↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/156

一人暮らし?

俺が“赤から虹に変わったゲート”から帰還して、もう数日が経った。

静まり返った書斎の中、俺は相変わらず暇を持て余していた。


狭い部屋。壁一面の本棚には、好きなラノベや小説、漫画が並んでいる。

その中央で俺は、パソコンを開いてバトルアニメを流しながら、

「イマジン」で追加できる能力について考えを巡らせていた。


気づけば風呂も二日入っていない。

食事はデリバリー、しかも置き配。

誰とも顔を合わせず、ただ、仕事の依頼が来たら動けばいい――そう思っていた。


そんな時だった。

インターホンが鳴った。


「……誰だよ、こんな時間に」

時計を見ると昼過ぎ。記者やマスコミが来るような時間ではない。

姫野さんなら、まずメッセージをくれるはずだ。

出るか迷ったが、結局、重い腰を上げて一階まで降りた。


カメラを見ると、三十代後半くらいの見慣れない男が映っていた。

スーツ姿、目つきが鋭い。どこか只者じゃない。


「……記者、じゃないよな?」

無視しようとした瞬間、インターホンが連打された。

しつこい。仕方なく応答する。


「はい?」

『あの、私、ハンター協会所属のS級・桐生武人と申します』

「……はぁ?」

『御影さんにお話がありまして』


差し出されたカードには確かに協会の刻印。

俺は念のため、姫野さんに電話を掛けた。


『姫野さん、桐生って人が来てるんですけど』

『えっ!?もう?……あっ、日付間違えてました!』

『……はい?』

『すみません!話は本物なので、ちゃんと聞いてあげてください!』


雑だな、協会。

ため息をつきながら玄関のドアを開けた。


「桐生さん、どうぞ中へ」

「失礼します」


桐生は深々と頭を下げ、家の中を静かに見回した。

「Z級になると、こんな家に住めるんですね」

「家具は全部、協会の備え付けです。俺の持ち物は少ないですよ」


とりあえずコーヒーを淹れて、リビングで向かい合った。

桐生は丁寧にチョコレートの箱を差し出す。

「甘いもの、お好きですか?」

「好きですよ。ありがとうございます」


だが、その笑みはすぐに消えた。

「……実は、ゲートブレイクの際に妻と娘を殺されました」


テーブルに置かれたのは、一枚の写真。

防犯カメラの映像らしい。ぼやけているが、確かに“何か”が映っていた。


「このモンスターを測定したら、Z級の反応が出たんです」

「Z級……? ありえません」

「ですがデータは正確でした。私は、こいつを必ず殺します」


桐生の拳が震えていた。

半年経っても、その怒りと悲しみは消えていない。


「正直、俺でも勝てるとは限りません」

「それでも……お願いです。御影さんの力を貸してください!」


桐生は床に頭をつけた。

土下座。

重い空気が部屋を包む。


「……頭を上げてください。協力はします」

「本当ですか!」

「ただし、一人では無理です。情報が必要です」

「ありがとうございます……ありがとうございます!」


涙をこぼしながら何度も頭を下げる桐生。

だがその後の言葉に、俺は固まった。


「せめてお礼に、住み込みで家事をさせてください!」

「えっ?」

「掃除でも料理でも何でもします!お願いします!」


俺は呆れながらも、なぜか笑っていた。

こうして――

二十代の帰還者と、三十代の元サラリーマンの、

奇妙な同居生活が始まったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。