表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BANされた俺、なぜかゲーム運営側で働く ~VRMMORPGにクソ真面目に行政法をぶち込んでみました~  作者: Altis
第2章 内部救済 第2部 電気羊は救いの夢を見るか ―Do Electric Sheep Dream of Grace?―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/59

白の後に

※今回は、本文の約四倍の補足メモがあります。

読み飛ばしても問題ありません。

ハル編で行われていた処理や、それぞれの立場について、大変詳しく整理しています。


アイさん曰く、「必要な説明です」とのことです。

……そういうことにしておきます。




 白い部屋が、白に沈んだ。


 ハルも、ハクも、その中に消えた。




 気がつくと、俺は管理空間に立っていた。


 白い床。


 白い壁。


 白い表示板。


 さっきまでいた部屋と、色だけなら似ている。


 でも、違う。


 ここには、まだ俺の影がある。


 隣には、アイがいる。


「終わったのか」


 俺は聞いた。


「人事公平ルートの主要処理は完了しました」


「主要処理、全部じゃないんだな」


「はい」


 アイが、白い表示板を開いた。




【完了報告】


【本人通知:完了】

【療養状態移行:開始】

【現場補助担当解除:完了】

【責任記録:維持】

【被害ログ:維持】

【組織改善接続:完了】






 完了。


 その二文字が、やけに薄かった。


 ハルが救われたとも書いていない。


 許されたとも。

 ハクが最後までそこにいたことも。

 たどたどしい歌が、白い部屋に残ったことも。


「救われたのか」


 俺は言った。


「不明です」


 アイは短く答えた。


「ハクと同じこと言うな」


「同じ記録を見ています」


「だろうな」


 白い部屋を思い出す。


 ハルの傍にいたハク。


 泣きもせず。

 笑いもせず。

 それでも、最後まで席を立たなかった。


「記録は閉じられました」


 アイが言った。


「閉じられた?」


「はい」


「消えたわけじゃない」


 アイが頷くと表示板の一部が拡大される。



【責任記録:維持】

【被害ログ:維持】

【組織改善接続:維持】



「閉じることと、消すことは違います」


「また箱か」


「はい」


「お前までハクみたいなこと言うな」


「必要です」


 少しだけ、笑いそうになった。


 笑えるような話ではない。


 でも、息はできた。


「気持ち悪いくらい、整理されるな」


「はい」


「整理したら、気持ちも片づくのか」


「いいえ」


 アイは短く答えた。


「整理は、気持ちを消すものではありません」


「じゃあ何だよ」


「混ざらないようにするものです」


 俺は、表示板を見た。


 ハルの責任と、ハルの状態。

 組織の責任と、個人の責任。

 俺の怒りと、処遇判断。

 俺の被害と、組織改善。


 混ざったままなら、たぶん何かが潰れる。


 ハルは、いろいろなものを一つの箱へ入れすぎた。


 俺も、あのままなら、誰か一人へ全部を押しつけていたのかもしれない。


「俺の救済って、これなのか」


 俺は聞いた。


「一部です」


「しょぼいな」


「完全な回復ではありません」


「知ってる」


 戻らなかったものはある。


 ランキングも。

 報酬も。

 人間関係も。

 全部が、元の場所へ戻ったわけではない。


 それでも、消されたことにはされなかった。


 俺の被害も。

 ハルの責任も。

 顔のない組織の失敗も。


 混ざらないまま、残った。


「でも」


 アイが言った。


「あなたの被害は、記録から消えません」


「そうだな」


「あなたの経験も、消えません」


「それ、いいことか?」


「評価は未了です」


「嫌な返事だな」


「ただし」


 アイの前に、小さな表示が開いた。



【執行職務代理者】

【状態:継続】

【被害ログ:維持】

【処遇実行経験:追加】

【支援対象理解:更新】



「経験値みたいに出すな」


「実際に、理解が更新されています」


「レベルアップか?」


「権限上昇ではありません」


「じゃあ何だよ」


 アイは、少しだけ間を置いた。


「重くなりました」


「ステータスに出すな、そんなもん」


 でも、たぶん正しい。


 俺は、強くなったのではない。


 重くなった。

 知ってしまった。

 見てしまった。

 押してしまった。


 その重さは消えない。


 でも、記録になる。



 記録になるなら、たぶん持ち運べる。



「分かったよ」


 俺は言った。


「いや、分かりたくないけど、分かった」


「記録しますか」


「……そこはしていい」


「記録します」


 短い表示が加わった。



【役割理解:更新】



「短いな」


「十分です」


 アイが表示を閉じる。


 白い光が消えると、記録のない管理空間は少しだけ広く見えた。


 そこまで考えたところで、張っていたものが少しだけほどけた。


 俺は近くの作業台へ手をつき、その縁に腰を下ろす。




 白い床が、少しだけ遠くなる。




 ようやく、息が吐けた気がした。


 その様子を、アイは静かに見ている。


「疲労を確認しました」


「確認するな」


「顔に出ています」


「……そんなにか」


「はい」


 短く答えると、アイは手元の記録板へ一度だけ目を落とし、それから、何も入力せずに閉じた。


 小さな光が消える。


 静かな管理空間に、俺たちだけが残った。


 そのまま、アイが一歩だけ近づく。


 さっきまで埋まらなかった距離が、今は何のためらいもなく縮まった。


 腰を下ろした俺と、立ったままのアイ。


 自然と、顔の高さが近くなる。


「何だよ」


 白い袖が、ゆっくりと持ち上がった。


 その手が、俺の頭へ伸びる。


「あなたは頑張りました」


 そのまま、アイの顔が少しだけ近づいた。



挿絵(By みてみん)



「待て」


 俺は思わず身を引く。


「今、何をしようとしている」


「頭部への接触を伴う労いです」


「要は、いいこいいこだろ」


「はい」


「認めるのかよ」


「事実ですので」


 アイの手は止まらない。


 急ぐわけでもない。


 でも、このまま座っていたら、本当に撫でられる。


「俺、そういう趣味ないから」


「趣味の確認はしていません」


「そういう問題じゃない」


「疲労軽減に有効な可能性があります」


「俺には効かない」


「未確認です。確認する価値はあります」


「確認するな」


 俺は立ち上がる。


 アイの腕と表示板の間を、身をかがめてすり抜けた。


「逃げるぞ」


「宣言は不要です」


「追うなよ」


「追跡の不必要性は確認されていません」


「なら、そのまま止まってろ」


「はい」


 数歩離れて振り返る。


 アイは、本当に追ってこなかった。


 ただ、行き先を失った手だけが、少しだけ白い空間に残っていた。


「未実施として記録します」


「絶対するな」


「希望に従います」


 そう言って、ようやく手を下ろす。


 その顔は、もういつものアイだった。


 白い表示板の端に、新しい通知が浮かぶ。




【組織改善接続:開始待ち】

【支援到達性評価基準:更新対象】

【保留検知条件:見直し対象】

【次回処理:未設定】




「まだ続くのか」


 俺は言った。


「はい」


「本当に終わらないな」


「終わりません」


 アイは表示板を見たまま答える。


「記録の流れは、終わるためではなく、続けるためにあります」


 俺は、少しだけ黙った。



 白い部屋は閉じた。



 ハルとハクは、白の中に消えた。



 でも、記録は残っている。



 俺の被害も。



 ハルの責任も。



 顔のない組織の失敗も。



 そして、これから変えなければならない仕組みも。



 それは、救いではないのかもしれない。

 でも、救いではないものが、人を守ることもある。


 俺は、そのことを少しだけ知ってしまった。


 白い管理空間に、静かな時間が流れる。


 もう、デイジーベルは聞こえない。


 それでも、あの歌は、どこかでまだ続いている気がした。


 俺は、小さく息を吐く。


「やるか」


「はい」


 アイが頷く。


 俺たちは、並んで前を向く。


 白い画面の先には、まだ終わっていない仕事がある。




 隣には、アイがいる。




【アイの補足メモ】

※本作では、制度の正確性に可能な限り配慮しています。ただし、本章では物語性を優先し、実際の制度における機関の構成、権限および役割の一部を再構成しています。なお、本作に登場する人物、組織および制度は、あくまでフィクションです。



一 人事公平ノードについて

本編に登場する人事公平ノードは、国家公務員制度における人事院の役割を主な参考としています。

ただし、人事公平ノードは人事院そのものではありません。

また、ハクが単独でハルの処遇を決定したわけでもありません。

最初に、この点を整理します。


1 任命権者と人事院

国家公務員の任命、配置、分限および懲戒は、原則として任命権者の権限と責任において行われます。

国家公務員法55条1項は、任命権が法律に定める機関へ属することを定めています。

一方、人事院は各府省の日常的な人事管理を行う機関ではありません。

中立的立場から、


・公平な人事行政

・職員の利益保護

・不利益処分に対する審査


などを担う専門機関です。

本編の人事公平ノードも、この「当事者から一定の距離を置き、公平性を確認する」

という考え方を参考としています。


2 不利益処分についての審査請求

国家公務員法90条1項は、職員が一定の不利益処分を受けた場合、人事院へ審査請求できることを定めています。

人事院は、


・処分を承認する

・修正する

・取り消す


などの判定を行います。

これは、処分した機関だけで結論を完結させず、第三者的立場から適法性および公平性を確認する制度です。

もっとも、現実の不利益処分審査は、


処分後


に行われます。

これに対し、本編では、ハクが処遇確定前から


・事情聴取

・状態確認

・責任整理


を行っています。

これは、現実制度をそのまま再現したものではなく、公平性確保という考え方を物語用に前段階へ広げたものです。


3 勤務条件に関する行政措置の要求

職員保護は、不利益処分だけではありません。

国家公務員法86条は、


勤務条件について行政上の措置を要求できる制度を定めています。


本編では、

ハルは相談ルートの表示を確認していました。

しかし、利用できませんでした。

ここで重要なのは、相談ルートと行政措置要求は、同じ制度ではないということです。

本編の相談ルートは、現場内部で支援を求める経路です。

一方、行政措置要求は、職員が人事院へ改善を求める制度です。

対象も、目的も、手続も異なります。

しかし、どちらにも共通する点があります。


制度が存在することと、実際に支援へ到達できることは同じではありません。


画面へ表示された。

制度は用意されていた。

利用できる状態だった。


それだけでは、支援が届いたとは言えません。


本人が、相談してよいと思えたか。

何を相談すべきか整理できたか。

支援へ実際につながったか。


そこまで確認して初めて、支援設計を評価できます。

本編で、【相談ルート表示済】だけでは組織側の対応を十分と整理しなかった理由は、このためです。


二 人事公平ノード・ハクと上位判断

本編では、ハクは、処遇を決定していません。


ハクが担当したのは、


・事実確認

・本人の聞き取り

・責任整理

・状態整理

・組織側要因整理

・被害ログ整理

・処遇方向の仮整理


です。

その後、【人事公平ルート:仮整理送付】が行われ、任命権者相当の上位確認へ接続されています。

さらに、


【仮整理:承認】

【補足:一部修正あり】


という結果が返されています。

つまり、本編では、


調査、

整理、

最終判断、

実行


を分離しています。


誰が、どこまで担当したのか。


記録上確認できるようにするためです。

ここで重要なのは、


公平性を担当する機関であっても、調査・判断・執行を一人へ集中させない


という考え方です。

そのため、最終実行前に上位確認が表示されています。


三 主人公とアイの立場

主人公は、ハルによる一時停止処理の被害を受けた本人です。

そのため、【被害関係者関与制限:維持】とされています。

主人公は、被害ログを提出し、被害関係者として意見を述べています。

しかし、処遇内容を決定してはいません。

被害を記録することと、相手方の処遇を決定することは、別の問題だからです。

そのため本編では、主人公の意見は、【被害関係者意見】として記録されました。


一方、アイも、処遇を決定する立場ではありません。

また、アイは前任現場補助担当を支える補佐役として、本件の経過に関与していました。

そのため、完全な第三者でもありません。

だからこそ、本件では、処遇内容そのものの評価から距離を置いています。

担当したのは、


・現場側記録の維持

・手続経過の確認

・確定した内容と実行表示との整合性確認


です。

主人公から、「このボタンを押していいのか」と問われた場面でも、

アイは、「処遇は正しい」とは答えていません。

確認したのは、


実行端末が、上位確認を経て確定した内容を、そのまま実行するものである


という一点だけです。

本文で、アイが普段より距離を置いていた理由も、この立場によるものです。


主人公の被害。

前任補助担当として関わった自分。


どちらにも直接踏み込まず、最後まで記録者として立つ。

それが、今回のアイの役割でした。



四 分限および懲戒の公正

分限と懲戒は、どちらも職員の身分に関わる制度です。

しかし、目的は同じではありません。

国家公務員法74条1項は、次のように定めています。


すべて職員の分限、懲戒及び保障については、公正でなければならない。


地方公務員法27条1項も、次のように定めています。


すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。


公正に処遇するためには、問題となった結果だけを見るのではなく、


・本人が何をしたのか

・本人にどのような責任があるのか

・現在も職務を遂行できる状態にあるのか

・組織側にどのような要因があったのか

・どの制度の目的に基づいて処遇するのか

を分けて確認する必要があります。


本編では、当初、


【ハル】

【組織】

【被害】

【境界線】


とされていた項目を、


【ハル本人の責任】

【ハル本人の状態】

【組織側要因】

【被害ログ】

【境界線】


へ分けました。


本人に責任があることと、本人が職務を継続できる状態ではないこと。

本人の処理によって被害が発生したことと、その処理へ至るまでに組織側の問題があったこと。

被害を受けた側の怒りを記録することと、その怒りによって本人の処遇を決めないこと。


これらは、同時に成立します。

本編における、


「箱が増えたな」

「必要です」

「少なかったら?」

「誰かが潰れます」


という会話は、このための整理です。

分けることは、責任を薄めることではありません。

本人の状態を理由に、被害を消さないため。

被害を理由に、本人の状態を無視しないため。

組織側の問題を理由に、個人の行為を消さないため。

個人の行為だけを見て、組織側の問題を隠さないためです。


複数の事情を分けて扱うことは、責任を曖昧にすることではありません。


どの事実を、どの制度によって扱うのかを明確にするための整理です。


五 分限処分

国家公務員法78条は、職員を本人の意に反して降任し、または免職することができる場合として、主に次の事情を定めています。


・人事評価または勤務状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合

・心身の故障により、職務遂行に支障があり、またはこれに堪えない場合

・その官職に必要な適格性を欠く場合

・官制、定員または予算上の都合により、廃職または過員が生じた場合


分限は、職員の義務違反に対する制裁を主な目的とする制度ではありません。


現在の職務を継続させることが適当か。

現在の官職に置き続けることができるか。

勤務実績、能力、適格性および心身の状態などから判断する制度です。


そのため、失敗した。

問題のある処理を行った。

被害を発生させた。


という結果だけから、直ちに分限処分の結論が決まるわけではありません。

勤務実績不良を理由とする分限処分では、勤務の状況を示す具体的事実に加え、


・本人に対してどのような指導を行ったか

・どのような支援を行ったか

・改善の機会を与えたか

・改善の可能性が残っているか

・配置転換その他の措置が可能か


も確認対象になります。

人事院規則11―4でも、勤務実績不良を理由とする降任または免職について、指導その他の必要な措置を行ったにもかかわらず、なお勤務実績が不良であることが明らかな場合を前提としています。

単に一度の失敗が確認されたというだけで、直ちに分限免職へ進むものではありません。

本編のハルについては、


・一時停止処理を実行した

・追加確認を行わなかった

・相談ルートを使用しなかった

・個別事情の確認が不足していた

・主人公に被害を発生させた


という事実があります。

一方で、


・保留の増加によって判断負荷が高まっていた

・小規模な誤処理をきっかけに過剰に慎重になっていた

・相互に緊張する指示を同時に処理しようとしていた

・相談すべき内容を自分で整理できなくなっていた

・止まったことを認めれば、担当者として終わると思っていた

・判断能力の低下が疑われた

・現在の職務へ直ちに復帰できる状態か確認できていなかった


という事情も確認されています。

そのため、本件では、【問題となる処理を行った】という事実だけで処遇を決めるのではなく、


【現在、現場補助担当を継続できるか】

【療養後に職務能力を再確認する必要があるか】


という分限上の問題が中心となりました。

上位確認で、


【処遇方向:分限中心】


とされたのは、そのためです。

地方公務員については、地方公務員法28条1項が、勤務実績不良、心身の故障、職に必要な適格性の欠如などを理由とする降任または免職について定めています。


六 休職および療養

国家公務員法79条は、職員を本人の意に反して休職させることができる場合を定めています。

その一つが、 心身の故障のため、長期の休養を要する場合 です。

休職は、懲戒処分ではありません。

本人の義務違反に対して制裁を科す制度ではなく、一定期間、職務から離れた状態に置く制度です。


したがって、


【責任がない者だけが療養できる】


ということではありません。

反対に、


【職務上の責任がある者には療養を認めてはならない】


ということでもありません。


職務上の責任があるか。

現在、療養を必要とする状態にあるか。


この二つは、別々に確認します。

本編における、


【現場補助担当から解除】

【療養状態へ移行】

【能力評価および復帰可否確認を後日実施】


という処遇は、この考え方に対応しています。

ハルは、その場で元の職務へ戻されていません。

また、将来にわたって復帰不能と確定されたわけでもありません。

まず現場から離し、療養状態へ移行させます。

その後、


・療養後の心身の状態

・担当業務に必要な判断能力

・複数の指示を整理できるか

・困難が生じた際に支援を利用できるか

・同じ業務へ戻すことが適切か

・別の業務や段階的な復帰が可能か

・組織側の支援体制が改善されているか


を改めて確認することになります。

本編でハルが、


「戻れない?」


と尋ねた際、ハクは、


「今は戻れません」


と答えています。

また、


「あとでは?」


という問いに対しては、


「確認します」


と答えています。

復帰できると約束したわけではありません。

復帰できないと最終決定したわけでもありません。

現在の状態では復帰させず、

将来については、療養後の状態と職務能力を確認して判断するという意味です。

地方公務員についても、地方公務員法28条2項が、心身の故障のため長期の休養を要する場合などの休職について定めています。

ここで重要なのは、


療養へ移行させることは、責任を消すことではない


という点です。

そのため、本編では、

【療養状態移行:開始】と、

【責任記録:維持】が同時に表示されています。

両者は矛盾しません。


七 健康保持と組織側の措置

一般職の国家公務員の健康および安全については、人事院規則10―4が定めています。

同規則3条は、各省各庁の長に対し、所属職員の健康の保持増進および安全の確保に必要な措置を講じることを求めています。

職員が業務を継続できない状態になった場合、

その原因を本人の性格、能力または判断だけへ集約すればよいわけではありません。

組織側についても、


・業務量は適切だったか

・指示は明確だったか

・複数の指示が競合していなかったか

・相談経路は利用可能だったか

・本人の異常を把握する仕組みがあったか

・保留の増加を検知していたか

・警告後に個別確認を行ったか

・支援が表示だけで終わっていなかったか

・管理監督者が必要な措置を講じていたか


を確認する必要があります。

本編では、組織側において、


・警告表示は行われていた

・相談ルートは表示されていた

・追加確認も促されていた

・上位判断による返戻も行われていた

・遅延や品質低下に関する表示も行われていた


という事実があります。

つまり、組織が何もしていなかったわけではありません。

ただし、


・相談ルートを表示した後の再確認がなかった

・相談するかどうかを本人の判断へ依存していた

・保留が増加した後も個別確認が行われなかった

・上位からの返戻が、新たな判断負荷になっていた

・支援が本人へ届いたか確認していなかった

・長期保留を強制的に止める仕組みがなかった


という問題も残りました。


正しい警告を表示した。

相談先を設置した。

上位判断を返した。


それぞれの処理だけを見れば、誤りとは限りません。

しかし、それらが実際に本人を支援したかは別の問題です。

本編では、この点を、


【支援到達性の未評価】


として整理しています。


表示されたこと。

既読になったこと。

形式上、利用可能だったこと。


それだけでは、支援が届いたとは言えません。


本人が内容を理解できたか。

利用してよいと思えたか。

利用できる状態だったか。

利用しなかった場合に、組織側が止まっていることを検知できたか。


そこまで確認する必要があります。

このため、エピローグでは、


【支援到達性評価基準:更新対象】

【保留検知条件:見直し対象】


が残されています。

ハルを現場から外し、療養へ移すだけでは、

同じ環境に置かれた次の担当者が、同じように止まる可能性があります。

したがって、


【本人への処遇】と、


【組織側の改善】は、別の記録として残す必要があります。


なお、

【組織改善接続:完了】

と、

【組織改善接続:開始待ち】

は矛盾しません。

前者は、人事公平ルートから改善担当へ問題を正式に送付したことを示します。

後者は、送付を受けた改善担当側の具体的作業が、これから開始されることを示します。

接続が完了したことと、改善が完了したことは違います。

念のため、もう一度記載します。


本人を現場から外すことは、組織側の問題を解決することではありません。



八 懲戒処分

国家公務員法82条1項は、職員に対して懲戒処分を行うことができる場合として、主に次の事情を定めています。


・国家公務員法、国家公務員倫理法またはこれらに基づく命令への違反

・職務上の義務への違反、または職務の懈怠

・国民全体の奉仕者にふさわしくない非行


懲戒処分の種類は、

・免職

・停職

・減給

・戒告


です。

分限が、


現在の職務を継続できるか。

職に必要な適格性があるか。

心身の状態から職務に堪えられるか。


という問題を整理する制度であるのに対し、

懲戒は、職務上の義務違反や非違行為について責任を問う制度です。

地方公務員については、地方公務員法29条が懲戒処分について定めています。

本編では、ハルが、


・一時停止処理を実行した

・追加確認推奨を確認していた

・相談ルートの表示を確認していた

・それでも追加確認や相談を行わず処理を進めた

・その結果、主人公に被害を生じさせた


という事実があります。

そのため、


【ハル本人には責任がない】


という結論にはなりません。

本編でも、


「ここだけ見れば、ハルが悪い」


という主人公の言葉に対し、ハクは、


「はい」


「ハル本人の責任はあります」


と答えています。

また、最終処遇でも、


【責任記録:維持】


とされています。

一方で、


・複数の指示が相互に緊張していた

・誤処理を恐れて確認を増やし続けていた

・相談内容を整理できない状態にあった

・止まったことを認めれば、担当者として終わると思っていた

・判断能力の低下が疑われた

・組織側が長期保留を個別に拾わなかった


という事情も確認されています。

これらの事情は、ハル本人の行為を消すものではありません。

しかし、事案全体を懲戒だけで説明できないことを示します。

懲戒だけでは、


【現在の職務を継続できる状態か】

【療養を必要としているか】

【組織側にも再発防止上の問題があるか】


という問題を十分に処理できません。

そのため、上位確認では、


【処遇方向:分限中心】

【懲戒方向:限定的責任確認】


とされました。

懲戒上の責任を完全に否定するものではありません。

ただし、ハルの処遇全体を、制裁だけを中心に組み立てないという意味です。


責任を記録する。

現場から外す。

療養へ移す。

将来の復帰可能性を確認する。

組織側の問題を改善へ接続する。

主人公の被害を別の記録として残す。


本編では、これらを同時に行っています。


九 本件における処遇の整理

ここまで説明した制度を、本件へ当てはめます。

ハルについて確認された事実は、一つではありません。

まず、本人の行為として、


・一時停止処理を実行した

・追加確認を行わなかった

・相談ルートを使用しなかった

・個別事情の確認が不足していた

・その結果、主人公に被害を生じさせた


という事実があります。

これらは、ハル本人の責任に関する記録です。

一方、ハル本人の状態として、


・保留の増加によって判断負荷が高まっていた

・小規模な誤処理をきっかけに過剰に慎重になっていた

・相互に緊張する指示を同時に処理しようとしていた

・相談すべき内容を自分で整理できなくなっていた

・止まったことを認めれば、担当者として終わると思っていた

・判断能力の低下が疑われた

・現在の職務へ直ちに復帰できる状態か確認できていなかった


という事情も確認されています。

さらに、組織側には、


・前任者を基準とする処理設計が残っていた

・相談ルートを表示した後の再確認がなかった

・相談するかどうかを本人の判断へ依存していた

・保留増加後の個別確認が行われなかった

・上位判断からの返戻が、新たな判断負荷になっていた

・支援が本人へ実際に到達したか評価していなかった

・長期保留を強制的に止め、担当者を現場から離す仕組みがなかった


という問題が残りました。

主人公については、


・一時停止処理の対象とされた

・外部ツール使用者として扱われた

・ランキングおよび報酬の完全回復ができなかった

・長期間にわたる精神的負担を受けた

・前回の裁定後も、完全に回復できない被害が残った


という記録があります。

この事案を、


【ハルが誤った処理を行った】


という一つの事実だけで整理すれば、本人の責任は見えます。

しかし、本人の状態、組織側要因および被害の内容が見えなくなります。

反対に、


【ハルは壊れていた】


という事実だけで整理すれば、療養の必要性は見えます。

しかし、ハル本人が行った処理と、主人公に生じた被害が見えなくなります。

また、


【組織側にも問題があった】


という事実だけで整理すれば、再発防止の必要性は見えます。

しかし、ハル本人の行為と責任が、顔のない組織の中へ吸収される可能性があります。

そのため、本編では、


【ハル本人の責任】

【ハル本人の状態】

【組織側要因】

【被害ログ】


を、別の項目として残しました。

一つの事実を選び、ほかの事実を消したわけではありません。

それぞれの事実を、それぞれの目的を持つ処理へ接続しています。


十 なぜ分限中心なのか

上位確認では、


【処遇方向:分限中心】

【懲戒方向:限定的責任確認】


とされました。

これは、


【ハルに責任がない】


という意味ではありません。

また、


【懲戒上の確認を行わない】


という意味でもありません。

処遇全体の中心を、制裁ではなく、


・現在の職務を継続できるか

・現在の担当から外す必要があるか

・療養を要する状態か

・将来の復帰可能性をどのように確認するか


という問題へ置いたという意味です。

ハルは、実際に一時停止処理を行っています。

追加確認推奨や相談ルートも、全く表示されていなかったわけではありません。

そのため、本人の責任は残ります。

しかし、通常の判断能力を保ったまま、単に面倒だから確認しなかったと整理されたわけではありません。

間違えることを恐れて確認を増やし、その結果、処理が遅れました。

遅れを取り戻そうとして、さらに判断を自分の中へ抱え込みました。

相談しなければならない状態にありながら、何を相談すべきか整理できなくなりました。

止まったことを認めれば、担当者としての自分が終わると思い込みました。

その状態で、処理を継続しました。


本人の責任はあります。

ただし、本人の責任だけでは説明できません。

また、懲戒だけでは、現在のハルを現場から離し、療養へ接続し、将来の復帰可能性を改めて確認するという目的を十分に達成できません。

そのため、


・現場補助担当から解除する

・療養状態へ移行する

・能力および復帰可能性を後日確認する


という処遇が中心となりました。

そのうえで、


・本人の責任記録を維持する

・必要な範囲で懲戒方向の責任確認を行う


という整理も残しています。


分限中心とすることは、本人の責任を否定することではありません。


また、


本人の責任を記録することは、療養の必要性を否定することではありません。


本編では、その両方を残しています。


十一 責任記録と被害ログ

ハルが現場から外れ、療養へ移行した後も、


【責任記録:維持】


とされています。

これは、ハルを将来にわたって処罰し続けるための記録ではありません。

また、療養中の本人へ、責任を繰り返し突きつけるためのものでもありません。

実際にどのような処理が行われ、誰にどのような被害が生じたかを消さないための記録です。

ハルの状態を考慮した結果として、ハルが行った処理まで存在しなかったことにすれば、主人公の被害を説明できなくなります。

組織側の問題を確認した結果として、個人の行為をすべて組織の中へ吸収すれば、誰がどの段階で何を行ったのかが不明になります。

反対に、ハルの処理だけを残し、本人の状態や組織側要因を削除すれば、ハル一人に事案全体を背負わせる記録になります。

そのため、


【本人の責任記録】

【本人の状態に関する記録】

【組織側要因】

【被害ログ】


を、分けたまま維持します。

閉じることと、消すことは違います。

処理を終えることと、事実をなかったことにすることも違います。

本編における、


「記録は閉じられました」


という言葉は、必要な調査と処遇整理が一区切りしたことを示しています。

責任や被害が消滅したことを示すものではありません。

そのため、記録が閉じられた後も、


【責任記録:維持】

【被害ログ:維持】

【組織改善接続:維持】


と表示されています。

また、ハルに対する処遇と、主人公に対する被害回復は、同じ手続ではありません。

ハルが療養へ移行したことによって、主人公のランキングや報酬が元へ戻るわけではありません。

ハルに重い処分を行えば、それだけで主人公の被害が回復するわけでもありません。

相手方に対する処分の重さと、被害を受けた者の回復は、直接対応するとは限りません。

本編では、主人公に対し、既に別の見直しルートによる救済が行われています。

その結果、


・外部ツール使用者としての扱いの解消

・キャラクター凍結の解除

・報酬およびランキングの再計算

・停止処理に関する記録の見直し


などが行われました。

しかし、完全に元へ戻らなかったものもあります。


時間の経過によって回復できない順位。

失われた報酬や機会。

崩れた人間関係。

停止中に受けた負担。


これらは、後から記録を訂正しただけで、すべて元の状態へ戻るものではありません。

そのため、本件でも、


【被害回復:別ルート継続】

【被害ログ:維持】


とされています。

被害関係者を処遇判断の主体にしないことと、被害関係者を手続から消すことは、同じではありません。


主人公の被害と意見は残す。

ただし、その被害や怒りだけでハルの処遇を決めない。


この二つを同時に維持しています。


十二 主人公が「納得していない」と記録した理由

本編では、主人公の意見として、


【被害関係者意見】

納得はしていない。

ただし、仮整理を上位確認へ進めることを妨げない。


と記録されています。

この記録は、単なる感想ではありません。

主人公がハルを許したことにされないための記録です。

同時に、


【主人公は怒っているため、合理的な処遇を妨げた】


と整理されないための記録でもあります。

主人公は、ハルの状態を知りました。

組織側の問題も知りました。

複数の正しい処理が噛み合わず、人が壊れた経過も知りました。

しかし、それらを知ったことによって、主人公に生じた被害が消えたわけではありません。

事情を理解することと、納得することは違います。

原因を知ることと、許すことも違います。

相手の状態を考慮することと、自分の被害を軽く扱うことも違います。

そのため、主人公は、


【納得した】


とは記録していません。

同時に、


【納得できないため、上位確認へ送らせない】


ともしていません。

納得していない。

しかし、その感情だけを理由に、人事上の整理を止めない。

その両方を残しています。

本編でも、


整って見えるだけだ。

怒りはある。

失ったものも戻っていない。


とされています。

記録へ変換されたことで、感情が消えたわけではありません。

記録の目的は、感情を片づけることではなく、後から別の意味へ書き換えられないように残すことです。


十三 未来の担当者を守る線

本編では、最後の整理項目として、


【未来のあなたを守る線】


が表示されました。

これは、ハルだけを保護するための線ではありません。

主人公は、現在は被害を受けた側です。

しかし、今後も運営側で処理を続けるのであれば、将来は、


・判断する側

・処理を遅らせる側

・誰かを待たせる側

・誤った処理を行う側

・支援を必要とする側

・誰かの怒りを受ける側


に立つ可能性があります。

そのとき、


【一度間違えたため、本人の状態も組織側の問題も確認せず切断する】


という仕組みであれば、主人公自身も同じように扱われます。

反対に、


【担当者が疲弊していたため、発生した被害も責任も記録しない】


という仕組みであれば、将来、主人公が被害を受けた場合、その被害も消されます。

したがって必要なのは、


・本人に責任があれば記録する

・ただし、責任だけで本人全体を決めない

・本人の状態を確認する

・組織側の問題も確認する

・被害を受けた側の記録を消さない

・被害者に処遇を決定させない

・必要な療養と支援へ接続する

・再発防止を別に進める


という線です。

そのため、ハクは、守る対象として、


「ハル」


「あなた」


「未来のあなた」


「記録」


「次の誰か」


を分けて示しました。

ここでも、


【救う】


とは表示していません。

制度上の整理によって、失われたものがすべて戻るとは限らないためです。


本人が必ず回復するとも限りません。

被害者が必ず納得するとも限りません。

組織が必ず改善に成功するとも限りません。


それでも、誰か一人へすべてを押し込み、潰すことを防ぐ線は引くことができます。

本編における人事公平ルートは、その線を確認するための手続でもあります。


十四 主人公に対する救済

エピローグで、主人公は、

「俺の救済って、これなのか」

と尋ねています。

これに対し、アイは、


「一部です」


と答えました。

今回の人事公平ルートは、主人公の被害を完全に回復するための手続ではありません。

主人公の停止処理そのものについては、既に別の見直しと裁定が行われています。

今回行われたのは、その処理を行ったハルについて、


・どのような責任があるか

・どのような状態にあったか

・現在の職務を継続できるか

・療養が必要か

・組織側にどのような問題があるか


を整理することです。

その結果として、主人公に残されたものは、


・自らの被害が記録から消えないこと

・ハルの状態を理由に被害をなかったことにされないこと

・ハル一人への処分だけで問題を終わらせないこと

・組織側の問題が改善へ接続されること

・自分の意見が「納得した」と書き換えられないこと

・将来自分が処理する側に立った際にも、同じ線が適用されること


です。

これは、完全な回復ではありません。


ランキングや報酬を元へ戻すものではありません。

失った時間を返すものでもありません。


そのため、


【完全な救済】


と表示することはできません。

しかし、主人公の被害が存在したことを残し、その被害が今後の組織改善へ接続されることは、救済の一部になり得ます。

また、自分が受けた被害と、相手の処遇を分けて考えられるようになったことも、主人公の役割理解に関わります。

本編では、その変化を、


【処遇実行経験:追加】

【支援対象理解:更新】

【役割理解:更新】


と表示しています。

主人公は、強くなったわけではありません。

権限が上がったわけでもありません。

多くのものを見て、知り、実行した結果として、


「重くなりました」


と整理されています。


知ったことは消えません。

押したことも消えません。


しかし、記録として分けて残すことができれば、混ざったまま一人で抱え続ける必要はなくなります。

本編の、


記録になるなら、たぶん持ち運べる。


という言葉は、その意味です。

記録にすれば、重さがなくなるわけではありません。

ただし、何の重さか分からないまま抱える状態から、


・自分の被害

・相手の責任

・相手の状態

・組織の問題

・自分の役割


を分けて持つことができます。

整理は、気持ちを消すものではありません。

混ざらないようにするものです。


十五 今回の最終整理

以上を踏まえ、本件では、次の整理が行われました。


【ハル本人の処遇】

・現場補助担当から解除する

・現在の職務へ直ちに復帰させない

・療養状態へ移行する

・療養後、能力および復帰可能性を改めて確認する


【ハル本人の責任】

・一時停止処理を行った事実を維持する

・追加確認および相談を行わなかった事実を維持する

・主人公へ被害を生じさせた責任記録を維持する

・必要な範囲で懲戒方向の責任確認を行う


【主人公の被害】

・一時停止処理による被害ログを維持する

・完全に回復していない部分を消さない

・ハルの状態を理由に被害を軽く扱わない

・被害回復については別ルートで継続する

・主人公をハルの処遇判断の主体にはしない


【組織側の問題】

・相談ルートの表示だけで対応済みとしない

・支援が本人へ到達したか評価する

・長期保留および判断能力低下を検知する条件を見直す

・個別確認を開始する基準を見直す

・相互に緊張する指示の整理方法を検討する

・改善担当へ正式に接続する


【役割の分離】

・ハクが事実と論点を仮整理する

・任命権者相当の上位が確認、修正および最終判断を行う

・主人公は被害関係者として判断への関与を制限される

・主人公は、確定済みの内容を次の手続へ送る実行を担当する

・アイは関係者として処遇評価から距離を置き、手続、記録および実行表示の整合性を確認する


今回の結論は、


【ハルが全面的に許された】


というものではありません。


【主人公の被害が完全に回復した】


というものでもありません。


【ハル一人がすべての原因だった】


というものでもありません。


【組織だけが悪く、ハル本人には責任がない】


というものでもありません。


ハル本人には責任があります。

しかし、すべてではありません。


組織側にも問題があります。

しかし、組織という言葉だけで、個人の行為を消すことはできません。


主人公には被害があります。

しかし、被害を受けたことだけを理由に、相手方の処遇を決定する立場には置きません。


ハルには療養が必要です。

しかし、療養へ移行することによって、責任記録が消えるわけではありません。


これらを一つの評価へ混ぜず、それぞれの制度と記録へ分けて残しました。

本編で、




「みんな、間違っていませんでした」

「だから、みんなで間違えました」




とされたのは、誰にも責任がないという意味ではありません。

一つ一つの判断には、それぞれ理由がありました。


誤処理を防ぐ。

個別事情を確認する。

過剰な停止を避ける。

危険な処理を放置しない。

迅速に処理する。

説明可能な判断を行う。

保留を減らす。

機械的な処理を避ける。


それぞれは、必要な要請です。

しかし、それらを同時に受け取った担当者が、何を優先すべきか整理できなくなりました。

組織は、正しい表示と正しい返戻を行いながら、その下で担当者が止まっていることを拾えませんでした。

ハルは、間違えないために確認を増やし、確認を増やした結果として処理できなくなり、それでも止まることができませんでした。


その結果、主人公に被害が生じました。


誰か一人を白にすれば、別の誰かが黒になります。

誰か一人を黒にすれば、ほかの原因が見えなくなります。


そのため、白か黒かではなく、事実を分けて残しました。


本人を職務から外す。

療養へ移す。

本人の責任は残す。

主人公の被害も残す。

組織側の問題は改善へ接続する。

将来の復帰については、今の段階で決めない。

それぞれを、異なる記録として維持する。


以上が、人事公平ルートにおける最終整理です。



……少し長くなりました。



ただし、本件は、分限、懲戒、療養、被害記録、組織改善および人事公平ノードの役割が同時に関係するため、必要な説明です。

補足は以上です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ