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異世界吸血鬼は余命1ヶ月の吸血姫を諦めない。  作者: 棘 瑞貴
第二部 異世界吸血鬼は花嫁聖女を壊したい。

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第19話 私をちゃんと見てて下さいね


「セレント!!2人に守護魔法とか使えないか!?」

「つ、使えるけどあんたは!?」

「あれを撃ち返す!!!」


 迫り来る閃光に向かって、真祖の魔力を解き放った。


 ──魔力砲、俺の最大威力の攻撃手段だ。


 俺の魔力砲とドス黒い閃光とがぶつかり合う。


「ユウ君!!」

「……ユウ……!!」

「ニセマネ、踏ん張りなさい!」


 約1名の声援で気が抜けそうになる。

 若干競り負けているが、まだまだこんなもんじゃ無いぞ……!

 出力を最大にしてやる!!


「オォォォォオ!!!」


 俺と戦艦の丁度中間辺りでせめぎ合う2つの閃光は、やがて爆風を伴って霧散した。


「た、耐えた……」


 俺は反動で尻餅をつく。

 ほっとしたのも束の間、セレントが俺に叫ぶ。


「避けなさい!!」

「え?」


 一瞬セレントの方を見ると、そのたった短い間に、細く黒い閃光が俺のみぞおちを貫いた。


「ごぼっ……連続で……!?」

「ユウ君!まだ来ます!!」


 一撃じゃ倒せないからって、細い閃光を連続で撃つ事にしたのかよ!

 

 本当に人間が入ってるって感じだな……


 考えている間にも降り注ぐ不可避の攻撃は、着実に俺の体にダメージを残していく。


「……セレント、この結界を解除して……ユウを助けなきゃ……!」

「駄目よ。ルークちゃんだってあれにやられたんでしょ!行っても何も出来ないよ!」

「でも……!!このままじゃユウが死んじゃう……!!」

「ちょっとは信じてあげなさいよ、新しいルークちゃんの英雄なんでしょ?」

「信じるったって……」


 ルークが俺の方を見て心配そうにしているな。

 本当、情けないご主人様で悪かったよ。

 あの閃光にやられて俺の体は穴だらけだからな……


 でも、相手が人間の意思を持つなら対処出来るかも知れない。

 倒すのは一苦労だが、動きを止める事は出来る。


 ──先輩、力を借ります。


 魅了の魔力。

 俺の虜になるように、あの大きな瞳にぶつけてやった。


「止まれ……!!」


 すると──


『ギッ、ギギギ……!!』


「止まった……か?」


 大きな瞳は、誤作動でも起こしたかのように白目を向いてその稼働を停止した。


「フゥ……とりあえずこれでおーけーだな」


 俺はセレントが張った結界の中にいる3人の前に立つ。


「みんな、一旦は大丈夫だ。今の内に艦隊をどうするか考えよう」


 セレントは魔法を解く。

 体中を穴だらけにして血を流す俺に、ルークは驚いた顔をしていた。


「ユウ……今の魔力、どうやって覚えたの?」


 彼女が疑問に思うのも当然だ。

 真祖の魔力に魅了の魔法は存在しないのだから。

 何も隠す事無く、事実を伝えた。


「メリア先輩の血を飲んだ」

「飲んだって……相手の魔法を使える程大量に飲んだら死んじゃう……──!!」


 ルークは気付いたみたいだな。

 メリア先輩の魔力を少しも感じ取れない事に。


「そうだ、先輩は死んだ。俺に血を託して」

「ユウ……」


 ルークは酷く俺を心配した顔をしている。

 エキナも目を伏せて悲しそうにルークを支えていた。


「ねぇ、一つ聞かせて。ユウ……"聖職者達"の一人を殺したネ?」

「! 気付いていたのか?」

「うん……復讐をしたかったの?」


 あの時、俺は自分の感情のままあのジジイを殺した。

 殺したくて殺したくて仕方無かった。


 メリア先輩はそんな事望んでいなかったのに。

 

 だからルークの質問には、あの時の心境で答える事にする。

 あれは俺が犯した間違いの一つだ、ルークには俺の全部を知っていて欲しいから。


「そうだな、俺はあいつらを一人残らず殺したかった。先輩の為じゃない、俺が許せなかった」

「……そう」


 ──パチンッ


 ルークは俺の頬を叩いた。

 しかしそれは優しく、愛に満ちていた。


「きっと、ユウの心をエキナが助けてくれたんだよネ。だからあたしはユウを叱ってあげる」

「……あぁ」


 エキナは俺の方を見ながら微笑んでいた。

 そんなエキナを一瞬見たルークは、俺の方を向き直す。


「もう全部分かってるみたいだから、とやかくは言わない。ただ約束して、憎しみに囚われないで──あたしみたいになったらダメ」

「ルーク……」

「マーネを喪ってから"聖職者達"を滅ぼすまであたしは壊れてた。全部終わってから気付いたの、こんな風になるのをあいつは望んで無かったって」


 きっと、ルークの心を助けた何かがあったのだろう。

 俺と出会う為に長い時を費やすに至る何かが。

 いずれ教えてくれるだろうか。

 ルークの事だから恥ずかしがって中々口にはしてくれなさそうだけど。


「ユウにはあたし達がいる。ユウが間違えそうになったら全力で止めてあげるから、メリアの命はあたしも背負ってあげるからネ」


 ルークはエキナと同じ事を言ってくれた。

 エキナは支えているルークを見て、少し顔を赤くしている。


「ルーク、それは私の役目です。先に私が言ったので」

「えー!!ずるいよエキナ!」

「ふふっ、ルークばっかり美味しい思いはさせませんよ」

「もーーーっ……」


 穏やかな2人のやり取りを見て思う。

 本当に俺は幸せ者だと。


「……ユウ、泣いてるの?」

「ユウ君は泣き虫さんですね」

「え?あ、あれ何で……」


 自分が何故涙を流しているのか分からなかった。

 俺はすぐに涙を止め、真上を見る。

 上空では依然としてドンパチやり合っている。


「今はあの目玉の戦艦を落とす事に集中しよう」

「天の矛以外は普通だから今ならいける筈だよ!」

「よし、なら魔力砲で──」


 そう思った時だった。


『コロコロ、コ……ロス……コロス!!』


 俺達の頭に直接響くのは、あの目玉の中に取り込まれている奴の魔力の残滓だろうか。


「くそっ、もう魅了が解けたのか!?」

「ユウ、どいて」


 ルークは俺の前に立ち、翼を広げた。


「待て、ルーク!どうするつもりだ!」

「時間を稼いであげる。またあいつとの撃ち合いになったら勝てないからネ」

「俺もやる!2人ならやれるだろ!?」

「血だらけで何言ってるの。それに魔力砲もあと一発が限界でしょ?だから──」


 ルークは眉間にシワを寄せて、すご~く嫌そうに言った。


「……エキナの血を飲ませて貰いなさい」

「い、いやこんな中でか!?」

「ルーク!?」


 ここは戦場だ。

 撃ち落とされた戦艦がいつ俺達の所に落ちてきてもおかしくない。


 エキナもめちゃめちゃ動揺してるし……


 俺のそんな心境を読んでいたのかルークはセレントの方を向く。


「セレント、お願い」

「はぁ……ルークちゃんの頼みなら断れないわね」


 セレントは指をくるん、と回し俺とエキナを取り囲む結界を張った。


「頑丈なのを張ったわ。あちし達以外の外からは見えないし、安心してイチャイチャして大丈夫よ」

「イチャ……!?」

「おい、エキナの顔が真っ赤だろうが!」


 それに、ルークは傷が塞がったからってまだ全快じゃない……危険すぎる。


「ルーク!お前まだふらついてるじゃないか!どうするつもりだ!」

「大丈夫。あたしにはこれがある」

「英雄の剣か……!?」


 英雄の墓に刺さっていた剣を肩に担いで、ヒヒっと笑うルーク。


「でもお前それがあってもやられたんだろう!?」

「不意打ちを喰らっただけだし。ほら、さっさとやる事やって。あいつを倒すよ」

「む……」


 ルークは去り際に「あ、そうだ」と俺達の方を振り向いた。


「言っとくけど、必要以上にイチャイチャしたらダメだかんネ!特にエキナ!!初めてはやっぱりあたしなの!!」

「えぇ!?ルークばっかりずるいですよ!私まだキスしかして貰ってないのに!」

「なっ!?キスして貰った(・・・・・)!?あたしユウからされた事ないのに!!」

「おい!もう行くならさっさと行ってくれ!?」


 恥ずかしすぎるから……!!

 セレントが呆れた目で俺を見てるし!!

 

「……もう、帰ったらあたしともしてよ」

「血ならいくらでも吸ってやるよ」

「ふんっ。ユウのヘタレ」


 すっかりへそを曲げたルークの肩にセレントが寄り添った。


「あちしはルークちゃんに付いていくよ。心配だから」

「あぁ、頼む」


 ルークは最後に俺達をジト目で見た後、空へ飛んで行った。


「さて……エキナ、いいか……?」

「いいかって何がです?」

「い、言わせようとするなよ!恥ずかしいだろ!」

「ふふっ、本当にユウ君は可愛いですね」


 頬を染めながら、エキナは立ち上がる。


「……ユウ君、私をちゃんと見てて下さいね」


 エキナは着ていた服を脱ぎ出した。

 白くて大きな胸元をはだけさせ、俺の視線を釘付けにする。

 その姿に、視界が赤く染まっていく。

 俺の吸血鬼の本能が目覚める──

お読み下さりありがとうございます!

次回、吸血シーンになります。気合い入れて書かないと笑


また明日もよろしくお願い致します!

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