第千四百二十九話 おもちゃ
「わかった、わかった。ガイウス君は以前にイオーヌと会っていると言うんだね?」
笑いを堪えながら問うシェスターに対し、ガイウスが少し口を尖らせて答えた。
「そうだよ。たぶんだけどさ……」
するとカルラが横やりを入れた。
「たぶん~?ずいぶんとあやふやな物言いじゃないかい?」
ガイウスは真顔でカルラを睨み付けて言った。
「混ぜっ返すなよ。ハッキリと何時、何処でとかは覚えていないんだよ。ただ、どこかで出会っているはずなんだよ……」
するとシェスターが助け船を出した。
「ふむ、イオーヌはどうだ?本当に会ったことはないか?」
イオーヌは右手の人差し指をあごに当てて考えた。
「ん~……ないと思うけど……本当に前に会っているのかしら?」
イオーヌが可愛らしく小首を傾げた。
ガイウスは自らの記憶を必死にたぐるように、上を見上げて考えた。
「……会ったことがあると思うんだけどなあ~?それとも人違いなのかな~?……」
ガイウスが自信なさげに言った。
するとカルラが再び混ぜっ返した。
「おやおや、ずいぶんと自信なさげじゃないかい?やっぱり本当は口説いていたんじゃないのかい?」
ガイウスはイライラから頬をピクピクと大きく引き攣らせた。
「……いや、だからさ…………もういいよ。わかったよ。俺が口説いたってことでいいよもう……」
ガイウスは完全に切れた。
そしてプイッとそっぽを向いたのだった。
するとカルラが腹を抱えて笑った。
「切れた、切れた。この馬鹿、切れおった」
シェスターは笑いを堪えながらカルラを窘めた。
「……カルラ様、どうかその辺で……」
「ほう、シェスターよ。ずいぶんとかばうではないか?実はお前も同じ穴のむじなだったりするんじゃないのか?」
カルラの矛先が、シェスターへと向いた。
シェスターはコホンと一つ咳払いをすると、落ち着いた声音で冷たく言い放った。
「もちろんそのようなことはありません」
自分に向いた矛先を、シェスターの怜悧な言葉が打ち落とした。
カルラは途端につまらない表情となった。
「シェスターよ。お前はこういう時、本当に面白くないな?」
するとシェスターがすかさず答えた。
「当然です。わたしはカルラ様のおもちゃになる気はございませんので」
するとガイウスがクルッと振り返って恨み言を言った。
「あ~そうだね~。俺はどうせカルラのおもちゃだよ~。そうさ、いつまでもそうやって遊べばいいさ。この人でなし……」
ガイウスは完全にふて腐れた表情で、恨めしそうに繰り言を言い募るのであった。




