー!」

使者人形はクルクルと回り出す。

「……」

無言で頷く護衛人形。

「いや待って、何でそんなにキャラが濃いの!?」

「歴史を覚えるのには印象が必要なのですよー!」

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