その笑顔の理由
「はーい、皆〜
今日は新しいお友達を紹介しますよ〜」
二十四の曇りなき瞳を前に立っている。
現状をありのまま、詩的に述べるとこうである。いや、二十四も瞳は無いけどさ。正確に言えば十八かな……やっぱり全然ありのままじゃないよ!
さて、何の因果か知りはしないが。美しい亜麻色の髪を靡かせ、優しげに微笑む優香さんなる人物のすぐ隣で、俺はひたすらに困惑していた。
前方に座った子供達が興味津々といった様子こちらを見つめ、古湊はといえばぽかーんとして眺めているばかり。
「じゃあ、私から紹介するわね〜」
紹介も何も、貴方と僕はつい先ほど出会ったばかりの初対面同士なのですが。
「彼は……えーっと? 」
「はい? 」
「そう、藤島くんよね。藤島くん」
「藤咲です」
「あらあら、ごめんなさいね。藤咲くん。藤咲俊昌くん、でよかったかしら」
「俊也です」
期待を裏切らない人だった。
「そうそう、えーと、風雲寺歳三くんよ。皆、覚えてあげてね」
歴史の教科書に載りそうな名前だ。
優香さんはニコニコと柔和な笑みを崩さずに、名前の間違いなど全く気にすることもなく、「それでは、一言どうぞ〜」なんてしまいにはぶん投げてくる始末。
参ったな、逃げ場が無いぞ。改めて、部屋に体育座りをする子供達に目を向ける。男の子が四人、女の子が四人……と、隅に一人、体育座りをしている女の子がいるな。
「あー、」
名前を訂正しようとしたが、すぐに堂々めぐりになる気がしたので止めておいた。穴の空いたバケツで水を汲むようなものである。
すぐに言うべき言葉を見失い、二三回視線を巡らせる。古湊と目が合った。助けを求めようと目で訴えかけてみたが、向こうはパチクリと瞬きをしているのみ。全く意に介していないようだった。
「えっと、皆おはよう」
まずは基本の挨拶から。返答無し。くじけない。つかみはこれから!
「そうだな……えーっと」
「…………」
「最近気になる事があるんだけど………短いって英語でshortって言うだろ?それで、長いはlongだ。常々思ってたんだが、長いほうが4文字で、短い方が5文字というのは意味に見合ってないんじゃないか?いや、日本語でもそうだ。4文字と3文字、短い方がロングで長い、言葉の妙だとは思わないだろうか」
子供達が一斉にきょとんとした顔をした。古湊と優香さんだけが「おー」と声を洩らしていた。ダメか。
「えーと……そう、実は、紙って凄いんだ。沢山折ると、計算上では想像も付かない長さになるんだぞ」
反応なし。
「いいか、例えば一般的なコピー用紙が大体0.1㎜の厚さだ。これを一回折ると2倍、2回折ると4倍になるよな。ちょっと信じられないかもしれないけど、14回追っただけで君達の身長を楽々超えてしまう」
またも古湊と優香さんだけが反応。
「これを繰り返していくと、26回折ると地球一周分にも相当する長さになる。43回だと月にまで届くそうだ」
まっさかー。一部の子供が肩を竦めた。いい反応だ。……子供達じゃなかった、古湊だった。いい加減にしろお前は。
「あくまで計算上だとな。単純に0.1㎜を43回倍にすればいい。2の43乗を0.1㎜に掛けてあげればいいんだ。42回で35万㎞、43回はその更に倍で70万㎞になる。地球から月までは大体40万㎞だから──」
一生役に立たない知識だった。物理的には不可能である。……何でこんな話したの?
「あの! 」
と、子供達の中からスッと手が挙がった。ありがたい、助け船を出してくれたのは中学生くらいの女の子だった。この中だと……一番年長者かもしれない。真面目そうな顔つきで、くっきりとした黒い瞳をこちらに向けてくる。
「何? 」
「えっと、藤岡さんは」
「藤咲だけどな」
探検隊の隊長みたいな名字になってしまった。
「お兄さんは、何者ですか? 」
「え? 」
「どういうご職業に就いていて、どんな生活をしているんですか? 」
「いや、俺学生なんだけど」
……そんな老けて見えるの?
中々のショックを受けると同時に、まだ身分の切れ端すら話していないことに漸く気が付いた。
「大学生? 」
「高校生です」
……きっと大人びて見えるだけだ。前向きに生きよう。くじけない。崖っ淵でも。
「なーんだ……」
彼女は、長い黒髪を撫でて、何故か安堵したように息をついた。
「茉莉姉が、変態の大人に誑かされてるのかと思った……けど、高校生ならセーフかな」
「「は? 」」
「だって、お兄さん、茉莉姉の彼氏でしょ? 」
何かを言う前に、パァッと顔を輝かせる女の子。続けて、周りの彼女よりも年下であろう女の子達も次々とこちらに視線を向けてくる。
「えー‼︎ 」
「お姉ちゃんの⁉︎ 」
「きゃぁー‼︎ 」
女ってのはどんな年齢でも同じなんだな。
「………」
古湊の方を見れば、心底呆れたように半目でこちらを睨んでいた。……怖いよぅ。
助けを求め、優香さんを振り返れば──
「そうなのよー、二人で仲睦まじく歩いているところを捕獲しちゃって☆」
お手上げである。四面楚歌。
「いや、あのなお前ら──」
「違ぇーよ‼︎ 」
いきなり、座っていた子供の中から立ち上がる者がいた。えっと……さっきの女の子と同い年くらいの、今度は男の子だ。黒髪を短く切り揃え、勝気な釣り目をこちらに向けてきた。
「こんな冴えない奴が茉莉姉の彼氏な訳ねーだろっ」
えらい言われようである。
「ちょっとツヨシ!いきなり何言ってんのよ、失礼でしょ! 」
「ツヨシ兄ひどーいっ」
「妬いてるんだツヨシ兄! 」
「やーい、ツヨシ真っ赤じゃん! 」
「ダッセー!」
「うるせぇっ」
堰を切ったように、あっちこっちで声が上がった。先程の女の子から始まり、更に小さな女の子や男の子、ぎゃあぎゃあと統制が取れずがバラバラな、しかしどこかリズミカルな喧騒が唸りを上げる。
「あー、もう。はいはい、静まった静まった」
その噴火を鎮静させようというのか、いつの間にか彼等の前に立ったのは、古湊であった。
「皆、ちゃーんと考えてみなさい。
この人をよく見て、この腑抜けた顔といい、この意味の分からない言動といい、ドン引きする趣味といい。私にだって選ぶ権利くらいあるでしょ」
……あん?
「「「そっかー」」」
おいコラ。
「そうねぇ……」
ねぇちょっと待って。
なーんだ。大きなため息とともに、室内に響き渡る子供達の声。引きつりそうになる頬を何とか堪え、握りしめそうになる拳を何とか抑え、平常心を保ちつつその場を流してやる。オッケー超クール、思わず英語になっちゃうくらい冷勢だ、じゃねーや冷静だ。やっぱり今の時代はグローバルに行かなきゃね。
さて、失礼極まりない罵詈雑言を物ともせず、大人で寛容な僕はその溢れ出る気品を漂わせながら……
「じゃ、またお兄ちゃんが鬼ね! 」
「わーい! 」
「よわっ、お前それでもこうこうせいかよ! 」
缶けりをやっていた。
「……なんで俺がこんなことを」
ささっ。後方で人の気配!先程噛み付いてきた生意気そうな男の子が突進してくるのが見えた!
「そこの小僧、大人しくお縄につけっ!」
「小僧じゃねーよツヨシだ‼︎ 」
馬鹿めっ、ここで見え見えの突撃なんぞ愚の骨頂。まぁ所詮ガキ、まだまだ気配遮断のスキルが低いのだよ!
ツヨシといったか、ツンツンした黒髪の少年の行く手に塞がり──
「今だ‼︎ 」
「いくよっ、皆!」
「わーいっ」
――フェイクか!?
思う間もなく、両サイドの茂みから飛び出してきた子どもたち。右から男の子二人、左から女の子二人。全力でガラ空き状態の空き缶ゾーンへと疾走してゆく。馬鹿なッ、普段の冷静沈着でクールで明鏡止水な心とともにあって意味被りまくってるけど気にしない俺ならば絶対に見過ごさない筈のポイントから伏兵部隊が!!たしかに目の前の小僧に気を取られていたとはいえ、あの付近で人の動く気配なんて……
「もらったー!」
とかモノローグしてる間に蹴られた。
ゼロカロリーコーラ。黒い空き缶は無情にも宙を舞う。普通のコーラよりゼロカロリーコーラのが俺は好きだ。あの甘さよりも少し苦さが上回る感じが堪らない。それはともかく、空き缶は舞う。雲の少ないよく晴れた、夕刻の訪れを知らせる橙色がじんわりと滲んでいる空へと、くるくると。どうしてかそのモーションがスローに見えて……なにしてんの俺?
「へっへー、お前大したことねーなっ」
フェイクをかけたさも生意気そうな男の子がドヤァとこちらを挑発してくる。別に全然全く悔しくないですけど。缶蹴りごときでないない、そんな感情微塵も湧きようがねーってか、俺はアレ、子供たちの笑顔が見たくて缶蹴りに参加してるからネ。子供たちが楽しく外で遊べることが何よりも大切で──
「ま、多少は動けるみてーだけど──」
「あん?まだ一回目だろ、さっさと次の用意しろ小僧」
「小僧じゃねー!ツヨシだおっさん!」
「おっさんじゃーよお兄さんと呼べガキ」
拾ってきた缶を無造作に放り投げ、足で押さえつける。合わさった視線は一瞬にして火花を散らし、互いの内に潜む闘争心をメラメラとかきたてた。
……世の中には、大人気なくならなきゃいけない場面もある。年功序列という至言をこの生意気極まりない子供に叩き込む必要がある……ってか何してんの俺。帰らないの?
で。
「……物凄く楽しそうに遊んでましたね」
ご飯よと声がかかる頃合いまでがっつり缶蹴りに邁進していた。
わーっとグランドから建物にかけて行く子供達に混じってわーっと建物に戻ろうとしたら後輩に呼び止められた。
「童心に帰りすぎてあわや住民票移すとこだった」
「いや、意味分かりませんけど」
なんかかなりドン引きしてるようだ。全く、小粋なジョークも通じないとかどんだけ冷めた人生送ってんだこいつは。やっぱ住む世界が違うのかねぇ。
「……それより夕飯の支度出来ましたよ」
「え、何それお前料理とか出来んの? 」
「当然じゃないですかぁ、肉じゃがとかちょー得意ですよ☆
何ならぁ、先輩に特別にお弁当を作ってあげても」
「キツイわ」
「……かなり失礼なことを言われた気がしますがまぁ良いです」
そういった事とは縁遠い感じがしてたから……ほら、こいつキャピキャピ系?とかそんなやつだし。うわっ、めっちゃ睨まれてるじゃん、全然良くないっぽい。
「で、食べていきます? 」
「え?俺? 」
「えぇ……大変不本意ながら、優香さんが是非って」
その不本意って一言は余計だという世間の常識を誰か教えたげて!
「じゃあ皆、いつものように神様にお礼をして……いえ、何の神様にお礼をしましょうか。えーっと、お米の神様とお肉の神様と──」
で、あれよあれよと言う間に席につかされて、優香さんの言葉でお祈りをして、ご飯を食べることになった。……あれ?俺何しに来たんだっけ?
晩御飯は肉じゃがだったと豚汁、おひたしと五穀米だった。美味いな……味も染みていてジャガイモも肉も柔らかい。
「ねーねー、お兄ちゃん!ゲームとかやるー? 」
「ん?あぁ、まぁ人並み以上には」
「じゃあじゃあ!このゲーム知ってる⁉︎ 」
小学生くらいの男の子たちと(小学生の)流行の云云について話したり。
「お兄さんは茉莉姉とどうやって知り合ったの? 」
「え?あー、アレだな……面倒な因果というか不幸な連鎖というか」
「むっ、何人を厄病神扱いしてくれてるんですかねぇ……」
大して変わらない気がするんだが。現に今だって……
「じゃあ!お兄さんはかなり脈アリ⁉︎ 」
「いやねーよ」
「えー、だって先輩って興味ないないとか言う割にはいつも私の前に現れるじゃないですかぁー」
「うっせーよっ‼︎ 」
なんかはしゃいでる女の子達(生意気な後輩を除く)にアレコレ聞かれたり。
「…………」
何となく馴染んだ。
「へっ、俺はまだアンタを認めた訳じゃねーからな」
「むっ」
しかし、あからさまに敵意を向けてくる奴も。先程の小僧だ、立ち上がってみせる。
「俺に認められたかったら、サシの勝負で俺に勝つことだな‼︎ 」
「ちゃんと席について食べなさいツヨシ」
「ま、茉莉姉!今良いとこなんだから!」
まったく決まってはいなかった。
なので、俺も神妙な視線を送る。
「なるほど、勝負か」
「……先輩もバカなスイッチ入れてないで大人しくしててください」
ツヨシはニヒルに口元を歪めると、おもむろに懐からある物を取り出した。
「そう、勝負するのはこいつだぁっ‼︎ 」
「……ツヨシ」
黒いボディに赤い流線。シャープなフォルムかつパワフルな馬力で、かつて市場を荒らしまわったかの有名な機体、アニメ二期でも主人公機体を粉々に粉砕し、挫折にまで追い込んだミニ四駆の帝王……ドミニオン・エゴ!
「面白い」
「先輩⁉︎ 」
俺も、そっとバッグから例のものを取り出す。ドミニオンに対抗すべく、アニメ二期で主人公が再起のきっかけとなった機体……ミニ四駆界の天空の剣とまで謳われた、フォーマル・クラウディウス!青と白のボディを光らせて、今、顕現した。
「コースはこっちにあるわよ〜」
「……優香さん」
奴は既にスタート地点に。
互いの意地とプライドと信念と、なんかもう面倒になってきたから要するにミニ四駆で遊んでみたという話。
そんなこんなで、ご馳走になり、あれこれと遊んで、ひまわりを後にする頃には8時を回ってしまっていた。
お暇する際は、入り口まで皆がお見送りに来てくれました。まる。
「中々やるじゃねーか……まぁ、今回は花をもたせてやっただけだ。次はねーからな、俊也」
「え、あぁ……え? 」
「聞けよ‼︎乗るのか乗らんのか訳わかんねーなお前‼︎ 」
なんかミニ四駆勝負は勝ったらしかった。
「今日は皆と遊んでくれてありがとう、富士ヶ崎くん」
「いえ、こちらこそ。ご馳走になってしまって」
「遂にツッコミ放棄ですか……」
ふじ、だけ合ってればいいやもう。
「皆新しいお友達が出来て本当に嬉しかったみたいだから。また遊びに来てね」
「え、でも……」
「またね、藤咲くん」
ニコニコと。優香さんは屈託のない笑顔で、そう言ってくれた。
考えたらここは学童などではなく、孤児院施設だ。自分のように、恵まれて何不自由なく暮らしてきた人間に、そんな資格は果たしてあるのだろうか。
親も……ッ、あの放任主義の親の顔を思い出そうとしたが、頭痛がしたので止めた。ともかく、そんなどこか卑屈めいた考えが過ってしまった。でも、子供達は皆生き生きとしていた。毎日が楽しいという風に、とても前向きな──まぁ生意気な奴もいたが──姿勢で生きているようだった。いや……そういえば、一人だけ……
「──ぱい、せんぱいってば」
「え? 」
我に返ったのは商店街も半ばを過ぎた辺り。くいっと制服の裾を引っ張ってくる感覚に、ついぞ我に返った。
「さっきからどーしたんですか?ぼーっとしちゃって」
「…………」
わざとらしく上目遣いでそう尋ねてくるのは、自転車を挟んで、隣をちょこちょこ歩いている古湊だ。
まぁ大方予想はつくだろうが、案の定この生意気な後輩を送り届けているのだ。もう高校生なんだしまだ8時だし一々そんな心配しても子供扱いするのも相手に失礼だしと決して面倒だった訳ではなく相手に対する素晴らしい気遣いを見せたのだが、「私が何か事件にあったらどーするんですか?」という目覚めの悪い提案をされてしまっては仕方なくというか……」
「聞こえてるんですけど……というか、女の子が帰る時は送っていくのが男子の常識だと思います」
「言ったろ、俺はジェンダーフリーの時代を」
「とかなんとか言って、ちゃんと送ってやるよーアピールとかあざといですねぇ」
「帰る」
「まーまー」
腕を掴まれ戻される。こいつ意外と力強い⁉︎
「でも意外でした」
「……何が? 」
「せんぱい、あの子達とすぐに打ち解けてたから」
「あぁ……何でだろうな」
今までそういった場所や人に接した事が全く無いので、自分のような奴が足を運んで良い場所じゃないとか、完全な偏見を持ってしまっていたが……
「一応、あの子達も事情が事情ですから。人見知りな所もあるし──」
「まぁ、そりゃ色々あるだろうしな」
「それでも、とっても純粋で良い子達なんですよ」
普段の(俺に向けられる)作られた笑顔とは違って、恐らく素の、純粋な本物の笑顔で、そういって見せた。嘘も偽りもない、本物の言葉。
「あ、ひょっとしてアレですかね。精神年齢が皆と同じくらいだから」
「おいそれは心当たりあるから理解出来ちゃうけどそれ以上言うな泣くぞ」
「え」
「あと急に本気で引くのもやめてくんない? 」
と、古湊がざっとこちらから距離をとる。
「あんだよ……? 」
「まさかっ、この流れで私が何故あの子達と関わっているのかの理由を探って好感度を一気に上げていく作戦という──」
「安心しろ純粋に全く興味ない」
「むっ、なんなんですかその反応は」
どっちなんだよ。
「そうですねー、過去は勿体つけた方が良いですし、まぁせんぱいもとっつきやすい方から行った方が──」
「色々アレだからもう黙ってろ」
「むー」
トボトボ歩く。
「あ、そう言えば」
「なんです? 」
「部屋の片隅に一人女の子がいたよな」
10歳くらいだろうか。
皆が騒いでいる中で、ひっそりと本を読んでいた女の子。何度も名前を呼ばれていたものの、自ら距離を置くようにして離れていた。顔を俯かせ、長い黒髪は表情を隠すように。
「えぇ、彼女はつい最近、ひまわりに入った子なんです」
「……そうなのか」
「皆、何とか打ち解けて欲しいって頑張ってるみたいなんですけど……」
事情を知っている者でも難しい、ならば部外者の俺が首を突っ込んで良い問題ではないだろう。……ただ、何となく気になった。何でだろう……
「あ、ここまでで大丈夫です」
「ん?あぁ」
気付けば明条の駅前広場まで来ていた。
「お前電車通学組だったのか」
「っ、しまった」
「あからさまに嫌そうな態度舌打ちに出すの止めろ泣くぞ」
冗談ですとか言ってるが一体どこまでが冗談なのか怪しい所だが。そんな事はさておき、ちょこちょこと改札に向かってゆく後輩。自分のことを棚上げして難だが、どんだけマイペースな奴なんだこいつ。
「あ、私の過去編はせんぱいの好感度が600以上で解禁ですよー」
「いやだからいらなっ……つーかいくつだよ好感度⁉︎」
「2? 」
「一桁かよッ」
一人分の人生ですら規定値に達する気がしないんですが⁉︎いや貯める気さらさらないけどね‼︎
「では、また明日でーす」
「………」
ドッと、肩に疲れが押し寄せてくるのを感じて、深々と大きなため息が溢れる。
「……帰ろ」
自転車すら漕ぐ気になれず、いつも以上に重く感じる鞄とハンドルをおして、反対方向の自宅へ。
「あ、おかえり俊也!下見どうだった? 」
「ん? 」
「いやだから、明日行く廃墟の下見?してきたんじゃないの? 」
「あ」
ただの引き延し回ではないはずだ……何か重要な伏線が今回の依頼(今思い出した)に関わっている筈なんだ!重要な……重要……
もういいもん、今日は寝る!
「下見できてないってことは危険だから中止だね!よし、依頼は終了──」
「終わらすなッ‼︎ 」
続く、多分。
続け。
もうね、色々と怒られそうですが、アレです、本当にすみません。色々。
なんかもう全てにおいてメチャクチャですが、一応大筋はちゃんと(⁉︎)あるので大目に見てあげて下さいお願いします。
次回とその次で廃棄の依頼を終わらせて二学期突入したいです。現実はもう三学期、いや二期制のとこが今は主流なんだったか……まぁともかく2月です。時期合わせてたのにどーしてこうなった……
ともあれ、次回もよろしくお願いします!




