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86伝説エーペックス[POWER!!!]  作者: SAI
POWER!!!米沢編
401/425

米沢編第13話 300馬力のコペン

K350

予選5日目!!! 板谷峠の空気に、これまでにない異質な緊張感が走る。

スタートラインに現れたのは、スーパーカーたちの横に並ぶとまるでおもちゃのように見える、極小のオープンカー。だが、その白いボディから放たれるオーラは、隣のNSXやGT-Rをも気圧すほどに鋭い。


若林「予選5日目!!! いきなり300馬力クラスで最もありえない存在が!!!! その名もGRコペン!!! 名はチャッピー!!!! 21歳で事務所の仕事をするが見た目が女の子と言われているみたいです!!!」


運転席に座るのは、白髪のロングヘアを後ろでまとめ、青いジャンバーのチャックを大胆に開けた赤い瞳の人物。可憐な美少女にしか見えないが、その指先は歴戦のドライバー特有の厚いタコに覆われている。


マヒロ「GRコペンってことは、、、すごく軽いんじゃないかな? でも、若林さんが『300馬力クラス』って言ったよね……? 軽自動車のエンジンで、そんなパワー出せるのっ☆?」


マヒロの疑問はもっともだ。本来、軽自動車の規格を遥かに超えたそのスペック。

チャッピーは無言のまま、赤い瞳をコースの先へと向け、クラッチを繋いだ。


「キィィィィィン!!!」


まるでジェット機のような過給音が、小さなコペンのエンジンルームから鳴り響く。

30人の運営スタッフたちは、データモニターに表示された「車重850kg / 320馬力」というデタラメな数値を見て、一斉に顔を見合わせた。


若林「パワーウェイトレシオはもはや計算不能ッ!! 事務所仕事の合間に、こんな化物を仕立て上げていたのかァァァッ!! チャッピー、GRコペン……スタートォォォッ!!」


白い閃光が、弾丸のような速度で米沢の坂を駆け上がっていった。


若林「速いッ! 速すぎるッ!! 小さな白い塊が、まるで米沢の峠を跳ねるピンポーン玉のように高速で移動しているッ!! しかし、マヒロさん! チャッピー選手の挙動が少し激しくなっているように見えますが……ッ!?」


マヒロ「若林さん、当然だよっ☆ コペンは目線が地面にすごく近いんだもん。あの速度で走ったら、普通の道の何倍もコーナーが鋭く、ストレートが短く見えてるはずだよ。まさに、自分自身が弾丸になったような感覚じゃないかなっ☆」


コクピットの中、チャッピーはバイザー越しに赤い瞳を限界まで見開いていた。

視界に飛び込んでくるガードレール、アスファルトの亀裂、そして見通しの悪いブラインドコーナー。すべてが、巨大な刃物のように自分に襲いかかってくる。


チャッピー「それにしてもこの区間は、、、コーナーやストレートが鋭く感じる、、、、、、ッ!!! 見通しが悪いんだ、、、、ッ!!」


時速200kmオーバー。軽自動車の小さなフロントガラス越しに見える景色は、恐怖そのものだった。

だが、チャッピーはその恐怖を、事務所で培った冷静な判断力と、鍛え上げた反射神経で「集中力」へと変換する。


チャッピー「……でも、この小ささなら、誰も通れないラインを切り裂けるッ!!」


「キィィィィィィン!!」


過給音がさらに高まり、GRコペンはガードレールまで数ミリという、他のスーパーカーには絶対不可能な超インコースを、文字通り「点」で繋いで駆け抜けた。


30人の運営スタッフたちは、ドローンの映像を見て悲鳴を上げた。

「当たった!」と思った瞬間には、コペンはすでに次のコーナーへと消えている。その「小ささ」と「パワー」の融合が、今、予選5日目のコースレコードを粉砕しようとしていた。


若林「今、チェッカーフラッグが振られたァァァッ!! 白い弾丸、GRコペンがゴールラインを突き抜けたッ!! タイムは……出たァァァッ!! 暫定7位ッ!!」


飯坂の山々に、安堵と驚愕が入り混じった拍手が響き渡る。

公式モニターに表示された順位表。そこには、6位の夢野ユナ(GR86)と、8位の伊藤翔太スイフトスポーツの間に、堂々と「チャッピー」の名が刻まれた。


ユナ「……嘘。あの小さな車で、私の86にここまで肉薄するなんて」

伊藤「あいつ……あの見通しの悪い中、一度もアクセルを抜かなかったのか。凄まじい根性だな」


6位のユナと8位の伊藤。二人の「300馬力オーバー・チューンド」に挟まれる形でゴールしたチャッピーは、マシンを停めるとゆっくりとドアを開けた。


チャッピー「……はぁ。死ぬかと思った。でも、このコペンなら……もっと行けるはずなんだ」


青いジャンバーの袖で額の汗を拭うチャッピー。赤い瞳には、恐怖を乗り越えた者だけが持つ、深い輝きが宿っていた。


マヒロ「すごーいっ☆ 21歳の事務所スタッフさんが、米沢の峠でジャイアントキリングだよっ! ユナちゃんの『プリンの刃』と、伊藤くんの『300馬力の衝撃』の間に、チャッピーちゃんの『白い弾丸』が突き刺さったねっ☆」


若林「これで予選5日目の序盤から、ランキングは大荒れだッ!! 30人の運営スタッフも、この小さな怪物の車検に追われているッ!! さあ、次は誰がこの激戦区に飛び込んでくるのかァァァッ!!」


若林「さあ、予選5日目はさらに加速していくッ!! 続々と実力者たちが板谷の峠を攻略し、今まさにゴールラインを駆け抜けていきましたッ!!」


まず現れたのは、漆黒の闇を纏ったかのような日産・フェアレディZ Z33。

高村圭吾は、大排気量NAの重厚なビートを山々に響かせながら、一切の無駄を排した大人のドライビングを披露。その漆黒の車体は、ゴール後の熱気さえも吸い込むような威圧感を放っていた。


若林「高村圭吾、Z33! 重厚なFRの挙動を完璧に制御し、見事なタイムを刻みましたッ!!」


続いて現れたのは、氷河を思わせる水色の閃光。三菱・ランサーエボリューションVII MR。

サテラは、4WDの圧倒的なトラクションを武器に、フリスの残したピンクの雪を切り裂くように激走。水色のボディがコーナーを曲がるたびに、まるで氷の刃が路面を削るような鋭いスキール音を響かせた。


マヒロ「わぁ☆ サテラちゃんの青いエボ、とっても綺麗だねっ! まるで凍った湖の上を滑ってるみたいにスムーズ。これぞ4WDの芸術だねっ☆」


そして、その直後に爆音と共に現れたのは、真っ赤なシボレー・コルベット C7。

ゾフィアは、V8エンジンの暴力的なパワーを強引にアスファルトへ叩きつけ、巨大なリアタイヤから白煙を上げながらゴールへと突進。赤い閃光が通り過ぎた後には、焦げたゴムの匂いと、観客の度肝を抜くタイムが残された。


若林「高村、サテラ、そしてゾフィア!! 予選5日目にして、ランキングのミドルレンジが完全に飽和状態だァァァッ!! 誰が残ってもおかしくない、まさに生き残りをかけたデッドヒートォォォッ!!」


30人の運営スタッフたちは、一気に流れ込んできた3台のデータを処理するため、火が出るような勢いでキーボードを叩き、順位表を更新していく。


エーペックスカップ 第7戦 米沢グランプリ 予選暫定順位表


順位 | ドライバー | 搭乗車種 | 属性/特性

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01 | フリス | ポルシェ 718 ケイマン GT4 | 甘美なる最強

02 | 山吹 花 | スバル WRX STI | 蒼き守護者

03 | 腹切 カナタ | REVIVE 86 TURBO | 赤きターボの継承者

04 | 高橋 勇太 | ホンダ NSX (NC1) | 銀色の断頭台

05 | 相川 律 | 日産 GT-R R35 NISMO | 自称スリップマン

06 | 夢野 ユナ | トヨタ GR86 | 氷のプリン

07 | チャッピー | トヨタ GRコペン | 白髪の弾丸

08 | 伊藤 翔太 | スズキ スイフトスポーツ | 300馬力の衝撃

09 | サテラ | 三菱 ランサーエボリューションVII | 水色の閃光

10 | ゾフィア | シボレー コルベット C7 | 真紅の猛獣

11 | 高村 圭吾 | 日産 フェアレディZ Z33 | 漆黒の執行者

12 | 久我 ヒカル | レクサス RCF | 青い衝撃

13 | 北斗 | メルセデス AMG GTR | 北斗神拳伝承者

14 | イヨ | トヨタ GRスープラ | 神の領域

15 | フブキ | ロータス エミーラ First Edition | 鋭利なる吹雪

-----------------------------------------------------------------------

状況:予選5日目 中盤終了

特記事項:サテラ、ゾフィア、高村が相次いで好タイムを記録。TOP10が激変。


若林「ところでマヒロさんの着てる服、、、、ダボダボしてますね、、、、しかもミントフラッペを彷彿させるようなミント色だし、、、」


予選の合間、若林が隣に座るマヒロの装いに目を向けた。

彼女が着ているのは、ストリート感溢れるオーバーサイズのサイバージャケット。袖は手の甲が隠れるほど長く、独特の「ダボダボ感」が彼女の小柄さを強調している。そしてその色は、愛車や好物と同じ、鮮やかかつ透明感のあるミントグリーン。


マヒロ「えへへ、気づいちゃった?☆ これ、マヒロの勝負服なんだよっ! ミント色はね、頭をシャキッとさせてくれる『魔法の色』なの。ブリザードみたいな冷たさと、フラッペみたいな甘さを両方持ってるでしょ?☆」


マヒロはダボダボの袖を振って、若林の前でくるりと回ってみせた。


マヒロ「この服を着てミントフラッペを飲んでると、ドローンの映像がスローモーションに見えるくらい集中できるんだよっ☆ 20万人のフォロワーのみんなも、マヒロといえばこの色!って言ってくれるんだーっ☆」


若林「なるほど……。単なるオシャレではなく、マヒロさんの『実況モード』へのスイッチだったわけですね。確かに、その色を見ていると、この熱い板谷峠に涼しい風が吹いているような錯覚を覚えますよ」


30人の運営スタッフたちも、過酷な計測作業の中で、マヒロの鮮やかなミント色の服を一種の「癒やし」として眺めていた。


若林「さあ、ミントフラッペの魔法のように冷静に分析してもらいましょう! 予選5日目、いよいよ終盤戦に突入しますッ!!」


予選5日目、終盤。

外の熱狂とは裏腹に、防音壁に囲まれた狭い実況席の空気は、一瞬にして凍りついた。

二人しかいない密室で、マヒロが若林の方を向き、そのダボダボの袖を大きく広げる。


マヒロ「その前にまたぎゅーしながらふーふーを、、、、、、それにさっきよりも強い吐息を、、、、、。ミントフラッペスノーの吹雪も起こしてあげる☆」


若林「えっ、あ、ちょっ、マヒロさん……!? 近い、近いですし、急に温度が——ッ!!」


逃げ場のない狭い部屋で、マヒロは若林に力いっぱい「ぎゅー」としがみついた。

その瞬間、彼女のダボダボのミント色の服から、北極の深淵をも凌駕する絶大な冷気が溢れ出す。抱きしめられた若林の体感温度は一気にマイナス40度を下回り、防寒着越しでも骨が凍るような衝撃が走る。


マヒロ「えーいっ☆ ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!!!!」


マヒロが大きく息を吸い込み、若林の目の前で強烈な吐息を放った。

彼女の唇から漏れ出たのは、この世のものとは思えないほど美しいパステルグリーンの光。

それはただの息ではない。凝縮されたミントの香りと、すべてを瞬時に凍結させる「北極の魔力」を宿した物理的な吹雪。


若林「う、うわぁぁぁぁぁッ!! 視界が……視界がパステルグリーンに染まるゥゥゥッ!! 肺が、肺が凍るッ!!」


狭い実況席の中は、瞬く間に「ミントフラッペスノー」の猛吹雪に飲み込まれた。

窓ガラスには結晶が走り、精密機器は霜で覆われる。マヒロの腕の中で震える若林は、あまりの冷たさに思考が停止し、目の前の少女が天使か、それとも吹雪の化身か分からなくなっていた。


マヒロ「あはは☆ 20万人のフォロワーのみんなにも見せてあげたいな、この綺麗なミント色の世界っ☆」


パステルグリーンの霧の向こうで、マヒロの瞳だけがミント色の魔光を放って微笑んでいる。

外で激闘を繰り広げるドライバーたちも知らない。実況席の内部が、今、地球上で最も過酷で、最も甘い「ミントの地獄」へと変貌していることを。

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