表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の騎士はウサギになりました。魔の森のふたごとリスの騎士  作者: あけちともあき
第二章:魔の森のふたごとリスの騎士~エピローグ~
80/80

さらばリスの騎士

「魔王殺しの騎士がもとに戻っただって!? 冗談じゃないよ!!」


 魔女フォクシーは目を見開き、飛び上がった。

 工房の床にばらまかれたお菓子がうねり、フォクシーを持ち上げていく。

 まるでお菓子で造られた螺旋階段だ。

 だが、階段なんか無視をして、大きなイノシシになったグレがお菓子の壁を駆け上がっていく。


「武器は……これで良かろう!」


 ボーリスは流れてくるお菓子の中から、特大のプレッツェルを手にした。

 変わった形のそれを幾つか組み立てて、槍のような形にしてしまう。


「来るんじゃないよ! 子どもがどうなっても……!」


「ししょー!!」


「どうなっても良くはない。故に、我が弟子ヘーゼルを助け出す!」


 ボーリスはプレッツェルの槍を投げる。

 それはあっという間に魔女にたどり着き、その腕を強く叩いた。


「ぎゃあー!」


 魔女が悲鳴をあげる。

 取り落とされるヘーゼル。


「う、うわー!?」


「グレ、ヘーゼルを頼む!」


「ぶもー!」


 イノシシの背中を蹴って飛び上がったボーリスは、魔女と同じ高さに着地した。


「お、お前……お前さえいなければ、アテの計画は成功していたのにぃ……!!」


 恨み言を口にする魔女に、ボーリスは真面目な顔で否定を入れる。


「それは違うでござる。誰もが戦う力を持っていた。あとは、立ち上がる意志があればよかった。お主の敗因は、皆が持っていた強さを甘く見ていたことにある」


 ボーリスが取り出すのは、松ぼっくり。

 それを、手のひらの中で弾ませる。


「そして、森はお主を拒絶した。お主が森と共に生きようとせず、森を利用しようとだけしたからだ。だから、人と森は最後に、お主を追い詰めたのでござる。覚悟せよ、魔女」


「おのれ、おのれー!!」


 ここは、お菓子の迷宮の最上階。

 既に外へむき出しになったここからは、魔の森の全てが見通せる。

 森のあちこちから、人々が、そして動物たちが集まってきている。

 みんな、戦う意志を持ってお菓子の迷宮を取り囲んでいた。

 魔女には、この現実が認められない。

 どうして弱いものが立ち上がったのだ。

 どうして強いものである自分が追い詰められているのだ。

 誰が悪いのだ。

 みんな、みんな眼の前の騎士が悪いに違いない。


「騎士ーっ! ここでお前をやってしまえばーっ!!」


「変わらぬ! くらえ、魔女め!! やあっ!!」


 ボーリスは手にした松ぼっくりを、思い切り投擲した。

 それは襲いかかろうとしていた魔女の体にぶつかると、光を放つ。


「お、おおお、おおおおおっ!!」


 光が広がり、魔女を包み込んでいく。


「どうして、どうしてこんなことにぃーっ!!」


 魔女フォクシーは、最後まで現実を認められなかった。

 魔女は光に飲まれて消えていく。

 それと同時に、ボーリスの体もぷしゅっと煙が上がり、リスに戻ってしまっていた。


「むむ、ほんのいっしゅんのことなのでござるな。……むむっ」


 お菓子の迷宮が揺れ始めている。

 魔女の魔法が消えて、魔法によって命を与えられていた、増やされていたお菓子が消え始めているのだ。


「みな、にげるでござるぞー!!」






 崩れ落ちていくお菓子の迷宮。

 その中から戻ってきた、双子と少女騎士たちを見て、人々が歓声をあげた。

 勝った。

 自分たちは、魔女に勝ったのだ。

 ようやく、その実感が持てたからだ。

 魔の森が宿していた、妖しい気配が消えていく。

 そこは、どこにでもある普通の森だ。

 危なくないわけではない。

 だけれども、剣も弓も効かない獣人が歩き回って、子どもを生贄に要求するようなことは絶対にない。

 その日、地図の上から、魔の森は消えた。





「じゃあね、ボーリスさん」


「ししょー、まだいろいろ教わりたかったんだけど」


 とある村の入口。

 双子の前で、リスの騎士はこくこくとうなずく。


「おぬしたちはつよい。それに、こじんのつよさだけが、たたかうすべではござらん」


「ぶいぶい」


 ボーリスの隣で、うりぼうが「そうだそうだ」と言いたげに鳴いた。

 ボーリスは彼をじーっと見ると、そのお尻を押し出した。


「グレ、おぬしはあっち」


「ぶいー」


 うりぼうを抱っこするグレーテ。

 彼女の目は潤んでいる。

 お別れの時なのだ。

 後ろには、双子の両親がいる。


「これでさよならなの?」


「俺、やだよー」


「えいえんのわかれではない! かならずや、またあうことをやくそくしよう!」


「うん」


「うん」


 ボーリスと双子が、順番に握手していく。

 そして、うりぼうの鼻にちょんと触れた。


「ぶい」


 それでお別れだ。

 リスの騎士は、トコトコと走り出した。

 振り返りはしない。

 魔女は倒れた。

 だから、この地に騎士が残る理由はないのだ。

 騎士は戦い続ける。






「さあ、行きますわよ!」


「姫様、私たちも帰りましょうよー」


「……ナイトリーダー。なぜこのふたりがいっしょにいるのでござるか?」


「うむ。はなせばながいのだが、それには私とかのじょたちのははのせだい……かのショコラーデひめさまとのぼうけんのはなしをせねばならないのだ」


「ながそうだ」


「ヒヒーン」


 二人と一羽と一匹と一頭が、ぶらぶらと街道を去っていく。

 彼らが向かう先からは、潮の香りが漂っていた。



~魔の森のふたごとリスの騎士~  おわり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ