五年越しの再会
いよいよだわ。
私は草原の上で、ゆっくり近づいてくる隊列を見つめていた。
馬車。護衛。荷車。整った行軍だ。
やがてその一行は、私達の横へゆっくり並んで止まった。
私は目を細める。
「……あれね」
一台だけ違う馬車。
形も構造も普通ではない。
屋根にはアンテナが立っている。
間違いない。
移動式無線機を積んだ馬車だ。
つまり――ゆきちゃんの馬車。
その扉が、ゆっくりと開いた。
護衛達の視線が一斉にそこへ向く。
静かな緊張。そして。
そこから降りてきたのは――
金髪の少女だった。年齢は五歳ほど。
この世界では普通の姿。
私は思わず笑ってしまう。
「……ゆきちゃん?」
もちろん。
向こうから見ても分からないだろう。
私だって、この世界では見た事のない顔なのだから。
さて。私も登場するとしますか。
私は自分の馬車の扉を開いた。
そしてゆっくりと降りる。
草原の上に二人の少女が向かい合う。
その瞬間。向こうの少女が目を見開いた。
「……まきちゃん?」
私は笑った。
「そうよ、ゆきちゃん」
そして続ける。
「お久しぶり!」
「五年ぶりになるのかしら?」
周囲の護衛達がざわつく。
「五年……?」
「どういう事だ?」
会話が噛み合っていない空気。
そんな事は、私達には関係なかった。
ゆきちゃんが一歩近づく。
「……本当にゆきちゃん?」
私はニヤリと笑う。
「本当にまきちゃん?」
そして私は言った。
「ポンコツM13/40が好きな、あの?」
ゆきちゃんがすぐに返す。
「あーん?」
「そっちこそブリキ装甲の九五式軽戦車好きな?」
一瞬の沈黙。そして。
「「あはは!」」
私達は同時に笑った。
「「間違いない!」」
私は思わず言った。
「よかった!」
「無事で!」
ゆきちゃんが肩をすくめる。
「まあ無事って事は無いんだけどね」
私は苦笑した。
「あはは!」
「確かにそうね!」
転生。事故。別の世界。
普通に考えれば無事ではない。
それでも生きている。
それだけで十分だった。
私は聞く。
「元気にしてた?」
ゆきちゃんが頷く。
「してたわよ」
そして少し笑う。
「まあスキルのお陰で忙しくなったけどね」
私は頷いた。
「私もそうね」
領地改革。産業。測量。通信。
忙しい毎日だ。
一つだけ共通している事がある。
「でも」
私は言った。
「お互い、住みやすくってのは共通ね」
ゆきちゃんも頷く。
「そうね」
そして続ける。
「お互いの力を合わせれば、もっと良くなる」
私は笑った。
「そうね」
「私もそう思う」
ゆきちゃんの表情が少し真面目になる。
「けどね」
私はすぐ理解した。
「……ここの環境よね?」
ゆきちゃんが頷く。
「昔話は私も聞いたわ」
私は空を見上げた。
旧南国。かつて存在した国。
今は二つの大国に分断されている。
私は静かに言った。
「それは私も」
そして苦笑する。
「今は引き裂かれた旧南国」
ゆきちゃんが頷く。
「そうね」
私は続けた。
「その辺は今すぐ私達がどうこう出来る話じゃない」
ゆきちゃんも同意する。
「確かに」
草原の風が静かに吹いた。
二人の転生者。
二つの領地。
二つの戦記。
それが今、初めて同じ場所に立っている。
世界はまだ簡単には変わらない。
私はゆきちゃんを見て笑った。
「とりあえず」
「積もる話は山ほどあるわね」
再会はまだ始まったばかりだった。




