第二百二十三話 材料集め
「ふう……とりあえず俺が特異点だの厄介者だとかいう話は置いておこうか。それよりも、仮にデグウス氏が俺をスパイしていたとして、誰に、なぜ、あのような残忍な方法で殺されなければならなかったのかを考えよう」
「ふむ。難しい問題じゃな」
「スパイの正体がばれて殺される……これだけなら判らなくはない。だけど首を切り落とした上で、なぜわざわざ教室まで遺体を運ぶ必要があったんだろうか?どう考えても誰かに見せ付けるためだとしか思えないんだが……」
「まあ普通に考えたらそうじゃろうな」
「つまり普通ではない?」
「それは今の段階ではわからんよ。普通かもしれないし、そうでないかも知れん。なにせ判断材料が少なすぎるからのう……」
「そうだね。確かに材料が少ないね。でもそれならば材料を集めに行けばいいんじゃない?」
「まっそういうことだな。で、どこへ行く?」
「そうだな……やはりあれが誰かに見せ付けるためのものであるなら、その対象である可能性が一番高い人のところへ行くのがいいんじゃないかな?」
「それは誰じゃ?」
「遺体が発見された三年一組の担任で、デグウス氏と親密な関係だった可能性が高い、ジェシカ・グランデール先生さ」
2
ガイウスたちは、放課後に集団下校で下級生たちを送り届けた後、再度合流し、ジェシカ先生の自宅へと向かうこととなった。
「お前さん、その女先生の自宅住所はわかっておるのか?」
エルが至極真っ当に肝心なことを聞いてきた。
するとガイウスは得意げな表情を浮かべて言った。
「当然だろう?一組のアルベルトに聞いておいたよ」
「ふむ。ならば迷子にはならなくてすみそうじゃな。それでは早速向かおうではないか」
二人は仲良く連れ立ってジェシカ先生の下へと向かった。
「ところでお前さん、その女先生に会って何を聞くつもりなのじゃ?」
「ああ、それなんだけどね。俺が何か聞いたところで答えてくれるとは思えないし、そもそも行ったところで会ってくれるとも思えないんだよね。というのも実は昨日、アルベルトたち一組の生徒有志でジェシカ先生のところへお見舞いに行ったらしいんだけど、先生のお母さんが玄関で対応して、お見舞いの品は渡せたんだけど、結局先生には会えなかったっていうんだよ。まあそれからさらに一日経過していることだし、もしかしたらこの一日で先生が劇的に回復している可能性も無きにしも非ずだけど、やっぱりちょっと望み薄だと思うんだよねえ」
「おいおい、ちょっと待て。それではわしらは無駄足ではないか」
「いや、そこでエルにちょっとお願いしたいことがあるんだよねえ~」
ガイウスは何やらにやにやしながらエルに流し目を送った。
「お前さん、このわしに一体何をさせるつもりなのじゃ?まったく……嫌な予感しかせんではないか……」
エルは上唇を引きつらせながらとても嫌そうな顔つきをして、深いため息を付くのであった。




