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36 深 層 真 相

説明回、その1

さら、きら、きら


森を思わせるお庭の木漏れ日が窓越しにシーレ様のお髪(ぐし」に映える


「ところで、セラ」

ひとしきり感動の再会を果たされたシーレ様


「はい、お母様、なんでしょう?」


「あなた、王籍に入る気はありますか?」


それはまたとんでもな球を抛(ほお)られる

シーレ様って大リーグとかでも通用するんじゃないかしら


「は?お母様

 わたくしが父に、はい侯爵に連れられてこちらを離れたのが

 わたくしには実感がございませんが1000年前とか

 遠い遠い昔の爵位が認められたところで

 侯爵家の娘どまりでしょう?


 お母様は王家のお血筋かもしれませんが

 わたくしがなんてありえないのでは?」


「うっふふふ

 そこに、いい人がいますねぇ

 レイチェルさん、あなたも巻きこんで差し上げますからね?

 ここまで探ってしまったんですもの

 覚悟は、うふ、おありよねぇ?」


「はい、その覚悟で生きてまいりました」


あぁ、レイチェル様、眼が燃えてるなぁ

野球アニメの対決ってところかしらん


「ではお話しましょうね

いいですか、セラ

 あなたの兄は侯爵家を継いだはいいが、早世した

 そのようになっていますよねぇ?」


「はぁそのように伺いました」


「けれど、早世したのは、わたしの兄

 世にいうところの王子様の方なのよね」


「は?」


かちんと固まるレイチェル様

対するわたしたちはいまいちピンとこない話


「うっふふ、王家の大ヒミツ

 ええ、当時はまだこの王国もあらかた大陸を治めたばかり

 そんな中、王家の血筋が絶えるとなったらどうなります?

 わたくしはもちろんおりましたが

 半ば世を捨て、ここにこもり始めたばかり

 いっそ再婚をなどと騒ぐ者もおりましたが

 まだ健在でした父、ええ初代統一王ですね

 父と相談をしまして

 

 ええ、王家を継いだのは、あなたの兄です

 なので、今この世で、一番王家の血筋を保持しているのはあなた

 ええ、セラ、あなたですよ?

 どうします?」


もう今更何を伺っても大したことに聞こえないが

それはわたしがあちらから来ているせいかもしれない

レイチェル様のお顔は蒼白になっている


「はい、お母様、お断り申し上げます

 今更、そのようなもの、などと申しますと不遜

 そんなそしりを免れませんでしょうが

 謹んでご遠慮申し上げます」


お姉さまはきっぱりお断りされる


「そうよねぇ、それでいいわ、陛下もご安心されるでしょう

 たださえ強力なファラスネスびとの血を強く引くあなたが

 女帝にでもなれば大陸統一も夢ではない

 なぁんてことを言いださなくってよかったわ」


シーレ様もお姉さまの反応を予期されていたか

それでもほっとされたご様子

少しほろ苦い笑みを浮かべるお姉さま


「つい最近といいますか

 昨夜、そういう『うわごと』をやたら口にする痴れものと

 斬り合ってきたばかりなのです」


「まぁ、随分楽しそうな人生なのね?」


「楽しいんでしょうか?自分でもよくわかりませんが

 その者は、ファラスネスを継ぐとか

 ええ、聖鎧騎士の姿になって見せて

 自分こそこの世を統べるにふさわしいなどと仰ったあげく

 ハルカに斬りつけられてあっけなく撃退されておりましたね」


「まぁハルカさん、さすが侯爵を返り討ちにしただけのことはあるのねぇ?」


「シーレ様、その事情はご説明しますので」


「そう、それはのちほど伺うとして、ハルカさん?

 あなた、ひょっとして?」


「はい、レイチェル様たちにもご説明しないといけませんので

 どうぞご覧下さい」


わたしは変身して見せる


「あぁ、ハルカさんあなたもファラスネスびとの末裔、そうなのですね?」


え、いまシーレ様はなんと??


「わ、わたし、両親の顔も知らないんです

 やしない親に、あぁ幸せに育ててもらいましたよ?

 ただ、まぁ侯爵様の配下の方といろいろあったようで

 わたしに、このベルトを残して、はい」


「それは、本当にごめんなさいね

 でも不思議、そんな騒ぎがあったなら

 わたくしの耳に入らないことは・・・やはり侯爵が言っておりましたけれど

 ハルカさんのいた・・・『世界』?

 セラが侯爵につれられていった・・・『世界』?

 それはやはり外国とかそういう場所でなく

 こことは時間の流れも、世界の成り立ちも別の場所

 それであっておりますか?」


『世界』かぁ

異世界とどこかの小説を読みなれていたりするわたしなどと違い

こちらの方にどういえばいいのかしら

けれど、シーレ様は、侯爵からでもお聞きになったか

かなりご理解がある気がする


「わたしにもたぶん、としか

 それで、侯爵様を儚くしましたとき

 侯爵様の最後のお力なのか、わたくしと、はい、お姉さまは

 そのお力なのか、魔法なのか、爆発なのか

 ものすごい光にさらされて、多分、そちらでは消えたのだと

 はい、消えるのだと 

 そう思ったのですが

 神様のような、としか言いようもないのですけれど

 ちょっと何と言っていいのかわからないものに助けられまして

 

 その神様だか何だかが

 お姉さまとこちらに二人で跳ばしてやろう

 この世のねじれをわたしたちが正した、その礼をしてやろう

 わたしたちがいた『世界』ではない別の『世界』に、と」


軽く頷かれたお姉さまも言葉を継がれる


「ええ、お母様、なので二人ともここは

 なんのゆかりもない世界と思っておりましたが

 ハルカのように変身するらしいものの噂

 ええ

 ファラスネスの聖鎧騎士の伝説を聞いたこと

 それと、ファラスネスという言葉はわたくしも聞き覚えはなかったのですが

 悲劇の王女、その名が王室の流布している教科書の類ですか

 あれに載っておりました

 その名も、シーレ

 

 はい父は、侯爵はわたくしが物心ついた時には

 生きてはおりましたけれど

 もう、ヒトとして物を語る存在ではなくなっておりました」


「ま、ぁ・・・」


あまりのことにシーレ様はお顔の前で組まれたお手を震わせる

確かにわたしは憎い敵として見たから、侯爵の姿は

たとえお姉さまの親だとしても倒すべき異形

むしろそう思える姿だったが

シーレ様には詳しくご説明なんてしないに限る


「ですが、父の直属の部下、はい、4人おりましたが

 彼らがわたくしを育ててくれ、その地で

 ただびとたちに秘かにまぎれて学び舎にも

 はい、通わせてくれました

 それと、この剣、父の剣ですねこれは?」


「ええ、それを見てわたしも確信をしましたよ?」


「これと今の装備を私の使うものとして与えてくれ

 そして鍛えてくれたのも彼らなら

 父を、ええ侯爵とは呼んでおりませんでしたが

 わたくしを父の子、自分たちが頂くべきものがわたしなのだ

 そしてわたくしの母の名がシーレ様とそのように教えてくれました

 わけあって、共に暮らすことはできないが

 美しく優しい方、きっとわたくしを愛してくださるそんな方

 そうと教えてくれましたよ?」


「それは、侯爵の部下、『レザ』たちですか?」


「はい、『レザ』がわたしの剣の師匠です」


あ~四天王筆頭のおっちゃんか

わたしの壁だったよなぁ、一番戦ったんじゃないだろうか

最後の決戦、お姉さまの前に斬り合ったのもレザのおっちゃんだったな


「みな侯爵とともに、ですね?」


うん、これは隠す必要もない、おもえばおっちゃんたちにも

事情はあった、そういう事だろうが

わたしはわたしで守るべきものも許せないこともあったのだから


「はい、わたくしが倒しました」


「そうですか、ハルカさん、本当に因果なことをさせてしまいましたね?」


「もう、おっしゃらないでください、シーレ様、ううん、お母様」


「まぁ、そうでしたね、はい、セラもあなたもわたしの娘

 1000歳すぎて娘が増えるとは思いませんでしたが

 ふふ、ハルカさん

 あなたはあなたのすべきことをした


 セラがあなたの助けをしたのもなんとなくわかる気がします

 レザたちのことです

 きっとセラを、彼らなりにまっすぐに育てたのでしょう

 でもきっと、それだからこそ

 二人苦しかったわね?


 それとね、侯爵が何のためにそちらの『世界?』にいったのか

 それはわたくしも理解はできていないのですけれど

 先に行ったもの、侯爵たちを置いて行ったファラスネスの王族を追うために

 いちど、別のところに行かねばならない

 侯爵はそういっていたと思います


 ええ、それで、『ねじれた』のか

 先に行った方々がそもそも『ねじった』のか

 そこらもうかがっておりませんが


 セラ、ハルカさん?

 世界のねじれをただす、ただした

 それであなたたちはこちらに飛ばしてもらった


 なら、侯爵もそうなるかもしれないもの

 そのうちひょっこり戻ってくるかもしれませんね?


 うふ、わたしもう1000年ほど待とうかと

 そういう気力がわきましたよ?」


「それはすごいです」


たしかにそれはすっごい純愛に聞こえる

いまでも、いずれにせよわたしは倒したことを後悔はしていないが

愛されてるなぁあのおっさん、けっふん、侯爵様はさ


「まぁ、どれだけ、この『呪い』が続くのかは知りません

 それにこの屋敷から一歩も出られないのですけれどね


 お帰りをお待ちします

 連れていけないとおっしゃるのなら

 骨に、塵になっても待ちますよとそういいましたら

 それで再会できるかどうかはわからぬがと


 侯爵が不老、そしてほぼ不死という呪いを

 この侯爵の屋敷を出ない限りと

 そんな呪いをこの身にかけてくださいました


 方法は私も存じません

 魔法なのか、ファラスネスびとの力なのか


 そして、呪いの救いとして

 この屋を出れば、この身の『呪い』は力を失い

 普通にわたくしの身体の時が流れる

 そのようにしてくれたのです


 おかげでこうしてセラに会えましたから

 これを機会に

 ここを出ようかと思いましたけれど

 ふふ、往生際が悪い女みたいよ?

 そこまで聞いてしまったし

 そのうち宿六が戻ってくるかもしれないものね?」


わたしたちにこんなことが起こったのだから

それはあり得ることかもしれない


「はい、話がそれましたね

 で、ハルカさん

 聖鎧騎士のことですけれど

 それはファラスネスの民が星を渡るときに使ったものだとか」


「星を?」

「わたる?」


思わずお姉さまと顔を見合わせてしまった

異世界の上に、異星なのか

それは随分とお腹いっぱいな話だ


「そもそもファラスネスびとはここ、この大陸というより

 この大地には星を超えてきたと伺いました

 侯爵はこの大地のある場所を

 『星』

 という呼び方で教えてくれました


 星と星の間の海なのでしょうかしら?

 その星々の間にひろがる海はここよりも苛酷


 普通の生き物では自由に動く、生きることすらままならない

 そこで自在に、力強く動けるようにするための鎧

 それが聖鎧


 ゆえにファラスネスびとの血を引かないものはそもそも

 聖鎧を纏うことなどできないと

 ただし、それを身に付けたものはただビトではもういられなくなると」


シーレ様は辛そうに目を伏せられるのだが


「はい、それは分かっています、それを知ったうえでこれを手にいたしました」


「ハルカさん」


シーレ様が再びわたしを抱きしめる


「もうお詫びはしてはいけないのでしたね

 でもあなたは強いのね

 セラをきっと守り抜いてくれるでしょう

 セラ、いい人を見つけたわね?」


「はい、お母様」


いやぁ、そういわれると照れる


「さて

 ハルカさんの聖鎧がどういう理由でハルカさんのお手にあるのか

 それは私にはわかりませんが

 聖鎧騎士がこの大陸にまだあること

 それは侯爵が父とこの世界を定めたことに一因があるのです


 父と侯爵は

 侯爵がいずれこの地を去ることまで知ったうえで

 この世界、ええ、大陸のありようを決めました


 大陸を一つにはしない

 すれば、早晩、この王国の廃退に繋がる

 それはいけない、争いはなくなるほうがいいけれど

 それなりに刺激があって、王国も身を正し続けられる方がよいと


 なので、聖鎧の力を使える血筋の者を

 この地に残したといいますか

 その者たちと話し合ったうえで、その者達はこちらに残ったと


 何かの折に、この世が乱れきり

 立ち行かなくなったなら、再び世をまとめる力になればよいと

 なので、レイチェルさん、あなたも記録で読んだのでは?

 ファラスネスが絶えた後も、聖鎧騎士としか思えぬものがこの世に現れて

 人を救ったとか、そういう噂をね」


「はい、全部がそうなのかはそれこそ、聖鎧騎士の方にでも

 伺いませんとわからないのでしょうけど

 わたくしが調べた記録では7回は複数の者が同時に目撃しています

 単独で見たという話なら、もう掃いて捨てるほどございます」


「さすがによく調べていますね、王室経由で伝わった情報でも

 そのくらいです

 あぁ、レイチェルさん

 ついでに例の禁書の閲覧解禁もしてあげましょうね

 例の禁書2冊、あちらが匂わせているのは

 王家交替説

 ええ、先ほどの血筋の入れ替わりの噂を述べているのですよ

 それが禁書の原因

 もう真相を知ってしまったあなたには今更よね?」


あーあ、おかわいそうに

さすがのレイチェル様もかなりおこたえのご様子

追いかけていたヒミツをこうして全部暴露されると

わくわくを通り越してこういうお顔になるのかぁ


とはいえ、うん、お顔を上げられたね

アスティナさんもレイチェル様の手を、うふ握っているし

わたしたちだって、思わぬことにはなってしまったけれど

ここで、うん、ここで生きていくのだから

会話だけって読んで頂く方にもきついですね、書くのもきついとわかりました

次回、も少しご説明したら、きっと世間に出ていくものと・・・


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