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転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~  作者: マツヤマユタカ@1×∞(ワンバイエイト)コミック第三巻発売中!
第二章 エスタ戦役~ロンバルド・シュナイダーの戦い~

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第七十一話 エクウス報告

 1



 事件の全貌が明らかとなったのは、事件発生より数日後のことであった。


 魔法士長エクウスによる報告書によれば、そもそもの事の発端は魔法教練の際の教官たちによる重大な判断ミスが三つも重なったことにあった。


 まず教練の際、教官たちに素養なしと判断されたシェスターであったが、実際は素養大いにありであった。


 ではなぜ素養なしと判断されてしまったのかといえば、魔力干渉が起こってしまったためである。


 魔力干渉とは、隣り合った二人以上の魔法士の魔力が互いに干渉しあい、一方がもう一方の魔力を覆い隠してしまう現象のことであるが、とはいってもこのような現象が起こる事はほとんどなく、極まれに極めて相性の良い者同士が隣り合った時に起こる事象であった。


 そのため魔法の素養があるかないかを確かめる魔法教練の際には、テストをする者を一人ずつ切り離してある程度の距離を保った状態で行うのが普通なのだが、極まれにしか起こらない事象であるためか効率を優先するためにあえてそれをせず、生徒たちを並ばせた状態でテストを行う横着な教官が少なからずいた。


 そして今回の教官であるネブカドとモルグがまさにその横着な教官そのものであった。


 そのため本来のマニュアル通りの指導をしておけば起こりえないはずの魔力干渉が起こってしまったのだった。


 つまりシェスターもセバスティアンも共に魔力の素養があり、なおかつ極めて相性が良かったことになる。


 そしてシェスターの魔力のほうがセバスティアンよりも強力だったため、セバスティアンの本来の魔力をシェスターの氷結系統の魔力が覆い隠してしまい、結果教官たちはセバスティアンを氷結系と判断してしまったのだが、実際はジョゼフの感じたイメージどおり、セバスティアンは氷結系とはまったく別系統の回復系であった。


 それが発覚したのは憔悴(しょうすい)しきっているシェスターに寄り添うセバスティアンの両腕がほんのわずか回復系特有の白色に輝いているのを魔法士長のエクウスが見逃さず、セバスティアンに話しかけたことから教官たちの一つ目の重大なミスが発覚したのだった。


 では教官たちが(おか)した二つ目の重大なミスとはなにか?


 それはなんといってもシェスターを素養なしと判断してしまったことだった。


 たとえセバスティアンを誤って氷結系と判断してしまったからといってシェスターを素養なしとさえしなければ今回の事件は起こりえなかっただろう。


 しかし彼らがセバスティアンをテストする際、魔力干渉による特殊な波長をそれと見破ることも出来ず、なおかつその判断に大いに手間取り話し合いに多くの時間を費やしてしまったがために、いざシェスターの番になった時にはすでにシェスターの魔力は長時間の魔力干渉によりそのほとんどを費やしてしまっていた。


 だが彼らがシェスターを調べた際、セバスティアンの時と同様に特殊な波長を感じ、そのことについて協議をするくらいにはシェスターの魔力は微量ながらも残っていたにもかかわらず、またも長時間の協議をしたためにシェスターの魔力が完全に尽きてしまい、再度テストをした際まったく反応が無かったことから彼らはシェスターを素養なしと判断してしまったのであった。


 これはつまり、彼ら教官たちの怠惰から生まれたもっとも重大なミスであったと言える。


 そして最後、三つ目の重大なミスとはセバスティアンに魔導叢書(まどうそうしょ)を手渡してしまったことである。


 本来テストにおいて素養ありと認めた者には確かにその場で魔導書を手渡すことが慣例化していたとはいえそれは絶対的なことではなく、なおかつ通常手渡すのはそれぞれの系統の入門書のような小冊子であって、あらゆる系統のほぼ全ての魔法を網羅するような魔導叢書を手渡すことなどありえないことであった。


 だが今回の教官たちはセバスティアンの系統を断定できなかったためにどれを渡していいか判らず、結果ほぼ全てを網羅した魔導叢書を渡すという愚を冒してしまったのであった。


 そもそも魔導叢書を手渡しておきながら決して開いてはならぬと言い残すくらいならば、氷結系統の小冊子でも手渡しておけばよかったのである。


 それにもかかわらず彼らは、教練の際に自分たちが使用していた魔導叢書を手渡してしまったのだ。


 そしてそれこそが彼らが冒した二つ目の重大なミス、つまりシェスターを素養なしとした大きな一因の一つでもあった。


 彼らはセバスティアンの系統を判断できなかったため、二冊ある魔導叢書の内の一冊をセバスティアンに手渡してしまった。


 そしてさらに同じような波長を見せたシェスターにもう一冊を手渡してしまえば、その後の教練に使用する魔導叢書がなくなってしまう、そう考えた彼らはシェスターの魔力が消えたことを幸いに、シェスターを素養なしとしてしまったのであった。


 つまり三つの重大なミスとは全て、彼ら二人による大いなる怠慢の結果であったのだった。



 2



 魔法士長エクウスは、二人に対する強い怒りを内に秘めながらこの報告書を(たずさ)えて魔法協会ヴァレンティン共和国支部へと(おもむ)いた。


 そしてネブカドとモルグの二人を激しく糾弾したのだった。


 協会はエクウスの報告書を()とし、すぐさまネブカドとモルグを逮捕拘禁した。


 そして後日、エクウスの報告書と別の調査員の報告書とを改めて照らし合わせた結果、やはり今回の事件の責任がネブカドとモルグにあることは間違いないと判断された。


 だが彼ら自身の怠慢がシェスターの両親を死に至らしめることを、彼らが事前に予見できたわけではないとの判断から懲役刑は適用されず、魔法士の資格剥奪の上、協会からの永久追放という処分が下された。


 そして二人はその日のうちに放逐(ほうちく)され、何処(いづこ)かへと消えていった。



 同じ日の夕刻、魔法士長エクウスは協会支部の二階にあてがわれた執務室にて、自らが作成した報告書を改めて読み返していた。


 そしてひとしきり読み終えると報告書をファイルにまとめ、壁に備え付けられた書類棚へと収めた。


「これでひとまず事件は終わった……だが……」


 エクウスは執務室の瀟洒(しょうしゃ)な造りの窓辺に立ち、沈みゆく夕日を眺めながら哀れなシェスターの今後を思い、深い嘆息を漏らすのであった。

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