~怠惰の計画②~
コンコンコンコン。
屋敷の玄関扉をノックする音が聞こえる。
「お早うございます!何方かいらっしゃいませんか??」
挨拶をする若い男の声聞こえてきた。玄関にイリアがバタバタと足を鳴らし向かうと、そこには金髪で短髪のいかにもイケメンなエルフの男が立っていた。
「あら、ファウンロドさん。お早う御座います。」
「お早う、イリア。」
現れたのは、怠惰の魔王班のもう一人の仲間、森の民族のファウンロド=アディスンだった。
イリアは、ファウンロドをリップとアルラがいる応接室へ案内した。
「お早う御座いますリップ様。それにアルラ。」
「おはよー。」
「おはようファウンロド。」
ファウンロドは応接室のソファに腰を掛け、イリアは、淹れた紅茶を彼に差し出した。飲みながら先ほど話していた内容をファウンロドにも話すと目を丸くし苦笑いを浮かべていた。
「しかし、朝から驚かせてくれますね。お許しがあるとはいえ、魔王様を呼び捨てにしろとは………。」
「堅苦しいのは苦手だからねー。」
「貴女には敵いませんね。でしたら俺の名も『ファウロ』て呼んで下さい。仲の良い者達にはそう呼ばれていますので。勿論アルラとイリアもな。」
「じゃあ、ファウロも『リップ』って呼んでよー。」
「なっ?!俺もですか??」
「当たり前!!同じチームなんだから!!」
「えーーーー………。」
驚きを隠せずにいたファウンロドに対しアルラとイリアは慰めに似た言葉を彼にかけた。
「諦めなさいファウロ。リップには勝てないわ。」
「そうです。慣れれば何て事ありませんよファウロ。」
「お前ら順応しすぎだ……。」
(これって絶対、面白がられてるよな………。)
呆れ果てたファウンロドを尻目に、リップは此れからの事を話始めようとした時、ファウンロドが何かを思い出した。
「そういえば、ここに来る途中ドルフさんに、「頼まれていたものが出来た。」と伝えてくれと言われたのですが。」
「もう、できたんだ。今日はまだ予定決まってないし皆で行ってみよっか。」
「一体、何を頼んだんです?」
「それは、行ってからのお楽しみー。ささ、準備できたら出発しよー。」
テーブルの上にある紅茶を飲み干したあと、屋敷の戸締まりをしリップ達一行は鍛治士組合会長ドルフ=ベインの工房に向かった。
商人街を通り抜け職人街に歩いていくのだが、その中央付近にあるドルフの工房は、リップの屋敷からはそれほど遠くはなく丁度良い散歩の距離だ。リップはミーアに来てからというもの毎日色々な商店や職人工房に顔を出していたので街の人々は笑顔でリップに話しかけてくる。それを間近で見ていたお供の三人は、リップの人懐っこい人柄にいつの間にか惹かれていった。三人だけではなく、最初は警戒していた商人街や職人街の人々も徐々にだが心を緩していた。朝早く屋敷を出ていたが、あれよあれよと時間が経ちドルフの工房に着いた頃には昼近くまで過ぎていた。
バタンーーー
「おやっさん、いるー?」
声を張り上げながら工房のドアをノックもせず、いきなり扉を開けたリップに対して、ドルフは驚きもせず何事も無かったように普通に応対した。
「ん??おう、来たか嬢ちゃん!」
「こんちは、おやっさん。ファウロから聞いたんだけど例の物が出来たってー??」
「おうよ!中々の自信作だぜ!」
「見せて見せてー。」
「そんな慌てんな、逃げねぇーんだからよ。」
リップとドルフのやり取りを聞いていたアルラとファウロはポカーンと口を開けていた。イリアだけはいたって冷静に見ていた。
「なぁ、アルラ。」
「何よ。」
「ドルフさんリップが魔王って知らないのか?」
「なわけないでしょ。魔王様の紹介のとき、わたしたちと一緒にいたんだから。」
「だよな…。じゃあ、なんで普通に話してんだよ。」
「私に聞かれたって知らないわよ。」
「さすがに、嬢ちゃんはマズイだろ?」
「でも、リップもドルフさんも楽しそうよ。誰かさんと違ってビビったりしてないわ。」
「……ホントだ。誰かさんと違って、良い笑顔で話してら。」
「ちょっと!誰かさんって誰よ。」
「さぁな…。」
「フン…。小さい男……。」
「フン…。可愛げのねぇ女……。」
憎まれ口をお互いに叩きあっていた二人に、リップおニヤニヤしながらニタッとした笑顔を二人に向けた。
「ちょっと、二人で何イチャイチャしてんのー??」
それを聞いて直ぐ様反論。二人は、リップの言葉を遮るように…。
「「してないっ!!!!」」
(はぁーー……。二人ともほんとに素直じゃないんだから……。先が思いやられるわ……。)
少し照れながら否定しているアルラとファウロの様相を見ていたイリアは、やれやれといった表情だった。
「二人の事はあとでゆっくり聞くとして。とりあえず、おやっさんから説明あるからこっちに集まってー。」
あからさまに二人の仲を怪しむリップは良い遊び道具が出来たとウキウキしていたが、本題はドルフ=ベインに頼んでいたある物の確認だ。リップは、そこは仕事は仕事として、しっかりと線引きをしていた。
(屋敷に帰ったら、リップはアルラとファウロを絶対追求するわね……。フフフ、楽しくなってきた……。)
アルラとファウロは、イリアが心の中でそんな事を思っているなんて知る由もないだろう。




