42 風の行方(ゆくえ)
ともかくも
本編の第一部今回で終了です
さら、ふわ、さらら
風が心地よい
騒がしかったあの3日間を思い出せば
ここにいるのが不思議な気がする
見渡せば
遥かに見える山体の半分が崩壊した独立峰
あれが『聖山』というやつか
故地ファラスネス
お姉さまとわたしはタルクの遺髪の幾分かを携えて
お姉さま、そしてわたしのでもあるかもしれないが
因縁の地
ファラスネスを見晴るかす場所までやって来た
「遥とわたしなら、あと半日で『廃都』につくわね」
「とうとう来てしまいましたねぇ、お姉さま
で、タルクの遺髪はどこに?」
「このあたりの目立たない場所、それで『聖山』が見える場所がいいと思うの
遥はどうかしら?」
「タルクの師匠さんを埋めたって場所がわかれば
その横にって思いますけれど
わかりっこありませんし、『聖山』を見渡せる場所
はい、お姉さまの仰る場所がいいと思います」
「ええ、ではこのあたりで」
お姉さまとわたしは1本の大樹、そして大樹の脇にあった
ヒトの身体より大きい岩を見つけると
その脇に1mほどお姉さまの魔法で地面を掘り
タルクの遺髪を埋め、その岩を墓標代わりにすることにした
「・・・」
「・・・」
二人とも無言、そして軽く瞑目すると
もう振り返ることなく『廃都』を目指して歩き出す
結局
タルクが所有していた『コンソール』の在処は不明
起動されない限り所在は分からないのだという
ヘレネさんによれば『コンソール』の起動にはファラスネスびとの
遺伝子情報が必要
そもそもアレはファラスネスの血を引くものの身体を改造強化するアイテム
それを身に付ければ
わたしのようにある意味外見はヒトではあるが
人外の存在にしてしまうものなのだが
ホルセと呼ばれた男、そしてその一党は
『コンソール』をタルクの血肉に含まれる遺伝子情報を使って起動する気なのだろう
まさかこの世界には高度な遺伝子操作の方法やら
クローニングやらはあるはずもないから
魔法、それも禁呪の類を使って、「魔法的」にごまかす気なのではと
ここまではみなで推測できた
彼らの意図は不明だが
彼の分の『コンソール』は起動はできるとして
とりあえず、『コンソール』の複製は魔法でどうこうできるようなものではない
レーテさんにも伺ったが
モノの複製を行うような魔法がないことはないが
ファラスネスの高度な技術で作られたものを
外見はともかく
内部まで複製できるほど魔法は便利なものでないと仰る
そこで
引き続きヘレネさんに監視をしてもらうこととして
『聖鎧騎士』がその本体で運用できるものはともかくも
例の衛星兵器のような外付けの支援装備はすべてお姉さまの承認が必要と
ヘレネさんの管理下にあるものはすべて設定をし直してもらった
当面できることはほかにない
ならばどうしよう、それを考えたわたしたちだが
シーレ様のご意見もあり
わたしたちは一度この故地を見る
そう、リンデを旅立つ時
最初の目的地と定めたこの地へと旅立つことにしたのだった
「からくり娘、いずれあやつらがファラスネスの遺物を動かしたなら
その折にはわらわにも声をかけてたも
父を穢した者どもはわらわには仇敵
しかと礼をせねばならぬ
おのしにはわらわを呼ぶなどとは業腹であろうが
おのしには何より大事なセラや、姉さまのお為でもあろう
セラの為と思うて、その折には知らせてたも
むろん、シーレ姉さまを折々にお尋ねはするがのぅ」
「ふ、赤蛇様のご助勢など
セラ様にはご無用と申したいのはやまやまですが
珍しく姿勢が低い赤蛇様のご依頼
シーレ様、セラ様、宜しゅうございますか?」
「ぐぅぅ、黙っておれば赤蛇赤蛇と、このからくり娘・・・
いや、そうじゃな、すまぬ、そうしてたも」
「もちろんですよ、ねぇセラ?」
「はい、お母様
ヘレネ、レーテ様もカードをお持ち
連絡ができるのでしょ
必ずお声をかけてあげてね?」
「侯爵様がお渡しになってさえおらねば・・・
奥様、セラ様、そのようなお顔をされずとも
はいはい、承りました
レーテ様、ではその折にはご連絡を」
「うむ、宜しゅう頼む
では姉さま、セラ、それとハルカであったの
わらわはいちど父の遺骸を
今度こそヒトの手が届かぬ場所に返すとしよう
そしてすぐにこちらに戻るゆえ
姉さまのご安全は気にせずともよいぞ」
「はん、赤蛇の警護など無用
侯爵様とわたくしとで築き上げたこの屋の警護は万全でございますとも」
「はいはい、ヘレネそこらになさい
お友達が戻ってくれていつもよりうれしそうですよ?」
「ぐっ」
いやほんとにこのヒトっていうか
ヘレネさんの反応は面白すぎる
わざわざ、人間臭い反応をするようにプログラミングされているのだろうか?
いずれにせよ
わたしたちはファラスネスに
そしてレーテ様は故郷だか、どこだかは言われなかったが
ヒトの手が触れないという場所に帰られる
去り際に
今回の父君解放の礼、そう述べられて、父龍の遺骨の中から
まだ輝きを失っていない真紅の爪をわたしたちに渡された
これは暖炉の上のレーテ様の龍鱗同様
強い魔法の加護を持つ素材
貴重な武具の素材になるものだという
そして
もう一度シーレ様のお手を握ると、すたすたとお屋敷を出て行かれ
また忽然とその姿は消えうせた
レイチェル様とアスティナさんも
「いろいろありましたしね、わたくしたちも一度館に戻ります
といいますか
生涯追うはずの謎が、謎の方からヒミツを暴露しに来てしまいましたしねぇ
それも、世間に公表などできるはずもなくなりました
一度館で、この先のこと、考えたく思います
セラさん、ハルカさん
依頼の達成は確認しておきますから王都のギルドででも
ギルドカードに記入をしてくださいませね
依頼料も払い込んでおきますのでどこのギルドででもお受け取りください
いろいろかき回してしまいましたが
お二人にして頂いたこと忘れません
そして、どうかお友達でいてくださいね?」
いわれるまでもなかった
商都に戻られる二人を見送ると
王立図書館の裏側
そう、シーレ様の私的空間から一気に人数が減り
実家というべきこの屋に戻られたお姉さまはともかく
わたしはひどく所在ない思いがしたが
それを見逃すシーレ様ではなかったし
そして出立するまでの間
一見つんつん、でもこまごまと世話をしてくれたヘレネさん
ふたりとそして司書兼侍女さんたちに見送られ
とある日の早朝、わたしたちは王都を出立したのだった
ふわさらら
風がお姉さまの御髪を軽くなびかせて過ぎる
行く手には
そびえる『聖山』を背景に
かすかに人の手を思わせる石造建築めいたものが見えている
「お姉さま、『廃都』を見てそれからどうしましょうか?」
「そうねぇ、世界は広いのよね」
「はい、衛星地図なら小さいのに歩けばこんなに広いんですね」
「あちらの世界でも、こちらでも
わたしたちの見てきた世界は狭すぎだわね
うふふ、遥、リンデで言ったこと覚えているかしら?」
「はい、勿論ですお姉さま
いろいろ見に参りましょう」
「ええ、ふたりで、ね?」
さらら
二人を包んで風が過ぎてゆく
世界は広い
けれどふたり
お姉さまと一緒
ならば怖いものなど何もないのだから
第一部 了
なんとか一区切り
何も終わっていないじゃないか
わたくしもそういう気が致します
そこで
明日
蛇足を投稿させて頂きたいと思いますが
ここまでお読みいただいた皆様
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毀誉褒貶どんとこいです
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