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夏サバイバル  ヒーロー最後の7日間  作者: 双鶴


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4/9

Day 3

午前9時30分。控室の床に、直哉は寝転んでいた。

タオルを首に巻き、腰に湿布を貼り、目を閉じる。

昨日の疲労が、筋肉の奥に根を張っている。

特に腰と首。寝返りを打つたびに、鈍い痛みが走る。


「おはようございます」

控室のドアが開き、悪役役者の“ガイア”が入ってきた。

本名は田所さん。30代半ば、元舞台俳優。

昨日は、直哉の動きに合わせて、絶妙に受け身を取ってくれた。


「腰、やばいでしょ」

田所さんが笑いながら、湿布を差し出す。

「俺も最初の年、ぎっくり腰やったからさ。これ、効くよ」

直哉は、思わず笑ってしまった。

「ありがとうございます…ほんと、昨日は死ぬかと思いました」


---


ステージ直前。

スタッフの女性が、直哉の背中に保冷剤を差し込んでくれる。

「今日は昨日より風があるから、まだマシかも」

そう言いながら、彼女は直哉の手に麦茶を渡す。

「水分、こまめにね。ヒーロー倒れたら、子ども泣いちゃうから」


直哉は、うなずいた。

“ヒーローは一人じゃない”

その言葉が、胸の奥に静かに灯る。


---


ショーが始まる。

今日は風がある分、昨日よりは動きやすい。

だが、痛みは変わらない。

腰に響く着地。

首にのしかかるヘルメットの重さ。

それでも、田所さんの動きが支えてくれる。

直哉のタイミングに合わせて、敵役が吹き飛ぶ。

「ナイス!」

小声で聞こえたその一言が、何よりの支えだった。


---


ファンサービス。

今日は、昨日よりも子どもが多い。

夏休み中盤、家族連れが増えている。

直哉の前に、男の子が駆け寄ってきた。

「ヒーロー、昨日より強かったね!」

その言葉に、直哉は拳を高く掲げて応える。

“ありがとう”のポーズ。


その隣で、母親がぽつりと呟いた。

「中の人、ほんと大変だろうな…」

その声は、直哉の耳にしっかり届いた。

“見てくれている人も、いるんだ”

それだけで、少しだけ足取りが軽くなった。


---


控室に戻ると、田所さんが缶コーヒーを差し出してくれた。

「3日目クリア、おめでとう」

直哉は、缶を受け取りながら笑った。

「あと4日…ですね」

「いや、あと4回“変身”するだけさ」

その言葉に、直哉は小さくうなずいた。


---


この日、直哉は知った。

ヒーローは、孤独じゃない。

裏方の支え、仲間の気遣い、観客のまなざし――

すべてが、彼を立たせていた。


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