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Magic of OZ~天性持ちの転生者~  作者: 赤間 そあ
~第三章 国境都市編~
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~怠惰の計画①~

「ふわぁぁぁーー。」


朝の暖かい日差しが部屋に射し込む頃、彼女は大きな欠伸をしながら目覚めたが、できるだけ時間を稼ぐかのようにベッドの中でぼんやり過ごし、再び布団にくるまり惰眠を貪る。いわゆる二度寝というやつだ。


彼女の名はリップ=デニム。怠惰の魔王であり、国境都市ミーアで商人や職人をまとめる商工組合管理長という役職に就くことになった。役職に就くにあたり、領主のジルから商店街中央付近にある庭付きの二階建ての屋敷を貰い受けたのだが如何せん、そこは怠惰の魔王。朝から二階の日当たりの良い自室でダラけきっているというわけだ。



「リップ様ー!朝ですよーー!起きてくださーーーい!」



階段下より、リップを呼ぶ声がするが眠気には勝てない。この屋敷を与えられてからは、毎朝眠気には勝てずにいた。以前は、酒場や商店などでアルバイトをしその稼いだ金で安宿に宿泊していたのだが、そことこの屋敷は雲泥の差。ベッドも布団も全くの別物で、しかもこの街特有のガラス窓が街の全ての建物にあり、天気の良い日は暖かな日差しが部屋の中に射し込む。その暖かな日差しのお陰で二度寝が頗る気持ちいいのだ。宿泊に利用していた安宿や他の街の住居、城に至るまで窓ガラスなんて物は無く、板を開けるか閉める程度の窓しか存在はしない。怠惰の魔王でなくとも二度寝をしてしまうほど気持ちの良いものなのだ。



ドンドンドンーー。


「いい加減、起きてくださいよー!!朝ごはん冷めますよー!!」


リップの部屋の扉を叩く音が鳴り、先程の声の持ち主が扉の前で、二度寝しているだろう彼女を起こしに来たのだった。


「はーーい。今行くーー。」


「早くしてくださいよー。」


「ったく、分かったってー。」


そう言うとその声の主は、スタスタと階段を下りていった。


「アルラはせっかちだなー。」


先程から、リップを起こしていたのは蜘蛛人族(アラクネ)の女王アルラ=アリアドネだった。国境都市ミーアに住むようになり女王の称号は返上し今は蜘蛛人族代表としていた。アルラ曰く、「オズワルド王や七人の魔王がいらっしゃるのに女王を名乗れば滑稽だわ。」と思ったかららしい。


リップは一階に下り、食堂に入ると朝食を終えたアルラが食卓におり、イリアはアルラや自分の食べた後の食器を片付けようとしていた。


「おはよ。」


「遅いですよー。」


「ゴメンゴメン。イリアもおはようーー。」


「おはようございますリップ様。朝食の準備は出来てますのでお召し上がりください。」


「ありがとね、イリア。」


「いえ。お気になさらないで下さい。いま、スープをお持ちします。」


イリアは手に持った食器を台所に持っていき、リップに朝食のスープを運んできた。リップは、用意された朝食をササっと食べ終え、食卓から応接室に移動し三人は紅茶を飲みながら、今日の予定を話し合う事にした。


「リップ様、今日はどうします?」


「んー。そうだなー……。商人街と職人街も散策し終わったから、ジルから頼まれてる物に取りかかろうと思ってたんだけど………。その前に……。」


「何かありました?」


「その名前の後ろに『様』つけるの止めない?なんだか慣れないからさー。」


「そんな恐れ多い。無理ですよ。」


「一緒に暮らしているんだから、『リップ』って気軽に呼んでよー。」


「無理です!無理です!」


「本人が良いって言ってんだし大丈夫だってー!」


「命令じゃない限り無理ですよー……。」


「じゃあ、命令ね。それと敬語も禁止!」


「そんな-………。」


「家族みたいなもんだからいいじゃんー。」


「もう、強引なんですから。」


「ニシシシシッ。」


リップはおどけた笑顔でアルラとイリアに命令したのだが、当の二人の顔は苦笑いを浮かべていた。前世でリップは一人っ子だったので、一緒に暮らす姉妹ができたことが何よりも嬉しかったのだ。



「何か取り掛かるのですかリップ?」


「おぉーいいねぇーイリア。そんな感じで宜しくね。とりあえず今日は必要になる物を書き出していこうかなー。」


イリアは、リップを呼び捨てする事にあまり気にならなかったらしくスッと口に出した。アルラとは正反対だ。


リップが前世より得意としているものは、「ファッション」と「メイク」。だが、こちらの世界ではその概念は皆無だった。服なんかは機能性重視であり、メイクなどは存在すらしていない。


「なんでこの世界は、皆同じ服や装備なんだろうねー??」


「簡単ですよ。無いからです。」


「無いの??」


「ええ。街を歩いていて気付きませんでした?服飾店が多数あれど同じような物ばかり店頭に並べていますから。」


「あっ!!そういえば…。でも、なんで??服職人いるのに…?」


「職人が手縫いで繕っているからです。同じ物を生産することにより材料費も製作時間も計算できますから。その為よく似た商品が多いのです。」


「けど、武器や防具はそんなことないよね?」


「特別発注以外は武器や防具も服飾店とさほど変わりませんよ。」


「んーーなるほど………。そりゃ賑やかにならないわけだ。」


「どこの街も、同じようなものです。」


「こりゃ、ジルも大変だなー。街興ししながら発展目指すんだから。」


「ええ。ジル様は精一杯やられておられますよ。正直、街の発展で役に立っているのは仲間の中じゃ、宰相のグレイさんぐらいですから、リップや他の魔王様がミーアに移り住まわれて、ジル様も助かっておられていると思います。」


「お世辞が上手いなイリアは。」


「本当の事ですから。」


「そんじゃまぁ、期待に応える為にも頑張りますか!」


「「はい!」」


リップ=デニム、アルラ=アリアドネ、イリア=イエンザの三人は、良い協力関係を築き始めていた。もう一人いる仲間の存在をすっかり忘れたまま。

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