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BANされた俺、なぜかゲーム運営側で働く ~VRMMORPGにクソ真面目に行政法をぶち込んでみました~  作者: Altis―法律を物語に翻訳中―
第4章 Passin’ Thru ―音信― 第2部 Barrister in the Starlit Salon

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Shout to the Boundary! —閾の向こうへ—

本作は、法律を参考にして作ったフィクションです。


現実とは、少し違う顔をしています。


今回は、簡単なガイドを添えておきます。


第一段階の追加措置が始まってから四時間、クロセたちは、ひよこ商会への影響を記録します。

確認するのは、残りの時間の制限を止めてもらうために、黒環書庫へ何を示せるか、ということです。

挿絵(By みてみん)






【世界標準時】

二十二時三十八分



 発動まで、あと二分。




 星空サロンの中央に、クロセは一枚の記録板を開いた。


「改めて、確認することを共有します」


 飛び交っていた声が、少しずつ止まる。



 助かる。

 この人数が一斉に喋ると、本当に何も聞こえない。




 記録板の上に、五つの項目を並べた。





【執行停止申立て・確認事項】

一 措置によって、具体的な損害が生じたか

二 申立人の営業規模に照らして、その影響を軽視できないか

三 事後的な金銭の回復だけで、十分に償える損害か

四 見直しを待たず、いま止める必要があるか

五 停止を求める範囲を、どこまで限定できるか





「本案に理由があるか、停止が世界全体へ重大な影響を与えるかは、既にある資料と合わせて見ます。今夜確認するのは、この五つです」


「これを四時間で見るのでござるな」


「はい」


「よし! やるぞ! 全員気合い入れろ!」


「いえ」


 クロセは首を振った。


「お願いしたいことがあります」


 記録板の横に、もう一枚の板を開く。





【今夜の観測】

一 ひよこ商会に何が起きるか

二 この措置を受けて、人がどう動くか





「グレンさんには、二つ目をお願いします」


「ミナトじゃなくて外見てろってのか」


「顔の広いグレンさんが適任です」


「その言い方、便利だな。断りにくい」


 周囲から小さな笑いが起きた。


「人の動きですね」


 リラが確認する。


「はい。出る人、入る人、戻る人。確認のために同じ操作を繰り返す人も含めて、何が増えるかを見てください」


「分かった。人の方はこっちで見る」


 グレンが連絡窓を開いた。


「シオンさん。この五つと同じ目線で、ひよこ商会以外も記録してください」


「対象登録領域全体ですか」


「はい。件数と、同じ事象が繰り返されているかを重点的に」


「分かりました」


 新しい記録窓が開く。


「今回の申立てにも使いますか」


「必要になれば。ただ、ひよこ商会とは分けてください」


 これで役割は分かれた。




 ひよこ商会は、クロセとシグレ。

 人の動きは、グレンとリラ。

 全体への広がりは、シオン。




「過去の判断では、どこが厳しいでござるか」


「営業上の損失です」



 取引が減る。

 売上が落ちる。

 困る。それは間違いない。




 だが、執行停止では、それだけでは終われない。


「後で金銭によって回復できる損害と判断される可能性があります」


「損しただけじゃ止めねえ、か」


 少し離れたところから、グレンの声が飛んできた。


「その言い方は粗いですが、おおむね」


「今日は認めるの早いな」


「私も少し諦めてきましたので」


 小さな笑いが起きた。


 クロセは次の記録を開く。




【ひよこ商会】

一時間当たり平均取引件数


二十二時台 十二・一件

二十三時台 十八・四件

〇時台   二十・三件

一時台   十七・八件




「〇時が一番多いのでござるか」


「はい。二十三時から二時頃までが、主要な営業時間です」


「そこへ、いまから措置が入る」


 またグレンだった。


「そうです」


 通常時の記録の隣に、空欄を作る。





【措置発動後】

観測中




「絶対数だけではなく、ミナトさんの店にとって、どの程度の影響かを見ます」


「大きい店の十件と、小さい店の十件では意味が違うでござるな」


「はい」


「店が潰れるかも見るのか?」


「事業の継続が危うくなるなら、重要な事情です」


「なるのか?」


「なりません」


 そこは即答できた。


「少なくとも、ミナトさんから、そうした報告はありません」


「正直だな」


「事実ではないことは書けません」


「じゃあ、何を書く」


「起きたことを、そのままです」


 言ってから、空欄を見る。

 簡単に言った。




 実際には、そこが一番難しい。




 取引が一件失われた。


 それを黒環書庫はどう見る。




 営業上の損失。

 金銭で回復可能。




 それで切るのか。


 小規模店舗の主要時間帯という事情まで拾うのか。


 どこで線を引くのか。


「それが、物差しを見に行く、でござるな」


 シグレは小さく笑った。


 クロセは笑えなかった。


「事実を積み重ねた結果、それでも理由がないと言われるなら、それは黒環書庫の判断です」


 空欄へ目を戻す。


「その判断にも、物差しがあると確認できます」




【世界標準時】

二十二時四十分


【第一段階追加措置】

発動




 何も起きなかった。


 正確には。

 何も起きたようには見えなかった。


 空は割れない。

 石畳も崩れない。

 星空サロンのランプも、変わらず揺れている。


「……始まった?」


 誰かが聞いた。


「発動記録を確認しました」


 シオンの声が返る。


「本当に?」


「はい」


「もう少し、こう……始まった感じは」


「ありません」


「ないのか」


 また、小さな笑いが起きた。


 世界を左右する措置というものは、案外静かに始まるらしい。


      ◇


 最初の報告は、ミナトから届いた。




【ひよこ商会】

補充完了。

市場表示への反映なし。




 クロセは読んだ。


 まだ、申立書には書かない。


「使わないのでござるか」


「困っていることと、執行停止が必要な損害が生じていることは別です」


「厳しいでござるな」


「黒環書庫も、そう見る可能性があります」


 シグレが観測記録を開く。




 店先。

 市場へ続く道。

 少し離れた取引所。




 三か所。


 客には声をかけない。


 誘導もしない。


 ただ、見る。


 何も起きてほしくない。


 それは本音だった。


 だが。

 何も起きなければ、申立てに使える事実も増えない。




 嫌な仕事だ。




「いまは待つしかないでござるな」


「はい」


 クロセは空欄を見た。


      ◇


「動きが出ました」


 シオンの声が聞こえた。


「どこだ」


「対象登録領域から外への移動が増えています」


「制限を避けてるのか?」


「理由は、まだ分かりません」


「まあ、外へ出るのは分かる」


「対象登録領域内への移動も増加しています」


「……中にも?」


「はい」


「なんで中へ入るんだよ」


「スレッドでは仲間が残っているから、と言っています」


「本人が入ったら重くなるだろ!」


「本人に言ってください」


「言うよ!」


 うるさい。


 クロセは一度だけ顔を上げた。




挿絵(By みてみん)




 グレンの前には、いくつもの記録窓が開いている。


「倉庫更新の再確認も増加しています」


「待たされたから、もう一回開いてる?」


「その可能性があります」


「市場は」


「迂回検索が増えています」


「理由表示は?」


「参照が増加しています」


「移動して、探し直して、理由も読み直してるのか」


「はい」


「止めた分、別の処理が増えてるじゃねえか」


「一部負荷は低下しています」


「全体は?」


「想定との差が広がっています」



 向こうも忙しい。




 だが、クロセがそちらへ手を出せば、目の前の事実を取りこぼす。




 見るべきものは。




 目の前の空欄だ。


      ◇




【ひよこ商会】

欠品表示継続。

利用者一名、店外へ移動。




 次の報告が届いた。



 店先の観測記録にも、同じ動きが残っている。



 商品棚を確認。


 店を出る。


 市場へ向かう。


「追跡は」


「市場側へ引き継いだでござる」


「干渉していませんね」


「見ているだけでござるよ」


 数分後。


 市場側から報告が届いた。



 同種商品を購入。

 取引終了。




 そこで初めて、クロセは申立書へ文字を入れた。


 補充は完了。


 表示されない。


 利用者は店を離れた。


 別市場で、同種商品を購入。


「一つ目」


 シグレが言った。


「具体的な損害。措置との繋がりも確認できる」


「はい」


「取引機会の喪失」


「そこまでです」


「店の信用への影響は」


「まだ書けません」


「継続客を失った可能性」


「推測です」


 一行だけ残す。


 少ないが、これ以上書けば事実から離れる。


「細いでござるな」


「太くすれば、事実から外れます」


「では、細いまま行くでござる」


 そうするしかない。


      ◇


「待て待て待て! 一人ずつ!」


 また隣が始まった。


「全部つながってます!」


「つながってても、口は一個ずつ使え!」


 笑い声が起きる。

 クロセは顔を上げなかった。


「対象領域への移動、さらに増加しています」


「このままじゃ、向こうも次を切るぞ」


「追加措置ですか」


 リラの声だった。


「世界を落とせないなら、やるしかなくなる」


 少し間があった。


「今は動くな。助けるなら、移動じゃなく記録を送れ」


「抗議目的の移動は?」


「止めろ。何度も開いて確認してる奴も、一回閉じろ」


 そして。


「はいはい、世界を救いたい奴から座れ! 走るな! 開くな! まず報告!」


「指示が雑です!」


「難しく言っても仕方ないだろ!」


「今それを使います?」


「使える言葉は使う!」


 また笑いが広がった。


 隣で、シグレが小さく息を吐く。


「隣が喧しいでござるな」


「集中してください」


「拙者に言うのでござるか?」


「私にも言っています」


「なるほど」


 クロセは申立書へ戻った。


 まだ一つ。

 それしか取れていない。


      ◇


【世界標準時】

一時二分




 〇時台の取引記録が確定した。




【ひよこ商会・〇時台】

通常平均 二十・三件

本日実績 五件




 五件。


 クロセは、数字を見直した。


 主要時間帯で、通常の四分の一ほど。


 これはひどい。


「……かなり落ちたでござるな」


「はい」


「全部、措置の影響でござるか」


「分かりません」


「ここまで落ちても?」


「ここまで落ちてもです」


 差が大きいことは、損害の程度を見る資料になる。


 だが、その全部を措置のせいにはできない。


 クロセは個別記録を開いた。


「措置との繋がりを確認できたものだけを、損害として数えます」


 二つ目。


 営業規模に照らして、軽視できない影響か。


 この数字なら置ける。




 ただ。

 数字が大きく崩れたことと、その全てを措置による損害と言えることは、別だった。




      ◇


「倉庫、まだ開かないです!」


「もう一回確認しました!」


「だから開き直すなって言ってるだろ!」


「でも更新されたか分からなくて!」


「分からないなら、分からないって送れ!」


「市場も検索し直してる人が増えています」


 シオンの声が続く。


「同じ商品を何度も?」


「はい。表示が変わったか確認しています」


「確認するために重くしてどうするんだよ……」


 今度のグレンの声は、少し低かった。


「悪気がないのが一番面倒だな」


「支援目的の確認も含まれています」


 リラだった。


「分かってる。だから怒れねえんだよ」


 少しだけ、サロンが静かになった。


 クロセは手を止めなかった。




 外へ出る。

 中へ入る。



 何度も開く。

 検索し直す。


 一つ一つなら、不自然ではない。


 むしろ、状況が分からなければ当然の行動だった。


 それが重なると。




 世界が、さらに遅くなる。




「隣が喧しいでござるな」


 シグレが小さく言った。


「さっきよりは静かです」


「内容が重くなっただけでござる」


 その通りだった。


 クロセは申立書へ目を戻した。


 いま見るべきものは、こちらだ。




【ひよこ商会】

表示遅延継続。

利用者の離脱あり。

一部、別市場での同種商品購入を確認。





 確認できないものを外す。




 戻ってきた者。


 別の商品を探していた者。


 そのままログアウトした者。


 理由が分からない者。




 残すのは。



 欠品表示。

 店外移動。

 別市場。

 同種商品の購入。



 そこまで。


「三つ目は?」


 シグレが聞いた。


「事後的な金銭の回復だけで、十分に償えるか」


「個別の取引は戻らないでござる。でも、代金相当額は計算できる」


「はい」


 クロセの手が止まった。





 ここだ。





 取引そのものは戻らない。



 だが。

 失った代金は、数えられる。




 黒環書庫が切るなら。




 おそらく、ここだ。




「信用や顧客基盤への影響は」


「具体的には示せません」


「弱いでござるな」


「はい」


「五件まで落ちているのに」


「それでもです」


 そこへ、ミナトから連絡が届いた。




【ひよこ商会】

売上はかなり落ちている。

客も流れている。

ただし、これで店が潰れるとは書くな。

事実ではない。




 クロセは、その文を読んだ。


 少しだけ、口元が緩んだ。




 事業継続が困難になるとは書かない。


 営業基盤が失われるとも。


 信用が回復不能に傷ついたとも。





 書けるのは。




 主要な営業時間を直撃したこと。

 取引が大きく落ちたこと。

 その一部について、措置との繋がりを確認できたこと。

 表示が戻っても、終わった取引は戻らないこと。




 そこまで。



      ◇


 一度目の見直しが過ぎた。




 措置は続いた。




 二度目も。



 変わらない。




「四つ目」


 シグレが言った。


「見直しを待たず、いま止める必要」


「主要な営業時間が、もう削られています」


「後で解除されても、今夜の取引は戻らない。残りを止めれば、まだ避けられる」


「はい」


「ここは通りそうでござるな」


「比較的、通しやすいと思います」


「硬いでござるなあ」


「申立書ですから」


 後ろでは、まだ声が飛んでいる。


「対象領域へ入ろうとする動き、減少しています」


「再移動は?」


「落ち着き始めました」


「確認は?」


「一部で継続」


「もう一回言え! 開くな! 分からないなら、分からないって報告しろ!」


「グレンさん」


 リラの声。


「少し休んでください」


「休んでる暇あるか」


「先ほど、目を閉じていました」


 シオンだった。


「考えてた」


「いびきに似た音を確認しました」


「十秒でいびきはかかねえよ!」


「では、異常音として保存します」


「消せよ!」




 笑い声が広がる。

 クロセも少しだけ笑った。


 ほんの少しだけ。


 すぐに申立書へ目を戻す。




 まだ終わっていない。




      ◇



【世界標準時】

二時四十分




 四時間分の記録が揃った。


 シグレが、最後の観測報告を閉じる。


「店先、移動経路、取引所、ミナト殿の店舗記録。互いに確認できるものだけ残したでござる」


「ありがとうございます」


「五つ目」


「措置全体の停止は求めません」


 クロセは申立ての範囲を開いた。


「ひよこ商会の商品補充と市場表示に生じている制限だけ。残りの期間についてのみです」


「世界維持の必要性も否定しない。ミナト殿に具体的な損害を生じさせている範囲だけ」


「はい」


 シグレが最初から読み直す。


 クロセも、同じ文字を追った。




 具体的な損害はある。

 主要時間帯への影響も大きい。

 見直しを待てば、残りの営業時間も失われる。

 停止を求める範囲も狭い。




 ただし。


 事業継続が危ういとは言えない。


 金銭だけでは十分に償えない営業基盤の損失も、示せていない。



「一、二、四、五」


 シグレが言った。


「三だけが、どこまで届くか分からないでござるな」


 シグレは申立書を閉じた。


「現状では、これが精一杯でござるね」


「はい」


「運営なら、どう返すと思う?」


 シグレが聞いた。


 クロセは顔を上げた。


「まず、重大な損害を避けるための緊急の必要性はない。金銭的な救済が可能だ、と」


「次は」


「世界全体の維持と比較すれば、一店舗の営業上の不利益は、停止を必要とするほど重大ではない」


「まだあるな」


 クロセは、シオンが集めている記録群へ一度だけ視線を向けた。


「個々の事実は認める。ただ、それだけでは措置全体の影響を適切に示していない」


「四時間。一店舗」


「客観的に評価するには、時間的にも件数的にも足りない。そう言うと思います」


 シグレは黙って聞いていた。

 

 運営側から見れば。

 反論の形は、かなり読めた。


「そこまで読めているなら、黒環書庫も予想してるな?」


 クロセは少し考えた。


「おそらく。個々の事実は認めても、その評価までは採らないと思います」


「なら、かなり厳しいな。それでも出すのか」


「出します」


 クロセは即答した。


「勝つため?」


「もちろんです」


 少し間を置く。


「ただ、ここまで積めたからこそ、反論も裁定も事前に予想できます」


 申立書へ目を落とす。


「その予想と、実際の判断がどこでずれるかを見たい」


 シグレの口元が、少しだけ上がった。


「なるほど」




 嫌がってはいない。

 むしろ、こういう戦い方は嫌いではないらしい。




「予想どおりなら?」


「次に必要な資料が分かります」


「外れたら」


「もっと重要です。こっちが見えていない物差しがある」


 そこでシグレが、シオンの記録窓を見た。


「だから、最初から他も見せていたのか」


「はい」


 ひよこ商会とは別に。



 対象登録領域への移動。

 外への移動。

 再移動。

 倉庫の再確認。

 市場の迂回検索。

 理由表示の再参照。




 同じような動きが、別の場所でも積み上がっている。


「今回で足りないなら、その足りない部分を次に使う」


「そうなります」


「いいな、それ」


 シグレは短く笑った。


「負けると決まったわけではありません」


「分かってる」


 クロセは申立書を受け取った。




 細い。

 かなり細い。




 それでも。



 今ある材料で作れる道は、ここまでだった。


「なら、出そう」


「はい」


 ミナトへ確認を送る。


 返事は、すぐだった。




【申立人確認】

確認した。

出していい。


ミナト




 黒環書庫への送信窓を開く。




【黒環書庫】

執行停止申立書


【提出しますか】




「出せるか?」


 グレンの声が飛んできた。


「はい」


「勝てそう?」


「分かりません」


「こういう時は嘘でも笑って勝ちますっていうもんだ」


 グレンはいつもの笑みを浮かべてそう言った。


 たぶん、それでいい。


 グレンは、自分の仕事をしている。

 

 人を動かし、声を集める。

 

 それをどう使うかは、クロセにもまだ見えていなかった。


 確認欄を押す。





【受理】





 小さな表示だった。


 歓声は起きない。


 誰かが息を吐いた。


 誰かが、一度だけ拍手した。




 それだけだった。




 送信窓が閉じる。


 ミナトの申立資料も消えた。


 その奥に。


 もう一つの記録群が残っている。





【第一段階追加措置・全体影響記録】


観測継続中





 クロセは、その表示を見た。






 答え合わせは、これからだった。




執行停止申立書


                 申立人

                 ひよこ商会 代表 ミナト


対象措置

第一段階追加措置のうち、ひよこ商会の商品補充及び市場表示に関する処理制限


第一 申立ての趣旨


第一段階追加措置の残存期間中、ひよこ商会の商品補充及び市場表示に関する処理制限の執行を停止するとの決定を求める。


第二 具体的な損害の発生


第一段階追加措置の発動後、ひよこ商会では、商品補充処理が完了しているにもかかわらず、市場表示への反映が遅れる状態が継続した。


その間、欠品表示を確認した利用者が店舗を離れ、別市場において同種商品を購入した事実が、店舗記録、周辺観測記録及び取引記録により確認されている。


第三 申立人の営業規模及び損害の程度


ひよこ商会における通常時の一時間当たり平均取引件数は、次のとおりである。


二十二時台 十二・一件

二十三時台 十八・四件

〇時台   二十・三件

一時台   十七・八件


同店は、二十三時から二時頃までを主要な営業時間としている。


措置発動後、最も取引件数の多い〇時台の取引実績は五件にとどまり、通常平均の約四分の一まで低下した。


もっとも、この差の全てが本件措置によるものとは断定せず、店舗記録、周辺観測記録及び取引記録により措置との関連を確認できた取引機会の喪失を、個別に疎明する。


第四 事後的な回復の限界


市場表示が後に回復したとしても、その間に他の市場で完了した個別の取引が回復するものではなく、失われた取引機会そのものを事後的に取り戻すことはできない。


もっとも、申立人は、本件措置によって直ちに事業継続が困難になること、又は営業基盤が失われることまで主張するものではない。


以上の事情は、申立人の営業規模及び損害が主要な営業時間に集中していることと併せて、損害の重大性を基礎づける。


第五 緊急の必要性


本件措置による処理制限は、申立人の主要な営業時間中も継続している。


予定された見直しを待つ間にも営業機会は失われ、事後的に措置が解除されたとしても、既に終了した当夜の取引を回復することはできない。


したがって、措置の残存期間について執行を停止し、今後発生する重大な損害を避けるため、緊急の必要がある。


第六 停止を求める範囲


申立人は、第一段階追加措置全体の停止を求めるものではない。


世界全体の維持という本件措置の目的を否定するものではなく、ひよこ商会の商品補充及び市場表示に具体的な損害を生じさせている範囲について、残存期間中の限定的な停止を求める。


求める停止は、一店舗の特定の処理に限定されており、世界全体の維持に重大な影響を及ぼすおそれはない。


以上。


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