~需要と供給~
憤怒の魔王ラス=ギャレットとブライ、ラゴール、ゾルの3人による力比べにより謁見の間の一部が破壊され、修理は力比べの参加から逃げたプリズナーとそれを手引きした俺がする羽目になったのであった。
「…とりあえず修理は後程するにして、これからは魔王はこの街の顔役になるから仲良くするようにな。」
集まったいた臣下や兵達に通達すると、ヴァンが話に入ってきた。
「え??ワイ等、ここ住んでええのか?」
「なに言ってんの??当たり前だろ。」
「てっきり、指導くらいやと…………。」
「んな訳ないじゃん。ってか話の流れで分かるだろうが。」
「こっち来て、優しくされるん初めてやわ……。」
「お前ら、今まで、どんな生活してたんだよ…………。」
「『咎人』の件で飛び回ってたんやから基本野宿や。」
「あーしはバイトしながら安宿に泊まってたしー。」
「俺も、野宿だ。喰う物は森や山にあったからな。」
「…………リヴァと一緒に暮らしてたから………。」
「いろんな男に貢がしてたわね。あんまり困った事なかったわ。退屈だったけど。」
「冒険者として、暮らしていた…………。」
「要するに皆、根なし草な訳ね。じゃあ、ちょうどいいじゃん。腰を据えてミーアで暮らしなよ。家や部屋なら余ってるからさ。」
「ええのかいな。」
「あのな、そういう時だけいつもの図々しさ出さないのセコいぞ。」
ヴァンが少し謙虚になっているのを、好奇な目で見ていたらなんだか照れ臭そうにしていた。
(ジロジロ見てちゃ、逆ギレしそうだし、これくらいにしておこっかな。)
俺は、とりあえずヴァンをほっておいてグレイに調査報告を聞くことにした。
「グレイ、頼んでたやつ、調べられた?」
「ええ、勿論。ジル様にも納得していただけると思いますよ。」
「へぇー。そんな好条件に見合う場所あったんだ。」
「とりあえず、こちらをどうぞ。」
グレイは俺に6枚の羊皮紙を渡し、魔王一人一人には、一枚づつ違う物が書かれた紙を手渡した。その紙には魔王の住まいになる家や部屋の間取り、外観が描かれていた。俺が持つ紙はそれらを集めたものだ。説明するためにグレイも同じ物を持ち、魔王達に説明を始めた。
「まず、ヴァン様は練兵所2階が所長室兼私室としてあり、いまは空いておりますからそこへどうでしょう。訓練も出来、城にも近く大臣や事務官と話せる応接間もありますから都合いいかと。リップ様は商人街にある二階建ての屋敷がありますからそこへ。一階は店舗利用も可能ですし商人街の中央にありますから便利ですよ。広いのでアルラとイリアと居住でき、職人街の連中との打ち合わせも可能です。ブレッド様は商人街と歓楽街の間にある広めの平屋の店舗を。解体作業に必要な川が近くに流れていますからよろしいかと。冒険者組合にも近く魔物や獣が納品される事を考えると最適ですよ。商人街に近いですし肉を卸したり、歓楽街に隣接しているので、一部を酒場や飯屋を開く事ができ立地的には最良です。アイス様はマツバ様と共に暮らしたいと聞いておりますゆえ城内に離れを建造中ですので少し設計変更し手を加えれば良いかと。今ならアイス様の希望に寄せれます。専用の台所や洋菓子制作場所なんかいかがです?ローズ様は、歓楽街の一等地にあります、遊郭『桜華楼』が良いかと。昔、栄華を極めていた色街の顔でしたが、これを機に復活しましょう。大きな宣伝にもなりますからね。五階建ての立派な建前ですが修復は必要なので思いきって改装しませんか?要望にも添えれると思いますから。ラス様は冒険者組合ギルド会館に。三階建ての最上階が冒険者組合代表の応接室兼私室となってます。一階は受付と診療所があり二階には職員の休憩室や資料庫になっております。地下が倉庫で建物裏手には練習広場もあり訓練には最適です。詳しくは冒険者組合総本部へと連絡お願い致します。あと入り用の物があれば遠慮なく申してください。」
「おいおい………。いつの間に、こんなことしとってん……?」
「タダ飯食わす余裕はここには無いから役職付きで仕事はしてもらうけど、それ相応の見返りは出来るだけするよ。それほど、お前らの知識や能力を買ってるんだ。魔王がこの街に住んでると何かと都合がいいしな。」
七魔王役職
ヴァン=スピリタス 特派大使 兼 暗部諜報機関所長
・国境都市ミーアの特使として諸外国へ物産工芸品等を売り込む。それと同時に『咎人』情報を仲間と共に集める活動を行う。
リップ=デニム 商工組合管理長
・商人街、職人街の管理者及び代表者。新作商品、趣向品の開発や制作を行い、また商人街職人街を取りまとめる。
ブレッド=グラーノ 総料理長
・料理の普及活動、魔物解体方法、毛皮の鞣し技術、魔物から採れる牙や骨の選別等を行う代表者。
アイス=ショコラ 菓子職人 兼 娯楽開発室室長
・洋菓子の普及活動の傍ら、娯楽分野を取り仕切り、宣伝や集客を行う。
ローズ=ダイアモンド 歓楽街元締め
・酒場、宿屋、遊郭等を取り仕切る代表者。
ラス=ギャレット 冒険者組合代表
・国境都市ミーア冒険者組合代表者として、任務斡旋、冒険者や探索者の育成、取り締まり等を行う。ただし冒険者組合総本部の判断によるものとする。
ジル=ヴァンクリフ 領主
・国境都市ミーアの領主
「要するに需要と供給やな。」
「そういうこと。俺は住む場所や必要な物資を渡し…。」
「ワイらは、仕事をしながら知識や戦力を与える。」
「そ。WinWinってことだ。」
「ハハハ。そりぁええ。タダほど恐いもんあらへんしな。よっしゃ、その話、乗ったで!!」
その場はお開きとなり各々が自分の仕事や居場所に戻っていった。
こうして六人の魔王『七贖』が仲間になり、ジル=ヴァンクリフもまた七魔王の一人『強欲の魔王マモン』として、これから過ごしていく。
そして、『魔王』『咎人』『迷い人』が絡む戦いへと進むことになる………。




