表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

仮面番長、誕生 後編

「スッポン!料理あります」のネオン看板を蹴り、更に跳躍。

「お金より大事な物があるでしょう?」のネオン看板を蹴り、更に跳躍!

ビルの隙間をゴムボールのように跳び回る黄色の影。

上を見ることの少ない住民はそれに気が付かない。仮に気が付いても、無関心を装うだろうが。

鬼面は安ホテルの屋上で一旦、空中舞踊をストップし息を整えようとする。


「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!・・・・・・・・ッ」

いつまでたっても収まらない動悸。いや、収まるどころか加速している。

渦巻くのはただひたすらに怒り、怒り、怒り!

絶え間なく燃料が投入されているような。常に薪をくべられる焚火のような。

今にも、気を抜くとビルに拳を叩きつけそうだ。


「ハァー・・・ハァー・・・」

自分を強いて、呼吸を整える。

だが感情は収まらない。怒りが満ちる、その捌け口を求めて荒れ狂う。

マグマ溜まりのように、ひたすら噴火のときを待っている。


今の彼女は、この鬼面がなんなのか。撃たれたはずの足が治っているのは何故か。この身体能力はどうしたことか。

鬼面に触れたときの、あの脳裏に浮かんだ文字は。そういったことを思考できる状態に無かった。

かろうじて残るのは、目的。今の彼女が成すべきこと。ノブレス・オブリージュ。


(鹿角組・・・ッ!)


いつまでそうしていただろうか。5秒?5分?5時間?

鬼面は再び跳躍。黄色の閃光になり、起きぬけの街を駆ける。

向かうは鹿角組、その本拠地。フロント企業、「神崎建設」本社ビル!


鬼面はひたすらに焚火に薪をくべ続ける。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「まだ・・・まだ出ないの・・・?」


龍美は走りながら電話の応答を待っていた。俯く人の間を駆ける。

何処に向かってるわけでもない。ただ、走らないと思考が暴走しそうだった。

あの鬼面は桃華だ。間違いない。だが、あの装いは。桃華は文武両道だったが、あれ程の動きが出来たのか。

そしてあの鬼面は。

止まらない思考。疑問が後から後から湧き出る。


「お願い、早く・・・ッ!」


事態は急変した。もう榊家への連絡は無理だ。

あの状態の桃華を見れば、榊は容易く桃華を切るだろう。少なくとも相続は不可能になる。

榊はそういう家だった。陰謀渦巻く貴族社会。南とは別種の、悪意の坩堝。

龍美も、朧げながらそういう事情は聞いている。

桃華の、夢を阻むような、そんな真似はできない。

では今、彼女は何処に連絡を?


「はいよ、岸間鳴海だッ!現在取り込み中なんで早く用件を言えッ!!」


出てくれた。龍美は安堵する。彼なら何かを知ってる筈。

岸間は南地区に住まう、情報屋だ。様々なヤクザ達と情報を交換し、交渉するプロ。

彼の情報は秒単位で更新される。どこかの組で抗争でもあろうものなら、

他の多数のヤクザが自らの組に利するように彼の元に情報を求めて群がる。

・・・そして、彼は龍美の母。五十嵐虎徹の舎弟の一人だった。


「もしもし、岸間さんッ!?」


「あっ、その声は龍美ちゃんか!悪い、今立て込んでてよ。つい怒鳴っちまった。姐さんには言わないでくれよ?」


岸間は口調を変える。それでも、その空気は電話越しでも伝わってくる。


「ごめんね、忙しいときに。」

龍美は謝罪した。

「いやいや、他ならぬ龍美ちゃんの為ならたとえ火事だろうがゾンビだろうがいつでも応えるぜ。」

岸間は笑って言った。龍美はその声をきいて少し落ち着いた。

大丈夫。まだ日常だ。帰れる。


「あ、あの岸間さん。こっちも一大事なの。聞きたいことが」


「おい、それって、もしかすると・・・変な仮面の話か?」


ーー思考と呼吸と足が同時に止まる。


「な、なんで知って、」

「そりゃこっちの台詞だぜ。今、南地区中で変な仮面つけた変態どもが暴れてるんだ。」


岸間はシリアスな口調で続ける。

「仮面の種類はバラバラ、日本のだったり外国のだったりで統一感は無いみたいだ。どうもそいつら、尋常じゃなく強いらしい。パンチで電柱割ったり、車持ち上げて投げたり、だ。そんなの姐さんだけで充分だってのにな。しかもすげぇ頑丈で、銃で撃ってもピンピンどころかその傷がすぐに治ったってんだ!こりゃあさすがに見間違いか何かだろうが・・・」


岸間は早口で情報を伝える。彼の元には今も仮面について情報を求める連絡がひっきりなしに舞い込んでいた。

どうも一番被害を受けているのは、街を仕切るヤクザらしい。

いわゆるヘイトを集めている連中が襲撃されている。そう岸間は感じた。

「っていうか、龍美ちゃんそいつら見たのか!?怪我はないのかッ!?」

「う、うん。それは大丈夫。」

それを聞いて岸間は安堵した。

「ハァーッ、良かった。龍美ちゃんが怪我したら姐さんになんて言われるか・・・。とにかく、今龍美ちゃん南にいるのか?だったら早く北に帰ってくれ。ここは危険すぎる、」

「その仮面の中に、桃華がいるって言ったら、どうする?」


今度は岸間の思考と呼吸が止まった。

「お、おいおい、あの嬢ちゃんが?どういうこった・・・」

龍美は事情を説明する。

学校帰りの仕事。誘拐。破砕音。鉄塊。白スーツ。ヤクザ。チャイナドレス。そして・・・黒の鬼面。

自分でも信じがたいことを言ってるのはわかっている。でも、適当な嘘を交えるなんてことは龍美には出来なかった。

「・・・そうか、なるほど・・・」

だが岸間はすぐ納得した。

「となるとだ。こいつは、もしかしてアレか?榊が一枚噛んでるのか?」

「えっ・・・」

龍美は混乱した。なぜそうなる?

「今、襲撃を受けてんのは殆んどがヤクザ、ないしはその下部組織だ。つまり榊筆頭の貴族方の不倶戴天の怨敵って事だよ。そいつらがブースタードラッグ的なもんを使って刺客を超強化してヤクザを一斉に奇襲した・・・筋は通る。」


「通らないよ。」

龍美は毅然とした口調で否定する。

「桃華がそんな、傷口が大きくなるような手は使わない。」

「桃華ちゃんがそうでも、榊の上はそんなこと気にしないだろ。むしろ被害を広げるように立ち回るだろうな。」

「それでも、それだと桃華は全部承知で行動してることになる。」

龍美は疑わない。

「桃華が、そんなことを私に黙ってするなんて、そして私を巻き込もうなんてするはずが無い。友達なんだ。」

榊桃華が、五十嵐龍美を裏切るはずが無い。それは彼女の、ノブレス・オブリージュの否定だ。

そして私も。龍美は揺るがない。五十嵐龍美は、榊桃華を裏切らない。


『ダチを、舎弟を守れない奴に番長なんて務まるかッ!!』


虎徹の言葉がリフレインする。

今の私が、あの鬼面をどうにかできるか。分からない。

でも、このまま家に帰って布団を被って耳を塞ぐのだけは、断じて御免だ。


「岸間さん。桃華が何処にいるか調べて。」

岸間は少し黙り、受話器の向こうで苦笑した。

「あの親にしてこの子有り、ってわけか・・・任せとけ。この岸間鳴海に調べられないことは、殆んど無いッ!」

そう言って岸間はPCを操作する。南地区の至る所にある、自らが仕掛けた隠しカメラ。

これが岸間の目。これで情報をひたすら収集するのだ。

「場所が分かったら、教えて。一旦切る、」


「見つけた。」

「えッ!?」

カメラを操作し始めて1秒後、即座に岸間が見つけたのは。

「おいおいおい、まじかよ。洒落になってねーぞ・・・」


南地区最大派閥、鹿角組。そのフロント企業、神崎建設本社ビル。

その玄関前で、10人ほどの倒れ伏す男達。周囲には元車だった鉄塊。

そしてその中心で佇む、黄色。

一片の汚れも、返り血すらも無いチャイナドレス。スリットから見える足は傷ひとつ無い白い足。


その顔には・・・黒色の、鬼の、仮面。

そのまま彼女は、カメラの方向を一瞥する。

「ッ!?」

画面越しに心臓を鷲掴まれた、感覚。

見えて、いるのか?


「・・・・・・・・・」

そのまま数秒、鬼面は動かず。

その後無言でゆっくりと、ビル内に入っていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「んなァッ!?全滅だとッ!?20秒足らずでか!?」


神崎建設本社ビル、最上階社長室。

同会社の社長であり鹿角組組長、鹿角譲司は部下からの連絡に絶句した。


「たった一人の気狂いに何でそこまでッ!バケモンか何かとでも言うつもりかッ!」

「は、はい!奴は化け物です!どんだけ撃っても当たりゃしねぇし、まぐれで当たっても傷が治ってるんです!」

「んなわけあるかッ!それにもしそうでも、物量で押し続けろ!」


譲司は怒鳴り、それ以上に焦燥した。

いくつかの下部組織から連絡が途絶えて、すぐにこの襲撃。

「変な仮面の連中が襲ってきた!」

その連絡が最後だった。

どうやら他の組も。高月や真徳も襲撃されたらしい。


さらに蟻島との連絡も取れない。どっかのお嬢様を見つけたといったのが最後だ。

もしや、北の連中が10年前の繰り返しをしようとしているのか・・・?

だが、なぜそれなら単騎なのだ?あのチャイナ一人で十分とでもいうのか。

そして、なぜ殺さないのか。

今入っている連絡では、交戦した全員が負傷した。「負傷止まり」なのだ。

当分はベット行きだろうが、致命傷ではない。

殺したほうが楽だろうに、この期に及んで殺しだけはやらないつもりか?


「ふざけやがって・・・ッ!」

疑問は尽きないが、鹿角譲司には「舐められている」と感じ、それだけで十分だった。

何処の誰でも構わない。締め上げて拷問してどこの手の者かハッキリさせたら、戦争だ。


「き、来やがった!み、見えな、ゴハッ」

「お、おい!どうしたッ!」


受話器の向こうから声が途絶える。まさか、もう?

今の部下は3階から連絡してきた。当然、1階、2階にも構成員が詰めている。

先ほど、社長室の窓から奴を確認してからまだ1分も経っていないというのに・・・!


「畜生・・・!ふざけるなよ貴様・・・」

譲司は受話器を手にしたまま独りごちた。

このペースなら、この8階建てのビルの最上階までは5分と掛からない事になる。

相手は人間なのか?それとも・・・


「巫山戯ているのはどちらでしょうか?」


背筋に氷塊が落ちた。受話器の向こうに、いる!

女の声、まだ若い声だった。

譲司の口の中は瞬時に干乾びた。


「これまで散々暴利を貪ってきたでしょう。その行為は巫山戯たものではないというのですか。

それが当然、弱肉強食、騙される方が悪い、勝ったほうが正義。そんな事をのたまうつもりですか。」

女は淡々と、ひたすら平坦な声で問うた。

迸る激情を抑えながら。


「お前・・・何者だ。北の連中に雇われたのかッ。」

譲司は無視して聞いた。

答えは期待していなかった。少しばかりの時間を稼ぐことが出来れば。

こちらにも、ジョーカーはあるのだ。

だが女は答えた。


「いいえ。葛ノ葉女学院高等科3年生生徒会長、榊桃華。榊家の当主候補筆頭ですわ。」

「ッ!?」


馬鹿な!脳内で譲司は即座に否定する。

確かに、榊家が主導というのは大いにあり得る。だが、その当主候補のガキがたった一人で?

意味がわからない。ブラフだ。だが、何の意味が?

他の貴族が榊におっ被せようとしてるのか?

疑問は更に増える。が、譲司はまず会話をひき伸ばす事を優先した。


「・・・榊の当主筆頭サマだと?そんなら何か?また10年前の焼き直しがお望みなのか?」

10年前。浄化作戦。ヤクザと貴族の大抗争。

当時、譲司は鹿角組幹部で、譲司より上の幹部、組長は全て捕まった。

その点では譲司は貴族に感謝していた。


「はい。そのつもりです。貴方の次は高月組、その次は真徳会。今晩中に全て壊滅させます。」

南地区を統べるヤクザ上位3組。それらを全て滅ぼすと女は予告した。

その口調に一片の迷い無く。


「・・・は、はは、できる訳がねぇだろ、お前、アメコミヒーローにでもなったつもりか?」

譲司は笑い飛ばした。口も喉も渇きが止まらない。

できる訳が無い。お前はここで死ぬんだ。そう言いたかった。

でも、この女は微塵も疑ってない。自分の力を過信などしていない。

譲司は恐怖した。やりかねない・・・そう思ってしまった。


「い、いい加減にしろよ貴族様。正義の味方気取りでいられるのもここまでだッ。お前は、ここで死ぬんだッ!」

譲司は叫ぶ。恐怖を抑えるために。

「正義?私が正義気取りだと?」

女は、言った。


「私の行いが正義などとは毛頭思わない。これは管理だ。害虫の駆除だ。間引きだ。

お前達は不適格者だ。だから殺す。人ではなく、組織を殺す。それが私の義務よ。」


電話が、切れた。


「・・・ハァーッ、ハァーッ、ハァーッ・・・」

譲司はフルマラソン後のように息を切らした。だが、時間は無い。

すぐに上がってくるだろう。

アレの、ジョーカーの準備は整っただろうか。


RERERERERERE!


「!」

すぐに受話器をとる。7階からだ。




「はいはーい、小町ちゃんですよー。準備万端いつでもOK、どんとこいで~す!」

気の抜ける女の声。譲司は思わず舌打ちしかけた。


彼女が、譲司のジョーカー。鹿角組最高戦力。馬鹿と紙一重の天才。「弾食い虫」。「バレットレイン」。


「よし、もうすぐ上がってくるはずだ。なんとしてもそこで仕留めろッ。」

「ヘイヘイボス、安心してよ。チャイナだろうがチャイカだろうが私にかかればマッハで蜂の巣待ったナシ!」

そこで、蜂須賀小町はいったん切り。デスクの上に飛び乗って右手の銃を弄ぶ。

そして子供のような猫なで声で言った。


「それでね~。弾なんだけど、本当に全部使っちゃって良いの~?」

「・・・ああ、全弾撃ちつくして構わん。そこで食い止めろ!」

「イヤッフゥーッ!言ったねボス!あとで泣いても知らないよッ!」


電話を切った蜂須賀小町は、久しぶりの実践と。大好きな銃を好きなだけ撃てるということで最高潮のテンションだった。

満面の笑みで、朱色のコートを翻しながら意味も無く両手で銃のジャグリングをはじめる。


そのコートの中に、部屋の床に、壁に、デスクに、椅子に、その他至る所に転がるのは

彼女が現在弄んでいるものと同じ、拳銃である。弾丸は装填済み、その数実に合計250丁!


「はぁ~。9m拳銃フルオートで10発、それが計250で2500発。それがリロード無しで撃てるなんて~・・・」

小町は恍惚とした表情で呟く。そして、部屋の入り口を向いて、言った。

「感謝するよチャイニーズ!お礼にあなたの穴を今の200倍にしてあげるわ!」


そこに立つは、黄色の鬼。

チャイナドレスに金髪ロール。スリットから覗く白い足。豊かな胸部。碧眼。そして、黒の鬼面。

先ほどの電話から3分程。当然のように無傷である!

「・・・・・・」

鬼面は黙して語らず。足元の拳銃を蹴散らしながら歩む。



その女に不敵な笑みを浮かべ、小町は腕を十字にクロスさせて銃を構えポージングした。

「はじめまして!鹿角組用心棒にして紅一点!どんな敵も蜂の巣不可避!

バレットレインの蜂須賀小町とは私の事だ!脳に刻め!ただしその頃にはあんたは蜂の巣になっているだろうがな!」

小町の脳内で響く爆発音。

いつも鏡の前で練習するポーズ。会心の出来だった。


「・・・・・・」

鬼面は、僅かに肩を竦めた。

そして膝を曲げ、前傾姿勢をとり、飛び出す!

「ッ!!」


常人には捉えきれぬ高速!だが、小町は常人ではなく!

更に今の彼女はスーパーモードだった!


「HA-,HA-,HA-!Rock 'n' Roll!!」


BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBLAM!!


鉛の豪雨が降り始めた!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「はっ、はっ、はっ・・・着いた!神崎建設!」

携帯を耳に当てながら、龍美はネオン輝く街を駆け。

鹿角組本拠地、神崎建設本社ビルの玄関前にたどり着いた。

周囲には大量の薬莢、折れた日本刀、ドス、ひしゃげた車、そして気絶した白スーツたち。

まるで台風の跡、もしくは戦火の跡か。


龍美は息を呑む。これを、桃華がやったのか?

「龍美ちゃん、聞こえるか?恐らく桃華ちゃんが向かってんのは最上階だ。

十中八九、狙いは組長の鹿角譲司だろうからな。」

岸間がこれまでの鬼面の動きを録画映像で確認しながら言う。

カメラのフレーム処理が追いつかないほどの俊足。

やはりあの仮面に何か仕掛けが・・・?

「本当に行くのか、龍美ちゃん。正直言って、今の桃華ちゃんに説得が通じるとは・・・」


「行く。」

間髪入れず、龍美は言う。

「・・・へっ、悪いね。聞いた俺が馬鹿だったよ。でも、約束してくれ。危なくなったらすぐに引け。」

岸間は、「番長の娘」に対してではなく。「五十嵐龍美」にそう言った。


「・・・うん。わかった。」

「本当にわかってんのか?ま、いいや。それじゃ俺はなるたけ情報を集める。何かわかったら教えるよ。」

「ありがとう、岸間さん。」


岸間に感謝を述べ、電話を切る。

ビルの上の階では、窓から断続的に聞こえる銃声、マズルフラッシュ。


早く向かわなければ。桃華が殺されないように、殺さないように!




龍美がビル内に踏み込む、正にその瞬間。




カァーン。




龍美の背後に何かが、落ちた。

「えっ・・・?」


振り返る。そこにあったのは、白い物。

何処からか降って来た白い皿のような物が転がっていた。ちょうど人の顔を覆えるようなサイズ。

二つ、三角状の穴が開いている。ほかは何の意匠も施されていない。これは、仮面・・・?


「ま、さか・・・」


あの、桃華の鬼面が脳裏によぎる。根拠は全く無いが、龍美は確信した。

これは、アレと同じモノだ。


吸い寄せられる。視線が、体が、腕が。

そしてその手が、仮面に、触れた。




ーー瞬間!




(なッ・・・!?)

龍美の周囲の世界が、止まった。

唸る白スーツ、不自然に避ける通行人、ゴミをあさる猫。全てが停止する。

いや、これは・・・私の感覚?体感時間だけが、延びている?



『おめでとうございます!』

(!?)


脳裏に飛び込む、文字列!

声は聞こえない。文字のみが頭に浮かび上がる!

直後、次々と文字が押し寄せる!


『あなたは、実験の対象として選ばれました!』


『あなたには拒否権があります。この仮面をつけなければ実験は始まりません。』


『ただし、1度でも仮面を装着した場合は実験の協力に承認していただいた物と判断します!』


『この仮面は、持ち主の「怒り」を増幅させます。』


『それにより、冷静な判断が出来ず社会生活に多大な悪影響を及ぼす恐れがあります。』


『しかし、それと引き換えに肉体は強化され、様々な「オプション」の生成も可能となります!』


『ただし、仮面が割れれば効果も消えますのでご注意を。』


『さぁ、あなたは怒っていますか?ならば仮面をつけてみてください。』


『その仮面はあなたの怒りの原因を解決する力を与えます!』


『それでは。怒りあれ!』


・・・・・・・・・・・・




「・・・・・・・・ヅぁッ!!」

世界が動き出す。脳が熱暴走を起こしかける。

咀嚼する間も無く、一気に情報を突っ込まれた。


だが、分かった。やはりこの仮面、あの鬼面のせいだ。

誰かの、ふざけた実験によってこの仮面はばら蒔かれた。そして、これのせいで桃華は暴走している。

止めるには、あの鬼面を壊せばいい・・・!


その為には。

「この、仮面・・・」


『この仮面は、持ち主の「怒り」を増幅させます。』




脳裏によぎる、先ほどの文字。

じゃあ、怒ってない人がつけたら、どうなる・・・?




そして、「怒らない人」がつけたら。




「・・・」

龍美は、母の言葉を思い出す。


『ま。万が一、お前がトチ狂って番長を目指すようになったら。』

『覚えとけ。「番長、怒るべからず。」だ!』


その時、本当に昔。物心付いた直後。意味が分からなかった。

「怒り」という物が、どういうものなのか。



龍美は「怒り」という感情が分からない。

この事は誰も、恐らく母も知らない。

言葉の意味は分かる。どういうときに浮かぶ感情なのかも、知っている。

だが、他の誰もが怒るような状況でも。龍美に怒りは湧いてこない。

喜びも、悲しみも。楽しみ。感動、驚愕、苦しみ、不満、興奮。

他の感情は何不足なく、持っていると思う。

だが、怒りだけは。



原因はハッキリしない。

物心付く前、本当の母、父・・・そして彼らの死。彼女にその記憶は無かった。

ショックが強すぎて自己防衛のために記憶が飛び、その際に「怒り」を亡くしたのか・・・



これまで、「怒り」を知らずに困ったことは無かった。

むしろ、「怒り」によって起きるのはマイナスのことばかりと聞くので、これで良いとも思っていた。

それに「番長」に憧れる龍美には。怒りなど要らない、知らないことは幸運だったとさえ思っていた。

だが・・・


(多分、この仮面をつけたら。つける前には戻れない。私のなにかが、変わってしまう。)



母の言葉。殺意は怒りから生まれる。ならば、私は桃華に殺意を持ってしまう・・・?



(そんなこと、あり得ない。絶対に。)



たとえ仮面に偽りの感情を植えつけられても。我を忘れて暴走しても。

変わらない。


五十嵐龍美と、榊桃華は、友達なんだ。


それだけは、何があっても変わらない。



「行こう。」


龍美は仮面を仕舞う。

仮にここでつけて暴走しても何の意味も無い。




そして龍美は駆け出す。全力で!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBLAM!!


「ハッハァー!さすが、速い!常人の3倍は超えてるねッ!」


両手の二丁を撃ち尽くした小町は即座にそれを投げ捨て、床に転がる二丁を蹴り上げ、掴み、射撃!


BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBLAM!!


「・・・ッ!」


鬼面はひたすら回避する。1,2発なら我慢も出来る。だが、この密度!

少しでも立ち止まれば即座に捉えられる。銃弾の嵐!


小町の手には専用に改造された特殊グローブ。銃の反動を操作し、手首の負担をほぼゼロに出来る特注品である。

そして拳銃も、その全てが専用チューンされ連射能力が大幅上昇。

これにより、冗談じみた瞬間火力、そして制圧力を得た小町。だが、彼女の真価はここからだ。


GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGAKIN!!


「ッ!?」

鬼面の左足に、腹に、銃弾が命中!バランスを崩しかけるも、何とか建て直し、背後からの銃撃を回避する。

そう、背後からである!ここには鬼面と小町の二人だけだと言うのに!


「よっと!どうだいチャイニーズ!これが私のタクティクスだッ!!」


小町は飛んできた銃弾を回避する。何処に来るかわかっていたように。

いや、実際わかっているのだ。


「・・・・・・・・・」


鬼面は周囲を見渡す。普通の会社の普通の事務所。

拳銃が大量に散らばっている以外にみるべきところは無い・・・否!


鬼面は気づく。事務所内の床、壁、天井、デスク、椅子。

その全てが、光沢を消された鉄で出来ていたのだ!

これにより放たれた銃弾は跳弾を重ね、2度に渡り鬼面を襲った!


「ふふふ、気が付いたようだね。ここは私専用の訓練場、そしてキリングフィールドよ!」


蜂須賀小町は笑って銃を投げ捨る。その銃が転がった位置も、彼女は全て把握する。

この部屋の構造物全ての位置関係は記憶済み。跳弾角度、その後の速度。全て瞬時に計算可能。


彼女はそういう脳をしていた。尋常ならざる空間識別、桁外れの計算能力。

そしてここに加わるのは動物じみた動体視力、病気めいたトリガーハッピー。

配置されている障害物も全て跳弾のために置かれたもの、隠れたところで意味は無い。

今やこの空間は彼女の巣。跳弾を駆使して全方位から獲物を嬲る狩場と化したのだ・・・!


「そらそらそら、止まってると死ぬよッ!」



BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBLAM!!



両手首を細かく動かし、弾道を調整。

鬼面を動かす直撃コースの弾と、鬼面の道を塞ぐように置く弾、そして本命の跳弾用に壁やデスクに放つ弾。

これらを両手の20発で最適の分量で割り振る。

特殊グローブが無ければ手首が千切れ飛ぶ、到底不可能な技術だ。


「ッチィ!!」


回避する鬼面、しかしほんの僅かな時間差で襲い来る跳弾!

床を、デスクを、壁を蹴り、計算どおりに鬼面に向かう!



GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGAKIN!!



再び被弾!右肩と左脇腹に鮮血!

思わず止まりかけるも、再び小町の手には新しい二丁!


「イィーヤッハァアアアアァア!!!!」


BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBLAM!!


GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGAKIN!!



「ッツァアアアッ!!」


全方位より殺到する弾丸!

鬼面は回避を諦め、頭部の被弾のみを避ける!

群がり鬼面の身体を喰らう銃弾!

鮮血が舞い散りそれすら飲み込む銃の魚群!




「・・・ハァーッ、ハァーッ、ハァーッ・・・!」


・・・魚群が去った後も、鬼面は立っていた。全身は真っ赤に、手足には無数の穴。

だが、そのうち幾つかは既に再生を始めていた!なんという治癒力!


「ほぉー、ほんとに再生してるよ。こうして実際見ないと信じられないものだね。」


小町は言いながら、銃を持ち変える。油断はしない。


「でも、その回復能力を考慮したとして。あなたの体力が常人の5倍、速度も5倍と仮定して。

さらに私の銃が10回に1回ジャムるとしても。」

小町は非常に甘く見積もり、答えを述べた。

「私が全て撃ち尽くすまで両腕に288発、胴体に370発、両足に563発、そして頭部に56発。

これだけ浴びてそれでも死なないなら本当にお手上げだけど・・・そうでも無さそうだよねぇ?」


「・・・ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・」


鬼面は息を整える。

そして、構えを・・・解く。


「んん~?もしかして降参かな。今更どの面下げてってもんだけど。まぁいいや。

ボスも色々聞きたいだろうからね~。」


小町は警戒を解かない。鬼面は力を抜き、息を整えている。


「降伏するなら、両手を挙げて。直ぐに挙げなきゃ時間稼ぎと判断して撃つ。」


鬼面は大人しく従う。垂れ下がった両手を上げ、手のひらを横に向ける。


「・・・普通手のひらこっちに向けない?まぁいいや。それじゃあ次はうつ伏せになって、」

言いかけて、小町は気づく。何か、糸のような物が・・・鬼面の手に。


鬼面は、独りごちた。

「・・・オプションとやらを、試してみましょうか。」



「このッ、何か仕掛けを・・・ッ!!」



BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBLAM!!



GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGAKIN!!



小町は即座に発砲!再び襲い来る暴風雨!

全方位からの同時攻撃、回避は不可能ーーー



GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGAKIN!!


鬼面の周囲に巻き起こる碧の障壁!



「んなッ・・・!」

鬼面の被弾、無し!しかも彼女はその場から動かず!一体何が!?



「・・・フゥー・・・イメージどおりね。」



おお、見よ!鬼面の両手には、先ほどまで影も形も無かった武器が握られている!

糸のような物が形を成して生成されたのだ。

それぞれカタカナの「ト」のような形状で色は碧。柄には細かな榊の意匠。

かつて中国より沖縄へ伝わり独自の発展を遂げ、専用の武術も存在する近接武器。

トンファー。



彼女はそれを超高速で縦横無尽に回転させて、全方位からの銃撃を防ぎきったのである!



「やっべ、そんな隠し玉聞いてないってーの!」



小町は再び発砲。



BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBLAM!!

GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGAKIN!!



魚群がスクリューに巻き込まれるように。2本の碧が銃弾を薙ぎ払う。

やはり、被弾無し・・・!

そしてゆっくりと、鬼面が、歩み寄る!



「くっそ、ターミネーターかっての!」



戦術の変更が必要だ。あの動きで全方位の弾がカバーされるならもはや跳弾は無意味。

ひたすら正面から撃ち続けて削り殺す!



BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBLAM!!

GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGAKIN!!



BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBLAM!!

GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGAKIN!!



BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBLAM!!

GGGGGGGGGGGGGGGGGGGGAKIN!!



「こ、こんのッ!止まれ止まれ止まれッ!!」


歩みの止まらぬ鬼面。

碧の軌跡を描きつつトンファーを回し弾く、弾く、弾く弾く弾く弾く弾く!!

全ては防ぎきれず、足や肩に被弾する。

だが、歩みは、些かも鈍らない!



そして、今や彼我との距離、30cm!



「は、はははははは、ま、マジで?」


小町の両手から、弾切れの二丁が滑り落ちる。


鬼面は、ゆっくりとトンファーを振りかぶる。別の銃を拾う暇は、無い。


「そういうの反則じゃない・・・?」


蜂須賀小町が今日最後に見たのは。

トンファーに意匠された緑の榊だった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




(・・・銃声が、止んだ・・・?)


最上階で鹿角譲司は、塞いでいた耳を空けた。

戦闘が終了した。それは間違いないだろう。だが、どちらが勝ったのか、



KRAAAAAAAASH!!



「んなぁああッ!?」

社長室の扉が爆ぜる!

舞う粉塵、その中から現れるのは。



「・・・御機嫌よう、鹿角組組長様。先程振りですね。」


鮮血に塗れた黄色のチャイナドレス、塞がり掛けている足の穴。

両手には碧のトンファー、血を被り黒ずんだ金髪、そして黒の鬼面。


「改めまして、自己紹介を。

葛ノ葉女学院高等科3年生生徒会長、榊家の当主候補筆頭。榊桃華です。」


鬼面は、・・・桃華は。

視線で譲司を射抜く。譲司はその視線がレーザーか何かのように感じた。


「な、な、小町はどうした・・・!」


「下で眠ってます。そこまではほぼ無傷でしたのに、彼女には梃子摺りました。」


鬼面の奥で溜息をつく。

この「オプション」が無ければ死んでいたかもしれない。


桃華はトンファーを軽く回し、放る。

それは瞬く間に糸状に分解し、桃華に、鬼面に吸い寄せられ、消えた。


大分、扱いにも慣れてきた。

怒りの制御も少しづつ。今は思考も淀みない。


「さて、では。」


桃華の膝が、僅かに撓む。

そしてその姿が、ぶれる。蜃気楼のように、消え、



ーー譲司は壁に叩きつけられた!



「ゴハァッ!?」



戦闘に関しては門外漢である譲司には、傷ついた桃華の残像すら捉えられない!

喉笛を掴まれ、首だけで吊るし上げられる。


「早急に片付けます。まだ後ふたつ、ありますので。」


その強化された握力で、桃華は鹿角組の頭を締め上げる。


「お、おい・・・ま、て・・・殺さないんじゃ・・・」

譲司は必死に声を絞り出す。



「いいえ。貴方は殺します。そうしなければ鹿角組は殺せない。」

桃華は何の感慨も無く、死刑宣告をした。


「・・・ハッ、お、俺を殺ったところで、また直ぐ下の奴の首が、せりあがるだけだ・・・ッ!」


「それはわかってます。ですので、そうなる前に殺します。」


桃華は続ける。

この男は知らなければならない。これから鹿角組が、南がどうなるか。

その責任がある。何も知らずに死ぬことなど許さない。


「どうせ時間を置けば、貴方達の頭はすぐに生える。その前に全て終わらせます。」


首のみを獲ったところで、体が無事ならばそこから生える。

それが組織という生き物。

だが。全くノータイムで再生するわけではない。必ずラグが起きる。


「一晩で上位3つのヤクザの頭が死ぬ。これにより抑えを無くした4位以下のヤクザが下克上を狙うのは必然。

戦争が起こるでしょう。ですが、その前に「北」が介入します。」



譲司の息が止まる。

この女、正気なのか。


「まさか、他の仮面連中もお前の差し金か・・・ッ!」


「?」

桃華は首を傾げる。心当たりは無い。

気にせず続ける。


彼女の動向を榊家は、北は、知らない。

だがすぐに気がつく。南には多数の密偵がいるのだから。


「北はいつでも南の動向を調べています。介入の口実あれば、即座に動くでしょう。」


「て、めえ、そんなことしたら、何人死ぬと・・・」


「いいえ、死者は最低限です。なぜならこれは『奪還』なのですから。

元々ここは我々の管理する土地。破壊しては意味がありませんので。」



被害を抑えるのは慈悲ではない。元は自分達の物なのだから。

そもそも国同士の戦争でも同じこと。奪う物を壊しては、何のために戦うのか。

それが許されるのは宗教上の争いだろう。異教徒相手に慈悲は無い。奪う物も無い。



「10年前は貴方達の連携によって、滅ぼし損ねました。

今回はそれを踏まえて、各個撃破で連携を断ちます。」



現在、ヤクザ達にかつての連携は無い。上位の権威によって抑えられているだけに過ぎない。

フラストレーションが溜まっている事は以前から分かっている。

今の南は、じわじわと時間をかけて熱せられた圧力釜だ。

少しづつならばまだ良い。だが、蓋が一気に全て消えればどうなるか。



「そして、他の下級ヤクザは「北」の者が制圧する。1日かからないでしょう。

抵抗が激しければ、死者が出るかもしれません。ですが恐らくその心配は無いでしょう。

統率の無い烏合の衆に、そんな力があるとは思えませんわ。」



「蓋」が消えたことに下級ヤクザが気づくまではそうかからないだろう。

直ぐに自分たちが取って代わろうと行動を開始する。争いが起こる。

そして、「北」の介入する口実が出来る。治安維持の名目で。

彼らは喜び勇んで介入するだろう。


「今晩、そして明日。南のヤクザ組織は全て滅びます。

貴方は尊い最初の犠牲です。」


「・・・カッ、ふざけん、ガッ・・・!」


ギリギリと。

桃華は譲司を締め上げる。磔台のように無慈悲に。


譲司の顔が土気色になり、目がグルンと白目になる。

涎が床に垂れ、舌がずり落ちる。



(これで。いいえ、これから始まる。これが私の為すべき事。)


ふと、脳裏に浮かぶのは。友人の笑顔。


龍美は帰っただろうか。怪我は無いだろうか。

「番長」なんて非現実的なものを目指して、これから大丈夫だろうか。

進学なのか、就職なのか今ひとつはっきりしないし。

あと、少し天然気味だ。

まだまだ彼女には自分が必要だ。


でも。これをはじめたら。この男の首をへし折ったら。


もう、彼女の傍には居られない。


龍美は許すだろう。たとえ自分が人を殺めても。私だってそうする。


だが、私は耐えられない。あの子の隣に人殺しがいる事は我慢できない。



それに現実問題として、榊家が許さないだろう。

これは完全に自分の独断先行。結果成功したとしても、責任追及は避けられない。


良くて謹慎。最悪、全責任を被り幽閉されるだろう。

そうなれば一生を塀と壁の中で終える。


それが北のルール。貴族社会。出る杭は総出で叩かれる。



でも。それでも私は殺る。


あの子は巻き込まない。



桃華は一瞬力を抜き、譲司の首を完全に折るため力を込める。


「さようなら。すぐに後二人、送って差し上げます。貴方達の犠牲は無駄ではありませんよ。」


「・・・ァ・・・・・カァ・・・ッ・・・」


譲司の意識はほぼ落ちていた。虚ろに呻き声を上げるのみだ。



力を込める。殺すために。義務を果たすためにーーー





「待って!桃華ッ!!」




止まる。


意思が、思考が、呼吸が、腕が、止まる。



「たつ、み・・・」


「はぁ・・・・・・はぁ・・・っ、間に合った・・・?」



息を切らして駆けつける、親友の姿。もう会えないと覚悟したその姿。


「桃華、やめて。その仮面のせいでおかしくなってるんだよ。早く帰ろう?」


龍美は笑う。いつも通りに。

親友に呼びかけるように。


「・・・いいえ。私は正常よ。」


確かにこの仮面は自分の感情を爆発させ、今も絶えず燃料を供給し続ける。


だが。この怒りの本質は変わらない。間違いなく自分の怒りだ。

他の誰かの感情を植えつけられたわけではない。


「正常な人はそんな事言わないよ。」


「・・・これは私の義務なのよ。いいえそれだけじゃない、私がしたくてやってる事よ。

誰かに強制されたわけじゃない。」


「それでも、やめてよ。」


「邪魔をするの?龍美。」


「するよ。」


「なんでよ。貴女も番長なんてもの目指してるんでしょう。

これも私の、夢なのよ。邪魔しないでよ。」


「嫌だ。」


龍美は鬼面を、その奥の碧眼を見据えた。

そして、言った。



「だって、まだ桃華としたいことが沢山あるんだから。」


「・・・えっ・・・」


桃華は鬼面の奥で目を見開く。思わず手を離す。

譲司が転がり、えずく。


「海とか山とか、いろんな所に行きたい。夏には修学旅行もある。秋になったら文化祭もあるし、

その後には新生徒会に引き継がなきゃいけない。

ほかにももっと、買い物したりお泊りしたりカラオケとかも行ってみたい。遊びたいんだ!」


龍美にも分かっていた。

人を殺した桃華が自分の元からいなくなる事など簡単に分かる。

親友なんだ。



「だから、邪魔する。桃華の夢なんて知らない。私が嫌だから、止めるッ!」



桃華は、それを聞いて。歯を食いしばる。


「私、だって・・・」


思わず口から出る言葉。


「私だって、したいわよ・・・」


心が、折れかける。鬼面に、亀裂が走る。




だが。桃華は思い出す。今の自分が何でできているか。


「・・・ッ!」


彼女だけではない。北の貴族達。その他、上流階級と呼ばれる者。富豪。

その者たちの食べる物、飲む物、着る物、住む所、地位、権力、財産。

それらは一体なにで出来ているのか。


(・・・私より下の。無辜の民から奪った物。)


彼らと自分達、何が違うのか。

ただ少し運が良かった。ただ先祖が偉い人だった。それだけだ。

それだけの理由で彼らは、必死に働き作った食料。稼いだ金。それらを吸い上げられる。

そう。北も南も、本質は同じなのだ。どちらも他者から奪う者。同属嫌悪。


彼女は、それに幼いころに気づいた。気づいてしまったのだ。

彼ら無辜の民の血を飲み、肉を食べ、皮を着飾り、骨の家に住んでいる。そんな錯覚を覚えた。

桃華は吐いた。一晩中。


遠からず、彼女のような立場の人間はそれに気づく。

そしてその殆んどは気にも留めない。だからどうした。下民は尽くして当然だろう。

僅かに居る善人も、他の貴族に流されるまま。異端は排斥される。

つまり誰もが知っているのだ。自分達が屍の上に立っているということを。


それを下から見上げる者。下民。

施しを与えようとも、彼らは感謝の心など一片も持たない。

彼らは言う。

元々俺達の金だろう。何もしないくせに偉そうに。偽善者め。

上を見るのに夢中の彼らは、隣から奪われている事に気づかない。


ヤクザ。

彼らは二重に搾取する。

横から掠め取り、気づかぬうちに搾り取る。

そして言うのだ。他と同じように。

元々俺達の金だろう。何もしないくせに偉そうに。偽善者め。



桃華はそれに気づいたときに決意したのだ。


もとより自分の体は他者の血と肉でできている。

ならば何も惜しくはないだろう。


ヤクザを殺す。人ではなく、組織を殺す。

中間搾取は許さない。

これは管理だ。害虫の駆除だ。間引きだ。

吸い上げるのは、一度で十分だ。


これは正義ではない。

ヤクザは悪ではない。それが彼らの生態なのだ。

だからこれは、ただの同士討ち。


そんなことは、下民も望まない。

だからこれは唯のエゴ。

ノブレス・オブリージュ?笑わせる。よくもまあ大層な名前を付けたな。



彼らが、気に入らないから。理由は、それだけだ。






「AAAAAGGGGGGGGGAAAAAAAAA!!!」


咆哮!!

同時にトンファーが現出、壁を殴る!



KRAAAAAAAASH!!



コンクリート壁が粉砕、貫通!

その穴から、夜風が舞い込む。ネオンと街灯と車の光。



「私はッ!私がしたい事をするッ!私が奪う以上、お前達には奪わせないッ!

極道だと?そんなものはないッ!お前達も私達もッ、道を外れた外道に過ぎないッ!」



桃華は、鬼面は叫ぶ。ひたすらに。

怒りが満ちる。その亀裂が、ふさがる。



「これは管理だッ!害虫の駆除だッ!間引きだッ!」



そして、鬼面は碧のトンファーを構える。



「邪魔をするなら、貴女もッ!」



床を踏みつけ、真っ直ぐに龍美に向かい、跳ぶッ!




「わかった。じゃあ、喧嘩だ。」


そういって、龍美は懐から白い仮面を取り出し。


その顔に、はめた。




『ご協力、感謝します!』



浮かぶ文字列。

そして、龍美の思考は、スパークした。





譲司は、ただ見ていた。


龍美の取り付けた白の仮面から、黒い布のようなものが噴出。

龍美の全身を覆いだす。


やがてそれは、服となる。


僅かに青の混じる黒色。

詰襟の上着、丈が膝まで伸びた長ラン。前ははだけ胸にはサラシが巻かれている。

下半身を包むのは、上と同じ色の裾の長い、ボンタン。

腰に巻かれたベルトには竜の描かれたバックル。

そして、顔には白の仮面。



「あ、あれは、まさか、そんな、」



譲司の脳裏に過ぎる10年前の情景。


本来、あの浄化作戦では多数の死者がでる予定だったのだ。

ヤクザ側も、貴族側も、その覚悟で戦いに望んだ。

だが、結果は。誰一人の死者も無く終結した。



原因ははっきりしていた。


ある一人の、「番長」と名乗るまだ成人したての気狂いが。


双方の陣営の前線に割って入り、その場の全員を戦闘不能にしたからだ。


その得物は、銀の金属バット。そこには血文字。




龍美は、白面は。向かってくる鬼面に、碧の双檄に。


両手を翳し、振り上げる!




GAKIIIIIIIIIIIIIIIIN!




「ッ!!」

金属音!鬼面はバックステップで距離をとる。

受け止められた!


白面は、手に持った銀を振り上げ、肩に担ぐ。母のように。



それは、銀色に光る棒状の鈍器。

本来の用途とは別に、主に若い男が武器として用いるそれは、金属バット。


そしてそこに刻まれる紅い文字。

龍美の記憶に残るその文字は。



「喧嘩両成敗」。



それを、その文字を見て。


「ば、馬鹿な、帰ってきたのか、あれが・・・」


譲司は鬼面と相対したとき以上の恐怖を味わった。


あの伝説の。「ワンマンハザード」。「白銀バット」。「虎番長」。


それが、今、目の前にッ!


「あ、あ、あ・・・」


譲司は、気絶した。



「貴女も、その仮面を・・・ッ!」

鬼面は驚愕する。だが、即座に我に返り構えなおす。


白面は答えない。そうだろう、今の彼女の脳内は怒りが燃え盛っているのだ。

「・・・こうなればもう、殺し合いね。」



「ううん。」


白面は。・・・龍美は、答えた。

その声に淀み無く。その目に怒り無く。



「ま、さか、制御しているの・・・!?」

鬼面は、・・・桃華は今度こそ驚愕する。自分はここまでかかったというのに。



一方の龍美も、驚愕していた。

自分の中に、別の感覚が出来たような。何かが燃えている。

これが、「怒り」?


確かに放っておけばこの炎は全身を嘗め尽くすだろう。

でも、今の龍美にはこれがそんな物には思えなかった。


これは、原動力だ。エネルギーだ。

力が湧く。諦めが消えうせる。恐怖が飛ぶ。

よく自分は、これを持たずに生きていけたものだ。



そして母の言葉が蘇る。「番長、怒るべからず」。


その言葉を、龍美は振り切る。

なぜならもうひとつ、蘇る言葉があったから。


『ダチを、舎弟を守れない奴に番長なんて務まるかッ!!』



この感情は、桃華を守るために必要だ。

だったら、躊躇わない。



「殺し合い?違うよ。」


龍美は言う。白面の下で、笑いながら。


「だって、私には桃華を殺すつもりなんて無いもの。だからこれは、」


龍美は言う。白面の下で、笑いながら。




「喧嘩だッ!!」




バットを構え、飛び出す!大上段よりの唐竹割り!


「ッ!!」


桃華は受け止めようとトンファーを構え、しかし猛烈に嫌な予感がした。

横に飛んで回避!


「ラァアアアア!」


KRAAAAAAAASH!!



床が砕ける!コンクリート片が撒き散らされる!

これを受けたら両腕は確実に折れていた!


「ッちぃ!」


舌打ちし、桃華は距離を詰める!

得物のリーチはあちらが勝る、ならば懐でのインファイト!



「ハァアアアッ!」


トンファーを握り、ガードの下がった頭に正拳突き!

白面を破壊する!

バットの振り上げはこのタイミングでは不可能、



「ッフ!」

「ッ!?」


龍美は、バットを捨て高速でバックテップ!

桃華の拳は空を切る。


捨てられたバットは消失し、再び龍美の手に生成される。

そのバットを構えて、龍美は言った。



「そういえば、喧嘩するの初めてだね!」



同時に再び突撃!

銀の軌跡を描き降下する流星!



「何を、言ってるのッ!」



桃華は体を逸らし回避!先ほどと同様に、白面に正拳突き!

碧の軌跡を描き飛来する彗星!



「いつも思ってたけど、桃華その髪型似合って無いよッ!」



顔を斜めに逸らし回避する龍美!最小限のムービング!

そしてバットを手放し、桃華と同様に拳で鬼面を狙い、突く!



「なッ、何をッ!」



桃華は体をかがめて回避、そして同時に足を振り上げハイキック!

これを龍美は再生成したバットで防御!



「カンフー映画が趣味なのもお嬢様っぽくないしッ!」



ガードの反動を逆手にとり龍美は回転!

バットを真横になぎ払う回転攻撃!これを桃華は両手のトンファーで防御!

無視できぬ衝撃!腕を突き抜ける電流!



「番長映画が趣味の貴女にだけは言われたくないッ!」



桃華は叫び、衝撃を殺す。

そして更に肉薄、腹部に膝を見舞う!



「ぐッ・・・!?」



龍美は堪らずに距離を取る。だが、桃華に追撃する余裕は無い。

下の階でのダメージが響いているのだ。



「言わせてもらうけど、貴女は自分の行動に責任を持つべきじゃないのッ?

学園でも生徒相手に人助け、「番長」のつもりか知らないけどッ!」



「いいでしょ別にッ!迷惑かかってないでしょッ!」



「かかってるわよ!貴女が人気になったせいで一緒に居る私まで注目されたでしょッ!

そのせいで変な渾名まで付けられて!そうでしょうが『乙姫様』!」


再び動くのは桃華!

龍美に向かって突進、両手のトンファーを回し双襲撃!

龍美はバントの要領でこれを捌く!



GAKINGAKINGAKINGAKINGAKINGAKIN!!



舞い踊る銀と碧!



「別に良いでしょ『桃姫様』!なんだかんだで気に入ってるくせに!」



「『ピーチ姫』って呼ばれてるのを知るまでわねッ!」



GAKINGAKINGAKINGAKINGAKINGAKIN!!



終わらぬ応酬!



「いまだにぬいぐるみ抱いて寝てるくせにッ!」



「貴女だって、いい歳してワサビ苦手でしょうがッ!」



GAKINGAKINGAKINGAKINGAKINGAKIN!!



「ワサビは歳関係ないでしょッ!この小姑!」


「だれが小姑よ不良娘ッ!」



GAKINGAKINGAKINGAKINGAKINGAKIN!!



拮抗が、崩れた!


「ッア!?」

「ハァアアア!!」



バットが弾かれ宙を舞う!

衝撃を殺しきれず後ろに倒れる龍美!この好機を逃さずに追撃する桃華!

再三に亘る正拳突き、しかし今度は外さない!


無防備の白面に、高速で迫る碧の閃光!



「これで、終わりよッ!」



勝利を確信する桃華。



ーーだが!



「そう、これで終わりッ!!」



龍美は桃華の腕を、掴む!拳は逸れて白面の真横を過ぎる。

そしてそのまま、桃華の体ごと、引き寄せる!



「なッ!?」



自分の拳の勢いを逆手に取られる桃華!

そのまま、龍美は体を回し、しゃがみ込む。背負い投げである!



「私のッ!」



KRAAAAAAAASH!!



仰向けに叩きつけられる桃華!呼吸が止まり、身動きが取れない!


「カッ、ハァ・・・ッ!」



そして、上から迫り来るのは。



銀の煌き。


紅の文字。


『喧嘩両成敗』。




「勝ちだァアアァアアアァァアアアアア!!」




KRAAAAAAAAAAAAAAAAAASH!!



鬼面が、砕け散った。

そして破片は粉状に更に砕け、四散した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「いや。」


「はっ?」



大きな屋敷の縁側に二人、並んで座っている。


「シャテイにはならない。オコトワリ。」


少女は言った。


「・・・ほぉーほぉーほぉー・・・そうかいそうかい、私の舎弟は嫌だって・・・?」


女性が肩を震わせながら言う。


「ちなみに、理由を聞いておこうか龍美。答えようによっちゃあ拳骨が、」


「だって、私も番長になるもん!」


女性は、五十嵐虎徹は。

それを聞いて、しばらく止まった後。


「ハッハハハハハハ!そうかそうか、お前もなるのか番長!」


笑い出した。


「うん。なる。だから、おかーさんはおかーさん。」


「ハッハハハ、そういう事なら仕方ねーや。分かったよ。」


虎徹はそういって立ち上がった。


「言っとくが、番長の道は険しいぞ?普通の奴にはなれんからな。」


「がんばる!」


「おう、がんばれ。んじゃ、行くか。」


「どこに?」


「墓参りだよ。お前の母さんと父さんの。そのあとは・・・日本だな。」


「二フォン?」


「日本だよ。私が元いた所。良い所だぞ、何といっても飯が旨い!何が食べたい?」


「ナン!」


「ナン!?えっと・・・インド寄るか・・・」



ーーーーーーーーーーーーーーーーー




視界が開けている。鬼面が・・・無い。


桃華は起き上がろうとする。


「・・・ッ!」


「はいはい、そのままそのまま。安静にね。」


顔の上から声。龍美だ。制服姿に戻っている。自分も同様だ。

そして頭の裏には柔らかい感触。



「・・・何してるの・・・」


「膝枕だけど?」


龍美は微笑む。場所はさっきと同じ事務所。

傍らには白面。

離れたところに未だに気絶中の鹿角譲司。


「私、どれくらい寝てたのかしら・・・」


「5分くらいかな。ところで膝枕って結構疲れるね。もう足が痺れて泣きそう。」


「誰も頼んでないわよ・・・」


そう言って、桃華は体を強いて起き上がる。

ところどころ体は痛むが、別条は無い。

鬼面の再生能力は切れたのだろう。


「ああ、だめだよ起き上がっちゃ!寝てないと。」


「そんな訳にもいかないのよ。すぐに下の連中が目を覚ますわ。それまでに・・・ッ」


ふらつく桃華。あわてて龍美が支える。


「ほら、駄目だよ桃華!」


「・・・じゃあ、どうするって言うのよ。」


龍美は、そう聞かれて唸った。


「う~ん・・・あ、これがあった。」


そう言って、龍美は白面をつけた。

たちまち全身を覆う学ラン。


「ちょッ!大丈夫なの?」


「うん。なんかよくわかんないけど制御できてるみたい。」


龍美は桃華を抱え上げる。

いわゆるお姫様だっこの形で。


「んな、ちょ、やめなさいよ!降ろしなさい!」


「え~、こうするしか無いでしょ。」


「それにしたってこの体勢は嫌よ!せめておんぶにしなさい!」



叫ぶ桃華、しかしそこに駆けつけるのは。


「組長!ご無事ですか!?」


白スーツに鹿の意匠のバッヂ。蟻島源治。

そして他数名の構成員。

全員が負傷しているが、戦意は失っていない。


「やば、行くよ桃華ッ!」


「え、ちょ、待って、キャァアアアア!!?」


窓を蹴破り、飛び出す白面!

桃華を抱えて、ネオン看板に着地


「逃がすかァ!!」


蟻島が拳銃で狙い、窓から発砲!


だが当たらない。そのまま闇に消える白面。



「チィッ、この借りは高くつくぞ・・・!」


蟻島は歯軋りして、白面の消えた闇を睨んだ。





ネオンとネオンの間を駆ける白面。

誰も気づかない。気づいても気づかないふりをする。


「・・・ねぇ。私のやろうとしたことは、悪なのかしら。」


桃華が訊く。


「わかんない。でも、私は嫌だ。」


龍美が答える。


「そう。だったら、やめるわ。」


「うん。」



二人はしばらく黙った。

ネオンが途切れ、闇が近づく。北との境界が近い。


「ねぇ桃華。昼間の答えだけど。」


「うん?」


「やっぱり番長になるよ。母さんと約束してたんだ。」


「そう。・・・それで、具体的に何をするの?」


「えっ?え~と・・・喧嘩?」



桃華は本日最大の溜息を更新した。


そして、笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ