止められない炉
「――まき様」
第三工業区画の朝。
最近の地下は暑い。かなりの巨大換気機。
回り続けている。
ごぉぉ……
そして奥には、大型溶鉱炉。
「出力安定しています!!」
「人造石油精製、第二ライン稼働!!」
「……」
私は静かに炉を見る。
以前の地下都市。避難場所的な要素もあった。対魔物だった。
でも今は違う。
「文明維持施設」
そこに近い。
「まき様」
整備文官は少し真面目。
「問題があります」
「何?」
「工員不足です」
「……」
来たかそこ。地下拡張、燃料精製、溶鉱炉増設、全部。運用する人が必要。それもかなり数が。
「熟練工が足りません」
「換気管理班も不足」
「配管工も」
「……」
私は少し考える。
当然、
設備、増える。
↓
維持人員が必要。
しかも地下は特殊。
「誰でも良い訳じゃない」
重要。
その時、別文官が資料を持って来る。
「ゆき様側からも連絡です」
「うん?」
「向こうも地下工業区画拡張開始」
「……」
私は少し息を吐く。
向こうも完全に同じ段階。
「内容は?」
「熟練工保護、重要工員指定、工業優先配置」
「……」
完全に。
“止めるな”
体制。
「文官さん」
「はい!!」
「地下工員、優先職種指定、家族配給優遇、医療優先」
「了解!!」
更に。
「技術継承班作る、新人教育急ぐ」
「了解!!」
その時、若手文官は少し不安そう。
「……徴用、始まりますかね」
「まだそこまでは行かない」
私は静かに答える。
でももし戦争が本格化したら解らない。
「今はまだ、“維持”段階」
重要。
地下工業で戦争したい訳じゃない。
「文明止めない為」
そこが目的。その頃、地下工業区画。
新人工員達、教育中。
「この圧力計、赤入ったら即報告!!」
「換気止まったら避難!!」
「火花管理徹底!!」
「はい!!」
かなり真面目。
皆は理解してる。
ここが止まる。
↓
町止まる。
つまり。
「地下炉=生命線」
その時、奥の大型溶鉱炉は。
ごぉぉ……
赤熱。燃え続ける。
「……」
私は静かに見る。
この炉、鉄を作る。
でも今、それだけじゃない。
「町を支えてる」
学校。診療所。水路。配給。警備。全部。
この熱が前提。
その頃。
市場では――
「最近、地下工員優先多いな」
「配給も少し違うらしいぞ」
「まぁ、止まったら困るしな……」
人々、少しずつ理解し始めていた。
今、一番守るべき物。それは。
「地下で動き続ける工業」
なのだと。
その日。
地下都市では――
地下工業区画の拡張と共に、“文明を止めない為の工員保護体制”が本格的に始まっていた。
文明とは、ただ発展する事じゃない。
危機の時代でも炉を止めず。水を流し。
人々の生活を支え続ける事。
その継続こそが――本当に強い社会を作っていくのだから。




