35 王 家 公 認 ?
やぁめでたい
する、すい、すとり
音も立てずに司書さんたちと言うか侍女さんたちが
香り高いお茶を出して下さる
いや、その前に色々あった
今回は書棚の扉からではなかったが
例のお部屋に通されたところから
レイチェル様がもう不審者同然の落ち着かなさ
対照的に、にこやかにお迎え下さるシーレ様
「シーレ様、昨日ご拝謁を賜りましたばかりですのに
連日おめもじを願う非礼、どうかお許し下さいませ
本日は、昨日下さいましたご助言の御礼と
ご下命を果たせましたご報告に
ゼクストレーメ家のご息女と、かくは参上致しました」
「セラさん、略式で参りましょ
そもそも、王族扱いを受けて良いのか
わたし自身が良くわからないほどの身の上なのよ?」
「左様でしたら
では、庶民の身分で貴族籍の方をご紹介など
烏滸がましいのですが
あらためまして
『レイチェル・レ・ゼクストレーメ』様をお連れ致しました」
「シーレ様
初めて御意を得ます
ゼクストレーメのレイチェルでございます
そ、その・・・
はじめて世間に出た嬉しさと、少々の縁故、それと・・・
はい、お金の力というものに舞い上がっておりました
陛下、そして皆様
はい、なによりシーレ様にしてしまいました非礼の数々
謝って済むことではないと
この様な機会を友人に、
はいこの年になりようやくできた友人二人に作ってもらい
ようやくおめもじがかない
幸いと
はいそのように存じあげます
お許しは、簡単には頂けないものと思いますが
まずはお詫びを入れさせて頂ける機会
はい、この機会を友人を介してお与えくださったこと
御礼申し上げます」
深く深く首を垂れるレイチェル様
ほう、レイチェル様にしてはおとなしい
ここはやはり貴族のお嬢様、そういうところかしらん
「うふ、構いませんよ
陛下にはごめんなさいを早々にしに行った
ちゃんと聞こえておりますよ
ここに来るのは3年ほどかかりましたけれど、ねぇ?」
こっわ、シーレ様、こっわ
かくかくかくとレイチェルさんが震えているのもわかる気がするが
さてどうするのかしらん?
「ご、ごめんなさいっシーレ様
何でもできる気になっておりました
お恥ずかしいですっ」
おおぶっちゃけたか、対するシーレ様は?
「はい、わかりました
今度王族がらみのおいたをするときは
もっと上手にするのですよ?
ね?
そのときには、うふふ、わたしも一枚かませるように」
シーレ様のかんばせに春の日差しのような笑顔が射す
っていうかそのお顔でそういう悪戯っぽいことを言うんだ
「は、はいっ、是非に」
「まぁ、またやらかす気なのね?」
「え、ええ、え、え、え」
「くすす、さ、お詫びとやらはこれでもうおしまいにしましょう
はい、セラさん、お話があるって可愛いお顔に書いてありますよ?
ではさきにお茶を運ばせて、それから伺いましょうね?」
シーレ様は卓上の鈴を振られるが
音はしない
が
どういう仕掛けがあるのか
するると司書さんだが侍女さんだかが現れて皆にお茶を用意してくださり
そしてシーレ様が人払いをされ
そう、いよいよ
波乱の会談が始まった
一口、ここのお茶も素晴らしく美味しいのだが
その香りを楽しまれたというより
その香りで何か力を得た
お姉さまはそんなふうに
「では、シーレ様
いろいろと伺いたくはあるのですが
これはぜひ最初に」
「はい、なにかしら」
「シーレ様
『お母様』と、そうお呼びしても構わないでしょうか?」
え、え、え、え、え?
わたしもそうだが
レイチェル様、アスティナさんもあまりのことに硬直している
「はい、セラ
よくわたしの元に帰ってきてくれましたね?
1000年ぶり、になるのねぇ
さ、いらっしゃい
母にだっこはいやかしら?」
無言
お姉さまは
少しだけためらいがちに
でも駆けるように近づくと
立ち上がられ
腕を広げられたシーレ様のかいなに抱きとめられて
はらはら涙を流される
あー
お姉さまのお父様には向こうであった
というかわたしが始末しちゃったけれど
お母様にはたしかにあっちではあってなかったし
それにお姉さまもお母様の話をされたことはなかったと思う
っていうか
え、1000年???
ということは・・・
「よしよし、セラ、苦労をきっとしたのねぇ?
初対面の時から、というか
あなたが、図書館でボックスの中身を出しているときから
もう、あなたが娘とわかっていましたよ?
でもねぇ
冒険者になって帰ってくるとは夢にも思っていませんでしたよ?
ところで、アレはどうしました?
というか、セラが冒険者になってるっていうあたりで
ははぁ、のたれじんだか、あの宿六」
うっわ、先日もそうだけれど
あのお顔で、それに王族籍?そんなお方のお口から
お生な言葉が出てくると破壊力が強すぎていけない
けど、どうしよう、わたしが言うべきだよねぇ
「ふむ、ハルカさん?」
「は、はいっ」
「おおかた、あなたがセラを貰いに行って
『娘はやらん!セラが欲しくばこの俺を倒してみろ!』
なぁんてことになって
ばっさり返り討ち
見事セラをお嫁にした、そこらであっている?」
「えーと、はい、だいたいあってます」
「まぁ、それなら仕方ないわね
うん、それなら侯爵も満足でしょう
男親の本懐ってやつじゃないかしら
仕方ないわね?」
「お、おかあさまっ、そ、それには事情がっ」
「ええ、あるんでしょ?
細目は後で聞けばいいわ
ハルカさん
先日も言いましたが
セラを実力でお嫁にもらったのですから
セラのこと、お願いしますよ?」
「は、はいっ、っていいますか
お、『お姉さま』にはいつも助けて頂いてるっていうか
わたしよりお強いのでぇ
で、でもでも、頑張りますっ
お姉さまを泣かせることは致しませんっ」
「あらあら、御当節はそういうものなのかしら?
1000年もたつといろいろあるのね
うふ、はい、それでいいわよ
ハルカさんこちらにいらっしゃい?」
呼ばれてお二人に近寄るわたし
「侯爵がきっと迷惑をかけたのでしょう
ごめんなさいね?
あなたもきっと支払った何かがあるのでしょう?
替わりにはならないと思うけれど
ええ、わたしがセラの母
そして侯爵を倒してまで
セラを、うふ、『お姉さま』か何かは知らないけれど
ええ、セラをお嫁にしたのなら
ええ、セラと契りを結んだのなら
わたしもあなたの母
そう思ってね?」
ふわり
回されたかいなに優しいお力がこもる
わたしたちは
ええ、わたしとお姉さまは
シーレ様の腕に抱かれて
ふたりはらはらと、ぼろぼろぼろと涙を流していた
「ちちは、ちちは、ゆるさんぞぉぉぉ」(がっくり)




