1・ショコラーデ様がやってきた!ヤァヤァヤァ!
シュリンプ王国に到着です!
正しくは、もうずーっと王国の中だったんですが、いよいよ王都が見えてきました!
「国境の近くに都があるんですねえ」
「ひめはきづかれなかったかも知れませんが、ミルクレープはすごいはやさで走ったので、ふつうのさんばいくらいすすんだのですよ。だからおうとはけっこうおくにあるのです」
「ええーっ!!」
わたくしびっくりしました!
ミルクレープさん凄いです!
お尻をなでなでしてあげます。
「カタカタカタ」
そろそろ速度を緩めてきた骨のお馬さん。
わたくしに顔を向けて、楽しそうに首を振ります。
びゅーびゅーと風のような速度だった馬車が、ぱかぽこと風景を楽しめる速さに変わります。
こうして見ると、周囲の森はちゃんと整備されてて、地面だって踏み均されて通りやすくなってるんですねえ。
「道までせいびできるとは、こくりょくが高いくにであるしょうこですな。さあ、にゅうこくといきましょう!」
「はーい!」
お馬さんの背中でピョンスロット様が、威勢よくバンザイします。
わたくしも一緒にバンザイしました。
そうしましたら……。
「待て待てーい」
突然、わたくしたちの前で、槍がバッテンの文字に組み合わされます。
王都の入り口には大きな門があって、そこを守る門番さんです。
椅子に座ってのんびりされていたのですが、わたくしたちが近づいたら、急に真っ青になって立ち上がってきました!
「なんでしょう」
「なんでしょう、じゃないよ! そんな恐ろしい骨の馬を連れて、ふくろうを幌に止めた怪しい馬車、フリーで通すわけないでしょ……」
「あら」
わたくし、困ってしまいました。
幼い頃から、シュリンプ王国まではよく来ておりましたから、普通に通れるものだとばかり……。
わたくしは、ピョンスロット様を抱っこして馬車から降りました。
そうしますと、わたくしの姿を見て、門番さんたちがざわめきます。
「あれっ、えっ」
「うわっ、めっちゃきらきらしてる……」
「あれえ? あの娘、ショコラーデ王女様に似てない? 似てなくなくない?」
門番さんたち、混乱のただなかです。
「はい、わたくしはショコラーデ・ボンボン。ボンボン王国の王女です。この度は、国にやって来た新しい妃が魔女だったので、とても危ないということをお伝えに参りました!」
「えっ、ええーっ!?」
「ちょっと待って。ちょっと待って……ください」
「おーい、誰か兵士長呼んできて!」
なんだか、わいわいがやがやと、皆さん話し合っておられます。
そして門番さんたち、一斉にわたくしを見ると、
「ちょっとだけ待ってて下さいね」
「兵士長がショコラーデ姫様に詳しいんで……」
「あー、参ったなあ……。偽物が来るとか言われてたけど、どう見ても本物じゃんよ……」
ピョンスロット様が、この光景を見ておヒゲをひくひくされました。
「ひめ、これは何かおこっておりますな」
「まあ! 何かって何でしょう!」
「にせものということばが出ました。つまり、この国にはすでに、ひめのにせものがいるのでしょうな」
「まあ!」
わたくしはびっくり!
そして門番さんたちもびっくりです!
「うわああああ、ウサギが喋ったああああああ」
「可愛いのに理知的な感じの言葉を喋ったああああああ」
「きらっきらふわっふわのショコラーデ様と、可愛いウサギ……なんて絵になるんだ……」
皆さん、わたくしとピョンスロット様に注目していらっしゃいます。
なんでしょう、この注目度合い。
ええと……手を振ってみましょう。
「あーっ、ショコラーデ様尊い……」
「ハートに来る……」
「証拠はないけど、絶対こっちのショコラーデ様本物だって……」
これを耳にして、ピョンスロット様は長いお耳をピコピコ動かしました。
鼻息をフスーッと吐き出して、なんだか得意げです。
「ひめ、どうやら彼らには、なかなかに見る目があるようですな。あふれんばかりのショコラーデひめさまのオーラをしっかり感じとるとは!」
「そういうものでしょうか。わたくし、考えてみれば身分を証明するものを、みんな馬車の中に置いてきてしまったので」
馬車というのは、騎士のポールが御していた、わたくしをお城から逃してくれた馬車のことです。
わたくし、あそこからぴょーんと飛び出すことに夢中で、大事な品をたくさん忘れてきてしまいました!
でも、門番さんたちの様子を見ていると、それでもわたくしがわたくしだって、案外伝わるみたいですね!
「待て待てー。ショコラーデ姫様を名乗る不届き者が出たと聞いたぞ! どいつだ!」
そこへ、とんがった髭を左右にぴーんと伸ばしている、怖い顔の兵士さんがやって来ました。
腰に大きな剣をぶら下げています!
門番さんたちは、この人を見ると背筋をピンと伸ばしました。
「オ、オキアミス兵士長、こちらです!」
「こちらのきらっきらなお嬢さんです!」
「ああん? きらっきらなって、見すぼらしい格好をした平民のむす……め……」
オキアミスと呼ばれた方が、わたくしの足元から、登っていくように目線を送ってきます。
そして、目が合った瞬間、彼の口がポカーンと開きました。
「あっ」
「あっ?」
わたくし、首を傾げました。
その直後です。
オキアミス兵士長さんが、すぽーんと宙に舞い上がりました。
そのまま膝で着地して、すごい勢いで地面に頭をこすりつけます。
「ショ、ショコラーデ殿下ァ──ッ!! とんだご無礼を──!!」
「あっ、ショコラーデ様ファンの兵士長が認めたぞ!」
「じゃあやっぱり本物なんだ! やっぱオーラが違うもんな!」
わいわいと門番さんたちが集まってきて、みんなで膝を突いて頭を下げます。
ひえー。
な、なんでしょうこれは!
「このオキアミスとやら、ショコラーデひめさまのおかおを知っていたようですな」
「はっ。それがし、一介の兵士であったころに門番でございまして、何度もここを通られるショコラーデ殿下を、ご幼少のみぎりから存じ上げて降りまして、その頃から輝かんばかりの気品とオーラ、天真爛漫な御様子をこの目に焼き付けておりました……!!」
「まあまあ」
わたくし、びっくりしてしまいました。
そんなにわたくしの事を見てくださっている方がいたのですね。
それにしても、皆さんで膝を突くのはよろしくありません。
わたくしも地面に膝を突いて、オキアミスさんの頭に手を触れます。
「オキアミスさん、気にしなくていいのですよ。それに膝を突いていたらお膝が汚れてしまいます。そうです! みんなで椅子に座ってお茶にしましょう! そこで、詳しいお話と、わたくしがショコラーデであることをお伝えしますわ!」
「ひいいいい、もったいないお言葉ー!」
あっ!
オキアミスさん、地面に潜りそうなくらい頭をごしごしと擦り付けてしまいます。
これを見て、なぜがピョンスロット様は、うんうん、きもちはわかる、と頷いておられるのでした。
なぜなのでしょう?




