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湯治場に到着するよ


2台の馬車と2体の馬獣機、そして俺、は再び大街道へ。

片側2車線、舗装路の大街道。

太古文明時代には高速道路として使われていたに違いない。

この辺からスピードアップ。

デイエート、女騎士、俺が馬車から降りているので、かなり軽くなっている。

リアル馬くん、快調に飛ばす。平らでまっすぐな道は気持ちいいみたいだ。

基地局の破壊で獣機の心配はなくなったが、普通に野獣とかは出るそうなので気をつけて。


野獣、怪物モンスター、魔獣ってどういう風に分類されているんだろか?

先生に聞いたところ、

「その辺はいいかげん。」

だ、そうだ。

野生動物、特に哺乳類の肉食獣を「野獣」と呼ぶ事が多い。

たとえば肉食巨大昆虫は普通の生き物だけど(普通なの!?)野獣とは呼ばない。

どっちかといえば怪物の扱い。

でかい!強い!見た目が怖い!って感じなのが「怪物」。

種族で分けているわけではないと。

スライムなんかは普通、発酵した森の落ち葉や動物の死骸なんかを食べている。

普通の無害な「動物」だ。

たまに、巨大に成長して生きた動物を捕食する固体が出現する。

こいつは「怪物」だ。そんな感じ。

「魔獣」と言うのは、魔法を使う生物。

種として生まれながらに魔法を使う奴もいれば、年を経て経験を積み魔法が使えるようになったやつもいる。

なんにせよ、国際学会があるわけでもないし、研究者も少ない。

その研究者間でも情報が共有されているわけではないので、そもそもちゃんとした分類なんか存在しない。

「ま、気分、気分。」

おおらかだわ、この世界。


「やっぱり、大街道は気持ちいいですね。」

アトラックさんも快調だ。

お昼ごろ、休憩。

リアル馬には食事が必要。その辺の草、もりもり食べる。

水は俺が出した。便利、水魔法。

だが、馬くんは微妙な顔。大丈夫なの、これ?って顔。

マビカが出したんなら喜んで飲んだに違いない。牡馬だしね。

馬獣機には先生とハイエートが乗って練習中。

「あ、ちょっと弓貸してデイエート。」

ん? お兄ちゃん、妹の小ぶりな弓を借りて、馬獣機で走り出した。

速駆け! 途中でハンドルから手を離して立ち姿勢。

街道脇の草むらに矢を放った! 流鏑馬やぶさめか!?

Uターンしてもどる途中でその草むらからウサギっぽい動物を拾い上げてきた。

「晩御飯が手に入りましたよ。」

一緒に休憩していた女戦士たち唖然としてる。

「ええ? 馬上から?」

「なんで獲物がいるってわかったの?」

「神の化身とか、信じてたわけじゃないけど…」

「ちょっとわけわかんないわよね…」

やっぱり常識外なんだな、お兄ちゃん。


「ああ、けっこう来る。腹筋とかに!」

体幹を鍛え、ダイエットに有効。ロデオマシーン。

先生、まだ長距離騎乗は無理そう。

水を飲もうと水筒護符を取り出したが、

「あ、そうか氷雪結界ニヴルヘイムで使ったんだった。」

護符を俺に押し付ける。

「充填頼む。」

人使い荒いよ、先生。

水筒護符には普通に水を入れると1リットルくらいしか入らない。

でも、マビカが水精竜ウオーターシュートを使って充填するとものすごい量が入る。

どういう理屈かわからないが…俺がやったらどうなのかな?

充填開始。じょぼじょぼ。

おお、入る入る! 1リットルどころじゃないぞ。

あれ? これ…水を詰めてるんじゃなくて…

「お前も気付いたか。」

「先生、これ、水じゃなくて【魔力】を込めてるんじゃ?」

俺と先生の会話に魔法戦士ウェイナさんが気を引かれた。

「それって、どういうことですか?」

先生の説明。

「うむ、水筒魔法は大昔からある基本的な魔法だ。」

「みんな『水が入る』って事で疑いもしなかったが…」

「考えてみれば水は入るのに酒は入らない。」

「おかしな話だろ?」

「そ、そうですね…」

「たまたま、水の固有魔法の使い手に充填させたらものすごくたくさん入る。」

「気になって調べてみたんだが…」

「どうやら、水をいったん水魔法の魔力に変換して蓄えているらしい。」

「変換自体に魔力を消費するので効率が悪く、少量しか入らない。」

「直接、水魔法の使い手が【魔力】を充填すればいくらでも入るってわけだ。」

女豹魔法戦士、目を丸くした。

「何百年も前からある魔法護符に、そんな秘密が?」

「ん百年魔道士をやっているが…まだまだ知らないことばかりだ。」

「お前さんも、いっぺん基本から学んで魔道士やってみたらどうだ?」

ウェイナさん、考え込んだ。


さて、俺のほうもやる事やっておくか。

「クラリオさん、ちょっとお願いできますか?」

「ん? 何?」

女騎士に頼んで馬獣機の全速力を確認することにした。

「な、なるほど。重要ですね。」

並走して確認。馬獣機の最高速は80km/hくらい。

犬獣機が50km/hだったからかなり速い。

70km/h超と言うリアル馬、競走馬の最高速をコンスタントに出せる感じ。

うーん、ぶっちぎり、と言うわけにはいかないが、まだ俺のほうが速いかな。


これがまずかったらしい。

休憩後、リアル馬くんたちが妙に張り切ってる。

馬獣機に対抗心を持ったらしい。

ペース速い! 突っ走る。 そしてバテた。

放置された湯治場跡に到着したころにはヘロヘロになった。

先生の回復魔法のお世話になってしょぼーんと反省してる。

まあ、結果的にはかなり早く到着したので良しとしましょう。


今、俺たちが走っている大街道は山の斜面を削って作ったもの。

進行方向右手に山。破壊した基地局があった山に連なっている。

左側が谷と川になっててけっこう眺めがいい。

湯治場は大街道より下がった谷側にある。

わき道に入り、下り坂を降りると建物が見えて来た。

温泉旅館みたいな感じを想像していたけど、ちょっと違ってた。

食堂っぽい大き目のログハウス、ロッジ?の周りに、コテージ? 

小さな小屋が何軒も並んでいる。

トイレやキッチンは無いみたいだから…バンガロー?

その辺の違いは良くわからない。インドア派だしね、俺。

客室だけ独立してる感じ? プライバシー重視か?

「でっかい建物作るのは難しいからな。材木も手に入りにくいし。」

「あと、防犯。」

なるほどね。見ず知らずのお客さん同士が長逗留する事もあるわけだし。

荷物を突っ込んで置くなら小屋のほうがいい。

もう一軒でかい建物があけど…窓が素通し?

よろい戸がついてないけど?

「浴場よ。」

ウェイナさんが教えてくれた。

一緒に中を覗いてみると…

うーん、荒れ果てている。

お湯が来てないのはもちろんだが、浴槽にも土砂やら木の葉やらがたまって半分埋まっている。

裏へまわってみると、湯本からお湯を引いていたと思われる管や樋が崩れ落ちていた。

「ここはすぐには使えないわね…源泉のことは私らじゃわからないし。」

建物自体はまだしっかりしているから、手入れさえすれば使えるだろう。

あれ? 俺、何か触った? 手がペタペタするよ。


ログハウスやバンガローを調べていた先生たち。

こっちはわりときれいみたい。ちゃんと戸締りされてたから。

それでもホコリはたまっている。

「めんどくさいな、一気に片付けるか。」

ログハウスの窓と戸を開けさせると、両手の間に魔法陣を展開。

送風魔法? なんか他の魔法陣がくっついてる。

部屋の中につむじ風が発生! いや、竜巻だ、ミニ竜巻!

「うわああーっ?」

「ひいいーっ!」

「きゃああああーっ!」

「ちょあえええー?」

3戦士+女騎士がパニック!

レガシの面々は魔法陣が発生した時点で退避したので平気。

ホコリやら木の葉やらガラクタやらが全部吸い込まれ、巻き上げられて部屋の真ん中に集まる。

サイクロン式お掃除魔法!

そのまま竜巻が家の外へ移動。全部吹っ飛ばした、色々と。

なんかお高いお皿とか壺的なモノも巻き込まれてたような気がするけど?

「キレイになったな。」

「次はバンガローだ!」

お手柔らかにね、先生。


この間に俺とウェイナさんは河原の湧き湯を調べることに。

「あら? 下に降りるハシゴが…ない。」

あちゃ、やっぱり何年も放置されてると色々トラブルがある。

「あー、あんなところに転がり落ちてる。」

ちょっと河原へ向かって崖になったところ。

下の方に倒れた梯子が見える。

さて? 飛び降りて掛け直すか? いや、足場が悪すぎる。

着地したとたん、下まで転げ落ちること間違いなし。

えーっと、ロープとか…

おう、あれがあった! 工房の職人衆からもらった秘密兵器。

「ちょっと、待っててください。」

馬車から持ってきたのは…リールとワイヤー。

兵機が俺を縛り上げた拘束ワイヤーと壊れた獣機の部品を組み合わせて作られたものだ。

リールをベルトで腰にセット。ワイヤの先は結んで輪っかになってる。

普通の鉄で金具とかを作って繋ぐと、ワイヤの強度に耐えられない。

ワイヤ自体と俺のボディの強度を生かすために巧みに結び目で接続されている。

輪っかを手首にかけてっと。

「拳骨シュート!」

右前腕を発射! 崖下に転がってる梯子を掴む。

後は左手首を回転させてワイヤを巻き取って引き寄せる。

手首が360度連続回転するのはロボならではだよね。

「ええええ? 魔道機さん、アンタすご…」

梯子を立てかけるのには成功したけど…不安定だな。

やっぱ、下をきちんと固定しないと。

その辺の頑丈そうな立ち木の枝を掴むと腕を切り離しリールを緩め崖下へ身体を降ろす。

蜘蛛人間マンになったみたいな気分。(池上 遼一版)

腕を再び巻き取って、接続。岩とか動かして梯子の脚を固定。

便利だ!すげー便利。ありがとう職人衆! ありがとうタンケイちゃん!

「もう大丈夫ですよ。下りてきてください、ウェイナさん。」

「あ、ああ、ちょっと待って、スコップ持ってくる。」

河原湯船掘り用にログハウスに常備されてた。

おお、スコップ。待てよ? スコップ? シャベル? ショベル? 

雪下ろしは角スコが一般的。だからあれはスコップ? 

ウェイナさんが持ってきたのは尖ってるから剣スコだし?

でも通販ページではショベル?

混乱する俺。まあ、どうでもいいんですがね。


そんなことより、梯子を下りる女豹ボディ。見上げる俺。

革ズボン、むっちりお尻、いい眺め。(五七五)

左右に揺れる豹シッポが可愛い。

梯子の先も下り斜面なので足場が悪い。

「気をつけて、つかまってください。」

おおっと、よろめいて身体をあずけて来た。

「あっと、ごめん。」

おおっと、柔らかいものがむにっと押し付けられましたよ!

役得、役得。





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