未来を育てる
「――まき様」
第一農業区画の朝は最近、かなり賑やか。
人が増えた。家も増えた。市場も出来始めた。
つまり。
「完全に集落化してる」
「何?」
若手文官は少し困った顔。
「……子供が増えています」
「うん」
私は普通に頷く。
実際に多い。かなり走り回って叫んでる。
水路で遊ぼうとして怒られてる。元気。
「それで」
文官は資料を差し出す。
「読み書きを教えて欲しい、という声が増えています」
「……」
私は少し止まる。
「……あー」
来た。
住む。
↓
家族が増える。
↓
子供が育つ。
当然。
「教育必要」
最初は生き残るだけだった。でも今。
「次世代」
そこまで来た。
数日後――第一農業区画。集落中央。
「……」
私は周囲を見る。
屋台、農具屋、水路、警備詰所。
そして走り回る子供達。
「まき様ー!!」
「何?」
「字読めるって本当!?」
「読めるわよ?」
「すげぇ!!」
「……」
私は少し笑う。
そうか。ここはまだ、読み書き出来ない人が多い。当然、開拓優先だったから。
でも今は、違う。
「定住始まった」
なら。必要。
「文官さん」
「はい!!」
「集落学校、試験設置」
「――!」
周囲は、少しざわつく。
「学校、ですか?」
「そう」
読み書き、計算。あと。
「水路管理、農地管理、警備基礎」
「――!」
農業文官が目を見開く。
「生活知識教育……!」
「そう」
重要。ただの村じゃない。水路、排水、警備全部、維持が必要。つまり。
「次世代育成必要」
「了解!!」
その時、お母様は少し笑う。
「本当に、町になってきたわね」
「うん」
私は普通に頷く。最初は、水が欲しかった。
そこから農地、警備そして定住。今。
「子供を育てる話」
そこまで来た。
数日後――仮設学校予定地。
元倉庫改装、木造、人工石補強。
「ここ学校になるのかー!」
子供達は、かなり騒いでる。
「椅子ある!!」
「机だ!!」
「黒板っぽいのもある!!」
「……」
私は少し遠い目になる。
前世の普通。
でもここでは初めてになる。
「まき様」
建築文官は少し真面目。
「教師役ですが……」
「読み書き出来る文官から回す」
「農業知識ある人も」
「了解!!」
その時。
小さい女の子が恐る恐る聞いてくる。
「……勉強すると、何が出来るの?」
「……」
私は少し考える。
そして周囲を見る。
水路、農地、市場、警備隊、増えていく町。
「もっと、色んな事が出来る様になる」
「……?」
「水路作る人にもなれる。病気治す人にもなれる。町守る人にもなれる」
「……!」
女の子が目を輝かせる。
「すごい……!」
「うん」
結局、次を支える子供達。
その頃、集落の夕方。
屋台から笑い声。走り回る子供。
水路の流れる音。
その中心で小さな学校建設が始まっていた。
その日。
地下都市周辺では――
定住化の進む第一農業区画に、“次世代を育てる場所”として初の集落学校建設が始まっていた。
文明とは、建物だけでは続かない。
水を守り。土地を耕し。町を維持していく。
その知識と技術を、次の世代へ繋げてこそ――初めて、人は土地へ根を下ろし続けられるのだから。




