平安
次に目が覚めた時には草原が広がっていた。
「此処は?」
『京の都だ』
寝そべっていた隣りで九尾が立っていた。
「俺は死んだのか?」
『さあね、現実世界ではもう体は動かないんじゃないかな』
ってことはもう戻っても意味はないか。
「分かった、それで此処は京の都ってことは現代で言う京都?」
『まあそうだね、この時代の日本の中心は京都だから』
確かにそれは歴史で習った通りだった。
「それで過去の時代を俺に見せて何をしたい?」
『まあ私は約束があるからね、あの世に行って清明に小言を言われたくないから。やれることはするつもりだったんだけど』
「そうか、で、どこに行けば良いんだ?」
『まあまあ、目的地は近いから慌てずにさ』
「現実世界では時間の流れが違うとか?」
『そうだね、君そう言うの好きなんでしょ?』
「まあね、それにしても風が気持ちいな」
『気に入った?』
「ああ、俺に時代にはない時間の流れと緑で落ち着くよ」
『そうか』
此処は一本のでかい木がそびえ立っていて、周りは草が生い茂っていて何故か空気も美味しい。
「あの世ってさ、どんな場所だと思う?」
『なんだい急に』
「いや、此処を出たら俺はそうなるんだろ?」
『さあね、私も死んだわけではないから分からないよ』
「長く生きていても分からないこともあるんだな」
『そりゃそうさ、どんなに時間があっても全知には程遠い』
「そうか」
『うん、君はどんな世界なら嬉しい?』
「天国だったらこんな景色で、ゆっくり縁側でお茶でも飲みながら過ごしたいよ」
『へー、意外だ』
「なんで?」
『異世界転生とか言いだしそうだったから』
「あー、その手があったか」
『馬鹿なことを言ってないで、そろそろ行こうか』
「何処に?」
『着いてくれば分かるよ』
そうして、九尾の後をついて行くと、段々街が見えて来た。
「この格好で大丈夫かな?」
俺の格好は現代人が着ているものだったので、心配だった。
『大丈夫だよ、君はこの時代に存在しているわけではない、まあ簡単に言えば私も君もこの時代の人間には見えないから』
「お前の能力か?」
『いや、私じゃない』
「じゃあこれは一体?」
『その内分かるよ』
一応体を触ると俺の腕は体を貫通していた。
本当に見えてないのか、てことは幽霊みたいだな。
そんなことを感がていると九尾が足を止めて振り返った。
『さあ、そろそろ街に入れるよ』
「分かった」
『大丈夫だと思うけど人から見えないからって言って、覗きとかは駄目だよ』
「俺のことをなんだと思ってるんだ」
『君くらいの年頃はそう言うの好きだと思って』
「まあ否定はしないよ」
『ほら~』
「良いから早く案内しろ」
そう言うと街に入った。
皆、洋服などは教科書で見た通りで違和感はなかった。
売っている食べ物だったり、折り紙などで作った玩具などを明記している字は読めなかった。
現代に比べれば娯楽はとても少ないだろう、でもなんだかお店で団子を食べていたり話をしている人を見たりしてこの場所がそうなのかもしれないけど、それでも通りすがる人の笑顔を見ると現代の人と同じ笑顔をするし、たまに現代の人よりも幸せなのではないかとも感じる。
『さあ、着いたよ』
連れてこられたのは町の外れの方にある家だった。
「此処?」
『うん、まあ中はそこまで広くないし誰もいないからね』
「九尾の家か?」
『まあそうだね、人間で言う所の実家かな』
モンスターにもそう言う物が存在するのかと思いつつ、家に入る。
中は質素だった。
『何もないでしょ?』
「まあ嘘を言わないなら」
『そうでしょう、まあこんな場所でも思い出は沢山あるんだ』
「そうか、それでこれを見せたかったのか?」
『いや、これは見せときたかっただけ。本当の目的地は此処から少し離れた所だよ』
「そうなのか」
『うん、歩いたら半日以上はかかる』
「まじ?」
『うん、車も電車もないし手段は基本歩きだね』
「そうか、分かった」
『まあ、安心して意識だけを連れてきているだけだから、一瞬で移動できるよ』
「なら最初からそう言え」
『ごめんごめん、じゃあ行こうか』
そうして九尾は手を広げて両手を合わせた。
その瞬間に景色が真っ白い空間に変った。
そして瞬きをした瞬間に景色は現実に戻る。
「此処は?」
『清明の屋敷だよ』
「屋敷?」
『うん、今は清明は一番力を持っている時代だからこんな立派な家が与えられているんだ』
「なるほど」
『まあそんなに緊張しないで、さあ入ろう』
そう言われて、俺は安倍晴明の屋敷に足を踏み入れた。




