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異世界吸血鬼は余命1ヶ月の吸血姫を諦めない。  作者: 棘 瑞貴
異世界吸血鬼は世界欺く初恋少女を紡ぎたい。

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第31話 完全なる消滅


「むっ、急に醸し出す魔力が少し変わったな……貴様、覚えがあるぞ……」

「ヒヒ、覚えていなくて結構。リースとマーネの仇を討つ──」


 あたしはありったけの魔力を左手に集めた。

 以前体の交換を行った際に、デメリットは解ったからネ。

 体の器官にダメージは無く、あたしがユウの力を使えるという、最上の結果に終わって良かったヨ。

 体が縮んだのは生命力まで使ったからだと思うし、それならあたしが皇帝をやっつけてやる!!


 ユウの体に眠る精霊の力をも引き出すヨ──


真祖のや(グングニ)──」


 あたしが極大の魔力で皇帝に攻撃しようとした時だった。


(待ってくれルーク!!)


「!」


 ……起きたの、ユウ。


「……ナニ、今いい所なんだケド……」


 魔力を解き放つ寸前で、呼び止められちゃったから、あたしはいつでも撃てるように構えながら、ユウの返事を待った。


(お前は皇帝を討つつもりかも知れんが、体は高坂なんだよ!そんな攻撃をしたら──)


「うん。死んじゃうだろうネ」


 そんな事、言われなくても分かってる。


(……頼む……待ってくれ。せめてもう一度高坂と話を──)


 ……ここまでユウが切羽詰まってお願いしてくるとはネ。

 だけど、あたしの答えは決まってる。


「待たないヨ。あの女は危険すぎる。このまま消し飛ばすのが皆の為だもん」


 ユウには一生怨まれるかも知れない。

 それでもあの女は、今ここで消しておくべきだと直感が告げている。


(……ルーク、たぶんお前の判断の方が正しいんだと思う。だから──)


「!? うそっ、もう体の支配権を取り戻──」


 あたしは強制的に、ユウとの精神交換を中断させれた。

 ゆっくりと、意識がユウの血の中へと戻っていく。



「ふぅ……っと、これ(・・)なんとかしないとな」


 ルークから体の支配権を奪い返した後、俺は左手に集まった魔力を、バニシングで消し去った。


 そして同時に真上を見上げ、高坂の体を操る皇帝がじっと俺を見下ろしている。


「なんなんだ貴様。さっきからコロコロと雰囲気を変えおって……」

「てめぇには関係ねぇよ。それより待たせたな。さっさと高坂の体を返して貰うぞ!」

「ふむ……あまりにも強大故、月に魔力が満ちるまで10分程掛かるか。よかろう遊んでやろう──」


 高坂の体で、皇帝が俺に迫る。

 

 俺はルークと入れ替わっている間、高坂ともう一度話をする方法を考えていた。

 話をするまで、誰にも高坂を殺させる訳にはいかない。


 俺がルークと強制的に入れ替わる事が出来たのは、魔力の総量が上回っており、支配権を奪い取れたからだ。


 だったら高坂も皇帝の魔力を上回れば、あいつを追い出せるんじゃないだろうか。


「……やるしかねぇ!」

「き、貴様……何を!?」


 俺は皇帝の背後に回り、高坂の首筋に牙を突き立てた。


「ぐっ!!」


 抵抗されるので、無理矢理体を抑え付けて、吸血鬼の負の魔力を注ぎ込んだ。


 しかし──


「ふんっ!甘いわ!」

「くそっ……!」


 皇帝は首筋を押さえながら、俺の体を振り払う。


「貴様の力を注ぎ込んだ所で、この娘の意識は戻らんぞ」

「うるせぇな…」


 さて、どうしようか……


 俺は皇帝と数歩程の距離を取る。

 すると睨み合う俺達の間に、突然ルークが姿を現した。

 同時に、俺の纏っていた魔装も消え、高坂が渡してくれていた制服の感触が戻ってきた。


「ルーク!」

「……ふんっ」


 ……ご機嫌ナナメだな。まぁしょうがない。

 にしてもなんでこいつ出てきて──


 ──あ。


 ルークの顔を見て思い出した。

 かつて、皇帝を倒した方法を。


「──目覚めろ、奇跡は俺の中にある!!」

「ユウ!?」

「き、貴様……その輝きは!?」


 俺は聖女の力を解放した──


「……皇帝、憶えているか。200年前、先代聖女があんたを封じ込めた技を」

「な、何故貴様が聖女の覚醒した輝きを!?」

「もう一度眠れ、皇帝!!」


 地上数百メートルにも及ぶこの上空に、地面から樹木を伸ばす。

 それらは高坂の体を捕らえ、いかな皇帝と言えどもこうなれば身動きする事は叶わないだろう。


 高坂の額から、ツーっと雫が垂れる。


「おいおい冷や汗かいてるのか?」

「貴様……!」

「わりぃけど、もうあんま時間も無いんでな。さっさと終わらせて貰うぞ──」


 このままもう一度、聖樹として高坂ごと封じ込めるのは簡単だ。

 でもそれじゃ高坂と大事な話が出来ない。

 だから、先代聖女が与えなかった赦しを、皇帝には与えてやることにした。


「皇帝……あんたは200年以上もよく頑張ったよ。高坂の体を乗っ取って何をするつもりだったのか……気にはなるがもう終わりにしようぜ」

「……また我を聖樹へと変えるつもりか。フンッ我は何百年経とうとも──」

「……先代聖女は、お前に死だけは与え無かった。だから俺がお前を解放してやるよ」

「ど、どういう意味だ!?」


 俺はルークとの契約の紋章が浮かんでいる右手を、高坂の額に押し当てた。

 

 ──真祖の最悪の魔法、その最後の一つ。


 紋章を白く輝かせ、この一言をもって魔法を発動させる。


「──ソウル・バニシング」


 バニシングの対象を、生物の魂に限定する魔法。

 強化版バニシングと言ってもいい。


 この魔法によって消された魂は二度と戻る事は無い。

 セフィラの残した、セレントの魂のような復活方法も、聖女の蘇生も──そして、輪廻転生も起こり得ない。


 ──完全なる消滅。


「じゃあな皇帝。俺だけは、あんたの事を憶えててやるよ」

「や、やめっ──」


 白く輝く紋章が、高坂の体に浸透していく。

 淡く光り出すと、皇帝の魔力が嘘のように薄く消える。

 光の粒子は、未だ青く輝く月へと立ち上っていった──


 俺が月を見上げていると、ルークが近付いてきた。

 彼女は感慨深そうに笑っている。


「ユウ、お疲れ様。……ホント、強くなったネ」

「……皆のおかげさ。ルーク、ゆっくり話してる暇は無いぞ。月が──」


 言い掛けた所で、俺達の目の前に転移の魔法陣が浮かび上がった。


 それも、高坂を拘束するように絡まった樹木の平たい所に。


 精密無比な転移魔法──兄貴だな。


 しかし、中から現れたのは──


「ユウ君!ルーク!ご無事ですか!?」

「エ、エキナ?」


 意外にも姿を見せたのは高坂と同じ制服を着たエキナだった。

 彼女は酷く慌てた様子で、わなわなと喋り出した。


「2人共大変です!!」

「い、いや俺達だって……上見ろよ月が……」

「それは分かってます!!だけどもっと大変なのが!!」

『へ?』


 俺とルークが同時に聞き返した。

 あの月よりもヤバいのってなんだよ。


 その答えはすぐに返ってきた。


「い、隕石です!学園長の予知ではもう間も無く世界中に堕ちて来ます!!」

お読み下さりありがとうございます!

先日投稿した作品が思った以上に伸び、連載用に執筆を行いますので、少し投稿頻度が落ちるかしれません…

40話までには完結となりますので、存外普通に投稿出来るかもですが笑

ぜひ最後までよろしくお願い致しますm(_ _)m

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