芦ノ湖編第44話 ラストヒルクライム
通算253話
花「指くわえてるわけないでしょォォォ!!???」
若林「そしてきたァァァ!!!!山吹花ァァァァァァァ!!!!」
「スバルブルーが一気に踏み込んだァァァ!!」
花「この区間……風が変わってる……!」
ギュアアアアア!!!
WRX STIのタービンが吠え、
スバルブルーのボディがラインの内側へ鋭く切れ込む。
若林「まずは1台ッ!!ムーンストーンを捕らえたァァァ!!!」
花「まだよ……もう1台……!」
ステアリングをわずかに戻し、
リアのグリップを信じてアクセルを踏み直す。
若林「そのまま繋げたァァァ!!佐藤のC8にも並んだァァァ!!!」
花「行ける……今なら……!」
ブオオオオオン!!!
若林「抜いたァァァァァ!!!!」
「山吹花!! わずか数秒で2台オーバーテイクだァァァ!!!!」
花「はぁ……はぁ……まだ終わってないでしょ……!」
柳津「なんだと……!?
まだスバルブルーにそんな力が残ってたのか……!?」
柳津「WRX STI……山吹花……」
「またバケモノかよ……!」
ブラックアイスバーン区間を抜け、
タイヤが“噛む”感触が一気に戻る。
ザラついたアスファルト。
凍結で奪われていた横Gが、
一瞬で車体に帰ってくる。
柳津「……くそ、ここからが本番ってわけか」
M4DTMのステアリング越しに、
前方で暴れながらも姿勢を崩さない
スバルブルーのWRXが映る。
柳津「アイスバーンじゃなきゃ止められないと思ったが……」
「路面が戻った途端に、
あの踏み方かよ……!」
WRX STIがアクセルを踏み直した瞬間、
リアが一度だけ流れ、
次の瞬間には完璧にトラクションを掴む。
柳津「……はは」
「そりゃ速いわけだ」
「氷の上じゃ抑えて、
乾いた路面で牙を剥く……」
「完全に“戦い方”を知ってやがる」
スバルブルーが
朝焼けの光を反射しながら
一段上のペースへと入っていく。
柳津「……いいね」
「こうじゃなきゃ、
最終ラップの芦ノ湖じゃない」
高橋「ふざけんなァァァ!!!
こんな終盤でそんなオーバーテイク持ち込むなァァァ!!!」
NSXがアクセルを踏み直し、
ミッドシップの重さを押し付けるように前へ出ようとする。
だが――
花「いける……ッ!!!」
WRX STIが一瞬だけラインを外し、
次の瞬間、イン側へ鋭く切れ込む。
タイヤが鳴く。 だが、悲鳴じゃない。
“噛んでいる”音だ。
高橋「まだ踏めるってのかよ……ッ!?」
NSXのトラクションが一拍遅れる。
その一瞬を、花は見逃さない。
花「ここ……!」
アクセルを踏み抜いたWRXが、
朝焼けの光をまとって半車身前へ。
高橋「くっ……!」
ステアリングを切り足すNSX。
だが、もう遅い。
若林「山吹花ァァァァァ!!!
ここで前に出たァァァ!!!」
WRX STIが完全に前へ出る。
花「まだ終わってない……!」
「ここから……最後まで!」
背後でNSXのエンジンが吠える。
だが、スバルブルーは揺るがない。
この終盤、
攻める覚悟を決めたマシンだけが、
前に立つ――。
若林「終盤だァァァ!!!
芦ノ湖スカイライン、最後のリズム区間!!」
WRX STIが前に出たまま、
次のコーナーへと飛び込んでいく。
高橋「……チッ!」
NSXがラインを変え、
外から被せにいく。
だが――
花「読めてる……!」
ハンドルをほんの数センチだけ修正。
スバルブルーが無駄なく向きを変える。
若林「無駄がない!!
この操作、完全に“仕上がっている”!!」
高橋「なんだよ……
さっきまでと別人じゃねぇか……!」
NSXのノーズが、
WRXのリアに吸い寄せられる。
だが距離は縮まらない。
花「追いつけるなら……
追いついてみなさいよ……!」
アクセルを踏み足す。
ターボが唸り、
車体がもう一段、前へ出る。
若林「伸びるゥゥゥ!!!
山吹花、まだ余力がある!!」
高橋「クソ…… ここまで来て……!」
NSXが限界域で粘る。
だが、ラインは塞がれたまま。
花「このまま…… 終わらせる……!」
朝焼けの光がコースを照らす。
スバルブルーが、その中を切り裂く。
若林「山吹花!!
終盤で完全に主導権を握ったァァァ!!!」
この勝負、
まだ数コーナー残っている。
だが――
流れは、 確実に花のものになりつつあった。
若林「さああああ!!!
最終ストレートだァァァ!!!
ゴールはすぐそこォォォ!!!!」
先頭4台が一斉にアクセルを踏み抜く。
エンジン音が重なり、
朝焼けの空気が震える。
高槻「まだだ……
まだ終わらねぇ……!」
サテラ「……いいね。
ここまで来たなら、全部出そうか」
その背後――
相川「今だ……!」
白いR35 NISMOが、
わずかにラインを外へ。
若林「動いたァァァ!!!
相川律!!
4位から一気に仕掛けたァァァ!!!」
ブーストが一段、二段と乗る。
相川「この直線……
俺のRのためにある……!」
スピードが伸びる。
明らかに、1台だけ加速の質が違う。
カナタ「……ッ!?
相川さん、速すぎる……!」
赤い戦闘機が必死に食らいつく。
だが――
相川「置いていく……!」
若林「相川が並んだァァァ!!
そして前に出るゥゥゥ!!!
4位から――3位へ!!!
さらに……まだ行く気だァァァ!!!」
高槻「チッ……
最後に一番厄介なのが来やがった……」
サテラ「ふふ……
やっぱり来たね、相川くん」
4台、横一線。
ゴールラインが視界に入る。
若林「残り数百メートル!!!
勝つのは誰だァァァ!!!
芦ノ湖スカイライン――
決着の瞬間が迫るゥゥゥ!!!!!」
その後方では――
ギュオオオオオ……!!
黒いR35が、
まるで影のように加速する。
若林「後方だァァァ!!!
クレアのR35!!
ブラックホールのような伸びィィィ!!!」
ムーンストーンのカマロZL1。
佐藤大河のコルベットC8。
2台が並ぶその外側から――
クレア「ほれ……
まとめて、飲み込んでやるのじゃ☆」
スリップストリームが歪む。
空気が、 路面が、
引き寄せられる。
佐藤「なッ……!?
引っ張られる……!」
ムーンストーン「くっ…… この感覚……!」
次の瞬間――
若林「抜いたァァァ!!!
クレアが2台まとめてオーバーテイク!!!
C8とカマロが――
R35に屈したァァァ!!!」
ブラックアイスバーンを物ともせず、
R35が前へ。
佐藤「……チッ……
あの35……ただもんじゃねぇ……」
ムーンストーン「完全に……
飲まれたな……」
クレア「ふふ……
まだ終わりではないのじゃ☆」
その背中は、
なおも前を追い続けていた。
現在のランキング(最終ラップ終盤)
1位 高槻健永 ダッジ・バイパー
2位 サテラ ランサーEVO7MR
3位 相川律 GT-R R35 NISMO
4位 腹切カナタ トヨタ86(赤い戦闘機)
5位 山吹花 WRX STI
6位 柳津雄介 BMW M4 DTM
7位 高橋勇太 NSX NC1
8位 クレア GT-R R35
9位 佐藤大河 コルベットC8
10位 ムーンストーン カマロZL1
11位 陽太 ロードスターND
12位 伊藤翔太 スイフトスポーツ
13位 古田のりあき BMWZ4
14位 天羽シオン GRスープラ
若林「さあああ!!!!駅伝ストレートを4台がフルスロットルで駆け抜けるゥゥゥ!!!!」
「バイパー!エボ7!R35ニスモ!赤い戦闘機トヨタ86!!!!
4台が一直線だァァァ!!!!」
高槻「ここからは……譲らねぇ……!」
「赤いドラゴンはな、最後だけ全部持ってくんだよ……!」
サテラ「まだだよ……!ボクのエボ7MRは、ここからが本番なんだから……!」
相川「前だけ見ろ……!
高槻だけじゃない、サテラもカナタもまとめて……ここで抜き去る!!」
カナタ「くそ……!
あと少しで届く……!ここまで来たんだ、最後まであがくだけあがる!!」
若林「4台がストレート終端のブレーキングポイントへ!!
誰も引かない!!!!ブレーキか!?アクセルか!?どっちだァァァ!!!」
高槻「ビビってブレーキ踏んだやつから負けだ……!」
サテラ「だったら……踏みっぱなしで行こうか、ね……?」
相川「ここで踏めないやつは、芦ノ湖に残れねぇ……!!」
カナタ「俺の86……!最後くらい、ハイパワーどもを睨み返してみせろッ!!」
ギャアアアアアアアッ!!!
4台同時にブレーキランプが赤く光り、路面のブラックアイスバーンと
まだ薄く残る雪煙が一気に巻き上がる。
若林「ブレーキング勝負ゥゥゥゥ!!!!」
「イン側にサテラのエボ7と相川のR35ニスモ!!!そのすぐ横にバイパーと赤い戦闘機ィィィ!!!!」
ハンドルを切るタイミングは、ほんの一瞬の差。
けれど、その一瞬が勝負を決めようとしていた。
高槻「インに寄せてきやがるか……!なら、アウトから被せるだけだ!!」
サテラ「来るよね……分かってたよ……でも、引かないからね……!」
相川「そこだァァァ!!!」
「高槻とサテラのスキマ……!
このニスモの鼻先ねじ込める!!」
カナタ「マジかよ……!
2台の間に突っ込む気かよ相川さん……!!」
若林「R35ニスモがァァァ!!
バイパーとEVO7のイン側のスキマにフロントをねじ込むッ!!!
3ワイド状態から、さらに赤い戦闘機が後ろから押し上げるゥゥゥ!!!」
相川「ここしかねぇんだよ……!
伊藤もカナタも……後輩たちに胸張れるレースってのはなァァァ!!!」
サテラ「くっ……!
このR……!やっぱり今日の相川くん、いつもより本気なんだよ……!!」
高槻「おもしれぇ……!
だったらその本気ごとまとめて捻じ伏せてやるよォォ!!」
カナタ「だったら、俺はその本気の列車の一番後ろから……全部見届けてやる……!
最後まで、誰一人として見逃さない……!!」
4台がほとんど等間隔のまま、最後の右コーナーへと雪煙を引きながら飛び込んでいく。
若林「さあああ!!!
最終コーナーだァァァァ!!!!!
誰がインを制する!? 誰が立ち上がりで前に出る!!??」
その少し後方。
5位グループも、同じコーナーへ向けてフルスロットルで突っ込んでいく。
柳津「前の4台もやべぇけど……
こっちはこっちで修羅場ってやつだな……!」
高橋「おもろいじゃねぇかァァ!!
終盤になってもまだオーバーテイク見せてくんのかよスバルブルー!!」
花「アンタたちに遠慮なんてしないからね……!
ここから先は、誰だって噛みついてく……!!」
ムーンストーン「こっちも忘れないでほしいデスね〜……☆
黒いZL1も、まだまだ遊び足りないデスよ?」
クレア「わらわのブラックホールも、まだ腹八分目なのじゃ〜☆」
若林「先頭4台に続いて、中団5台も最終局面へとなだれ込んでいく!!!
さあ!!!芦ノ湖スカイライン決着の瞬間は、どんな結末を迎えるのかァァァ!!??」




