表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/46

色が変わるゲート

「ゲートの色は?」


「赤です。すでにS級が一人、それ以下のハンターが数名入っていますが……三時間経っても帰ってきません。」


「重症ですね。」


「はい。ですが今動けるZ級は御影さんしかいません。」


「他のZ級とS級は?」


「Z級は海外に派遣されています。S級も、各地のゲート対応に散っていて——。」


「なるほど。なんでそんなことに?」


「Z級は“エーテル樹”の伐採任務です。」


「……エーテル樹?」


「知らないんですか? 世界中のゲート出現地で確認されている、エーテルを放出する木です。放置すれば、その周囲でゲート発生率が跳ね上がります。」


「伐採できないんですか?」


「Z級が最大出力で斬らなければ倒せないんです。しかも世界中に何千本もある。」


「そんな化け物じみた木が……」


「はい。そして日本は、ゲートブレイクの発生数が世界一になっています。」


「……つまり、俺がいなきゃ詰みってことですね。」


「正確に言うと、そうです。」


「正直でよろしい。」


「御影さんなら、ホロウレイン級でも倒せると思ってます。」


「多分あいつの方が強いですよ。」


「でも——」


「まあ、俺もまだ成長期なんで。」


「二つ目の問題はなんですか?」


「今、腹が洪水を起こしそうです。」


「……え?」


「トイレ寄ってもらえません?」


「早く言ってください!!」


「すみません。」


奥多摩の山奥、ゲート出現現場。

俺はコンビニで煙草とコーヒーを買い、トイレを済ませてから現場に着いた。


「着きました。」


「はい。」


煙草に火をつけ、一服。

現場は黄色いテープが張られ、緊張した空気が漂っていた。


「ちょっと、あなた——そこから先は立入禁止です!」


スーツ姿の女性が声を張る。


「大丈夫ですよ。」


「いえ、一般の方は——」


「はいはい。」


無視して進むと、背後から姫野さんの声。


「この方は大丈夫です。ハンター協会の許可済みです。」


「え? 姫野さん……?」


「今は説明してる時間がありません。」


(相変わらず現場は慌ただしいな)


「御影さん、先に行かないでくださいよ!」


「すみません、早く終わらせたいもので。」


「それと煙草、やめてください!」


「車では吸わないで我慢してたんですよ、これくらい許してください。」


「……はぁ、もう知りません!」


俺はゲートの前に立った。

赤く輝く渦。空気がひび割れるように歪んでいる。


「赤か。」


そう呟き、足を踏み入れる。


中は、血のような赤空。

倒れているハンターが数人。


「お、お前……応援か?」


「お前がこのゲートの主か?」


立ち上がった男が、俺を値踏みするように見た。


「君は誰だ?」


「誰でもいいでしょう。」


「駄目だ、あれはS級三人でやっと倒せる!」


「そうですか。」


「君の等級は?」


「黙っててください。」


「は?」


「皆さん、そこから動かないように。」


俺は右手を掲げた。

緑の光が走り、全員の周囲に透明な結界が展開される。


「なんだこれ……?」


「回復結界です。中にいる限り、どんな攻撃を受けても死にません。傷も治ります。」


「傷が……消えていく……!」


「君は回復系のハンターか!? なら前に出るな!」


「黙っててください。煙草吸い終わるまでに終わらせたいんで。」


その瞬間、赤空がうねった。


現れたのは——鬼。


全身が紅蓮色の筋肉で覆われ、包帯を巻いた腕から黒い煙を放っている。


「来たか。」


「気をつけろ、そいつは相手のエーテルを吸収する!」


鬼は瞬間移動のような速度で背後に現れた。


拳が俺の腹を——叩いた。

だが、拳は止まる。俺の周囲の結界に阻まれて。


「悪いね、攻撃は通らないよ。」


「エーテルで出来てるんだろ? なら——吸い取ってやる!」


鬼の手が俺に触れ、エネルギーを吸収していく。


ハンター達の表情が絶望に染まった。


「もう終わりだ!!」


白いオーラが鬼の体を包み込む。

S級ハンターの一人が呟く。


「……でも結界は、消えてない。」


「そうですね。俺のエーテル、そんな簡単には減りませんから。」


鬼の顔が歪む。


「どういうことだ……? 俺が吸ってるはずなのに!」


「まあ、気にすんな。混乱したまま死ね。」


俺は瞬間移動で懐に入り、

マイクロ・ポータルから刀を抜いた。


斬撃一閃。

鬼の首が宙を舞う。


「さて、帰るか。」


「ま、待ってくれ! 君は一体——」


「もう立てるなら出口はそっちです。」


「……傷も、完全に治ってる。」


「じゃあそういうことで。」


ゲートを出ると姫野さんが駆け寄ってきた。


「御影さん!!」


「ん?」


「大丈夫なんですか!? ゲートの色が赤から虹に変わったんですよ!」


「ああ、それね。中のモンスターが俺のエーテル吸ったんで、進化したんでしょう。」


「なにそれ……そんなことあるんですか……?」


「まあ、もう倒したんで帰っていいですか?」


「……はい。」


車に戻ると、煙草に火をつけた。


「車の中で吸っていいですか?」


「駄目です。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ