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FPS  作者: N19
第2章 ダークファンタジー編
39/43

FPS episode.38

episode.38――

2014/5/31 クリミナ地方周辺の森


 周りを飲み込む様な静けさと明かり一つ無い深夜の森に、それを打ち壊す様な一発の銃声が木霊すると森で眠る数々の動物達は身の危険を感じ一斉に騒めく。


「――させるかよ!!」


 だが、次の凶弾が放たられる直前にジャクソンは腰に指していたナイフを投げつけ、マクベスの手からリボルバーを弾き落とす。そして、そのまま奴を仕留めるべく蜂の巣にされるのを覚悟で前に突っ込むが、それは周りに居た他のメンバーに四方から押さえつけられ、あと一歩の所で止められてしまう。


 複数の銃口が頭に突きつけられ、これ以上少しでも動けば文字通り自分の頭は吹き飛ぶ事になるだろう。


「おとなしくしていろ……ジャクソン」


「――ふざけるな! 何故、大地を撃ったんだ!!」


 叱咤する様にそう問い質すが、マクベスはそれに対して表情すら変えない。


「我々はここで選択しなければならない……世界教と敵対して例の魔術の生贄になるか、お前達の首を差し出すかをな……全てはお前達のくだらない正義感のせいでこういう結果になったのだよ」


「―――生贄!? どういう事だ?」



「お前はまだ、分からないのか? あのエセ神父……いや、“Mr.Dirty”に踊らされていたという事を」


「何だと?! そんな、まさか………」


「直接、奴から聞いた訳では無い、だがお前らよりも付き合いが長いオレ様には分かる…今回も奴のやりそうな事だ。お前達が教団を裏切る事にしても初めから想定して、この一帯に特殊な魔方陣を敷いている。そしてヘイトが教団に反旗を翻した時には、それを発動させると奴はこのオレ様を脅迫してきたのさ……」


「そういう事か……なら、何故それを止めないっ!」


「お前は奴を甘く見過ぎている……既にそれも不可能だ。先程に偵察していた斥候が首だけで届いたよ。奴らはオレ様達の考える事などはとうに見通している。それに教団はヘイトとは別に狂信的なアサシン部隊を抱えている。この状況では奴らに戦術的にも勝てないだろう。故にオレ様はヘイトが生き残る方法を取る」


「だから……俺たちを殺すって言うのか………」


「あぁ。だが、お前には恩もある……投降しろ。反逆者の首はいずれかひとつで構わないと言われている」


 そう平然と仲間の首を差し出せと言うマクベスにジャクソンは睨み返すと、首を横に振る。


「そんな要求、飲むはずが無いだろう……親友を売るくらいなら、犬死の方が100倍マシだ!!」


「そうか……」


 マクベスは諦める様に頷くと落としたリボルバーを拾う。そして、ジャクソンの額にその銃口を押し当てるとゆっくり撃鉄を落とし、引き金に指を掛けた。



「――なら、2人仲良くここで死ぬといい……」



―――――ダダダダダダダダダダァン!!


 しかし、引き金は引かれる前に状況は転じた。


 突然、テントの外から鳴り響いた轟音と共に周りに居たマクベスの部下達が一斉に銃弾に撃たれ倒れる。だが、奴はかろうじて後方に飛び抜けそれを避けると自らの状況に舌を鳴らす。


「―――ちっ、貴様か……」


「……おっと動くなよ、マクベス! 今のお前を蜂の巣にするのは赤子の手を捻るよりも簡単だぜ?」


 その声の主を見やるとイカツイ表情のスノーマンがマクベスに向けてアサルトライフルを構えていた。



「――スノーマンっ!」


「銃声がしたと思って駆けつけて来てみれば、こんなおかしな状況に出くわしたんだ……おおかたの事情は聞いていた。コイツがどうしようもない冷酷野郎で、自分の身だけがカワイイ恩知らずって事もなっ!」


 アサルトライフルの銃口を向けながら、スノーマンは吐き捨てる様にマクベスを見下す。


「………お前も反逆する気か、スノーマン?」


「反逆? それはお前の事だ、この裏切り者がよっ!オレもジャクソンと同じで仲間を売る気はねぇ!」


「フン……くだらん。既にヘイトはオレ様が掌握しているのを分かっているだろう。こんな所で抵抗をしても無駄死をするだけだぞ」


「へんっ、テメェは前から気に食わなかったんだよ。やれるものならやってみろ、この貧弱野郎………ジャクソン、お前は大地を連れて行け。ここは任せろ!」


 両者が一種即発の状況の中でスノーマンはこちらにそう一瞥するとジャクソンはそれに頷く。



「……死ぬなよ、スノーマン………」


「心配すんな。オレが殺しても簡単に死ぬ様な玉じゃ無いのはお前も知ってんだろ?」


「あぁ、そうだったな……また会おう」


 そして、2人が交戦を始めるのと同時にジャクソンは大地を背負いそのままヘイトの陣営を後にした。



 それから数時間、逃げる道中は今や敵となったヘイトの面々は他の連中とは比べ物にならない程厄介な相手で、帝国の騎士団が手を焼くのも改めて頷けたが、それらを夜の森で上手く撒きながらジャクソンはスノーマンの無事を祈りつつ森を走り抜ける。


 こんな夜間の森でも進めるのは以前、冒険者をしていた時にここを利用した事があり、その時に既に1度迷った事があったからだ。


 あの時はパーティを組んだ連中から離れてしまい、遭難して3日は彷徨って帰ること出来たが、その経験がこんな時に生きるとは考えてもいなかった。



「しっかりしろよ……大地。クリミナの街まではここからそう遠くは無い、それまでの辛抱だ」


「……あぁ、迷惑……掛けるなぁ……相棒………」

「怪我人は気にすんなっての………」


 そして、数時間を掛けて抜けた森の先にクリミナの街は顔を出した。その姿は以前と何も変わらず活気に満ちている。ジャクソンは冒険者の治療を請け負う街の診療所に大地を連れて行ったが、今日は休館日で医者が隣町まで薬品を調達しに行っていると言う。



「クソっ……こうなったら、仕方無いか…………」


 現代と違い救急車や緊急病院も無いこの街では他の医者を呼ぶのも時間が掛かる。本音では危険に巻き込むのを避けたかったにだが、もうやむ得ないだろう。重症の大地を救うには看護医療の心得のあるルーシェに頼るしか他に宛が無く、ジャクソンは覚悟を決め、カールトンの宿に向かう。


 クリミナの川辺にある一際大きな宿の一階の酒場は今日も大きな賑わいを見せている。ジャクソンはもう見慣れた立派な二枚扉を開けるといつもの整頓されたホールの受付に見知った可愛らしい顔を見つけた。



「いらっしゃいませ、ようこそカールトンっ――て、ジャクソンさんじゃないですか!?」


「突然すまない、アリアちゃん。見ての通りなんだ、ルーシェに治療を頼めないかな?」


「――は、はい! お姉ちゃん、呼んできます!!」


 アリアちゃんに空いている客間の一つに誘導され、ベッドに大地を寝かせると自分の部屋から駆けつけたルーシェが険しい表情でその姿を見せた。


「ジャクソン……その人ね。見せてちょうだい」

「あぁ。すまないが頼む……」


 ルーシェは大地の傷が開いている部分に手を当てて触診すると医療箱から消毒液と止血帯を取り出す。


「これじゃ止血が不十分ね……このままだと失血死してしまう。アリア、ガーゼをもっと持ってきて!」


「――う、うん。分かったよ!」


 ルーシェの指示で慌ててガーゼを取りに行ったアリアちゃんを見送ると横でその様子を伺う。



「………助かりそうか?」


「えぇ。重症ではあるけど幸い弾は貫通しているし、この人に掛かってる自己治癒の錬金術のお陰で何とかなると思う……ジャクソン、ここの傷を抑えてて」


「お、おう……」


 それから小一時間程の治療の末、衣服を血だらけに染めながら行ったルーシェの的確な処置で大地の出血がようやく止まった。これで大地も助かるだろう。


「……ありがとう、お陰で助かったよ」

「ホント……感謝しなさいよね」


 安堵するその横で一転して苛立ち気なルーシェから居た堪れず目を逸らすと、それを逃さんとばかりにグイっと詰め寄って来て彼女がジャクソンを掴む。


「それで?……あれから連絡も寄こさず、今度は突然に戻って来て治療しろなんて、いったいどういうつもりなのかしら?」



(……ヤバい……やっぱり、怒ってるな…………)



「悪かったって……あの後に俺も色々とあったんだ。それに状況的にも連絡ができなかったのさ」


「へぇ〜そう……で、何があったの?これだけの事をさせておいて、もう関係無いとは言わさないわよ!」


 ちゃんと話さないと許さない!という彼女の眼力に押され、それをタジタジと頷くことしか出来ない。



「そうだな……話すよ。だが、覚悟してくれ。たぶんルーシェにとっても胸糞の悪くなる話ばかりだ」


 ジャクソンがそう念を押すとルーシェの怒りも収まったのか、掴んでいた手を大人しく離した。



「えぇ…分かったわ………」


 ルーシェはソファーに腰を下ろすとジャクソンは溜息を吐きつつその対面に座る。そして、クリミナの街を出た後の事をゆっくりと彼女に話し始めた。

 

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