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お引越しするよ


次の日、お引越し開始。

打ち合わせ通り、直接、新居へ。

案内はマビカ。もう、チビすけ扱いはやめよう。

キララも自分の荷物を抱えてる。

俺は例の毛皮寝具を担ぎ、食器とかの入った袋をさげる。

先生も何やら荷物を抱えてるぞ。


引越し先にはディスカムがすでに待機。

けっこう、救護院に近いとこだ。

タンケイちゃんがいるぞ。

ああ、毛布を運んできてくれたのか。

ビクッとするマビカ。女の戦い。

まあ、タンケイちゃんのほうはまったく意識してないけどな。

そして、組合長。家の持ち主、大家さんだそうだ。なるほど。

「おはようございます、導師。」

「おお、組合長。世話をかけるな。」

「ふふ、導師といい、工房長といい、すっかり保護者ですな。」

エルディー先生が頭を掻く。

「ああー、ん、まあこれも縁ってやつかな。」


「ウチも手伝えっておやっさんが。」

タンケイちゃん元気いっぱい。

「力あるっすよ! ウチ。」

腕を曲げて力こぶ。

「いえ、そんなに大きい荷物は無いんで…」

デレデレしてるな、ディスカム。力こぶは見ていない。

見ているのは別のこぶ。マビカの機嫌が悪くなるぞ。

「あー、アイザックさんがいるんじゃ力自慢しても仕方ないっすね。」

俺のほうを見てペロッと舌を出す。

「いえいえ、やっぱり職人さんがいてくれると助かると思いますよ。」

「えへへ、そっすか。」

うん、照れるタンケイちゃんかわいいのう。

がすん! え? 何?

なんだキララ? 今蹴った?


「おはようございます、みなさん。」

おお、ハイエートお兄ちゃん…と妹エルフ。

毛皮持って来てくれたんだな。

妹エルフはぴったりお兄ちゃんにくっついていたが、俺の顔見て離れた?

そして、お兄ちゃんを挟んで反対側にはイーディさんがぴったり。

イーディお姉さん、ハイエートと仲良かったっけ?

違いました。ベータ君とハイエートの間に入るようにガードしてるだけ。

ベータ君に近づかないようぐいぐい押してる。

「出勤途中よ。これから救護院。」

お疲れ様です。

「ハイエート、用事済んだら帰んなさい、早く。」

「いやいや、引越し手伝うから。ベータ君と一緒に。」

「イーディこそ早く出勤しないと。」

「ぐぬぬぬ……」

分が悪い、イーディさん。

「わかってるわね! アイザック! 任せたわよ!」

言い捨てて小走り立ち去るお姉さん。

ええー? 俺? 何をまかせたっていうんだよ。いや、わかってますけどね。

「何言ってるんですかね? 姉さん。」

「こんなとこ獣機も雀竜も出ませんよねえ。」

いや、ベータ君。危険なのはそれだけじゃないんですよ。

思わず、視線を動かしてハイエートを見てしまう。

すっと目線をそらす。素知らぬ顔! 素知らぬ顔ですぞ。お兄ちゃん。

となりで肩をすくめるデイエート。

「おはよ、アイザック。」

「おはようございます、デイエートさん。」

おう? なんだ、キララ? 何で手つないでくるの?

右側にぶら下がるように手を掴んできた。

半分、俺に隠れるようにしてデイエートをにらむ。

デイエートの表情が険しくなる。

「おはよう、黒いの。」

「『黒いの』ではない! 我は【黒き宝玉】!」

「え? なんだって?」

デイエート困惑。

「闇の女帝たる漆黒の魔導士【黒き宝玉】ことキララさんですよ。」

「え? え?」

アウトドア、ワイルド王子系、凛々し美形エルフには中二病的設定が理解不能らしい。

陽キャ対陰キャ。分かり合えない溝。

デイエートもくっついてきた。左側。

動きづらいんですけど。


「何やっとるんだ? おまえら。ちゃちゃっと片付けるぞ。」

先生があきれ気味。

「そいじゃ、後はよろしく。」

そう言って組合長は自分の店にもどった。

たいした荷物も無いんで、すぐ終わると思ったけど…

「あっと、荷物入れる前にちょっと見させてもらうっすよ」

タンケイちゃんの職人チェックが入った。

まず、ディスカム用の寝台をチェック。

「んー、ちょっと寝てみてもらっていいすか?」

「は、はい?」

「そしたら、寝返り打って。」

「はい?」

「あー、ガタツキあるっすね。」

寝台に横になってゴロンごろんと動くディスカム。

その上から覆いかぶさるように寝台の枠を掴んで揺らす。

顔のすぐ上で振れる大質量。鼻先に触れんばかり。

「あ、もういいっすよ。」

放心状態、ディスカム。

「アイザックさん、ちょっとここ持ち上げてほしいっす。」

俺が寝台を持ち上げると、その足の先をカンナでちょちょっと削る。

「こんなもんすかね?」

おお、安定した。さすがだ。職人技。

「ドアとか、よろい戸とかはおやっさんがあらかじめチェックしたらしいっす。」

次はマビキラのベッド。

大きい毛皮を敷くんで、寝台をくっつけて高さを揃える。

ムート鹿の毛皮を敷き、毛布をセットしてベッド完成。

「でかいっすねー、この毛皮。」

「ハイエートさんが狩ったのですか?」

「以前、遠出した時にねー。この辺には大きいのいないから。」

「田畑荒らされて困ってるって村があってね。」

「退治したら、お礼に毛皮だけでも貰ってくれって言われてねー。」

色々武勇伝ありそうだな、お兄ちゃん。

ふふん、て自慢げな顔する妹エルフ。


さらにリビングダイニング的な部屋のテーブルやら椅子やらチェック。

がたつきとか、ゆるみとか細かく修正を入れて行くタンケイちゃん。

きりっとした顔。仕事人。ほれぼれしちゃうね。

「こんなとこっすね。暮らしてみてなんかあったら、また声かけて…」

途中まで言いかけて、どしたの?

「あー、あそこ。」

見上げた先は天井近くに作り付けの棚。

支えの足が取れかけてぶらぶら。

物、置くってレベルじゃねえぞ。

「うーん、ちょっと届かないっす。脚立きゃたつとか…無いすよね。」

ドワーフ身長じゃ、椅子に乗っても足りないか。

「肩車とか…」

ちらっと俺の方見る。いいですよ、頼ってくれて。

「ボ、僕が!」

ディスカムぅー、お前はまた…

がすん! 蹴ったね、マビカ。

「私はいいですよ、タンケイさん。」

「お願いするっす、アイザックさん。」

タンケイちゃんを肩車。役得ってやつですな。

「行きますよ。」

持ち上げる。まあ、俺のパワーからすればゼロ荷重も同然。

「あ、ちょ、ちょ、高すぎっす!」

おっと、いけない。上げすぎ。天井にぶつかっちゃう。

背中を丸め、あわてて頭を下げる、タンケイちゃん。

ちょうど、俺の頭部を抱きしめるような感じに。

肩にはお尻が乗っかってる。

太ももぎゅっと締めたせいで頬っぺたが挟まれる。

背中丸めたらお腹が後頭部に。

そしておっぱいが頭の上に押し付けられる。

あれ、天国? ここが桃源郷?

頭部がすっぽり包まれる。柔らか、暖ったか、いい匂い。

おっさんでも女子高生の匂いになれる制汗剤、とか話題になってたな。

そんなおっさんは殴る! オーバードライブモードで全力殴打!

がすん! おう、蹴ったね? キララ。

デビルキックはローキック!

ごすん! おう、蹴ったね? デイエート。お前のマジ痛い!


そんなこんなで修理は完了。

「お茶にでもするか。」

と先生。そこへタモン兄貴がやってきた。

「すまん、遅れた。」

でかい袋を下げている。

ダットさんが用意したという可愛い系の寝間着とか入っているに違いない。

「あれ? タンケイも手伝い?」

「はい、家具の調整とかしてたっす。」

タンケイちゃん、思い立ったように兄貴に尋ねる。

「あ、そういえばこないだ調整したタモンさんちのベッド、具合はどうすか?」

「あ、ああ、今んとこは大丈夫。」

「調整しても、すぐ、ギシギシいうようになるんすよねー、あのベッド。」

「いっそ、とりかえた方がいいのかも…」

首をひねるタンケイちゃん。

先生が盛大に吹いた!

「そっかー、ギシギシなー」

ハイエート。

「ギシギシですかー」

デイエート。

「ギシギシねー」

うろたえる兄貴。微笑ましいですぞ。


その後は、先生がカマドや照明の魔法陣を調整。

足りないこまごましたものを買いこんだりして引越し作業も終了。

解散となった。


家に帰ってきた、先生と俺。

ドアを開けて中に入る。

もちろんマビカもキララもいない。

ガラン、とした室内。

うわ! 寂し!!

「こんな、静かだったかな? 以前って…」

先生が首の後ろに手を当てる。

二人がいたの…たった一週間くらいだったのに…


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