第19話 私をちゃんと見てて下さいね
「セレント!!2人に守護魔法とか使えないか!?」
「つ、使えるけどあんたは!?」
「あれを撃ち返す!!!」
迫り来る閃光に向かって、真祖の魔力を解き放った。
──魔力砲、俺の最大威力の攻撃手段だ。
俺の魔力砲とドス黒い閃光とがぶつかり合う。
「ユウ君!!」
「……ユウ……!!」
「ニセマネ、踏ん張りなさい!」
約1名の声援で気が抜けそうになる。
若干競り負けているが、まだまだこんなもんじゃ無いぞ……!
出力を最大にしてやる!!
「オォォォォオ!!!」
俺と戦艦の丁度中間辺りでせめぎ合う2つの閃光は、やがて爆風を伴って霧散した。
「た、耐えた……」
俺は反動で尻餅をつく。
ほっとしたのも束の間、セレントが俺に叫ぶ。
「避けなさい!!」
「え?」
一瞬セレントの方を見ると、そのたった短い間に、細く黒い閃光が俺のみぞおちを貫いた。
「ごぼっ……連続で……!?」
「ユウ君!まだ来ます!!」
一撃じゃ倒せないからって、細い閃光を連続で撃つ事にしたのかよ!
本当に人間が入ってるって感じだな……
考えている間にも降り注ぐ不可避の攻撃は、着実に俺の体にダメージを残していく。
「……セレント、この結界を解除して……ユウを助けなきゃ……!」
「駄目よ。ルークちゃんだってあれにやられたんでしょ!行っても何も出来ないよ!」
「でも……!!このままじゃユウが死んじゃう……!!」
「ちょっとは信じてあげなさいよ、新しいルークちゃんの英雄なんでしょ?」
「信じるったって……」
ルークが俺の方を見て心配そうにしているな。
本当、情けないご主人様で悪かったよ。
あの閃光にやられて俺の体は穴だらけだからな……
でも、相手が人間の意思を持つなら対処出来るかも知れない。
倒すのは一苦労だが、動きを止める事は出来る。
──先輩、力を借ります。
魅了の魔力。
俺の虜になるように、あの大きな瞳にぶつけてやった。
「止まれ……!!」
すると──
『ギッ、ギギギ……!!』
「止まった……か?」
大きな瞳は、誤作動でも起こしたかのように白目を向いてその稼働を停止した。
「フゥ……とりあえずこれでおーけーだな」
俺はセレントが張った結界の中にいる3人の前に立つ。
「みんな、一旦は大丈夫だ。今の内に艦隊をどうするか考えよう」
セレントは魔法を解く。
体中を穴だらけにして血を流す俺に、ルークは驚いた顔をしていた。
「ユウ……今の魔力、どうやって覚えたの?」
彼女が疑問に思うのも当然だ。
真祖の魔力に魅了の魔法は存在しないのだから。
何も隠す事無く、事実を伝えた。
「メリア先輩の血を飲んだ」
「飲んだって……相手の魔法を使える程大量に飲んだら死んじゃう……──!!」
ルークは気付いたみたいだな。
メリア先輩の魔力を少しも感じ取れない事に。
「そうだ、先輩は死んだ。俺に血を託して」
「ユウ……」
ルークは酷く俺を心配した顔をしている。
エキナも目を伏せて悲しそうにルークを支えていた。
「ねぇ、一つ聞かせて。ユウ……"聖職者達"の一人を殺したネ?」
「! 気付いていたのか?」
「うん……復讐をしたかったの?」
あの時、俺は自分の感情のままあのジジイを殺した。
殺したくて殺したくて仕方無かった。
メリア先輩はそんな事望んでいなかったのに。
だからルークの質問には、あの時の心境で答える事にする。
あれは俺が犯した間違いの一つだ、ルークには俺の全部を知っていて欲しいから。
「そうだな、俺はあいつらを一人残らず殺したかった。先輩の為じゃない、俺が許せなかった」
「……そう」
──パチンッ
ルークは俺の頬を叩いた。
しかしそれは優しく、愛に満ちていた。
「きっと、ユウの心をエキナが助けてくれたんだよネ。だからあたしはユウを叱ってあげる」
「……あぁ」
エキナは俺の方を見ながら微笑んでいた。
そんなエキナを一瞬見たルークは、俺の方を向き直す。
「もう全部分かってるみたいだから、とやかくは言わない。ただ約束して、憎しみに囚われないで──あたしみたいになったらダメ」
「ルーク……」
「マーネを喪ってから"聖職者達"を滅ぼすまであたしは壊れてた。全部終わってから気付いたの、こんな風になるのをあいつは望んで無かったって」
きっと、ルークの心を助けた何かがあったのだろう。
俺と出会う為に長い時を費やすに至る何かが。
いずれ教えてくれるだろうか。
ルークの事だから恥ずかしがって中々口にはしてくれなさそうだけど。
「ユウにはあたし達がいる。ユウが間違えそうになったら全力で止めてあげるから、メリアの命はあたしも背負ってあげるからネ」
ルークはエキナと同じ事を言ってくれた。
エキナは支えているルークを見て、少し顔を赤くしている。
「ルーク、それは私の役目です。先に私が言ったので」
「えー!!ずるいよエキナ!」
「ふふっ、ルークばっかり美味しい思いはさせませんよ」
「もーーーっ……」
穏やかな2人のやり取りを見て思う。
本当に俺は幸せ者だと。
「……ユウ、泣いてるの?」
「ユウ君は泣き虫さんですね」
「え?あ、あれ何で……」
自分が何故涙を流しているのか分からなかった。
俺はすぐに涙を止め、真上を見る。
上空では依然としてドンパチやり合っている。
「今はあの目玉の戦艦を落とす事に集中しよう」
「天の矛以外は普通だから今ならいける筈だよ!」
「よし、なら魔力砲で──」
そう思った時だった。
『コロコロ、コ……ロス……コロス!!』
俺達の頭に直接響くのは、あの目玉の中に取り込まれている奴の魔力の残滓だろうか。
「くそっ、もう魅了が解けたのか!?」
「ユウ、どいて」
ルークは俺の前に立ち、翼を広げた。
「待て、ルーク!どうするつもりだ!」
「時間を稼いであげる。またあいつとの撃ち合いになったら勝てないからネ」
「俺もやる!2人ならやれるだろ!?」
「血だらけで何言ってるの。それに魔力砲もあと一発が限界でしょ?だから──」
ルークは眉間にシワを寄せて、すご~く嫌そうに言った。
「……エキナの血を飲ませて貰いなさい」
「い、いやこんな中でか!?」
「ルーク!?」
ここは戦場だ。
撃ち落とされた戦艦がいつ俺達の所に落ちてきてもおかしくない。
エキナもめちゃめちゃ動揺してるし……
俺のそんな心境を読んでいたのかルークはセレントの方を向く。
「セレント、お願い」
「はぁ……ルークちゃんの頼みなら断れないわね」
セレントは指をくるん、と回し俺とエキナを取り囲む結界を張った。
「頑丈なのを張ったわ。あちし達以外の外からは見えないし、安心してイチャイチャして大丈夫よ」
「イチャ……!?」
「おい、エキナの顔が真っ赤だろうが!」
それに、ルークは傷が塞がったからってまだ全快じゃない……危険すぎる。
「ルーク!お前まだふらついてるじゃないか!どうするつもりだ!」
「大丈夫。あたしにはこれがある」
「英雄の剣か……!?」
英雄の墓に刺さっていた剣を肩に担いで、ヒヒっと笑うルーク。
「でもお前それがあってもやられたんだろう!?」
「不意打ちを喰らっただけだし。ほら、さっさとやる事やって。あいつを倒すよ」
「む……」
ルークは去り際に「あ、そうだ」と俺達の方を振り向いた。
「言っとくけど、必要以上にイチャイチャしたらダメだかんネ!特にエキナ!!初めてはやっぱりあたしなの!!」
「えぇ!?ルークばっかりずるいですよ!私まだキスしかして貰ってないのに!」
「なっ!?キスして貰った!?あたしユウからされた事ないのに!!」
「おい!もう行くならさっさと行ってくれ!?」
恥ずかしすぎるから……!!
セレントが呆れた目で俺を見てるし!!
「……もう、帰ったらあたしともしてよ」
「血ならいくらでも吸ってやるよ」
「ふんっ。ユウのヘタレ」
すっかりへそを曲げたルークの肩にセレントが寄り添った。
「あちしはルークちゃんに付いていくよ。心配だから」
「あぁ、頼む」
ルークは最後に俺達をジト目で見た後、空へ飛んで行った。
「さて……エキナ、いいか……?」
「いいかって何がです?」
「い、言わせようとするなよ!恥ずかしいだろ!」
「ふふっ、本当にユウ君は可愛いですね」
頬を染めながら、エキナは立ち上がる。
「……ユウ君、私をちゃんと見てて下さいね」
エキナは着ていた服を脱ぎ出した。
白くて大きな胸元をはだけさせ、俺の視線を釘付けにする。
その姿に、視界が赤く染まっていく。
俺の吸血鬼の本能が目覚める──
お読み下さりありがとうございます!
次回、吸血シーンになります。気合い入れて書かないと笑
また明日もよろしくお願い致します!




