第二千九百十三話 大軍
目がくらむような眩い閃光が迸る中、ガイウスは上空遥かから一気に下降し、五万はあろうかというユラシアの大軍の眼前に躍り出た。
ユラシア軍はガイウスの放った閃光弾により、一旦動きを止めている。
ガイウスは、大音声で叫んだ。
「ここから先は一歩も前には出さん!とっとと撤退しろ!」
と、ユラシア軍から騎馬が一騎、芝枯れた乾いた大地にコツコツと馬蹄を響かせ、前に進み出た。
馬上の騎士は面貌を上げ、美しく整えられた細面を露わにして叫んだ。
「何者か!」
その声は凛と張った少女の声であった。
ガイウスは意表を突かれて驚き、呟いた。
「ユラシアって、もしかして女系大国なのか?」
ガイウスは苦笑を漏らすも、すぐさま表情を引き締め、大音声で名乗りを上げた。
「俺はガイウス・シュナイダー、またの名はアウグロスだ!」
「我はユラシア皇国第三方面軍司令官、ガレーシャ!」
ガイウスは驚いた。というのもガレーシャの年齢はどう見ても十代であり、方面司令官の重責を担えるとは思えなかったからだ。
と、続けてガレーシャが高らかに問うた。
「そなたの所属はマンド王国なのか!」
ガイウスはこの問いに少し考えた後、言った。
「所属は、新しく出来たヴァルハラ帝国になる!」
「聞いたこともない国だ」
ガイウスはスーッと中空を滑空するように進み、ガレーシャのすぐ近くに着地するなり、言った。
「新しく出来た国だと言っただろう」
「いつ出来たのか」
「今日だよ」
「戯言に付き合っている暇はない」
「ところがこっちも冗談じゃないんだ。本当に出来たんだよ、今日」
「何処に出来たというつもりだ」
「アグルト、ベルク、ザバン、ローグ、ジアラの五か国に、ゾーマとマンドもさっき加わって、計七か国が連合して建国された。当然帝国領地はその七か国と同じだ」
「そのような世迷言、信じると思うか?」
「信じるも何も、お前たちがマンドに進軍したのは、はじめに言った五か国が連合するという情報を得てのものだろうが」
ガイウスは『お前たちの魂胆はわかっているぞ』といわんばかりに、口元を上げて不敵に言い放った。
だがガレーシャは、心中を面に全く出さず、真顔で否定した。
「知らぬな。初めて聞いたわ」
「嘘を吐け。そうでもなければ、両隣の国と紛争中だっていうのに、さらに南に進軍などするものかよ」
ガイウスが吐き捨てるように言うと、ガレーシャは木で鼻をくくったような顔をした。
「するのだよ。それでもするのだ。王命とあらば、我らは否応なく進軍し続けるのだ」




