第58章:1990年7月終盤の「夏山合宿」の話(8)
・・・「なんだ、そんなことか。」
「そんなクソつまんねーエピソードでシメたいがゆえに、ここまで俺たちを(あたしたちを)引っ張ってきたっつーのかえ??」
「それで・・・?」
などという、
皆さんのためいきやクレームのたぐいが、
この章の本文を書く前から聞こえてきそうな予感すらしている(苦笑)。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
夕食が何であったかはおぼえておらん。
しかし、
就寝前に、各班ごとにわかれ、
それぞれがバンガローごとに散って、
1、2時間くらい、
おのおの、めいめいが、
自分の経てきた人生のこれまでの道のりやら、
今後の抱負・目標、
彼女や彼氏の話・・・こういったのを、
「車座」・・・つまり、輪になって座り、ゆっくりと語っていく、というこのイベントのことは・・・
あれから36年経過しようとしている、
2026年6月現在でも、
ありありと脳裏によみがえらせることができる。
「えーーーー・・・、俺がパチンコを初めて覚えたのは・・・」
「あたしのいまのカレシなんですけどぉ・・・」
「なんで夏休み入ってから、わざわざ貴重な時間つぶして、こんなんやっかなぁ・・・?」
・・・くだらねぇ「雑談」が続く。
最後はぼくの番だ。
「えー・・・はっきりいって皆さんとは、今夜まで、なかなかこうして話す機会がありませんでした。非農家のぼくがこの農業大学校へ入ったのは、父の強い勧めがあったからで・・・それでぼくは・・・」
ここで、ひとりの男子学生から「横槍」が入る。
「そういえば栗原君って、なんでやせたの?」
「あたしも、ソレ、聞きたい!」
「俺も俺も。」
「ねぇ、なんでここまで『やせちゃった』ワケ??」
・・・するとぼくの胸には、
美絵子ちゃんとの再会があってからの寮生活の日々・・・
1990年3月17日に寮を出てからの、過酷な減量・・・つらい食事制限とロードワークの日々・・・
成長した美絵子ちゃんの姿・・・
『魔物事件以前』の、天使のようだった美絵子ちゃんの笑顔の数々・・・
来月に控えている「リマッチ」への緊張感・・・
こういったモロモロの事情や複雑な心情が重なって・・・迫ってきて・・・
気づくとぼくは、
熱い涙にくれていたのである。
・・・うつむいて、無言で泣くぼくを意外に思った彼らは、
思いがけない展開にコトバを失い、
重苦しい沈黙が、
バンガロー内を支配した。
その空気を破ったのが、
園芸科の『山崎順子さん』だった。
「・・・べつにいいじゃない、太ってたって、やせてたって。」
なんだかぼくは、とってもうれしかった。
「きっと栗原君にもいろいろ事情なり理由があってダイエットしたんだろうから、そっとしておいてあげようよ。それに、私たちには直接関係ないじゃない・・・?」
「そんな野暮な質問なんかやめて、キャンプの残りを素直に楽しもうよ。もう寝るだけなんだけどね(笑)。」
・・・といった山崎さんの、続くセリフが耳に届いたような気がしていたからだった。
だからといってぼくは、
彼女に「恋ごころ」をいだくことはなかったけどね・・・。
でも、
山崎さんにも、
まったく悪い思い出はないよ。
m(_ _)m
追伸:
・・・信じられないでしょうけど、
このバンガローでの一夜はね、
男子と女子が、一つ屋根の下で、
布団を並べて寝ていたんですよ・・・仲良く♪
19歳や20歳の若い男女の学生どうしが。
よく「何も」起きなかったなぁ・・・って、
いまでも不思議に思いますよ❤️




