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出会ってしまった運命の人

兄さん、まずいことになりましたスピンオフ作品です。

上記作品、読んでいない方も楽しめるように書いています。

お時間がある方は人物把握の為にも読みに行ってみてください。


主人公はシュタルク帝国、大元帥の娘フランチェスカ・リム嬢です。

絶世の美女です。




 皆さま、はじめまして。

 私はシュタルク帝国、大元帥の娘フランチェスカ・リムと申します。


 この度は、※テンペストのスーパーグレートマスターである私の憧れの御方が、滅多に試合に参加されないグローバルマスターと、歴史的一戦を秘密裏に行うとの情報を得たので、我が国からは少しばかり距離がありますが、ウェルト王国まで早馬を飛ばし遥々やって来たのでございます。


 一戦に立ち会えるように少し強引な手立てで、参加させていただきました。

 底意地の悪い性格のアレクシス殿下(あの人)に、また借りが出来てしまいましたが……そんなもの、この際どうでもよいのです!


 だって、だってだって、何という至福の時でありましたのでしょう。

 やはり、才能ある者同士のぶつかり合い、素晴らしいファイトでありました!!!


 特にあのハートフィル侯爵様の一手、もうすでにウェルト国王の勝利が確定かと思われる盤上、国王が止めの一手により投了かと思われたあとに、あの形勢逆転の究極の一手を放った時は、頂点にこの人ありと宣言するような神々の居られる空間がそこに存在いたしました。


 本当に素晴らしかった!

 フラン大感激です。


 歴史的一戦の余韻に浸りながら回廊を歩いていた時です。

 あら、あちらにおられるのはハートフィル侯爵のご息女、こんなところで何をされているのでしょうか?


 リナ様をお見掛けしました。

 先程の決戦にはいらっしゃらなかったようですけど……よろしかったのかしら??


 確か、リナ様はウェルト王国第二王子、エドワード殿下とご結婚されたはず、あの決戦に立ち会われなくてよかったのかしら?

 それとも、何かもっと大事な用事でもあったのかしら……でも、あれはかなり重要な試合よねぇ~。


 その隣にいらっしゃるのは、第一王子のアレクシス殿下とご結婚され、数か月前に王子を産んだばかりのソフィア様だわ。

 お二人はとても仲良しなのね~。


 駆け寄って話し掛けてみました。

「はじめまして、私はシュタルク帝国、リム大元帥の娘フランチェスカと申します。」


 話してみたら、とても良い人達でした!


 この時に、何も知らされていなかった彼女たちが離れ離れにならない為の今後の計画を立てたのですが、その計画に私も協力することとなりました。


 そして、たった今までその計画の協力者として次期王妃ソフィア様の自室までお供していました。

 そして、たった今、アレクシス殿下への第一作戦が順調に済みましたので部屋を出てきたところです。

 しかし、女子同士でワイワイ話しているのは、とても楽しいものなのですね~。


 第一作戦とは、仮病作戦です。

 私もその場に居たのですが、部屋に滞在していた時に、ソフィア様が倒れたと言う嘘情報を流し、それに踊らされ、体調を心配してアレクシス殿下が駆け込んできたのです。

そして、リナ様が居なくなると聞き、倒れられたと涙ながらに話し始めました。

 私は計画が悟られまいか心配するばかりで余裕がありませんでしたが、流石、首謀者の2人、圧巻の演技で彼を翻弄しておりました。


 殿下が話を両親たちに付けに行くと言って部屋を出て行った後、いやはやお見事!と私は2人を大いに褒め称えましたよ。

 今頃、2人は、これで猶予が出来たとほくそ笑み、先程の部屋でお茶を優雅に飲みながら、次の計画を立てているに違いありません。

 フフッ、次も楽しみですね~。


 しかし、リナ様は当事者なのに、あの歴史的一戦を知らされていなかったとは……。


 まあ、私もあの歴史的一線が、エドワード殿下の今後の行く末を決める大切な決戦であったとは、知りませんでしたし……それを耳にしたのは決着後で大変驚きましたけれどね。


 まさか、そんなことを決めるためだけに、あの二人が戦うだなんて思いもしなかった。

 これ以上陛下は侯爵に負けたくないからと、勝負をしないと聞いていましたから、もう素晴らしい一戦は見られないものと残念に思っていたので、今回はこの機会を知れて、とてもラッキーでした。


 まあ結局、陛下が負けたので、エドワード殿下はハートフィル侯爵が指名した王家の管轄領へ移住する事とのなったようなのですが……。

 勝手に決められてしまうなんて、エドワード殿下もリナ様もお可哀そうに。


 やはり、この国の貴族は裏で暗躍が多すぎて恐ろしいです。

 身内であってもこの扱い、私、この国ではなくシュタルク帝国に生まれて本当に良かったと思いますわ。


 我が国は何かあったら武力で解決、一丁上がりなのでラクチンですよ。



 そうですわ!

 私がこちらに滞在している間は、彼女らへ情報提供の協力をすると約束いたしましたので、少しばかり諜報活動をしてみようと思いますの。


 何をしたらよいのかしら?

 と、考えながらコソコソと城内を歩き回っていたのですが……。


 今、私は身動きが取れない状態に陥っております。

 私は、いけないものを聞いてしまっているのかもしれません!?


 情報を得るために柱や茂みに隠れて行動していたのですが、歴史的一戦の時にお会いしたハートフィル侯爵夫人とその子息アルム様が遠くに居られるのが見えました。

 アルム様はテンペストの大会でもよくお会いするのですが、兄妹だけあってリナ様とは、とても顔が似ておられるのですよ。

 それはさておき 2人とお話しをしようと、私は近寄ろうとしていたのです。


 ですがそこに、お腹の大きな女性が速足でやってきまして慌てた様子であったので、彼らに声を掛けるべきかと悩みながら、私はソロリソロリと近づいていったのです。


 そして、今、茂みに隠れて、会話を盗み聞きしているといった状態になってしまっています。

 この会話、聞いていてよいのかしら??


「マリア、大丈夫かい?お腹の我が子にも、君の体にも障るから少し落ち着いて。」

 アルム様の心底心配する様子……。

 あちらのお腹の大きな女性は、アルム様の奥様でしたか。


「それで、シュゼイン公爵夫人は何て?」

 奥様を落ち着かせた後、アルム様が尋ねる。


「大分探りを入れられたわ。おそらく……何かしら掴んでいるのではないかと。ですが公にしない代わりに、次期王子妃候補の手伝いを……と匂わせたた内容の話を、直接的ではないのですが、そう言ったやり取りでした。」


 これは歴史的一戦をしている最中に開催されていたという、ソフィア様達も参加していた王妃様のお茶会の報告をなさっているのかしら?

 聞くのはよくないかもしれないわね、後ろに下がろうかしら?


 その直後、強い口調で言葉が発せられた。

 その気配にフランチェスカはビクッとし、体が硬直した。


「ごめんなさいね。皆に、迷惑を掛けるわ。」

 何やらハートフィル侯爵夫人が謝っている。


「とんでもない。私にも分かったことなのです。詳しく探るものが現れれば、こうなることも予想しておりました……それに近頃のお義母様の見た目。」

「まて!!それ以上はここで話しては駄目だ。誰が聞いているか分からないんだぞ。」

「ご、ごめんなさい、アル。私、まだ気が動転しているようだわ。気を付ける。」


 あれれ、これって聞いたらかなりまずいんじゃないかなと考えていた時に、肩にポンと軽く手を乗せられる。

 大声を出しそうになったところを、口を押えられ間一髪で免れた。


 口を押える人物を確認するために恐る恐る振り返ると、そこにいたのは先程のソフィア様達の作戦で、いいようにリナ様達に使われていた近衛騎士のカイル・モーリス隊長であった。


 あとで聞いたら、ここへは偶然通りかかっただけだと彼は言っていた。

 まあ、そのはずは無いだろうけどね……。


 口に人差し指を当て、静かにしろと言うジェスチャーをしている。

 それに私は小刻みに頷いた。

 モーリス隊長は口から手を外し、ついて来いと手招くので、私は彼の後ろで音を立てないようについて行った。

 そして、彼らが完全に見えなくなった位置で、モーリス隊長が話し出した。


「リム嬢、あそこで何をしていたのですか?もしや、ハートフィル侯爵家を探っていたのではありませんよね?」

 モーリス隊長が凄みのある圧力をかけて聞いてくる。


「いいえ、滅相もございません。話し掛けるタイミングを逃し、どうしようかと途方に暮れていたところでした。」

「そうですか、それならば一つ忠告を……あの一族に深く関心を持たない方が身のためでしょう。真っ当に生きていたいのであればね。」

「ど、どういうことですか??」

 と、質問した時に、モーリス隊長が目線を上げ、私の後ろに顔を向けた。


 すると、柱の影からアルム様がひょっこりと顔を出した。


「流石だね、カイル。僕もまだまだのようだ。」

 いつも無表情のアルム様が天使の如く爽やかに笑っている…なにこれ凄く怖い。

 あんなに素敵な笑顔なのに、見ていると底知れぬ不安が押し寄せてくる。


「俺はこの国の近衛の隊長だぞ。気が付かない方がまずいだろう……それより、その顔と殺気をやめろ。彼女は無実だ。」

「そうか……それならよかった。」


 いつもの無表情に戻るアルム様、ああよかった。

 いつものテンペストの時のアルム様だ。


「リム嬢、中庭での僕らの会話は聞いていないよね?」

「え?」


 その私の疑問の声に、モーリス隊長がわき腹を突き、ジェスチャーで否定しろというので、私は慌てて否定した。

「ええ、ええもちろん聞いていないわ。」


「そうか!よかった、君は何も聞いていないんだね。それならば無事に国に帰れるね。」

 そう言い残し、アルム様は去っていきました。


 後姿を見ながら、モーリス隊長に私は問う。

「ねえ、モーリス隊長、あれって、しゃべったら殺すってこと?」

「ああ、そう聞こえたならばそうだろうな。命拾いしたな。」

 モーリス隊長の回答を聞き、危うかったのだと身震いが生じた。


 それから私は急いで彼にお礼を言い、足早にそこから逃げ出したのです。

 ああ、恐ろしや~。


 この国の貴族は、我が国と同じ軍事国家である所為か、しつこくライバル視してくるゴア帝国の皇帝よりも闇が深い……。


 ***


 一心不乱に速足で突き進んでいたので、どこだかよく分からない場所に出てしまった。

 迷子になってしまったので、誰かに道を尋ねようとガヤガヤと声がする方へ向かい、歩みを進めた。


 どうやら騎士団の厩舎のようだ。

 どこかの部隊が、たった今帰城したようで、続々と馬を預け、荷を運んでいる。

 少し先に指示を出している見知った人物を見つけたので、帰り道を聞こうと近づいた。


「エドワード殿下、お久しぶりです。シュタルク帝国のフランチェスカ・リムです。お元気でしたか?」

「ああ、久方振りですね、リム中将殿。来ているとは知りませんでした。あっ、すみません。あなたとお会いする時は、いつも軍事での場でしたので、このように素敵なドレスの令嬢に対して、階級呼びをしてしまいました。大変失礼いたしました。」


 知り合いとはエドワード殿下の事でした。


 私は話しを気にせずに続ける。

「お気になさらずに、いつもの中将呼びで良いのですよ。私もそちらの方が気に入っておりますし、照れくさくないので。実は、今日、あなたの御父上とハートフィル侯爵がテンペストで対決をすると耳にしまして、ぜひ観戦したいと参上したのですよ。」

「そうでしたか、父上が内務大臣と対戦を?ああ、確か、リム中将はテンペストがお好きでしたね。楽しんでいただけましたか?」

「ええ、それはもちろん、至福の時間を味合わせていただきました。」


 そんな会話をしていた時である。

 殿下の真横に積まれていた大きな樽に、こちらに気を取られよそ見をして荷物を運んでいた者が、勢いよくぶつかったのだ。


 樽が大きく揺れ崩れる。

「危ない!」

 と、誰かの叫び声がする。


 フランチェスカが見上げると、樽がフランチェスカを目掛けて転がり落ちてきていた。


 フランチェスカが気付いた時にはすでに手遅れで、もう逃げるにも間に合わないと覚悟をしたのだったのだが。


 数秒後。

 あれ、痛く……ない?……あれ、あれ?私、何ともないみたい。

 ギュッと瞑っていた目を恐る恐る開ける。


 目を開けて何ともない体を確認した後、自分に覆いかぶさる影に気づく。

 顔を上げると、そこには毛むくじゃらの肉厚の胸板が自分を覆っていたのだ。


 そこいらのか弱いご令嬢であるならば、この現状に悲鳴をあげているであろう。

 だって、目の前に毛むくじゃらの胸筋である!!


 しかし、この物好きな娘、フランチェスカは好物であった。

 まあ素敵と口に出しそうになるのを抑えるくらいに。


 その時、上から赤い液体がポタッと滴り落ちてきた……血だ!?

 ハッとして、目線をさらに上へ向けると、額から血を流した大男の顔があった。


「だ、大丈夫ですか?」

 フランチェスカが震える声で問いかけると、

「大丈夫、だです。俺、頑丈だから。あなたは怪我無い?ですか?」

 その筋肉モリモリマッチョ男が返事をした。


「ええ、ありません。あなたのお陰です。ありがとうございました。」

 はうぁっ、イイ!!


「おい、ガイム。大丈夫か?うわっ、血が出ているぞ。背中も大滝が当たっていたし、早く医者に診てもらえ。」

「あっはい、分かりやした殿下。」

 そういうと下に散らばる樽を除け、大男は急ぎ足でその場を去っていった。


「あっ。」

 助けて貰ったお礼を伝えていないと声を掛けようとしたのだがあっという間に去ってしまい引き留められなかったので、殿下に彼の事を聞くことにした。


「あのエドワード殿下、先程の胸き、大きな御方、助けてくれたあの人の名などを詳しく教えてくれませんか?」

 興奮気味に聞いていた。


 この時、フランチェスカは顔を赤くし心臓をバクバクさせ、心がときめいていた。

 強く否定しておくが、殿下にではない!


 大きく逞しく、勇敢で助けてくれた素敵なあの胸筋の大男さんに、である。

 そう、フランチェスカはガイムに恋をしたのだ。


「あいつか、あいつはガイム・ハディトンだ。我が国に長年仕える歴史ある騎士の家系の出でハディトン男爵家の三男だ。少しばかりあいつはお頭が弱いが、人外のような力を持ち、かなりの剣の腕を持っている。我が国の将来有望な男だ。今の事でお礼を考えているのならば、全く必要ないぞ。むしろこちらがお詫びをしなければならない。樽にぶつかった騎士の……って聞いてる?おーい、リム中将殿?おーい。」


と、エドワード殿下が色々と教えてくれていたのだが、最後の方は耳に入っていなかった。


「ガイム……様……」


 その後の私は、どう自室に帰ったのか、定かではない。



※テンペストとは、この物語の世界の架空のボードゲームの名称です。


お読みくださりましてありがとうございました。

次回、フランチェスカが頑張ります!

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