2・あるチンチラの登場
お姫サイド、ほんわかとした語りです。
おはようございます!
なんだか、お外でヒュンヒュン、ピーヒャララという音がするので、すっかり目が覚めてしまいました。
わたくしは、うーん、と伸びをすると、洋服に袖を通します。
ピョンスロット様が下さったこのお洋服、布地が厚くて硬いのですけれど、その分丈夫で、汚れが目立ちにくそうで、機能的です!
「あら、まだ外は暗いのですね」
扉を開けて顔を出します。
「ホッホーウ」
「あら、ヴィヴィアンさん。おはようございます! あらら、もしかして、ヴィヴィアンさんはおやすみなさいだったりしますか? それじゃあおやすみなさい!」
「ホッホーウ」
「えっ、なんですか? ついて来いということでしょうか」
ヴィヴィアンさん、わたくしの肩にちょこんと着地しました。
ピョンスロット様を掴んで飛ぶヴィヴィアンさんですが、彼女はとっても体重が軽いんです。
もこもこしてますが、中はスリムなんですね。
「ヴィヴィアンさん、ちょっともふもふしてもいいですか?」
「ホーウ?」
その返答はなんでしょうか。
良いということでしょうか。
肯定と見てよろしいですね?
「うふふ、うふふふふ、そーれ、もふもふですよ。もふもふもふ!」
「ホホホーウ」
ヴィヴィアンさんがウットリとなさいます。
ピョンスロット様のもふもふ毛皮と違い、ヴィヴィアンさんのもこもこ羽毛もオツなものです。
しばらく、ここでヴィヴィアンさんをなでなでします。
ですが、わたくしは昨日までのわたくしとは違います。
なんと、もふもふしながら歩くことが出来るのです。
ゆるゆると、音がした方向に向かってみました。
ヴィヴィアンさんが呼びに来るわけですから、危険ではないという事でしょう。
わたくしがそこに到着すると、一面のオレンジ色が広がっていました。
「あっ、これはカボチャではありませんか」
「おはようございます、ひめ」
ピョンスロット様がちょこちょこ近づいてきました。
両手に大きなカボチャの塊を抱きかかえています。
ピョンスロット様の朝ごはんなのでしょう。
「これですか。まじょの手下がせめてきたのです。私がたおしたので心配はありません」
「流石ですピョンスロット様! それではこのオレンジ色は……!」
「カボチャのへいしたちですな。それと、ベジマイというふとったガーゴイルがいました」
「ベジマイ! 彼は継母が連れてきた男です! あの人、わたくしのお風呂を覗こうとするのです」
「なんですって! それはゆるせませんな!」
ピョンスロット様は怒って、ぴょーんとビックリするくらい高く飛び上がりました。
あんまり思いっきりジャンプしたので、バンザイをしたような格好になります。
これを、ヴィヴィアン様を抱えたわたくしが、全身でキャッチします。
「ああーもう、ピョンスロット様、可愛いです! もふもふですー!」
「むむむー、ひめ、おちついてくださいむむー」
「ホホーウ」
わたくしが、ピョンスロット様とヴィヴィアンさんを両手に抱えてもふもふしていると、目の前の茂みがガサガサと鳴りました。
「やあ、ピョンスロットの言った通りだね。君があの魔女シュネーケに追われているというお姫様かい?」
涼やかな印象の殿方の声です。
あの茂みに隠れていらっしゃるのでしょうか。
わたくしの腰までの高さしかない茂みですが。
「どなたですか? ピョンスロット様のお知り合いなのですか?」
「ああ、そうとも。だが、彼同様、今は仮の姿になってしまっているけれどね」
ぽて、ぽて、という足音が聞こえました。
茂みをかき分け、彼は現れます。
その小さなお手てに、真っ白なカリフラワーを持って、もぐもぐと食べていらっしゃいます。
「あっ、丸い」
そうです。
茂みから、青くて真ん丸なものが歩み出てきたのです。
ピョンスロット様よりも、一回り小さな、真ん丸でもこっとした動物でした。
「私はマーチン。千里眼の瞳を持つ、しがない魔法使いさ。今日は君たちの行く道を教えるために現れた」
魔法使いマーチン様!
彼は……チンチラだったのです!
「ああ、疲れた……。この体で魔法を使うのはとても疲れるんだ。何せ、私の魔力のほとんどは、チンチラの肉体のままこうして流暢に喋ることができる能力に割り振られているからね。カリフラワーを持って歩くのも辛いくらいさ。お姫様、ちょっと膝を突いてくれないか」
「はい、わたくしの膝で良かったらどうぞ」
わたくしは膝を突きました。
するとマーチン様は、わたくしのところまでぽてぽて歩いてくると、カリフラワーを横にポイッと置いて、両手をわたくしの膝に乗せるのです。
「ふー」
まったりなさっています。
チンチラさんは、高い所に手を乗せてお休みするんですね。
なんだか、無、っていう感じの表情になってボーッと休んでいるマーチン様。
わたくしはとっても欲深いので、ついついこのマーチン様ももふもふしたくなって来ました。
ふふふ、お覚悟なさいませ、マーチン様。
「あっ、姫、何を、あーっ」
そしてわたくしのもふもふが炸裂したのです!




