暗雲懸念
家を出た時はまだ明るいと言えば明るい時間帯ではあったのに、ぐずぐずとしている内にもう薄暗がりが空に広がり始めている。
走ってくるとテキトーな口実の元、それとなく進一の家に行こうと思っていたのだが。
(なぁにしてんだろ、俺……)
午前中にお邪魔してる事もあってか、またまた訪ねるのはどうだろう。あーだこーだと思案している内に俺は商店街でうろうろと歩いていたのだ。
そもそも家に行ったとしても、愛奈ちゃんのいる前で進一が何か話してくれるとも考えにくい。
「………」
だがこのままここに居てもなぁ。気になるっちゃ気になるのは事実だし……うーむ、どうしたものか。
本当に何をしているんだろうか俺は。ただ散歩してるだけか。
「あれ、藤咲君? 」
……否ぁ、俺はこの出会いを予期していたのかもしれない。潜在的に彼女との出会いを予期し、この場所へと俺は導かれたのか。この廻り合わせの前に運命等という単語は安っぽく響くのみ。そう、例えて言うなれば………言うなれば……特に考えてないけどさ。
「やっぱり藤咲君だ、おーい」
「桜さん」
まぁお分かりの事と思うが、クラスメートの愛華だ。ちょうど真横にあったコーヒーショップから出てきたらしい彼女は、可愛らしく手を降ってこちらに近付いてきた。
「こんな所で奇遇だね、 買い物? 」
「あ、えーと……まぁそんな感じかな。晩ごはんの材料を」
そんな風に嬉しそうに言われると思わず勘違いしてしまいそうになるから怖い。男は単純な生き物だとよく言われるが、俺もやっぱり男なんだなぁと感慨深く思ったり。
「それより、桜さんはどうしたの?やっぱり買い物? 」
だが残念だったな。俺はそんじょそこらの勘違い一般男子とは違う、自分の身の程くらいちゃんと弁えている。伊達にひねくれた性格を貫いてきた訳ではないのである。
「うん、私は画材道具を見に来てたの。それとこれから晩ごはんの材料を買いに」
「へぇ」
「そうだ、藤咲君。せっかくだから一緒に行かない?」
一緒にスーパーでデートだとぅ!?これは愛華ルート突入フラグか、フラグなのかぁ!?誰だ今「さっきと言ってることwww」とか「藤咲没入乙」とかコメントした奴はっ。仕方ないだろ、男ってのはそういう生き物なんだよ!
「あー、でも……先に用事を済ませないといけなくて」
「あ、そうだったんだ」
「うん、ちょっと進一家にね」
「東堂君の家……? 」
この時間から遊びに行くの?可愛らしく小首を傾げる愛華の男殺しな仕草に持ち前の防御力で何とか、本当にもうギリギリの所で耐えつつ─危なかったぜ、防御力重視でプレートメイルからナイトアーマーにしておいて良かった─、ゆっくりと然り気無く視線を反らす。
そのまま進一の事を口にしようと思ったのだが……うーむ、根拠の無いまま下手な事を言っても良いものだろうか。
「あのさ……桜さんって、最近進一元気無いな〜とかって思う? 」
「え?東堂君、どうかしたの? 」
「あ、いや。そういう訳じゃないんだけど……」
しまった、やはり聞き方が悪かった。これでは彼に何かあったみたいではないか。仕方ない、彼女には嘘は付きたく無いし正直に言う事にした。
「……そうなんだ。愛奈ちゃんが」
「うん、まぁね。それでちょっと気になって、杞憂なら良いんだけど」
「そっか」
愛華はふむと小さく頷くと、顔を上げてこちらに向けて微笑んだ。
「……藤咲君、優しいね」
え?
予期せねその言葉につい首を傾げるリアクションをとってしまった。
「優しいって、俺が? 」
「うん」
「いや、それは……」
「だって、さっきからとても心配してるって顔してるよ。私にだって分かるくらいに」
クスリと可笑しそうにそう言う愛華。まさかそんな、俺は軽く首を横に振ってやや大袈裟気味に肩を竦めてみせた。
「それは勘違い」
「? 」
「単なる好奇心だから。心配そうに見えてるんだとしたら、興味本位で詮索しようとしてるの間違いだね」
どうだ、一気に嫌なヤツに早変わりだろう。言い方一つでこうも捉え方に差が出来る、言葉ってやっぱり大事な──
「やっぱり、素直じゃないなぁ、藤咲君は」
「……本心だよ」
「ふふ、じゃあそういう事にしておくね」
「………」
その笑み、なんて可愛い……じゃなくてっ。色々なものが見透かされそうな、それも優しげな彼女の瞳に思わず顔を反らしてしまった。愛華はしばしばこんな表情をするのだが、偶にそれが苦手になる時がある。
「じゃあ、俺は進一ん家に行くとしようかな」
「うん。それじゃあ、また明日ね」
「と、思ったんだけど……」
うーむ、せっかくこうして商店街で彼女と巡り合えたんだ。一緒に買い物くらい良いんじゃないか?どうせ夕飯の買い物はするつもりだし、それ程時間もかからないだろう。
「俺も先に買い物していこうかな、夕飯の」
「良いの? 」
「どうせ買い物はするつもりだったから、先になるか後になるかの話だし」
+下心18%くらいはあったり無かったり。いやゴメン嘘、下心じゃないよ?単にお話出来たらなーって、そんな健全な男の子のピュアで単純な考えなのだ。だからそんな軽蔑の眼差しは止めてマジで。あ、やっぱりピュアっていうのは気味悪いので削除の方向で。
「そっか、せっかくだから一緒に行こう? 」
「うん、そうだね」
ふっ、何て白々しんだ藤咲俊也。その言葉を待ちに待っていたというのに、『そうだね』なんて爽やかな返事をしやがって。何と言う奥手な男子中学生的な、いゃぁ数ヶ月前まで中学生だったんだけどさ。
とまあそんな訳で、進一が気になって家を出たにも関わらず。商店街で会った愛華と先に楽しくワクワクな─100%俺視点の話だけど─お買い物をすることにしたのだった。
我ながら中々のダメっぷりだが仕方ない、男ですから。
「藤咲君は今日は何を作るの? 」
「そうだなぁ、特にこれといって決めて無いけど、家に豆腐が残ってたから……炒り豆腐とか作ろうかな?そっちは? 」
「うーん……これから決めようかな」
これはアレか?だったら家で一緒に食べない?って誘うフラグ何ですか神様!
……コホン、自重しよう。
でも、これって結構学生らしい青春っぽくないだろうか。買い物カゴを片手に、一緒に野菜コーナーを見て今日の献立について話し合ったり─因みに愛華はお母さんと一緒によく作るらしい、何て微笑ましい光景か─、惣菜コーナーで自炊について話したり、肉のコーナーでどうしようかと笑って二人悩んだり……
「あ、ちょっとゴメンね。私、生姜持ってくるの忘れちゃった」
「うん、ここに居るよ」
まぁ幸せいっぱい─くどいようだが個人的に─の時間はゆったりと流れていったのだが。肉のコーナーで彼女を待つ事になった時だった。
「ふ〜じ〜さ〜き〜君っ♪ 」
「!? 」
何故か聞き覚えの有りすぎる声が、しかしそれからは全く聞き慣れないワードが背後から奇襲のように仕掛けられた!
「げっ、香織……」
「うわっ、愛華の時と凄い落差。しかも第一声が『げっ』って……」
まさかとは思ったが、声の主、振り返った真ん前には幼馴染みの姿があった。
こちらの反応が気に入らなかったのか─まぁそりゃそうだろうけど─ジト〜っとこちらに視線を向けてくる香織。
「気にするな、今のはスキタイ語で『こんな美しい女性に会えて身に余る光栄』って意味だ」
「長いね」
「長いな」
「それフォローのつもり? 」
「多分、全力でバカにしてるな」
「………」
「それより、何でお前がここに居るんだよ? 」
言うが早いか、香織は左手に持ったカゴをぐぐっと押し付けるかのように持ち上げてきた。見れば分かるだろう、とばかりに、なるほどこいつも偶々ここに買い物にきていたのか。
「ごめんなさいね〜、せっかく凄く幸せそうだったのに一気にご機嫌損ねちゃったみたいで」
何だか棘のある口調、ってか棘だらけだ。まさに棘道。
「別に、そんな事……」
「そう?
さっきまでは『今日は炒り豆腐でも作ろうかな』なーんて爽やかに言ってたのに」
あれ?
「……お前、いつから尾けてたの? 」
「え? なっ、尾けてなんてないわよっ。つい今、偶々見かけただけで……」
「だってそれ、スーパー入ってすぐの会話だぞ」
「ううっ」
その幼馴染みは見るも明らかに目を反らす。
「た、偶々だよ!
俊也達が入ってきた時に隣に……じゃなくて、近くにいたというか」
「………」
相変わらず嘘の下手な奴だ。
「とにかくっ!本当に偶々だから、偶々! 」
「はいはい、分かったよ」
多分スーパーに来たのは本当に偶然。それで愛華に俺が何か良からぬ事をしないかと心配になったとか、そんな理由だろう。全く無意味な心配だ。
「……じゃあ、私はもう行くから。ちゃんと愛華をエスコートしてあげる事! 」
「あ、おい……」
「それじゃあね! 」
エスコートて。
ビシッと指を突き付けたかと思うと、背を向けて去って……いや、また戻って来たぞ。
「後、愛華には私が居たって言っちゃダメだからね? 」
「何で? 」
「はぁ……相変わらずデリカシーの無いなぁ」
「あん? 」
「とにかくダメなのっ。分かった? 」
全く分からない念を押されても、なぁ。香織はまだこちらを見ていて暫く黙っていてが不意に。
「ねぇ、俊也はさ……」
「うん? 」
「………」
俺が、何だ?取り敢えずじっと彼女の瞳を見返してみる。
「ううん、やっぱり何でも無いや」
「は? 」
「良いのっ」
そう言って。トン、と両手で肩を突っぱねられた。
「じゃ、頑張ってね! 」
エールを送ってきたかと思うと、今度こそレジの方へ去っていった。
何なんだアイツは一体。
「藤咲君、ごめんね! 」
「……あ、あぁ」
そうこうする内に愛華が戻ってきたので、まだ気にはなっているものの無理矢理にレジの方から視線を引き戻す。
「あれ?藤咲君、どうかしたの? 」
「いや、何でも……あったような無かったような」
「? 」
「あー、いや。何でもないよ」
よく分からんが言うなとの事だったので、一応黙っておく事にした。まぁ確かにわざわざ言う程の事でも無いのだが。
かくして愛華と一緒の買い物に戻ったのだが、何となく香織の事が気にかかり……いやいや、そんな事は無いな。気のせいだろう。
その後、学生らしく学校やクラス、部活等至極健全な会話を交わし合いながら、買い物を済ませスーパーを出た頃には日も延びたとはいえ夕方を感じさせる茜色がちらちらと見え始めていた。
「さてと、やっぱ俺は進一の家に行くとするよ」
「うん。何でもないと良いね、東堂君」
「全く」
名残惜しいが、彼女とはここでお別れとなってしまう。もう少しスーパーで一緒に買い物でもしていたかったな〜っなんて、少なからず思ったりなんだったり。
「あら、藤咲さんではございませんの」
しかし進一の様子を見てくるという本来の目的を忘れてはならない訳で。
「こんな所でお会いするなんて奇遇ですわね。たまにはこういった、皆様が利用なさる“商店街”なるものを見て回ろうかと思いまして」
勿論愛華の言う通り、何事も無ければ単なる俺の徒労で済むのだが……愛奈ちゃんの様子から見てもどうも、な。
「故に、こうしてこのような場所で再会致しました事はまさしくう、運命と申し上げますか……いえ、べ、別に深い意味はありませんのよ?ただ、並々ならぬご縁があることは、その……過言でも無いと言いますか……ですから」
だから、やはり話しをしない訳にはいかない……ような気がしたんだよなぁ。
「じゃあ、桜さん。俺はこれで」
「え、あの……藤咲君、後ろに」
「また明日」
俺は笑顔で別れの挨拶を済ませると、戸惑いの表情を見なかった事にしてその場を立ち去ろ……
「って、何を思い切り無視しているんですのーーっ! 」
「………」
あははは、やっぱり無理だったか。
「で、可笑しな前口上は済んだか白ノ宮? 」
「どういう意味ですか、どういう! 」
「………」
恐らくずっと後ろに居たと思われる白ノ宮妃希が両手を握って睨み付けてきていた。出来れば気付かない振りをして帰りたかったんだけどなー。
「せ、せっかくこの私が!このような所で声をかけて差し上げたというのに! 」
「はいはい、悪かったよ」「むーっ」
一体全体、何で彼女がこんな商店街なんかにいるのかは疑問なのだが。まぁ突っ込むと長そうだし、それは良いかな。
「白ノ宮さん、こんにちは」
「貴女は……桜さん? 」
ひょこっと顔を覗かせた愛華にきょとんとした顔付きになる白ノ宮。
「あの穂坂香織の腹心が一人の貴女が、一体……」
「腹心って……」
「何時代の話だよ」
思わず顔を見合わせる俺達にも構わず白ノ宮は一歩二歩とこちらに近付いて続ける。
「何故、お二人が……いえ、どうして藤咲さんは彼女と一緒にいらっしゃるのですか? 」
「何故って、そりゃお前……」
言うべき言葉は一つである。
「デートに決まってんだろ」
「なっ!?で、で、デートですの!? 」
「あぁ、そだよ。
朝から映画見てお昼食べて、今はちょうど商店街を回り終えたトコ」
「は、はわわわわ!! 」
勿論嘘だ。が、両頬に手を当てて何やら可笑しなリアクションを取り出す白ノ宮は例によって明らかに周りが見えなくなり始めていて。
「お、落ち着いて、落ち着くんですのよ妃希!別に藤咲さんがどんな女性とで、デートしようが私には一切微塵これっぽっちも関係ございませんもの、ええそうですとも!ですから、こんな事で動揺してはなりませんわっ。そ、それは、私だってデートくらい、別に藤咲さんなんて……ごにょごにょ」
うーむ、すぐに冗談だと付け加えようと思ったのだが、如何せんタイミングが。
しかしここまで驚かれるというのは、それはそれで失礼な話である。俺だってそんなに女の子とデートするくらい……まぁ無いわな。事実嘘だし。
「藤咲君」
「あ、うん? 」
「ダメだよ、そんな嘘付いたら。白ノ宮さん、信じちゃったみたい」
「あー、ごめん。ついその場のノリというか、まさか信じるとは」
「ふーん、藤咲君はノリでデートとか言っちゃう人なんだ」
「え!?いや、これは違っ!」
ノリなんかじゃなくてただの願望だからっ!あれ、これダメじゃね?
「ふふ、冗談だよ」
「あ、はは……だよな」
あ、やばい可愛い。今のは愛華の可愛い仕草ベスト3にはランクインするな。うん、まず間違いない。因みに一番は小さく両手でガッツポーズをとる仕草ね、あれ最強。
「って、私を無視しないで下さいませっ! 」
「「あ………」」
「そ、それはまぁデートの最中ですから……その、私がお邪魔なのは分かりますが」
勢いよく身を乗り出したかと思えば途端に身を引いてしゅんと顔を俯かせてしまう。相変わらず反応があっちこっちに飛び回る奴だな。
「あー、あのな白ノ宮。盛り上がってる所申し訳ないけど、デートとか全部冗談だからな? 」
「……へ? 」
「冗談」
「………」
ポン、と一呼吸おいて。
「ふえぇぇぇ!? 」
思い切り後ずさった。
締めには相応しい大袈裟なリアクションだな。
「さっき偶々会って、それだけ」
「だっ!だったら最初からそう言って下さいませ!! 大体貴方という人はいつも……!! 」
その後、キーキーと甲高い声で叫ぶ白ノ宮を宥めてやるのに一時間を要したのだった。いや嘘、オチっぽく言ってみただけ。本当は5分位でテキトーに。
「……では、藤咲さんは東堂さんのお宅へ行く途中でしたの」
「ま、そゆこと」
そういえば彼女は進一の様子について何か気付いた事はないだろうか。ついでだから聞いてみようか、そう思って口を開こうとしたらば、予想外の返答が返ってきた。
「ですが、東堂さんなら先程駅前で見かけましたわ」
「……え? 」
駅前?アイツの家と反対方向じゃないか。
「あぁ、ランニングだったのかな」
「……いえ?私が見たのは制服姿でしたわ」
「………」
制服……それはかなり意外な格好だ。今日は学校は休み、そんな日に学校外で制服を着用する事はそうそう無い。午前中は私服だったしな。
「なぁ、白ノ宮が駅前で見たのって……」
「ついさっき、30分程前でしょうか。いえ、もう少し前か……けれど駅の南口の方へと歩いていましたね」
南口は俺達の地区の出口方面ともいえる故家からは当然逆方向。帰宅するところを目撃した訳ではないらしい。
どちらにしても、今からだと駅前に行っても入れ違いになりそうだな。家で待っていようか……けど、愛奈ちゃんがいる前では多分アイツは何も言わないだろうし……
「そっか……ありがとな、白ノ宮」
「ふぇ? 」
何故お礼を言われたのか理解出来ないと首を傾ける白ノ宮はさておき、今度は愛華の方に向き直る。
「それじゃ、俺はちょっと駅の方に行って探してくるよ。見つかるか分かんねーけど」
「あ、だったら私も手伝うよ? 」
「え、いや……買い物の帰りだろ? 」
「ううん、大丈夫。私の家、駅の途中にあるでしょ?荷物置いていけるし、近いから」
あぁ、そういえば。愛華の家はここからすれば駅方向にあるんだっけか。しかしだからと言って、彼女にまで面倒をかける等ファンである俺が許すか、否である。
「それに、人手は少しでもあった方が良いよ。愛奈ちゃんの話も心配だし、手伝うよ! 」
「是非頼む」
だからここは丁重にお断りする筈があれおかしいぞコレ。くっ、その可愛らしいガッツポーズは反則だぞ。
そんな訳で、白ノ宮と別れた俺達は二人仲睦まじく駅前へと向かうのであ──
「って、何を勝手に退場させているんですのっ!? 」
「……居たのか」
「何なんですのこの差はっ!あんまりですわっ 」
ホント何なんだろうな、俺も疑問だ。
「ってか、お前もついて来るのか」
「っ、当然です!
新聞委員として藤咲さんを監視しろ、私の勘がそう告げておりますのよ」
「おいおい……」
手伝ってくれるんじゃないのね。
結局三人で駅前広場まで向かった。広場は時間帯的にちょうど学校帰りの学生や社会人の等の第一次帰宅者で人足はそこそこ。取り分け学生が多く、しかも何故だか男女のペアが多い……ような気がする。寄り添って歩いているペアが。
「バカップル共め、夕日に焼かれて骨まで溶解してしまえ……by俺の心の声(http://fujisaki.in/extra1023……)」
「「いきなり物騒だよ(ですわ)……」」
「あれ? 」
あれ?ひょっとしてまた声に出てたのか?いかんいかん、愛華の前でなんたる失態だ、自重せねば。
「まぁ?藤咲さんのように見るからに恋愛経験乏しいお方はそう考えても仕方ないとは言え」
「お前にだけは言われたくは無いと思う訳だが」
「んなっ!? 」
どういう意味ですの!?
喚くお嬢様に周りが注目し始めたので他人の振りを決め込んで広場に視線を巡らせる事にした。
「大体私は貴方と違ってですね!!って、聞いていますの藤咲さん!? 」
「あー、ハイハイ。最近の市場相場は複雑ダヨナー」
「あーもうっ!全然聞いていませんわーっ! 」
「ふ、二人とも落ち着いて?ね? 」
南口付近探す事30分、案の定目的の人物の姿は見受けられなかった。というか、後半はほとんど白ノ宮が近所迷惑しかしてないような。
「居ないな……」
「うーん……やっぱり家に帰っちゃったのかな」
その可能性が高い、のかは分からないが。どのみちこれ以上外に居ても無駄だろう。当初の予定通り、愛奈ちゃんがいるが進一の家に行くか……
……ってか、何でこんなに必死(?)になってるんだ俺は。別にわざわざ今日会わなくても、明日の学校ならば確実だしな。
「あ……」
北口の方へ、駅内に戻ろうと背を向けたその時。小さく声を漏らしたのは白ノ宮だった。
「何だ?腹でも減ったのか? 」
「違いますわよっ」
ぐいっ。
肩を無理やり掴まれて振り向かされる。
「……あれ」
視線の先。南口前広場から左手にある通り、そのとある建物。その前の階段を下る制服姿の青年が一人。
「東堂君? 」
「ですの」
紛れもない、進一だ。
が、踏み出そうとした足は目に入った建物の看板を見て止まってしまう。
『山内整形外科』
看板にはそうあった。
更新に時間がかかるやたら最近です。高校や浪人時代はよくアレだけ書く元気があったなー、って年寄りみたいに感慨深く思ってますwww
今回は進一を探す話でしたが、長編進行上ほとんどが関係無い話でした。まぁ小説全体としての人間関係で必要になるので目を瞑って頂けたら幸いであります。
では、次回も何卒よろしくお願いいたします!
 




