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唯一無双の現代ダンジョン  作者: 歌歌犬犬
第二章 宝物殿
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第十一話 開門



「さて。それじゃあ私はそろそろ戻るけれど、約束した通り理事には話を通しておくから。あなたたちは今からでもダンジョンデートしてきたら? どうせその男はもう欲望を抑えられないんでしょうし」

「言い方!」



 アイリスの二人との話し合いが一区切りついた。

 これから先俺は二人とパーティーを組んでダンジョンを探索することになるわけだ。

 攻略と言ってもいいが、要は未開拓の階層を探索したいという意らしいのでまぁ探索と呼び方を統一してもいいだろう。


 詳しい事情は聞いてない。

 けど俺の目的とも並行できそうで、飛鳥お嬢様の助力もあって舞台はここ学園占有ダンジョンというのもよかった。

 ソロからパーティーへ。

 アイリスの力が加わるなら、これからの探索はうんと楽になる。

 俺もやる気が出るってものだ。


「しかし意外な展開だな……」


 女の子同士、飛鳥お嬢様と別れの挨拶をするアリスとイリスを改めて見て思う。


 まさか初のパーティーが遥か高みの才覚を持つという巷で有名な冒険者たちとは、人生なにがどうなったらこうなるのか今でもわからない。

 パーティーを組むこと自体必要だとは思っていたし、この状況に不満なんて微塵もないけどさ、流石にここまで最上のパーティーが組めるなんて予想できないって。


 これが嬉しい誤算という奴か……。

 本当にとても嬉しい限りだよ二人とも……。

 だからこそ俺は、二人を前にこれ以上欲望を抑えられないんだ……!


「アリス、イリス、聞いてくれ。俺もう……」

「あら……。わかっていますよ一ノ瀬さん。いえ、これからはアイスさんと呼びますね。アイスさんはもう我慢できなくなっちゃったんですよね? いいですよ、行きましょう……」

「アイスの考えてることなんて手に取るようにわかるさ。巷で有名なあたしたちを目の前にして、自分の仲間にできて……我慢できないんだろ? いいぜ、準備はできてる……」

「二人とも……!」


 大事な話をしたすぐ後だというのに、まだ仲間になって少しの時間しか経っていないというのに、いきなりこんなことお願いするのもどうかと思った。

 でも我慢できないんだ……!

 アリスとイリスも俺の欲望を受け入れるための準備は完了しているというし。

 ならもうこれ以上我慢なんて……!


 二人の身体を見る。

 確かにもう、準備は整っている。

 全体的に黒を基調にした女性らしさのでる装備……黒と赤の二色髪と組み合わさってとても美しい。

 更にはなんとそれを全国に配信するための魔道具まで持っている。

 そういうのは初めてだけど、二人はそれがしたいんだろう、問題ない。


 歩いて二人へと近づき、その手を取った。


「それじゃあ始めようか、アリス、イリス……ダンジョン探索を!」

「ええ!」

「おう!」

「はいはい茶番ご苦労様。それじゃ私帰るから」


 俺たちがくだらない茶番劇を繰り広げている間律儀に待っていてくれたらしい飛鳥お嬢様。

 俺たちは手を振って見送った。


 まさかあのお嬢様に限って変な勘違いを起こすこともなかったね。



「……さて。ここからは冒険者だな」


 面会という用事もそれの見届け人も去っていった今、ここにいるのは三人ともただの冒険者。

 心を切り替える。


「早速ですがアイスさん、配信をしてもよろしいですか? パーティー結成の報告と……言いにくいのですが、私たちの生活費を稼ぎたいのです」

「孤児院のガキ共にも飯食わしたくてな……結構ギリギリなんだ。ダメか?」

「昨日聞いたやつだな。構わないぞ? 立派なことだろ。俺はここでダンジョンに潜れればそれでいいし、仲間のそういう事情を否定する理由もない」

「ありがとうございますアイスさん」

「助かる」


 俺の答えを聞いて配信の準備に取り掛かるアリスとイリス。

 律儀だ。

 けどそうか……二人はもう自分たちの生活費を自分たちで稼いでいるのか。

 聞いたところ二人とも俺と同い年らしいのに、こういうところでお姉さん感が出るから凄い。

 俺もこれまでの探索で稼いだお金、もっと和菓子に変えて世話になった人たちにぶん投げるか……。


 父母。

 チョコ。

 奈落さんに辰巳教官……は、ぶん投げるには勇気がいるな。

 瑠璃桜で予行練習するか……はん……。


 手伝えることもないと二人が持参の魔道具を起動しているのを待ちつつ、指を折って相手を数える。

 アリスたちの準備はそう経たず完了した。


「それでは配信を始めます。と、その前にアイスさんの立ち位置の希望だけ教えて頂けますか?」

「立ち位置?」

「視聴者と積極的に交流するのか、配信に関してはあたしたちに一任するのか、だな。まぁ好きなようにしてくれて構わないんだが、希望によってあたしらの言動も変わるから」

「なるほどな。まぁアイリスの配信だ、野郎の俺は背景でいいだろ。積極介入はしない方向で頼む」

「了解です」


 確認を終えアリスたちは作業に戻る。

 今更だが野郎が映っていいのか?

 これがメグルぽんの下種ナーたちなら大騒ぎするんだろうが……アイリスの視聴者だしな。


 きっと大丈夫なんだろうとアリスとイリスを心の中で応援しながら、それでも俺は二人から若干離れた後方に位置どった。

 俺は背景。


 兜越しに二人が配信魔道具へ向け喋り出したのを確認する。

 どうやら配信が始まったらしい。


 ……どうしても気になる俺は手持ちの端末で反応を見てみることにする。

 いやこれで炎上でもしてたら申し訳なさ過ぎる……。



〈コメント〉

:優良物件ゲットだな。よくやった、ダンジョン攻略が捗るぞ

:いずれうちに迎えたいとは思っていたが、冒険者のダンジョンに関する判断に同じ冒険者として文句はいえない。むしろいい判断だと思う

:噂の宿敵さんがアイリスとパーティーか。これは胸熱展開だな

:ていうかあの後ろの白銀の人型が宿敵さんなの? もう人間やめてない?(笑)

:あの子を逃がしちゃだめよ? レベル一であの実力は代えなんて効かないんだからね

:俺は宿敵合わせてこれからも応援してるぞ!

:宿敵たんの声聞きたいお……(´・ω・`)

:白銀の流星は白銀の人型へ。謎がキャパ超えたんだが?

:(`・ω・´)b



 ……心配に反し意外と好感触?

 いや中には俺に関する声もあるけど、全然健全だ。

 やっぱり視聴者としての在り方が下種ナーとは違うんだな……見習ってほしい。

 けどだからこそ吉沢とかいう男にはアイリスの配信は合わないかもしれない。

 あいつ下種ナーだから。

 ここに来たら浮いてしまうよ……。


「……まぁ、報告はするか」


 形としてはアイリスの配信に背景で映ってるだけだし、俺が報告するのも変な話かもしれないけど。

 それでもいつだがの時に配信をって吉沢と話したのを覚えてる。

 見るも見ないも奴の自由だが、伝えるくらいはしておこう。


 そうこう考えているうちに冒頭の挨拶やらは終わり、アリスたちが歩み寄って来た。

 片手を上げられたのでこっちも無言で返しておく。


「お待たせしました宿敵さん。まずは第三階層でしたね、行きましょう」

「宿敵の守護者狩り、尋常ならざる蛮行だな。クク」


 出発の準備完了を知らせる二人だが……なんだ、その呼び方?

 いやまぁ、素性を隠してくれる配慮だとは思うんだが。

 配信者も大変だな、と思いました。

 まる。


 そうして始まった第三階層守護者狩り。


 視聴者がコメントで無謀だ狂ってるだと声があがる中それは実行され……。



 あっけなく終わった。



「はは、マジか……」

「これは私たちも立ち止まっていられませんねイリス……」


 第三階層の守護者が塵となって消えていく。

 硬さが売りの第三階層、その守護者もそれに漏れず俺にはいいカモだった。

 こうして一撃で終わるとこれまでの苦労が嘘のようだ。


「まぁ、一段落か」


 魔石やらドロップを拾いポーチにしまう。

 今回のドロップはアリスたちが使わないなら換金一択だ。


 これで四階層までの全守護者を討伐し終わった。

 掲げた目標は十階層までだが、これでも一定の評価にはなるはず。


 そんなことを思いながら俺は確認するようにこれまで獲得したメダルをすべて取り出した。


 第一階層守護者のメダル。

 第二階層守護者のメダル。

 第三階層守護者のメダル。

 第四階層守護者のメダル。


 普通手に入らないとされるこれらメダルを一階層から四階層まで制覇したというのは、我ながら凄いことじゃないかと思う。


 こうして四枚のメダルを眺めていると、目の前の景色が歪んでいくようだ。

 自分では気付かないが、もしや俺は涙ぐんでいるのか?

 いや流石にそこまでの感激は自覚できないんだが……。



 ──なんていう思考は、そこまでだった。



 突如ダンジョンに轟音が響き渡る。


 歪んでいたと思えた景色は、涙で説明がつかないほどその歪みを大きくする。


 いや歪みなんて言葉でも足りない、それは空間が捻じれるようにそこに()()()()()()()()()


 デカい。

 巨大だった。


「あ、アイスさん! この異常事態はマズイです! 一旦地上へ戻りましょう!」

「これはヤバいぞ、ダンジョン内でこんな事象は今まで確認されたことがない……危険度が未知数だ!」


 アリスたちの慌てる声が聞こえてくる。

 彼女たちの言っていることは至極最もで、本来俺も冒険者ならそうするべきだ。



 だが俺は──その場から動けなかった。



【第一階層から第四階層までのすべての守護者が討伐されました】

【討伐者が宝物守護像の一撃撃破に成功しています】

【おめでとうございます。開門の試練を突破しました】



 頭の中で、然して大きくもないのにそれしか意識できない声が聞こえてくる。


 その声が、俺の頭の中を滅茶苦茶に混乱させて動けない。


 それはまるで脳のキャパシティが肉体の操作を拒んでいるようで。



 ──俺はただ、それが完了するのを待つしかできなかったのだ。



【門の解錠が完了しました】

【宝物殿の入り口が開門します】



 未開の領域が口を開く。




 ──この日、世界はダンジョンの神秘……その欠片を見た──

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