湯治場で入浴するよ
さて、露頭に湧き出ているという温泉を探すため、女豹魔法戦士ウェイナさんと連れ立って河原に降りて来た。
河原には人の背丈ほどもあるけっこうな大岩がごろごろしている。
川べりのあたりは割と細かい石。といっても拳よりは大きいくらいだけどね。
これ、掘るのは大変そうだぞ。
「どの辺に湧き出しているんですか?」
「ええと、この辺だったと思うけど…何か所かあるんだけど…」
こうしてみたところ…わからんな。よし、熱感知モード!
おお、あのあたりが熱くなってる。ここ掘れ、わんわん。
「この辺がよさそうですね。」
いや、掘らなくても、すでにけっこうな量のお湯が湧き出してるぞ。
川底から吹き出して流れと合流してる感じ。
熱っつ、これ熱っつい!
かなり川の水でうめないと入れないくらい。
河原を掘ったり、石を積み上げたりして湯船を作っていく。
「すごいパワーね。」
ウェイナさんが感心してる。
おっと、ハイエートとアトラックさん、虎戦士ベスタさんがやって来た、スコップ担いで。
「おー、もうだいぶでき上がっちゃいましたね。」
「川の流れを引き込んで温度調節するのがむずかしいですよ、これ。」
男衆3人プラス、ベスタ嬢で掘ったり埋めたり試行錯誤。
何とかちょうどいい湯加減になった。
石ばっかりで砂とかは少ない。
おかげでお湯の濁りはすぐ流されて綺麗になった。
けっこう重労働。みんな汗だくだ。
おっとベスタさん、シャツがぺったりくっついて、ポッチがね…
「こ、こら! ベスタ!」
ウエィナさんがあわてると、兄エルフがニッコリ微笑んでタオルを渡す。
「す、すいません、ハイエート様。」
赤面うつむき虎戦士がカワイイ。
「汗だくになっちゃいましたね。」
アトラックさんに声をかける。
「男衆は先に入っちゃいますか。」
とか言って、ほいほい脱ぎ始めたよ、お兄ちゃん。
まだ、ウェイナさん、ベスタさんがいるんですよ。
「ひゃん!」
とか言って真っ赤になる虎戦士、純情乙女か!
女豹戦士は…舌なめずり。
「お背中、流しますわよ。ハイエート様。」
「ダメダメ、ダメだー!」
「あ、こらベスタ、離しな…」
恥ずかし虎戦士、女豹戦士を抱え上げて逃げ出した。
うん、その方がいい。
崖上からデイエートが弓で狙ってるからね。
「ふううぅー、こりゃあいい。」
「風流ですねえ。」
湯船でのびのび、お兄ちゃんとアトラックさん。
アトラックさんもいい身体してるな。
絞り込んだ感じのボクサーボディだな。
あちこちにある古傷が歴戦具合を感じさせる。
「あ、しみる!」
ちょっと新しめの傷もありますね?
「あ、これ? 女房にやられた。」
あ、そうですか。深くは聞くまい。
露天風呂サイコーだな。
さて、これからが本番。
やっぱり入浴シーンは女の子に限るよね。
と思ったら早くもやって来た。先生、デイエート。
虎戦士と女豹戦士もなんだかグルと回って戻ってきた。
へっぴり腰で梯子を下りる女騎士。鎧とか装備とはもう脱いできたのね。
女騎士がぐずぐずしてるんで、人狼戦士シマックさんは梯子使わずにヒョヒョイっと崖を駆け下りた。
なんちゅう運動神経! 身軽さはデイエートを超えてるかも。
「それじゃ女の子と交代しますかね。」
そう言ってお湯から上がったお兄ちゃん。
前くらい隠そうよ。先生並みにゆるいなあ。
うっとり見てるよ、ウェイナさん。
ごくり、とか喉鳴らすのやめて。
ほー、っとため息、シマックさん。
真っ赤になって顔隠してるベスタさん。ま、指の間からしっかり見てますが。
ちなみに女騎士クラリオは
「あ、沢ガニ!」
とか言って、ちょうど後ろ向いてて見てない、気づいてない。
見逃し三振だ、ボケェ!!
「お兄ぃ! 他人もいるんだから!」
「おっと、ごめんごめん。失礼しました。」
他人がいない時はいいんですね。丸出し兄妹。
そして、早くも脱いでるのは先生。
「いやいや、ちょっと、待って待って!」
アトラックさんが真っ赤になって股間を隠し、目を背けながら脱出。
そのおしり、イヌ系獣人シッポを熱い視線で追っている人狼戦士シマックさん。
アピールポイントなんですかね? イヌ系獣人的には?
さて、俺はどうしますかね?
男衆と一緒に上へ戻りますか?
もちろん、トンちゃんは置いていきますがっ!!
「お前は周りを見張ってろ。熊とか出るかもしれんし。」
そうですね、先生。そうですとも! 見張りは必要!
「見張るのは、周り! ここにいるな! 向こう行ってろ!」
デイエートに追い払われた! コンチクショー!
「あと、あのトンボみたいなのも飛ばすな!」
ええー? 偵察ドローンのこと気にすんの?
この世界、そもそもカメラってものがない。
ドローンが映像を見れるってことがいまいちみんな理解できない。
ま、そのおかげで警戒が薄くて色々おいしい思いもしたわけですが。
デイエートは何かを感じたみたいだ。ちっ、鋭い奴。
「わかりました。では上流の方をちょっと調べてきますね。」
すなおに従う。
そして、下流ではなく、上流に向かったのはもちろん意味がある。
トンちゃんに水中モードがあることをデイエートは知らない。
上流からトンちゃんを流し、川岸に上陸させて地上から監視する。
うん、警護体制は万全だ!
湯船に背を向けて上流へ向かう。
女衆は脱ぎ始めているけど、もちろん360度視界で見えているわけですよ。
ズームモードも併用。
先生はもうオールヌード。湯加減を確かめている。
女豹戦士もぱっぱと脱いだ。
引き締まったウエストと重量感のあるお尻。
そして斑点ヒョウ柄シッポ。
後姿しか見えないが、後ろからでも両脇から見えるふくらみ。
うーんボリューム満点。
人狼戦士シマックさんは脱いだ服をきちんとたたんでる。几帳面。
そしてボディも几帳面。
すらっとして、それでいてメリハリのきいた美脚。
多少ごつくてでかいがプロポーション的にはデイエートに近い。
胸はさすがにデイエートよりは、ある。
虎戦士は…すごい身体してますね、別の意味で。
肩と背中の盛り上がりがすごい迫力。筋肉的にボリューム満点。
女騎士についてはたいして面白いこともないので省略。
脱いじゃったら騎士要素がないしな。
俺は河原に突き出した大岩の影、湯船から見えないところに回り込んだ。
さて、頼むよトンちゃん、デイエートに気づかれないようにね。
水中モードに変形したドローンを川に放った。
よし、意識分割。マルチタスク。ポジションについたら連絡ちょうだいな。
せっかくだから俺の方は周辺をちょっと探検しよう。
河原を熱探知モードで見渡す。
おお、あちこちに熱源があるぞ。お湯が湧き出している。
これだけあれば、冬場とかには野生動物とかも入りに来るんじゃないかな?
猿とか、熊とか。カピパラとかね。
おや、ちょっと上流の崖際に何か黒いものが転がってる。熊?
いや、見たことある奴だ。
犬獣機!
なんてこったい! 獣機が転がっている!?
スリープモード? なんでこんなとこで?
駆け寄ってみると…スリープじゃない、ヒクヒク動いてる。
帰還モードだ、こいつ。
ミーハ村の基地局が破壊されたから、電波が来なくなって帰還モードに移行したんだろう。
なんで取り残された?
今までの例から見ると、犬獣機は1体単独では行動しないはずだが。
…いや、何だこれ? 縛られている? 拘束ワイヤー攻撃?
前足、後ろ足をまとめてぐるぐる巻きに縛りあげられているぞ。
そして、妙に白い石ころの上に転がされている。
獣機を縛り上げているワイヤーに触れてみると…
ワイヤーじゃない。もっと細くて白い…糸? 糸か、これ?
ちょっと粘着力がある。まるで蜘蛛の糸だ。
あれ、このペタペタってさっきロッジで…
蜘蛛…? ここで気づいた。白い石ころ…じゃない。
骨だ、白骨! 野生動物の骨がごろごろ!
360度視界から警告!
俺の後ろにある岩にコーションマークがついた。
人間くらいもある岩だ。ごつごつした岩にしか見えない。
ごつごつ? 河原の石はみんな増水時に水流に洗われ、摩耗して角が取れているのに?
その岩が静かに立ち上がった。まったく音を立てない。
甲羅のような外殻を展開して脚が出て来た。
蜘蛛型ドローンタマちゃんを連想させる変形。
巨大蜘蛛だあああー!
一方、トンちゃんは川を下り、湯船の近くでひそかに上陸。
あんまり近すぎるとデイエートに気づかれるからね。
やや上流側から上陸。
ちょっと大きめの石の上に這い上がり、頭だけ出してのぞ…見張る!
警戒警戒!
「ふぅー、うあぁーーー」
先生が湯船につかったまま、おっさん臭い声を出して伸びる。
となりにはウェイナさん。
四つのふくらみがお湯にぷかぷか。
虎戦士、人狼戦士、女騎士はすっかり意気投合、きゃっきゃっうふふ、筋肉比べ!
シックスパック、腹筋自慢だ。3x6サブロク18パック!
違う! そうじゃない! 俺が望んでいるのと違う!
盛り上がる3人を横目で見て、女豹戦士がため息。
「あの二人も、もうちょっと色気がね…」
「ははは。ヒトそれぞれだよ。」
「アイザックから聞いたが…紙をくっつける魔法を使うって?」
「は、はい。」
「紙に琥珀の属性を附与したのか?」
「え、ええー? ど、どうしておわかりですか?」
「長く魔道士をやってると色々やってるんだよ。」
静電気は琥珀のアクセサリーにほこりがつきやすいところから発見されたという説がある。
こすった琥珀の棒に紙や羽毛がくっつく現象は科学実験の定番だ。
「エレクトロン(電子)」の名はギリシャ語の「琥珀」に由来すると言う。
「アイザックによると【せいでんき】とか言うらしい。」
「くっつけた紙にさらにステルス魔法を附与するとはいいアイデアだ。」
「ソープの樹の根を使った拘束魔法といい…在野にも優れた人材はいるもんだなあ。」
「あ、ありがとうございます…」
大導師のお褒めの言葉に女豹戦士も恐縮。
先生とウェイナさんが全裸入浴巨乳魔法談義をしている間…
…妹エルフのポジションが微妙だ。
筋肉チームとは一緒にされたくない。
といってエルディー、ウェイナおっぱいチームには近づきたくない。
微妙な位置取り。
ちょっとお湯が熱いのか、湯船から出ると川へ近づいた。
トンちゃんのいる岩のほう。ぎくり、気付かれた?
…大丈夫そうだ。
川に向かって大きく伸びをするデイエート。
野外全裸露出! もともと野性的ともいえる肢体の持ち主。
大自然の中、開放的。似合う。正直、見惚れてしまう。
野外全裸露出には、ツルペタツルツルスレンダーボディがベストマッチ。
ヒロインが巨乳だと「野外露出」じゃなくて「野外露出調教」になってしまうからな、絵面的に。
しゃがんで冷たい川の水を掌ですくうと、ぱんっと顔に打ちつけた。
んん? トンちゃん、なんか変じゃね? 違和感?
さっきまで騒がしいくらいだった筋肉チームの声が聞こえない。
筋肉自慢から古傷自慢、武勇伝へと話題が移っていたのに?
デイエートが振り返るのと合わせて視線を移すと…
は?
転がっている。腹筋自慢3人組。
ぐるぐる巻き、糸で巻かれて身動き取れない。
口までふさがれている! 一瞬で? 音もなく?
そして湯船の近くにあった岩が立ち上がる。
巨大蜘蛛。ででで、でかい!差し渡し5m近い巨体。
商用1BOXバンぐらいある!
うわあああああー!
「あ、う…」
愕然、立ちすくむデイエート。
人並外れて鋭敏な感覚を持つ妹エルフ。
その自分がこの巨大生物に気づかなかったことが信じられない。
「デイエート、川に飛び込んで逃げろ。」
湯船につかったままの先生が指示を出す。
さっと身をひるがえして川へ…飛び込めなかった。
足が張り付いている。バランスを崩して手をつくと、今度は手が張り付いた。
「な?」
巨大蜘蛛が丸めた糸を投げつけて動きを止めたのだ。
粘着弾投擲! 長い脚…いや、短い脚?あご?も使って器用に糸を扱っている。
デイエートの両足、片手を固定して拘束。
恐るべき奴。怪物? いや、魔獣だろ。こんなの!
先生と隣のウェイナさん。
「湯につかっていろ、なるべく外に出るな。」
「こ、こんな化物…どうしたら…」
これ、まずいですよ。
巨大蜘蛛は女騎士たちを傍らに引き寄せているから、火炎魔法は使えない。
お湯につかってるから雷系も使えない。感電注意。
氷魔法で凍らせたら、自分も凍っちゃう。
「大丈夫だ、切り札がある。」
「切り札?」
「これだ!!」
「ーたすけてええぇー!!」
超大声、拡声魔法付き「助けて!」
ああ、切り札って…俺!?




