~謁見の間②~
どうしても拭いきれない嫌な予感がある。それは、海の王との戦いの後からずっと付きまとっていた疑問でもあった。あまり深く考えず、頭の隅に追いやっていたその嫌な予感が確信に変わるまでには、さほど時間はかからなかった。確信に変わったのは、傲慢の魔王ヴァンや最高神ゼウルフからの話を聞けた事が大きい。『敵国が攻めてこない理由』、『迷い人と咎人』、『七贖の存在』、『多数の転生者』。バラバラだったピースを組み合わせた時、あるひとつの仮説が立てられたのだ。
「ダグラス、ヒルデ、逆に聞くが海の王との戦いの後、他国から我が国が侵略されなかったのは何故だと思う?弱っている敵国を討つのは常套手段にも関わらずだ。」
「我らには敵わないと思ったからじゃないんですか??」
「違う。」
「じゃあ、敵が我らの事を相手にしなかったとか?」
「それも、違う。」
「大国同士が牽制しあい、攻め手をあぐねたからでしょう?」
「少し違うな………。ここからは、あくまでも俺の仮説だが、我等との戦いよりも他に優先にしなければならない事由があったからだと考えている。」
「それって……??」
「『高天原』、『グリム公国』、『ガイア帝国』、『北西部諸国連合』、その他の中小国家。これらが、何らかの方法で召喚された『咎人』を見つけ自国に取り込む事を優先し、それに成功していたらどうだ?」
「そんな、まさか!?異世界者で戦力増強を図っているとは……。」
「だが、そう考えると全て辻褄があう。我等は内乱と復興で一年以上敵国より遅れている。オズワルド王国、それに同盟国のインザス共和国。この二国は他の国より後手に回っていると考えを改めないといけないだろうな。」
「これってヤバいんじゃ…………。」
「今考えられる最悪のシナリオだから、外れるかもしれないぞ。だが『咎人』が我らの前に現れることは近い将来必ずある。断言しよう。単体で我が国に牙を向ける場合なら問題ないだろう、たとえ強かろうが対処は容易いからな。……が、その可能性は低いだろうな。」
俺の言葉に、同調するようにヴァンが口を開く。
「そやな。ワイもその読みで正解やと思うで。間違いなく大国が絡んどるやろな。せやから、一刻も早く調査に向かわなアカンって言っとんねん。」
「一人でか?」
「動かへんよりマシやろ。」
「お前さぁー。もう仲間なんだから、ちょっとは俺を頼れよな。」
「ん??どういうこっちゃ??」
「お前ら、今までは“個人”での調査だろ?そんなもん限界が来るに決まってんじゃねーか。だから、“国”を使えと言ってんだ。国ならば敵国に対して必ず配置している奴等がいるだろ?そうだよなアル?」
俺は、ある事をアルディ=オズワルド国王から聞くために話をふる。大国ならば間違いなく、その手の者達がいて活動していると予想したからだ。
「ああ。確かにいる。いるが、詳しくはこの場では言えぬ。我が国がしていると言うことは敵国もしているだろうからな。」
「それならば大丈夫。この場にいる者たちは信用していい。」
「何故だ?」
「グランベル城の堀の内側には、邪な考えがある者は入れない結界張ってあるからさ。それに謁見の間には、創造魔法『無音の部屋』を発動しているから外部に漏れることもない。」
創造魔法『無音の部屋』
・魔法発動中は領域内にいる者は言葉を交わしたりできるが、外部には遮音効果がある。交渉事や密談に役に立つ。
「相変わらず、用意周到なんだからジルは。」
「誉め言葉と、とっておくよ。」
「それなら問題ないか……。まぁ大方、予想しているだろうが諸外国にはそれぞれ、内通者と伝達係を配置している。」
「やはりな。」
「だが、ジルの言う『咎人』の情報は上がっていなかったよ。」
「そりゃ、大国の重要機密が駄々漏れな訳はないだろう。」
「それもそうだね。で、そろそろ教えてくれるかい?あるんでしょ?いつもの、悪巧み。」
「悪巧みって……。せめて、策略って言ってくれよ…。それには、まず『七贖』にしてもらわなくちゃいけないことがある」
「俺たちに??」
「まずヴァンだけど、行商人になり外貨を稼いでほしい。ギャル子は行商人のヴァンが扱う服や装飾品の生産と新商品の開発。それに商店街を切り盛りする役を。ブレッドのおっさんは、総合料理長として街の食事を一変させてほしい。もちろん毛皮の鞣し技術の継承もな。アイスは、ギャル子と一緒でヴァンの扱う商品を作ってくれ。なるべく日持ちする菓子がいい。街でしか食べられない限定品みたいなものも欲しいな。んで、ローズは色街と酒場を取り仕切ってくれ。外貨を落とす客を呼び込むのは得意だろ?最後にラスだが冒険者組合を任せたい。その都度、兵や冒険者の育成や教育もしてもらう。」
「ワイらに街の顔役やれってことか?」
「ああ、そうだ。表向きはな。」
「どういうこっちゃ??」




