第千四百三話 館の造り
「あら、わたしたちの館にそんなに興味があるの?」
イオーヌがシェスターをからかうように、笑いながら言った。
シェスターは軽く肩をすくめ、言った。
「ああ、とても興味があるな」
「あら、そうなの?なら、教えてあげるわ」
イオーヌは会話を楽しむように言った。
シェスターもその辺を判っているのか、イオーヌに合わせるように言った。
「それはありがたいな。では教えてくれるかな?」
「う~ん……そうね。どう説明したらいいかしら?これって結構難しいわね」
「そうか?自分たちが普段暮らしているところなのではないか?」
「そうよ。そうだけど……ねえ、わたしが説明するのは難しいから、質問してよ。そうしたらそれに答えるわ」
イオーヌの提案にシェスターが同意した。
「了解した。そうだな……それでは、どのような様式の建物なのかな?」
「様式?……そうね、それは普通じゃないかしら?今向かっているカルビンの邸とあまり変わりは無いわ」
「カルビン邸と?ならば普通ではないだろう。あの邸はカルビン卿の所有だけあって、かなり豪華な造りだからな」
「そうね、たしかにそうかも」
あっさり認めるイオーヌに、シェスターが少々困り顔となった。
「……まあいい。カルビン邸と似ているということは相当に豪華な造りのようだが、大きさはどのくらいなのだ?」
「大きさか……カルビンの邸よりかは大きいわね」
さらっと驚くべきことを言うイオーヌに、シェスターは思わず笑ってしまっていた。
「そうか、それは凄いな。世界最強国家たるローエングリン教皇国において、絶大な権勢を誇るカルビン卿の別荘よりも大きいとはな」
言われて初めて気がついたとばかりに、イオーヌが驚いた表情を見せた。
「そうね。そう言われてみれば確かに凄いわね。でもわたしからすると、あの館しか知らないからしょうがないでしょ?」
「なるほど。確かに物心着いた頃から見慣れていれば、それが当然と思ってしまうだろうしな」
「そう、そうよ、それよ」
イオーヌはさも嬉しそうに言った。
シェスターはうなずき、さらに質問を続けた。
「ふむ、では周りには何がある?」
「周りって?」
「周囲の風景だ。外には出ないということだが、窓はあるのだろう?どのような風景が広がっているのかね?」
シェスターの質問の意味を理解したイオーヌが、すかさず答えた。
「なあ~んだ。そういうことね。それなら……湖よ。周りは湖に囲まれているわ」
「ほう、湖か。それは風光明媚だな?」
するとイオーヌの顔が微妙に曇ったのだった。
「……そうかしら?ずーっと見てるから、もう見飽きちゃったわ」




