2・乳製品包囲網
姫サイドです。
ふわふわな語り口と派手なアクションが交錯する!
「ホッホウ」
頭の上から、ヴィヴィアンさんの声が聞こえてきます。
そうです。
ついに、作戦決行の時なのです。
このショコラ、生まれてこの方、国境線破りみたいな事をしたことがありません。
ずっといい子でしたから。
「これはつまり、ショコラーデひめがおしろをぬけだしたようなものです」
「あっ、そういうものだったんですか!」
わたくし、国境線破りみたいな事、したことありました!!
なんだかスウーッと心の中の緊張感みたいなものが消えていきます。
そう言えば、何度も黙ってお城を抜け出したことがありました。
身分を偽って城下町をお散歩するのですけれど、不思議とあっという間にわたくしだということが、城下町の皆さんには分かってしまうのです。
「カタカタカタ」
「あっ、ごめんなさいミルクレープさん! わたくし、自分の世界に入ってました。そうですね、行きましょう!」
「よし、ひめのごうれいだ! しゅっぱつ!!」
ミルクレープさんのお鼻の上に、ピョンスロット様が立っています。
ウサギさんのお尻が目の前でふりふりされて、骨のお馬さんは気になって仕方がないのではないでしょうか。
わたくし、心配です!
ですけれど、そんな心配なんてどこ吹く風。
ミルクレープさんは風を切って走り出しました。
速い速い!
「カタカタ」
「よしミルクレープ、たいまつをくわえるのだ」
「カター」
なんだかピョンスロット様が何かをやっておられます。
何かしら。
ミルクレープさんが細長いものを咥えて、それにピョンスロット様が前歯をカチカチと金属で……。
あーっ。
細長いものに火が点きました!
火が点いたところで、その明るさが向かう先を照らし出します。
「うわっ、なんか炎咥えたやつが走ってきよる」
「やばくね? 炎やばくね?」
そこには、黄色いチーズで作られた三角頭の兵士たちが、ガッチリとスクラムを組んでいたのです。
でも、この人達は炎が怖いみたいです。
ざわざわ騒いでいます。
「ホッホーウ」
「よし、いちばんうすいところは、右のスクラムか! ひめ、たづなを!」
「はいっ! ミルクレープさん、こっち、こっちです!」
「カタカタ!」
手綱の使い方はよくわからないので、右側を引っ張って、さらにお馬さんのお尻をペタペタして声を張り上げます。
ミルクレープさんは頭がいいので、よく分かったみたいです。
わたくしたちの馬車は、右側に進路を変えます。
「うーわー! こっち来たぞ! 詰めろ詰めろ」
「ばっか、スクラム組んでるんだから詰められるわけないだろー。……って、そこ隙間空いてるやないかい!!」
チーズの兵士たちは、わいわい騒ぎながらじたばたしています。
あっ、確かにおっしゃるとおり、彼らの間に隙間があります。
そこは、地面に何かが盛り上がっているようで……。
「あれはどうぶつの、ふんですな。ふんをさけて、あそこだけスクラムがうすくなっています」
「踏んづけちゃうのいやですものね!」
ですけれど、今は動物のふんに感謝です!
「そいっ!」
ピョンスロット様がお馬さんの体を伝い、ニンジンで地面をえぐります。
すると、地面ごとふんが宙を舞いました。
チーズの兵隊がパニックになります。
「うわー!! うんこだー!!」
「詰めろ詰めろ!」
「こっちは炎だー!」
「詰めろ詰めろ!」
向こうは総崩れです!
この騒ぎで大きく開いた隙間に、ミルクレープさんが飛び込みました。
わたくしの乗った馬車も、続いて駆け抜けます。
「あっ、抜けられた!」
「くそう、あのうんこを残していったカピバラにも抜けられたじゃないか!」
「ばれたらシュネーケ様にどやされるぞ!」
「嘘ついたらフォンデュにされるからな」
「よし、我らは勇敢に戦ったが、うんこを巧みに使う敵に苦戦を強いられ……これだ」
後ろの方で、チーズさんたちが会議を始めました。
魔女の手下というお仕事も、大変なのですね。
「なんとげひんなものたちだ。ひめの前で、うんこうんこと!」
ピョンスロット様がぷりぷりと怒っていらっしゃいます。
わたくしなら気にしないのですが。
ですけれど、チーズの方々、なんだか気になることを言っていました。
カピバラ、とか……?
カピバラとは一体なんなのでしょう。




