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若く未熟な神ですが、久しぶりに下界に降りたら俺を崇める宗教が「独裁宗教都市」を作ってたんだが  作者: エタメタノール


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19/19

最終話 十年後

 天界に戻ってから、十年経った。

 神からすると十年なんてのは一瞬もいいとこだけど、人間からするとかなり長い時間だというのは、下界に降りた件で学んだ。

 レーアたちがどうなったのか気になる。

 だから俺は、もう一度“ラナイ”としてフリーデに行くことにした。


 このことを武神と女神に報告すると、


「またついていってやろうか?」

「私も行っちゃおうかしら」


 などと言ってきたが、今回ばかりは「一人で行かせてくれ」と固辞した。


 そして、下界に降りる黄金のゲートの前に立ち、


「我は“人”として下界に降りる! その許可を与えたまえ!」


 こうして俺は十年ぶりに下界に降りた。



***



 短い草が生い茂る平原を歩き、フリーデに到着する。

 前回は旅人リップのおかげでたどり着けたが、今回は自力だ。俺も成長しているな。

 あの大きな城壁はそのままだが、だいぶ開放的な門になっている。

 前来た時は、巨大な要塞に入るような気分だったのに。


 手続きを済ませ、俺は都市部に入る。

 街並みはだいぶ変わっていた。

 なんていうか、前より質素になった。

 ゼーゲルが支配していた頃は、華美で煌びやかな印象だったが、だいぶ雰囲気が大人しくなっている。

 もっとも俺はこっちの方が好きだ。


 街中を歩く。

 噴水があった。この近くには俺が笑ってしまったイラナミ神像があったはずだが、あれは撤去されている。

 まあ、はっきりいって似てなかったし、レーアたちが撤去してくれたのかもしれない。

 でかい神の像を建てて、みんなで崇めましょう……ってのも、従来のイラナミ教からすると、らしくないしな。


 そのまま、かつて大神殿があった方に向かう。

 ゼーゲルの居城ともいえた大神殿は、だいぶ小さく、素朴なデザインになっていた。

 かつての大神殿はゼーゲルの野心を具現化させたような代物だったので、やはりあの後取り壊し、改築したのだろう。

 しかし、新・大神殿ともいえる建物は、白を基調とした石造りの建物で、しっとりとした美しさを醸し出す。

 そのしっとりさは、どこかレーアを思い出させる。

 俺はまっすぐ歩いていく。

 大神殿に、レーアやディゴスはいるだろうか?

 不安と期待を抱きつつ、俺は新しい神殿の敷地内に入っていく。


 すると――いた。


 白い僧衣をつけて、神殿の周辺を掃除している女性がいた。

 すぐに分かった。あれはレーアだ。


「レーア!」


 俺が声をかけると、


「! ……ラナイさん!?」


 “ラナイさん”と言ってくれたのが俺は嬉しかった。

 レーアは美しく成長していた。

 あでやかな長い黒髪とぱっちりとした黒い瞳はあの頃のままだが、大神官としての威厳や貫禄、責任感みたいなものが、彼女をより魅力的にしている。立派になった。

 その成長ぶりに、俺は思わず目を細めてしまった。


「来て下さったんですね」


「ああ、もう一度ぐらい“人”として降りたいと思ってね」


「確か30日間は“人”のまま、ということでしたよね。ぜひゆっくりなさって下さい。こちらへどうぞ」


 レーアに促され、神殿内の応接室に案内される。

 俺とレーアは小さなテーブルを挟み、向かい合うようにソファに座った。

 ティーカップで出された紅茶は、香ばしくていい味だった。


 ゼーゲルを倒し、俺が天界に戻った後――あれからすぐフリーデでは国王の視察が行われた。

 レーアはこの機に、ゼーゲルのやってきたことを全て訴えた。ゼーゲルは正式な領主ではなかった上、街一つを私物化させた罪は重いとして、その命で罪を償うことになった。ドラゲノフも同じ運命を辿ったようだ。

 レーアが国王に「イラナミ教は質素にやっていく」と告げると、国王はその信念を気に入り、イラナミ教の庇護を宣言する。

 ドミル王国がイラナミ教の存在を正式に認めてくれたことで、今後ゼーゲルのような輩が現れる心配はなくなったといっていい。

 その後、レーアはスラム民だった者たちを中心に、かつてのイラナミ教を取り戻す活動をし、それらはようやく形になりつつある。


 レーアはディゴスと結婚したそうだ。

 二人の結婚が俺には嬉しかった。俺には子供はいないけど、親が我が子の結婚を知った時の心境はこういうものなのかな、なんてちょっと想像した。

 レーアとディゴスの間には、フィーネという娘が生まれ、今は5歳になるという。

 一家は神殿で暮らしており、ディゴスは娘と買い物に行っているとのこと。


「じゃあ、ちょっと待たせてもらおうかな。あいつにも会いたいし」


「きっと驚きますよ、あの人」


「だろうね。ディゴスは信心深いところあるし……」


「そうなんですよ。あの人、毎日のお祈りは私以上にしっかりやりますし……」


「あー、そういう感じする!」


 俺とレーアが盛り上がっていると、ディゴスが娘と一緒に帰ってきた。

 かつては猛獣のような顔つきだったが、だいぶ穏やかになった。きっとこれが本来の彼なのだろう。

 ディゴスは俺を見た瞬間、目を丸くしていた。


「ん? あ、あんた、いやあなたは……イラナミ神様!」


「今はラナイでいいよ」


「そうですね。ええと、じゃあラナイさんと呼ばせて頂きます。ほらフィーネ、挨拶しなさい」


「はーい! あたし、フィーネです! こんにちは!」


「俺はラナイって言うんだ。こんにちは」


 娘フィーネは黒髪をお下げにした可愛らしい少女だった。

 レーアのしっとりとした美しさを受け継ぎつつ、目鼻立ちはディゴスの凛々しさの面影がある。

 レーアとはまた違うタイプの女性に成長していくのだろうな。


「ディゴスに似なくてよかったな」


 俺がからかうように言うと、レーアとディゴスは笑っていた。


「“人”になって降りてきたってことは、しばらく下界にいてくれるんですよね? 新しくなったフリーデを楽しんで下さい」


 ディゴスに言われ、俺は笑顔で応じる。


「ああ、前回は散々な目にあったから、そうさせてもらうよ」


「なにしろ天界から降りてきた日に捕まって、処刑されそうになったんですもんね」


 レーアにからかい返され、俺は「あれはホント参った!」と頭をかいた。


 それから俺は一ヶ月間、たっぷりとフリーデを堪能した。

 レーアたち一家と遊んだり、一人でぶらぶらしたり、イラナミ信徒に混ざってイラナミ神に祈ってみたり……前回とは方向性が違うが、密度の高い30日間を過ごせた。


 そして神に戻れる日になって、俺はレーア、ディゴスと別れた。


 おそらく彼らが生きている間には、もう俺は下界に降りることはないだろう。

 しかし、彼らのことはずっと気にかけていきたいと思う。見守っていきたいと思う。



***



 天界に戻った俺は以前にもまして、熱心に修行する。

 武神と女神が近づいてきた。


「熱心にやっとるな」


「私たちもうかうかしてると、神としての実力を抜かされちゃいそうだわ」


 俺は二柱にニヤリと笑い返す。


「レーアたちがあれだけ頑張ったんだから、俺も頑張らないといけないからな」


 この返事に、武神も女神も顔をほころばせていた。


 俺の神としての日々はこれからも続く。

 レーアとディゴス、イラナミ教のみんなは今日も懸命に生きている。

 だったらイラナミ神である俺も、彼らが信仰するに値する、立派な神にならないとな!






おわり

以上で完結となります。

最後までお読み下さりありがとうございました。

少しでも楽しんで頂けたら、評価・感想等を頂けますと嬉しいです。


今後も様々な小説を書いていきますので、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
最初から一気に読みました! まとまりよく良き話で楽しめました!
ええ話でしたーーーーーーー。 ありがとうございます。 てっきり、リップサービス、っていうサゲが どこかに入るのかな、とか思ってしまったのは内緒です。 ご創作、ご活躍を楽しみにいたしております!
[良い点] 完結おめでとうございます\(^o^)/ ぱちぱちぱちぱち いやぁ〜レーアちゃんが大活躍するお話でしたね。 え? マジか(^_^;) いえ、ラナイさんのお話でしたね!! 見習い神様…
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