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枝は剣よりも強し

 ということで。


「まのもりにやってきたぞ」


「説明して下さいましピョンスロット卿!」


「俺まで連れてこられちゃったよ」


 ピョンスロットを先頭に、ココア姫と木こりのクルトン。

 後ろからは、ミルクレープにまたがったナーデが、ぱっかぽっことやってくる。


「そのためには、じゅうじんが出てこないといけないのですよ。おうい、じゅうじんよ、出てくるのだ」


 ピョンスロットが魔の森に向かって叫ぶ。

 だけど出てこない。

 おーいと呼ばれて出てくるなら、それはそれで大変なのだ。


「ひめ。ひめもいっしょにじゅうじんをよぶのですぞ」


「ええっ、わたくしもですか!? ええと、ごめんあそばせ! 獣人の方で、出てらっしゃいなー!」


「そんなやさしい言いかたではいけません! もっと、ごいをほうふにですな」


「そんなの出来ませんわよ!? わたくし、人をおとしめる言葉は使わない主義ですの! お母様の教えですわ!」


「むむむ、ショコラーデさまのきょういくはすばらしい……」


 ピョンスロットはちょっと感動した風だったが、それはそれで困るのだ。

 何しろ、ピョンスロットとココア姫では、可愛らしい感じの呼びかけしかできない。

 一人と一羽は、チラッと木こりのクルトンを見た。

 クルトン、顔を真っ青にして首を横に振る。


「勘弁してくれえ。あんなおっそろしい獣人、たまたま追っ払えたから良かったけど、自分から呼ぶなんてまっぴらごめんだあ」


 これが一般的な反応。


「こまった」


「だからピョンスロット卿、説明してくださいまし!!」


 話が振り出しに戻ったかと思われたその時。

 ひらり、とナーデ嬢が白馬ミルクレープから降り立った。


「これは、獣人の人たちを怒らせる事を言い、呼べばいいんですか?」


 黒い鎧の彼女は、首を傾げた。


「そうですわ。ですけれど、わたくしとピョンスロット卿では、いい言葉が浮かんでこなくって」


「かしこまりました! 私にお任せです。こういうこともあろうかと、私、お城ではたくさんの本を読んできましたから!」


 ナーデは堂々と、魔の森に向かって立つ。

 ただし、懐にピョンスロットを抱っこした。


「ナーデじょう。うごけないのだが」


「いざとなれば、ピョンスロット卿に守っていただくためです! すうーっ」


 ナーデは大きく息を吸い込むと……。


「獣人さん、出てきてください! 私たちはあなたたちへの必勝法を見つけたので、これからあなたたちを次々に叩いたり泣かせたりして大変なことをします! そう、あなたたちの時代は終わったのです! さようなら獣人さん! あっ、でもあなたたちが私たちを怖くて泣いてしまっても、私たちはとても優しいのでそれを笑ったりしませんよ! あなたたちが泣き虫さんなことも黙っててあげます! わあ、私たちは本当に優しいですね!」


「ひええ」


 ココア姫がたじろいだ。


「ナーデ、あなた、すごい事を考えつくのね……! 我がメイドながら恐ろしい子……!」


「ええーっ!? 姫様、距離をとらないで下さいようー! 本心じゃないんですからー!」


 ココア姫からは引かれてしまったが、ナーデの挑発は効果があったようだ。


「なんだとぉー!?」


 猛烈に怒って、魔の森からクマの獣人が走り出してきた。


「おっ、おっ、おっ、俺は泣き虫違うわ! 誰だ泣き虫言ったの! 泣かせてやる!」


 茶色い毛皮を赤茶色にするくらい怒って、鼻息も荒く吠える。


「本当に来ましたわね……!」


「うむ。さあきこりのきみ、さいげんしてくれ」


 ピョンスロットがいきなり無茶ぶりしてきたので、クルトンは顔面蒼白になって、顔をぶんぶんと横に振った。


「俺しんじゃうー」


「しかたないな。ナーデじょう、私をこう、たかいたかいしてほしい。そしてきこりのきみ、おのをかしてくれ」


「お、おう」


 ピョンスロットは、クルトンから斧を受け取った。

 ウサギの騎士は、これをココアに手渡す。


「なげつけるのです、ひめさま」


「分かりましたわ! えーい!」


「わっはっは、武器など俺には通じんわ。むだむだー!!」


 クマ獣人の言う通り、ココアが投げた斧は、獣人の胸に当たってぼいーんと弾かれた。


「やっぱり、普通の武器は効きませんわね」


「当たり前だ! 次は俺の番だぞ! 誰から泣かせてやろうか……ん? おい、ウサギ! 何、枝をカリカリかじってるんだ」


 クマ獣人の目の前で、高い高いされたピョンスロットは、魔の森の木の枝をかじり折るところだった。

 ポキっと折れた枝を手にすると、それをまるでサーベルにように構えるピョンスロット。


「私がこれをふるってしまえば、せいなるきしの力でおまえをやっつけてしまうだろう。さあ、ひめ! これでじゅうじんをつつくのです!」


「分かりましたわ! えーい!」


 枝を受け取ったココア姫。

 今度はその枝を握ったまま、ためらうことなくクマ獣人に突撃した。


「そんな枝で、この俺に何をするつもりだ小娘ぎゃーっ」


 枝が刺さった!

 しかも、かなり痛そうだ。

 クマ獣人、顔をのけぞらせて悲鳴をあげる。


「効きましたわ!」


「やはり、まのもりのえだは、とくべつな力があるのだ! これさえ手にしたら、ふつうのむらびとでもじゅうじんとたたかえるぞ!」


 大きな発見だ。

 わーっと盛り上がる、ピョンスロットとナーデ、そしてクルトン。


「ちょっと、ちょっとーっ!? わたくし、枝だけでクマをやっつけないといけないんですのーっ!?」


 その後、一人で頑張ってクマ獣人をやっつけるココア姫なのだった。

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