表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/103

花弁

「十年前に?」

「ええ、でも彼女に十年も経ったと感じさせるものはないですね」

確かに容姿や制服姿だし、明らかに十代だった。

「天城さんが参加した時の年齢は?」

「十七歳です」

一体度言うことなのか、皆考え込み誰も返答は出来なかったが栄太さんが口を開いた。

「もしかするとゲートの中と現実の時間の流れが違うのかもしれない」

「成程、それなら辻褄は合いますね」

「まあ考えても仕方ない、取り合えずボスを倒しましょう」

一人の青年が声を上げた。

「ですね、ただ此処に何人か残しましょう。天城さんをそのままにしておくわけにはいきません」

そうして十五人の中から五人が此処に残り、残りの十人がゲートに入ることになった。



ゲートの中は、静かすぎた。

「……気持ち悪いな」

神坂がぼそっと呟く。

本来なら、モンスターの気配が渦巻いているはずの空間。

だがここには――“音がない”。

「索敵反応、薄すぎる」

鹿内が目を細める。

「逆に怪しいってやつだな」

栄太が軽く息を吐き、手を上げる。

「――偵察陣形、維持」

足元に展開された《戦術構築》。

視界が研ぎ澄まされる。

「……奥に、ある」

鹿内が指差す。

朽ちた建物のような構造物。

まるで“蔵”。

「行くぞ」

誰も異論はなかった。

扉は、ひとりでに開いた。

ギィィ……と、不快な音を立てて。

中は暗い。

だが中央だけ、妙に“明るい”。

そこにあったのは――

「……花びら?」

空中に浮かぶ、一枚の花弁。

淡く揺れている。

「これが……ボス?」

神坂が首を傾げる。

黒瀬が近づく。

「拍子抜けだな」

その時。

――ピキッ

微かな音。

空気に“ひび”が入る。

「待て、触るな」

鹿内が止める。

だが遅い。

黒瀬の足元から、影が伸びた。

「……は?」

地面から“何か”が這い出る。

人の形。

だが輪郭が曖昧。

そして――

「おい……これ」

神坂の声が震える。

その“顔”が、はっきりした。

「……黒瀬、さん?」

本人と、同じ顔。

同じ体格。

同じ構え。

「……チッ」

黒瀬が舌打ちする。

「気持ち悪ィな」

その瞬間。

コピーが、拳を振りかぶる。

「来るぞ!」

栄太の声。

――ドンッ!!

同じ動き。

同じ威力。

地面が抉れる。

「は!?」

神坂が吹き飛ばされる。

「うそだろ!?」

「落ち着け!」

栄太が即座に指示を飛ばす。

「防御陣形に切り替え!」

陣形が変わる。

「能力……同じだと?」

桐原が息を呑む。

その時。

――ズルリ

さらに“増えた”。

今度は――

「……え?」

如月。

鹿内。

そして――

「俺?」

神坂自身の“コピー”。

「は、はあ!?」

完全に同じ。

動きも、呼吸も。

「なんだよこれ……!」

コピーの神坂が、笑った。

「ははっ」

本物と同じ、軽い笑い方で。

次の瞬間。

突っ込んでくる。

「くっ……!」

ぶつかる拳。

同じ力。

同じ速度。

「マジかよ……!」

押し負けない。

だが――勝てない。

「これ……!」

桐原が叫ぶ。

「私たちの動き、全部読まれてる……!」

「違う!」

鹿内が低く言う。

「読んでるんじゃない――」

視線が、中央へ向く。

揺れる花弁。

「“写してる”んだ」

その瞬間。

花弁が、わずかに開いた。

空気が変わる。

「……まずいな」

栄太が呟く。

「これ、時間かけるほど不利になるタイプだ」

コピーが、さらに増える。

精度が、上がる。

「くそ……どうすりゃいいんだよ!」

神坂が叫ぶ。

誰も、答えられない。

ただ一つ。

確かなことがある。

――これはまだ“第一段階”だ。

そして。

その中心で。

花弁は、静かに“咲き始めていた”。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ