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34 惨 状  参 上  同 乗

散らかしたらお片付け

どよ、どよ、どよ


騎馬の一団がレイチェル様のお屋敷前に現れる


「街道巡検隊 『テオ・デル・デュプネ』出役しゅつやくである!

 商都を騒がす悪党ども、ばくにつくがよい

 逆らう者あらば、構わぬ、斬りすてぃ!」


馬上、テオ様が高らかに呼ばわれる

どうやら、わたしたちの出発後、巡視か何かにかこつけて

来てくださったものらしい


それはありがたい、ありがたいのだが


「あー、テオ様、懼れながら申し上げます」

「おぉ、リンデの腕利きではないか

 いかがいたした、申すがよかろう」


うん、わたしたちと示し合せてとか言わないあたりが

さすがの呼吸、呼吸なんだけどなぁ


「はぁ、そのですねぇ、皆そこらにのびておりますので

 お手数ですが、お持ち帰りを」

「これ、ヒトの出番とか、見せ場とか

 少し考えてはどうじゃ?」

「あー、ええっと、そうですよね

 どうしましょうねぇ

 あ、ちょうどいいところに、お館様がお見えに」

「むむっ?」


「レイチェルー!!、レイチェルは無事かぁ!!」


数名の手勢、そして、冒険者と思われる10名ほどの一団を率いて

お館様と先ほど私が大声で叫んでいたお方

そう、世界で二番目の御金持ちことゼクストレーメご当主さま

まさかわたしの声が聞こえたわけでもあるまいが

レイチェル様のお父様までやってきて

その場は出撃前の駐屯地か何かのような状況になる


どうしたものかと顔を見合わせるわたしたち、そしてレイチェル様主従

しかし、やはりこういう場を収めるにはふさわしいお方がひとり


「これはこれは、巡検隊の方々、それにお館様までお見え頂けますとは

 巡検隊の方々にはさすがの御働き

 何を血迷ったか襲撃してまいりました野盗どもに

 家人一同震え上がっておりますところをお救い頂き

 まこと、お礼の申し上げようもございません

 それにお館様には、ギルドの冒険者の加勢までお手配頂き

 たまたま、ええ、たまたまでございましょうなぁ

 庭先にまろび出ましたあの大蛇

 ふむ、グレーターサーペントでございましょうかな?

 野盗どもと一緒に暴れられでもしましたら手の付けられぬところ

 さすがギルドの腕利きの方々

 見事ご討伐いただけますとはまこと恐れ入りましてございます」


さらりステファンさんが言い切ってしまう


「「おい!」」


ハモるテオ様とお館様


「は、い?」


「「それで終わらせようっていうのか??」」


おふたり素晴らしいハモりではあるがその共演にはお気づきでないご様子


「おや、違っておりますか?

 大蛇が暴れまして玄関ホールが

 ふむ、少々崩れておりますが

 こちらには死人はおろか、怪我人の一人さえございませんでした

 これも皆様のご活躍のたまもの


 後ほどお嬢様も御礼に参上させて頂くものと存じ上げます

 当家で出来ますことはあまりございませんでしょうが

 応分の御礼は後ほど、後ほどということで」


「「きっちり聞かせてもらうからな!!」」


「はて、なんのことやら存じ上げませんが

 当家でお答えできますことなら後ほど存分に御聞き取りを」


あーレイチェル様ったらにっこにこしていらっしゃる

お手の方はかくかくふるえている気もするが

セカイのヒミツを暴こうかって、おヒトだものね

これくらいの修羅場は覚悟の上だろう

それに、あそこで出張ってきたんだもの

ちょっとくらいは絞られたって、うん同情はしない


実際ステファンさんの話の通りで

怪我人の一人もださずに済んだ

残念だったのは

執事部屋に大穴が明いたということで

レイチェル様がしめあげ、こほん、ご訓戒をされる場所が

無くなってしまったくらいだろうか

お屋敷の玄関ホールとともに再建が待たれるところではある


とはいえ、大事だったし、いろいろいろと危なかった

わたしたちの方からもお話しないといけなくなってはいるし

状況の分析もしたいところ


テオ様たちがそこらに転がる野盗だか冒険者くずれだかを捕縛していかれ

お館様は冒険者の方々に討伐報酬は後ほどギルドでといい残し

マジックボックスの容量が人並み外れて大きいという方に

例の大蛇を格納させ手勢の方々とおかえりになる


そして

その場ががらんとしたころに

しらじらしらと夜が明け染めてきた


眠りたい

いろいろあって眠りたいのだけれど


「さてレイチェル様

 一つ忘れておりました

 ぜひこの場でご報告、といいますか

 お見せしたいものが」


そこで切り出されたのがお姉さま


「え、なんですセラさん、昨夜からいろいろございました

 今更たいていの物では、うふふ驚きません

 何事でしょう?」


「どうぞご見分を」


にっこり笑うお姉さま

そうお姉さまが懐中から取り出されたものは

琥珀に輝く例のあのカード


「ここここれはっ、王立図書館の無制限閲覧許可証

 せ、せセラさん、なぜこれをっ」

「あぁそういうものなのですね?

 シーレ様、ええ

 図書館長がこちらをわたくしたちにと

 ご下賜くださいました」

「あぁぁぁぁぁぁあんのふるぎつねぇぇぇぇ

 なんで、なんでなんでぇ

 しょ初対面のセラさんにぃ

 あぁぁぁぁぁぁ、くっくく、くやしぃぃぃぃぃ」


ふむ、これでシーレ様のご下命はクリアとそういう事だろう

地団太は盛大に踏んだよね

まぁ実際には何も踏んでないし転げまわってもいないけれど

それはもう誤差の範疇、それでいいのではないかしら

でも、お姉さまなぜ今この場でそれを?


「レイチェル様、ごめんなさいね

 これをお見せして、レイチェル様が一通り悔しがられたら

 レイチェル様をお連れして、お茶を飲みにいらっしゃいと

 シーレ様のご下命でしたの」


「う、ううらぎりものぉ」


レイチェル様の眼にうっすら光るものがある気がするが


「裏切っては、まぁいませんね

 とはいえ、レイチェル様、ごめんなさい

 お友達にひどいことはしたと思います

 でもレイチェル様

 あんな奴が出た以上、今この大陸で一番安全な場所はあそこかと

 状況の確認、それと手持ちの情報の突合せ

 王立図書館でいたしませんか?

 アスティナさんからお聞き及びと思いますが

 故意か、偶然かわかりませんが

 三日月の夜に亡霊が騒ぐと仰ってくださったのはシーレ様

 それに実はわたくしも

 シーレ様に確かめたいことが出来てしまいました

 いかがです

 このまますぐに参りませんか?

 ご下命を果たした以上

 お約束を袖にされる方ではないと思うのです

 昨日から合わせて5日間の閲覧とも申し上げておりますしね」


「セラ様のお尋ねになりたいことを伺っても?」


おぉ、さすがレイチェル様立ち直りが早い


「それは・・・ごめんなさい、けれど皆様のおられるところで

 シーレ様にお尋ねしますから」


うん、それはわたしも、うん、それに・・・

とはいえ、たしかにここは状況分析、そして対処を考えるときに違いない


「左様ですか、わかりました、ではそれは後ほど

 うぅん、ステフ、本当なら私が采配をしなければなんだけど

 お願いしていいかしら?」

「ほっほ、いないほうがはか・・・こほん

 お任せくださいませお嬢様

 片付けと修築の手配は済ませておきましょう」

「むぅ、ではお願いしますね?」


取り急ぎ、必要なものをざっくり用意すると

わたしたちはついさっき、そう昨日の夕刻に出たばかりの王都に

お屋敷の馬車にのり向かうこととなった


さて、その車中

眠くはあった、いやもう眠りたい

眠りたいのだが

わたしの芯が、頭の芯がきりきり冴えて眠らせてくれない


ちなみにレイチェル様は馬車が出発した途端に

アスティナさんの肩に身を預けて

安心しきった様子でやすまれてしまったし

アスティナさんはひたすらにレイチェル様の安眠を

全身全霊で守っている様子


どうしたものか、この冴えきったものを放置していても

などと脳だけが冴えて叫んでいるのだが


「・・・はるか

 わたしに聞きたいことがあるの、ね?」


あっさりお姉さまに看破されてしまう


「はい、お姉さま、本当なら二人っきりの時にと

 そうも思いましたけれど

 お尋ねになられたので聞いてしまいます

 お姉さま、どうしてあいつを刻まれなかったのでしょう?」


そう、この世の他のヒト、他のモノならいざ知らず

わたしよりはるかにお強いお姉さまの御腕前

そしてお佩きになられたあの名刀、そうお姉さまの愛剣

向こうの世界でわたしの装甲を

『聖鎧騎士』かは知らないが奴のと同じに見える装甲を

紙のように切り裂かれたことさえあるというのに

お姉さまは愛刀の一閃そして一撃で

奴を止めはしたけれど切り刻まれてはいない


「ええ、そうよねぇ、遥にはそれを聞く権利があると思うの

 でもお願い、これも図書館で聞きたいことと繋がるから

 今しばらくだけ、わがままをさせてほしいの」

「わかりましたお姉さま

 お姉さまにお考えがあってのこと

 それさえわかれば構いません」


そう、お姉さまを信じないなんてそれはもともとありえない

それにお考えあってとまで伺えば

わたしに不満などあろうはずもない


「ごめんなさいね、遥?」

「ううん、いいんです・・・」


そこで緊張が切れたのか

わたしはお姉さまのお肩に身を預けて

王都までの間ぐっすりやすんでしまった


次回セラさんの・・・

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