表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界吸血鬼は余命1ヶ月の吸血姫を諦めない。  作者: 棘 瑞貴
異世界吸血鬼は世界欺く初恋少女を紡ぎたい。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/90

第25話 青春


「ユウいるか?」

「レオンか?」


 食事を終え、時刻は21時を迎えようとしていた。

 そんな頃、俺の部屋の外からレオンの声が聞こえてくる。


 くそっ何の用だよ。


「……ちょっと待ってくれ……!」

「あいよ」


 せっかくこの世界に帰ってきたし、近くのコンビニに置いてあったワン○ースを読んでたんだけどなぁ。

 すげぇ面白い所だったのに……


 結局、ルークとエキナが俺と同じ部屋にすると聞かなかったので、2人と一緒に寝る事となってしまった。


 が、現在2人は女子だけで温泉へ行く流れとなった為、部屋には居ない。


 だから落ち着いてマンガを読める、唯一の憩いの時間だったというのに、レオンめ……


 名残惜しいが一旦本を閉じ、俺はドアを開けレオンと対面した。


「……んだよー……」

「何で不機嫌なんだよ。まぁいいや、おいそろそろ良い頃じゃないか!?」

「え、何が?」


 こいつはワクワクしながら何を言ってるんだ?

 若干興奮気味だし。

 

 レオンの思惑はすぐに判明する事となった。


「風呂だよ風呂!!そろそろ皆上がって来る頃だろ!?見に行こうぜ!!」

「……お前、そんなくだらない事の為に俺の幸福な時間を奪ったのか」

「くだらないって何だよ、これは俺達男子に課せられた義務だろ!?」

「まぁ……言いたい事は分からんでも無いが……でも何で風呂上がりなんだ?普通入浴してる最中だろ?」


 俺が今まで嗜んできたラブコメでもそうだった。


「そりゃ覗きなんて犯罪じゃないか。俺は人道に反する事はしないぜ」

「お前が風呂上がりの火照った女子に興奮する変態って事は分かったよ。しかしなぁ……」

「んだよ、お前は好きじゃ無いのかよ」

「むっ」


 風呂上がりの火照っ女子、しかも髪の長い女子は、うなじを見せてこのホテルの浴衣に着替える事だろう。

 

 ……そりゃ好きかどうかを聞かれたら、大好きだ。


 ただなぁ、正直見慣れてるって言うか、今更感がなぁ……

 特にルークは、俺を誘惑する事に、命を懸けていると言っても過言じゃあない。


 それにそもそもだ。


「……あのさ、それを見に行ってどうすんの?」

「見ろ、俺は世界を渡ってもこいつだけは持って来る事に成功した──」

「お、お前これは!?」


 レオンが懐から取り出したのは──


「見ろ!!カメラだ!!いつまでも皆の美しい姿を焼き付ける事が可能だ!!」

「て、天才かお前!?」

「お前の事だからルークちゃんや、エキナちゃんの体は見飽きているだろう。しかしだ!ディセート様や、あの王妃様の強烈な肉体を永久に残す事が出来るぞ!!」

「ごくり……」

「俺が脱衣場に潜入して、お前の指示で撤退する……ある程度魔力感知が出来るお前が居れば、この作戦は上手くいく……!!」


 ま、まずい……

 かなり魅惑的な提案に思えてきた……

 あ、あれ?脱衣場に潜入したら、結局覗きと一緒じゃ……ま、まぁいい。俺は手を汚さず事を運べるんだ。悪くないぞ……!!


 レオンは畳み掛けるように舌を巻く。


「さらにだ!ここの浴衣……?という奴の着方なんて誰も知らない!俺もお前に食事終わりに教えて貰って、ようやく理解したからな。あんな恐ろしい服があるとは……つまりだ」

「!! お、お前……まさか!?」

「そうだ!!ポロリ写真が撮れる……!!全裸じゃ興奮しない……少し見え隠れするエロスを納める事が出来──」

「君達、面白そうな話をしてるね」

『!?』


 部屋のドアを開きながら、話すのに夢中になっていた俺達は、背後から近付いてくる一つの影に気付かなかった!

 

「ぉ、オリウス!?」

「殿下!?……あ、あの、どこから聞いて……」

「風呂だよ風呂!!ってテンションの高いレオン君の所からかな?」

「最初からじゃねぇか……」

「いやぁ、さすがに盗撮はちょっとねぇと思って、注意しに来たんだ」

「そうだぞレオン、犯罪者め」

「お前の手のひらってどんだけ柔らかいの?」

「だが……レオンの提案はかなり魅力的だった……!」


 そう、ワンピ○スを読むのを中断しても良い程……!


 となれば、障害はオリウスだな。

 いっそこちらへ引き寄せるか?

 いけるか……?


 ……こいつも男だ。

 興味が無い筈が無い……!


 良し、ここはシンプルに行こうか。


「オリウス……俺はお前を信じている。正直に答えてくれ」

「あぁ、聞こうじゃないか」

「お前、ディセートのエロい写真に興味は──」

「レオン君、リレミト伯爵、何ぐずぐずしてるんだい、早く行くよ」

「殿下、俺も信じてましたよ!」

「絶対にバレる訳にはいかない……!以前使った無線機があるからこれを使おう。気合い入れろよお前ら!!」

『おぉ!!!』


 学園で送る事の無かった青春が、今ここで始まろうとしていた──



『コードネームY、脱衣場出入口に現着した。ここから指示を出すぞ。R、カメラ担当はお前だ、脱衣場の様子はどうだ?』


『こちらコードネームR、現在脱衣場の大型物入れの中から様子を確認しているが、まだ誰も出て来な──!! 来た!!す、すげぇ皆裸なんだよな──ぶぅ!!』


『大変だ!!こちらコードネームO! Rの隣の物入れに入っているが、大量に血を流している音が聞こえる!!まだ僕らからは何も見えてないのに!声が聞こえただけで皆の裸を妄想したのかい!?』


『なにぃ!?コードネームO!! Rの蘇生を試みろ!!奴が倒れては、撮影が出来ん!!』


『ま、待ってくれ……!隙間から少し影が近付いてくる……!こ、これは……母上!?』


『お、おい!大丈夫かO!?』


『すまないY……母親の裸をこの歳になって見せられては生気が……』


『しっかりしろぉ!!気持ちは分かるが、ディセートの写真の為だろう!!』


『ぐっ……!』


『す、すまない2人共……!恥を晒した……』


『R!!生きていたのか!良し、俺の魔力探知ではまだ気付かれていない……今がチャンスだ!!』


『こちらO!全員、浴衣という服の着方に手こずってるね。しかし駄目だ!僕達からじゃ手足がうっすら見えるだけだ……!』


『仕方ない……この手は使いたく無かったが──』


『や、やめろY!俺達で何とかする!!』


『大丈夫だ任せろ……!』


『Y……!!』


『……すぅ──ルークーーーー!!!今なら好きなだけ血を吸わせてやるぞぉぉぉおおーーーーー!!!』


『Y!!!君の勇姿は忘れない!!』


『こちらR!! 全員が浴衣を中途半端に着たまま、猛烈なスピードで移動するルークちゃんを追い掛けて──うっひょ!?いい!!これはいい写真が──ぶぅ!!』


『Rーーーーー!!!』


『……O……後は頼みます……』


『こちらY、ルークが首に噛み付いた。しばらくの間意識を失うだろう。コードネームO、Rの死体と、カメラを回収した後、ポイントDで合流しよう。──ぐふぅ』


『Yーーーーー!!!』



「2人共、大丈夫かい……?」

「は、はい……鼻血は止まりました」

「俺も、少し貧血だけど大丈夫だ……それより、どうなったんだ?」


 命懸けの作戦を終えた俺達は、ポイントD──男子脱衣場で戦果を確認しようとしていた。


 あの後、一体どうなったのか……

 意識を取り戻した後、急いでこちらに来たから、未だバレていないか不安が残る……


 俺の疑問に、オリウスが答えた。


「あぁ、安心してくれ。写真はここにあるし、誰にもバレちゃいない。さっき母上やディセートとも話したけど、いつも通りだったよ」

「つまり、作戦は完璧だって事だ。やったなユウ!!」

「……異常に疲れたけどな……」


 しかし、苦労に見合った成果がきっとある!

 俺は早速レオンに写真の提示を要求した。


「ほら、レオン!早く写真を見せてくれ!!」

「実は俺達もまだ見てないんだ。俺達全員での勝利品だからな、感動は一緒に共有しようぜ!」

「お、お前ら……!!」

「楽しみだね……!さ、レオン君!!」

「行くぜ……!!!」


 レオンは既に現像された写真6枚を、俺達に見せてくれた!


「な、なんということだ……!!」

「チラ見えする浴衣というのは、これ程の破壊力があるのか!?」

「デ、ディセート……いつの間にかこれ程に成長していたのかい……!!」


 レオンが撮影した写真は、なんというか凄まじかった。

 ポロリこそ無かったが、隠しきれないエロスがここにある……!


 エキナはルークの手を掴もうとして、前のめりになったせいで、緩い浴衣の隙間から。谷間が凄い事になってるし。


 ディセートやその母親、さらにウィーネ婦人は、胸の覗き具合は弱いが、すらりと伸びた美脚が、劣情をそそる。


 そして、問題はこの人だ。


「オ、オリウス……お前の母ちゃんえぐいな……」

「……頼むからその写真だけは僕に見せないでくれよ……」

「一度でいいから触れてみたいですね……」

「想像してしまったじゃないか、やめてくれよ……」


 レインさんは、エキナをも越える戦闘力の持ち主だ。

 サイズの合わない浴衣を、頑張って着ようとしてるせいで、大事な先っちょ以外全部溢れてる。

 どんだけパツパツなんだ!?

 

 そして、この写真のせいで俺達は醜い争いを繰り広げる──


「俺、決めたよ。死んでもこの写真は守ってみせる」

「レオン、ずりぃぞ!俺もそれ欲しい!」

「お前エキナちゃんとルークちゃんのがあるだろ!!」

「ルークのだけはブレが酷くて、実質エキナの1枚だけだろ!!」

「僕はディセートのがあればそれでいいよ。あぁ……一生大切にするよディセート」

「なら、残りは全部俺が貰うぞ!」

「ユウ!お前、2人も恋人が居るのに欲張り過ぎだろ!?」

「ま、まだ恋人じゃねぇ!それにレインさん一人でこの全てを凌駕するだろうが!!」

「そ、それは否定出来ない……!!だが──」


 レオンが諦め悪く、抵抗を続けようとした時だった。


「お主ら、一体何をしておるのだ?」

『こ、国王(父上)!?』


 俺達の目の前に現れたのは素っ裸の、エスタード王国の国王だった。


 彼は、固まった俺達の中心にある写真を覗き込み、一言。


「ん~お主ら死刑♪」

『すみませんでした……』


 ……俺達の悪行は、温泉に浸かりながら、国王と交渉したお陰で、男だけの秘密事としてくれた。


 その代わりに要求されたのが、ディセートの母親の写真であった事を、俺達は誰もツッコむ事無く、温泉を出た。


 その際、こっそりレオンが持つ、レインさんの写真を奪いながら──

お読み下さりありがとうございます!

箸休め回が続きましたが、次回から物語が動きます!

またよろしくお願い致します!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ