1、魔神なんていかがですか?
実際転成したらまず大抵の人は魔物にあったら逃げんじゃねー?どうなのそこんとこ?
俺の名前は鏡一樹、17歳。
高校二年生。見た目も中身も、まあ“普通”だ――なんて言いたいけど、実際は少し違う。
俺は人間が嫌いだ。
中学で軽くいじめられたことがある。細くて小さい、ついでに不細工。格好の標的だった。
プロレス技をかけられたり、影口を叩かれたり。何よりきつかったのは、仲が良かった友人たちが、俺を避けるようになったことだ。
(あの時はマジで言いたかった。「俺、何かしたか?」ってな)
そんな経験から、俺は“演じる”ことを覚えた。
表情を読んで距離を測り、“優しい奴”を演じる。するとどうだ、周りからは「いいやつ」と言われるようになった。
……まあ、友達も一応いる。昼飯を一緒に食べる程度の、浅いやつらだが。
▼▼▼
その日も、表面上の友達と飯を食い、授業を受け、いつものように放課後を迎えた。
弓道部に籍はあるが、ほぼ幽霊部員。部活には顔も出さず、真っ直ぐ駅へ。夜の駅のホームは、それなりに人がいた。
ふざけ合う学生の集団、騒がしくお喋りする女子グループ、疲れた顔で電話をしている会社員。人混みとざわめきの中で、俺はひとり椅子に座り、携帯端末を操作していた。
画面に映っているのは、多人数で遊べるタイプのアプリゲーム。仮想の世界で仲間と協力し、巨大な敵を倒して報酬を得るやつだ。俺はその中で、とある武具を狙って何度も同じ敵に挑戦していた。
――が、欲しいものは一向に落ちない。
「……おい、確率どうなってんだよ」
小さくぼやきながら、また同じ操作を繰り返す。
気づけば、もう何度目の挑戦か分からない。
ため息をつき、端末を閉じる。
そのとき、電車が近づいてくる音が響いた。
俺は立ち上がり、何となくホームの端に移動する。
「……はぁ、つまんね」
小さく吐き出した言葉が、雑踏の中に消える。
――次の瞬間だった。
後ろで騒いでいた男子学生のひとりが押され、よろけた。
その拍子に、会社員の肩が俺の背中にぶつかる。
そして、俺の体は簡単に線路側へと傾いた。
「え?」
視界が揺れる。
背中が宙に浮く。
ゆっくりとした感覚で、体が線路へと落ちていく。
正面には、こちらに迫る巨大な鉄の塊。
ライトの眩しさが目に焼き付く。
「……マジかよ」
それが、俺の最後の言葉になった。
轟音と共に、意識が真っ暗に沈む。
▼▼▼
気がつくと、そこは真っ白な世界だった。
上下も分からないほど、あらゆるものが白に塗りつぶされている。壁も天井も地面もない。ただの“空間”としか表現できない場所。
「……ここは、どこだ?」
俺は仰向けに倒れていたらしく、上体を起こして周囲を見渡す。
何もない。音もない。
ただ、自分ひとりだけが取り残されたような感覚。
――いや、ひとりじゃなかった。
「お目覚めですね、一樹さん」
声がした。
振り返ると、赤い長髪を揺らす女性が立っていた。白い衣を纏い、柔らかく微笑んでいる。いかにも「神様です」と言わんばかりの神々しい雰囲気。
「……どちら様?」
「私はマリアと申します。一応、神をしております」
「一応って何だよ。神様ってバイト制なの?」
思わず突っ込む俺に、彼女はにこやかに笑うだけ。
「さて、一樹さん。あなたにお願いがあって呼びました」
「……お願い?」
「はい。あなたに“魔神”になっていただきたいのです」
「はあ!?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
「魔神とは、この世界の均衡を支える六柱の存在です。火・風・水・土・雷……そして氷。そのひと柱――氷の魔神フェンリルが命を落としました」
「……魔神が死んだ? そんなもん死ぬのかよ」
「原因は分かりません。ただ、確かに“殺された”という事実だけが残っています」
「分かんねーのかよ!? 神様なのに!? ……管理者ならちゃんと仕事しろ!」
「私は世界を見守っていますが、全ての出来事を逐一把握しているわけではありません」
「いや放置プレイか! 神様って意外とザルだな!」
「ともかく、氷の魔神の空席を埋める存在が必要です。――鏡一樹さん、あなたに継いでいただきたい」
「なんで俺!? ただの平凡高校生だぞ!? よりによって俺!? 無茶ぶりすぎるだろ!」
「断れば、地獄に落ちます」
「選択肢が極端すぎるんだよ!! 普通は天国行きとか安らかな眠りとか用意するだろ!?」
「大丈夫です。魔神には“想像魔法”という力があります」
「……想像魔法?」
「はい。普通の魔法は決まった詠唱でしか発動できませんが、想像魔法は違います。思い描いたものを、そのまま現実に具現化できるのです。剣でも盾でも、炎でも氷でも。
あ、ちなみに氷の魔神は氷魔法オンリーですけどね。」
「おいおい……それ、妄想力が物を言うってことか。」
「はい。」
「いやいやいや、そんなんで大丈夫かよ!」
俺の抗議など意に介さず、女神は柔らかく微笑んだまま告げる。
「二度目の人生を、今度は楽しんでください」
「あ、ちょっと行くとも言ってないんですけど!!」
その言葉と同時に、俺の体が白い光に包まれていく。
「ちょ、まだ心の準備が……!」
「それでは――いってらっしゃいませ」
視界が光で塗りつぶされ、俺の意識は再び途切れた。
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あと1話のせましゅ。(ФωФ)すみません噛みました。




