第千四百四話 カルビン評
「そうか、外にほとんど出ないのなら確かに飽きるな?」
シェスターが苦笑いを浮かべながら言った。
イオーヌは朗らかに笑った。
「そうでしょ?いくら館が広くってもずーっと中にいるんだもの。景色なんてもうほとんど見ないわよ」
「ふむ……だがそれで退屈はしないのか?」
シェスターの問いに、イオーヌがすかさず答えた。
「するわ。たまにね」
「たまになのか?わたしなどは一週間も家に引きこもっていたら、とてもじゃないが耐えられなくなると思うが」
するとイオーヌが首をひねった。
「そう?……う~ん、たまに暇だな~って思うことはあるけど、いつもじゃないわ」
「そうなのか?しかし、館がいくら広いとはいっても、そんなに沢山の人がいるわけではないだろう?」
「ええ、そうね。少ないわよ」
シェスターはそこでさらに突っ込んで質問した。
「ほう、何人なのだ?」
イオーヌは軽く微笑むと、とぼけた様子で答えた。
「さあ~、何人だったかな~」
「ふむ、それは誤魔化すのだな?」
「あら、わたし誤魔化したかしら?」
イオーヌが可愛らしく言った。
シェスターはまたも苦笑を浮かべた。
「しているではないか」
「さあ~どうでしょうね?」
シェスターは、イオーヌの様子が柔らかではあるが頑なであったため、諦めた。
「わかった。ではまた話題を変えよう」
イオーヌは可愛らしい笑顔をそのままに言った。
「そう。いいわよ。どうぞ?」
イオーヌに促され、シェスターがしばし考え込んだ。
「……そうだな。では、これから向かう先の人物について聞こうかな」
するとイオーヌの顔が途端に曇った。
「カルビン?……別にわたしに聞かなくったって、この後会うんだからいいじゃない」
「いや、君のカルビン評をちゃんと聞いておきたいと思ってね?」
「わたしの?さっき言わなかったっけ?」
「言ったな。だがそう多くは語っていないと思ってね。出来れば詳しく聞いておきたい。なにせ我々の中にカルビンと面識のある者はいないのでね」
「ふ~ん、まあいいけど……でもあんまり話したくはないわね……ああ、でも別に隠そうってわけじゃないわよ?単に嫌いな人間のことを話すのが嫌ってだけよ?」
イオーヌが顔をしかめて言った。
シェスターは何度もうなずき、イオーヌに同調している風を装いながら言った。
「そうか。だが実際どうなのかな?カルビン卿を嫌いなのは判ったが、彼について評価できる部分はあるかね?」
「評価?……そうね。頭は相当いいわね。それも……恐ろしいほどね」
イオーヌはそう言うと、目を細めて遠くを見つめるのだった。




