40 紅 玉 の 女(ひと)
恋の涙か・・・(ry
ゆら、ゆら、ゆら
実像とかぶって見える、弱点というか
わたしたちが破壊すべき対象
思いのほか小さいというか
ピンポイントであれを破壊しきるにはどうするか
「遥、留めは任せていいかしら?」
「はいっ、お姉さま」
どちらの役割だとしてもわたしに否やがあろうはずはない
「さいわい、魔力は通るようね、だからわたしが大穴を空ける
きっとそれが向いているでしょう
遥の力で、それをやると、お声の主さんがいらいらされるかもしれないしね」
くすりとお姉さまのお声に笑みが通われた気がする
ふぃとわたしの背から余分な力が抜けるのがわかる
そう
これがわたしのお姉さま
それがわたしのお姉さま
どんな状況であろうとも
そう、かつて、といってもついふた月ほど前の話だが
あちらで、わたしと刃を交えたその時ですら
お姉さまが示されたのはゆるぎない覚悟、そして進むべき道
だからこそわたしは
自らの決意を選ぶことができたし
そう、あえてお姉さまのお胸にわたしの刃を向けることさえできた
もっとも、本気で挑めたとはいえ
お姉さまにわたしの刃が届くと
そんな未来を予想などできなかったのは事実だが
それでも、お姉さまのゆるぎない決意が
わたしに、本気の剣を振るわせてくださった
そして、その先に
わたしのあちらでの使命の達成はあったし
夢にも見なかった結果とはいえ
こうしてお姉さまと二人、並んで立てる「今」もあった
盲信とは違う
そう思いたいが、いや、そう確信しているが
わたしは、お姉さまの示される道を全力でお支えする、それまでだ
「初手はお願いっ」
「参りますっ」
すぃ
無造作に腐龍に接近
ほぼ自動的な反応だと思うが
腐龍が前足を振るう
ゆら
わたしは一撃の力をいなし
腐龍のふところに入り込むと
「はぁぁぁぁっ!」
気合い一閃
一瞬、身体を撓めると
全身を砲弾のように上方に打ち上げる
ごづり
気持ちよくない手ごたえとともに腐龍の長い首が上方に跳ね上がり
狙うべきターゲット
そう、先程、謎の声の主が示したコア?だかの
場所が収まる胸元が、がら空きとなった
それを見逃されるお姉さまではない
「『晴嵐』、『破岩』、『紅塵』、『黒曜』っ!」
お姉さまは四連撃で魔法剣を放たれる
しかもどうコントロールされたものか
四つの魔法剣の刃は飛ばされるスピードが異なっていて
同時に腐龍の胸元に命中
と見えたその瞬間
「『四祥相応』っ!」
先程までの四連撃で、くるぐるぐると回された愛刀を
更に背にすいと畳まれて
「『四祥相応、通れ、錦繍っ!」
お言葉に魔力を載せられたか
五連目の一撃に黄金のきらめきが載り
四連撃同時着弾で大きくひび割れた腐龍の胸に
ごぼり
腐肉が崩れ大きく裂けて
胸の奥にあると示されていた
黒々とした不快な光を放つ球体が露出する
「遥っ!」
無論、お言葉の前からわたしも動いていて
先程の四連撃、五連撃の間も腐龍の身体を足場に中空にいたのだが
そのお言葉がわたしに力をくれる
「『断罪』っ!」
抜き放っていた断罪剣を
刃としてでなく
必殺の突きとして黒い球体に突きこむ
そしてぐるり
異様な手ごたえを感じながら身体を旋回
その旋回力をたねにして
更に大きく身体を展張
断罪剣の出力をそこで切り
一気に外に向かって飛び出せば
おぉぉぉぉぉぉぉ
背後で何かが抜けた
しぼんだ
霧散した
その感覚が背に通い
地上に降り立ち
背後を見れば
がたがたがたと腐龍の骨が、腐肉が崩れてゆき
腐肉はどういう理屈かは知らないが光の塵となって消えてゆき
一部の巨大な骨と真紅に輝く一抱えほどもある魔石が残された
「ようした、ようした
さすがファラスネスびとの裔だけのことはある
というか、侯爵様のお手並みそのもの
まさか今生で再びみられるとは思わなんだ」
今度は実体のある声がして
気配も察知できなかったのだが
わたしたちより少し幼めの少女
ただびとにしか見えないが
真っ赤な瞳が印象的な少女が姿を現した
「おお、なのるが礼儀じゃな
わらわは『レーテ』、赤龍にして
うむ、そなたらが汚らわしき魔獄より解き放ってくれた
かつての赤龍王の娘じゃな」
へ?
龍なのこの子??
「おかしな顔をするでない
魔を極め、ヒトに変ずるなど
真なる龍であれば造作もない
真龍を見たことがないのか?
まぁ、昨今、ファラスネスびともわらわと言葉を交わしたものもないが・・・
む、そなた・・・」
レーテと名乗った龍を自称するその少女がお姉さまを一瞥し
ふんふんふんと匂いを嗅ぐようなしぐさをする
「妙じゃな、知ったものの匂いがする
や、匂いといっても、魔力の気配じゃからの、気にせずともよい
よいが・・・
まさか、そなた、いや、間違いない
セラじゃな?」
なんと、お姉さまを知っているのかこの龍さんは?
レーテさん?レーテ様?
いやなんといっていいのかは知らないが
わたしたちの困惑を置き去りに、とととっとお姉さまに近寄りその手を取ると
「セラ、久しぶりじゃな
おのしがおるということは、侯爵様もお戻りであろう
どこ、どこじゃ
どこにおられる
わらわのいとしいお方はどこにおられる
はよ、はよう、あわせてたも
いとしいお方にあわせてたも」
にこにこにこと訴えられるのだった
長崎のひと
古いお歌ですが
いい歌ですよね
どうやら完結は次にでき・・・るといいなぁ




