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ミーハ村に凱旋するよ


再起動して乗用可能になった馬獣機。

森の中とか苦戦したけど、それでも徒歩よりはかなり速い。

ミーハ村へ到着する前に、先生たちに追いついた。

「早かったな。おおー、カッコいい!」

「乗ってみますか? 先生。」

「乗る乗る!」

やれやれ、俺は正直自分の足で歩いた方がいい。

俺の脚は犬獣機ハウンドより速い。

馬獣機と比べたらどうなんだろう?

…いや、ホントに。

速度を把握しておく必要があるな。

もし、同型機と戦闘になった時、どっちが速いかで戦術の変更を迫られる。

どこか、平らな所でチェックしておかなければ。


デイエートは兄エルフと交代、もちろんすぐ乗りこなしているよ、お兄ちゃん。

おっかなびっくり騎乗位先生が、指をくわえて見ていた女騎士に声をかけた。

「乗ってみるか?」

「ののの、乗ります! 乗りますぅー!」

交代!

さすが軍人だ。最初は戸惑ったがたちまち乗りこなす。

うん、騎乗位のプロ。腰使いが違う。

それどころか後ろ足立ちとかクィックターン、バック、サイドウォーク。

「手綱とグリップの違いはありますが、すごく自然に扱えますね。」

「これ…本当に獣機ですか?」

「ん、どういうことだ?」

「人間が乗るために作られたとしか…思えませんが…」

「ふむ、」

犬獣機ハウンドも、元々は警備用だったらしいし。

こいつも人間用?

いったいなぜ獣機は人間を襲うようになったんだろうか?


「チルタは馬に乗った事あるのか?」

「ううん。無い。」

「乗ってみるか?」

ぷるぷる首を振るチーター娘。

まだ、ちょっと獣機は怖いかな。


そろそろ、村に近づいた頃。先生が指示を出した。

「よーし、馬獣機にはハイエート、デイエートが乗れ。」

「凱旋だからな。盛り上げないと。ぱーっとな。」

「チルタはハイエートの前…いや、嫉妬されるか…」

「デイエートの前に乗るんだ。」

「ええ? あたいはいいよぉ。畏れ多いし。」

「いや、乗るんだ。そのほうが盛り上がるぞ。」

強引だな、先生。何だろ? ずいぶん強引。

村を囲む柵に近づくと…やっぱり心配だったんだろうか?

見張りの村人が歓声を上げた!

門をくぐって村の広場に入ると、もう大騒ぎ。大歓声だ。

「おおおー、獣機を従えて?」

「何と言う神々しさ! ハイエート様!」

「妹さまと一緒に乗っているのは、チルタだ!」

「あの凶暴な獣機がこんなにも従順に!」

ああ、なるほど。単純に盛り上げるだけじゃない。

村には獣機によって元の住地を追われた人もいる。

チルタちゃん同様、家族を奪われた者だっているだろう。

アポロン神の化身たるハイエートが騎乗して村に入れば馬獣機を村人に受け入れてもらえる。

さらに村娘チルタちゃんが乗っていることで、恐怖感や拒否感をずいぶん和らげることが出来る。

そこまで計算してたんですか? 先生。

あれ? 俺のことを「ハイエートの従者」として紹介したのも…

悪ノリだけじゃなかったんですね。


盛り上がる村人をかき分けて村長がやって来た。

「チルタ! 無事か!?」

「おじさん!」

馬獣機から滑り降りる。

上からはデイエートが服を引っ張って支え、下から村長が抱き留めた。

「あのね! あのね! 従者様がね、獣機の塔をぶっ壊してくれたの!」

「ばかーん! バリバリ! ぼわわーんって!」

「ぶっ壊してくれたの!!」

チルタを抱きしめる村長。

「そうか、そうか!」

ちょっと、ジーンとする。

村長さん、神様より先にチルタちゃんのこと、心配したよ。

いい、おじさんだよ。

「ハイエート様、エルディ導師、チルタの父…私の弟の仇を取ってくださって…」

「ありがとうございました…本当に…本当に…」


村はもうお祭り騒ぎ、昨日に続いて大宴会に突入した。

そんな中、俺たちは村長屋敷で打ち合わせ。

筆記具を借りて地図を描く。

山頂で収集した地形情報を加えて作成。

破壊した基地局、山頂から見える次の基地局の位置を確認。

地形上、電波の届く領域を推測。

今回の破壊で圏外となった地域を記入していく。

「ミゾロギィ村を始め、放棄された村を回復するのはまだ無理だな。」

「山頂から見えた次の基地局はかなりの高山です。ちょっと到達は難しいかと。」

時間が限られているからね、この遠征。

「大街道を進んでそこへ電波を送っている基地局を見つけた方がいいか。」

「あるいは、一気に本拠を突くか…ですね。」

村長さんも同席している。

「しかし、これだけの範囲が獣機から解放されたのは助かります。」

「輸送もずいぶん楽になりますよ。」

輸送の警護を担当している女戦士3人も顔をそろえてる。

「村は無理だけど…宿場や駅宿はずいぶん解放されたな。」

「戻るのは無理でも、家財を取りに行きたいって人はいるんじゃないかな?」

「獣機の縄張り外になったところをみんなに知らせてやるか…」

顔を突き合わせて地図を眺めていたが、女豹戦士ウェイナさんが、

「あ、ここ。湯治場! 圏外かー、そうかー、うう、温泉。」

先生も興味をひかれたみたい。

「ほう、湯治場があったのかー」

「ここから馬車で1日くらいのところですよ。」

「ああ、温泉…入りたい…」

ウェイナさんお風呂好きか?

「わたしもお風呂入りたい…工房のお風呂が恋しい…」

何だよ、デイエート、ホームシックかよ。まだ3日目だよ。

「内湯は無理だろうけど…河原の湧き湯なら入れるかも…」

「ほう?」

女豹戦士のつぶやきに先生も反応。

「河原に湯が沸いていて、自分で掘って湯船を作るんですよ。」

「ほほう?」

「それは風情がありますねえ。」

お兄ちゃんも食いついた。

露天風呂か…魅力的なワードが出て来たな。

「通り道だな…明朝早めに出発すれば…夕方には着けるな。」

と、先生。

「露天風呂…ハイエート様が…」

村長も食いついた。別のところに食いついてますがね。

「げふう!」

突っ込まれた。突っ込んだのはチルタちゃん!

意外と遠慮ないぞ!


その夜は平和だった。

さすがに村の女性陣も遠慮したようだ。

まあ、3戦士と俺は夜通し警戒してたわけですが。

たった6人の一般人しか捕まえなかったからね。


明朝、俺たちは夜明けと同時に出発する事にした。

村人達が起きて来ると大騒ぎになるから出発の事は教えてない。

1日ゆっくり休んだ馬くんは元気いっぱい。

2体の馬獣機にちょっとびびったけど。

誰が馬獣機に乗るかでちょっともめた。

扱いのうまさで女騎士、馬車に弱いのでデイエートが騎乗することに。

選に漏れたおっかなびっくり先生が不満たらたら。

「練習しなくちゃウマくならないじゃないか。」

馬だけに。

途中で交代すればいいでしょ。順番順番。

ぶーぶー言わないの、先生。

驚いた事に3戦士が同行を申し出てきた。

「湯治場のダンナに現状調査を依頼されたんだよ。」

「だからこれは仕事。」

「うん、仕事仕事。」

うまいこと考えたな。湯治場のダンナって人はどうするの?

同行しないのね。まだちょっと怖いと。そりゃそうか。

女戦士たち、自前の馬車で同行することになった。

まあ、頼りになる人たちだし、にぎやかなのはいいことだ。

デイエートはちょっと警戒してるけど。

特に女豹ウェイナさんのおっぱいを。

村長さんに別れを告げる。

「私も一緒に行きたい…」

お兄ちゃんの入浴シーンに未練たらたら。

「村長さんもお元気で。」

ハイエートと別れの挨拶。

「また立ち寄ってください。ハイエート様。」

「『様』はやめてくださいよ。今度はゆっくり遊びに来ますよ。」

おお? かるくハグ!

意外と気が通じている感じ。

「今度はベータ君と一緒に来たいなあ。」

いや、お兄ちゃん、俺、それには反対ですよ。

「チルタ、元気でな。」

先生がチルタちゃんの頭をなでる。

「導師様、ありがとうございました。」

はにかんだように頬を赤らめる。

少しでも役に立ったのならよかったよ、俺も。

「従者様。」

え? 俺?

ピッタリと抱きついて来た。小っさいなあ、頭がおへそのあたりだね。

ま、おへそは無いんですけど。

「ありがと。」

どういたしまして。


村を後にした俺たち。

アトラックさんの馬車と虎戦士ベスタさんが御者を務める馬車。

女騎士とデイエートは馬獣機。

前回のラグビー猪の一件があったんで、俺も馬車を降りて並走することにした。

こっちの方が対応が速いからね。

本街道へ出るまではノロノロ運転。

3戦士の馬車は屋根の付いてないオープン馬車。

たまたま隣に並んだところでベスタさんが話しかけて来た。

「アンタ、レガシから来たんだろ。デイエイティ姐さんのこと、知らない?」

ああ、ミゾロギィ村の戦士だって言ってたな、知り合いか?

「ダットさんのことですか? 存じ上げてますよ。」

「そ、っかー。姐さん、元気してる?」

「ええ、お元気ですよ。服飾工房で活躍しておられます。」

「旦那さんとうまくやってるのかな?」

「それは、もう…」

ちょっと考える。翻訳機能うまく働くかな?

「ラブラブです。」

「ラブラブかあー。」

タモン兄貴のこと、知ってるんだよな。同じ鉄棍使ってるしな。

「まさか姐御が男に惚れるとはなあ…ま、将軍なら納得だけどな。」

「村から撤退するときタモンさんとご一緒だったので?」

虎戦士さんもラブしてた?

「ああ、カッコ良かったよなあ、オレもあんな風に強くなりたい!」

うーん、憧れ方向がちがうな。

「ふふふ、タモン将軍のカッコよさがわかるとは、さすがですね。」

いつの間にか馬獣機に乗った女騎士が馬車の反対側に来てた。

兄貴の話題を耳ざとく聞きつけたらしい。

「私と渡り合うだけのことはあります。」

「今度また決着をつけようぜ。」

「望むところです。」

タイマンはったらダチかよ! 脳筋騎士と脳筋戦士。

あきれた様子のウェイナさんの声。

「ダメになったソープの樹は半分ベスタが弁償だからね!」

「げげっ! そんなあ…」

ちなみにあとの半分は女騎士が弁償。

とりあえず先生が肩代わりした。

バイト代から差し引く。




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