22話
制服の赤いリボンが、ちょっとだけ大きい。
鏡の前でくるっと回ると、スカートがふわっと浮いた。
赤いランドセルを背負って、黄色い帽子をかぶる。
今日から——小学生。
中身のことは……考えないでおこう。
パパは今日もお仕事だった。
娘の記念日も一緒には過ごさない。
複雑な気持ち。
「愛姫たん、準備できた?」
玄関から声がして、私はぱたぱたと駆け寄る。
「できた!」
そこに立っていたのは、累くんの姿。
いつもより少しだけちゃんとして見えるのは、きっと“妹の入学式”というイベントのせいだ。
「似合ってるよ、めごたん」
「今日から……いとこのお兄ちゃん……なんだよね?」
私が言うと、累は一瞬だけ目を細めて笑った。
「そう。親戚だよ」
それ以上は、何も言わなかった。
「じゃあ、行こうか」
「うん!!」
━━━━
学校は、家から車で十分ほどの場所にあった。
広い門に警備員さん。
それから……芸能人らしき人たち。
(……あ、あの人)
テレビで見たことのある女優。
CMでよく流れてる子役。
隣には、たぶん家族。
ここはエスカレーターの学校。
小学校と中学校までは、芸能人の子も一般の子も一緒。
でも高校からは、芸能科だけの有名校になる。
累くんも小学校から高校までここで過ごしている。
確か……LU:CENTのメンバーの数人もここにいたはず……。
「お兄ちゃんも一緒の学校?」
「そう。敷地は一緒。でも、基本は会えないよ」
私は、無意識に奥を見る。
高等部の建物が、遠くに見えた。
「じゃあ、愛姫ちゃん。いい子にしてるんだよ」
累くんは、演技モードに入っているのか、私の頭を撫でると校門から離れた。
━━━━
指定された教室に入ると、すでに何人かいた。
後ろでは保護者が数名、立ち話をしている。
その中で、真っ先に目が合った男の子。
「……あ」
目が合った瞬間、彼はにこっと笑った。
「同じクラスだったんだね、愛姫ちゃん!」
「優くん……!」
マネージャーさんの息子・優くんがいた。
振り返ると、他の保護者に紛れてマネージャーさんが小さく手を振っている。
私の少し緊張が解れた。
「よろしくね、愛姫ちゃん」
「うん……!」
ふと、胸についた「ゆうき めご」と平仮名で書かれた名札を指でなぞる。
(中身が違うの、私だけなんだ……これは……誰にもバレる訳にはいかない)
こうして、新しい生活が幕を開けた。




